鳥類保護委員会議事録
日時:2016年9月16日 15時30分〜17時30分
場所:北海道大学理学部博物館N309号室
配付資料:
1) 呉地委員より、道北風発7事業関連の資料として、7事業計画地および既存
風車の位置とガン、ハクチョウ、海ワシ類の生息域に関わる図表、8月3日に稚
内市で開催された北海道主催の公聴会におけるサロベツ・エコ・ネットワークの
公述原稿(鳥類のみ抜粋)および当ネットワークからの資料(道北風発事業の問
題点)が提出された。
2) 元鳥類保護委員の石田健さんより、本学会で福島第一原発事故後の状況につい
て自由集会を開くので紹介してほしいという依頼があり、自由集会の要旨および関
連資料が配布された。
1.検討事項
(1)東京都御蔵島のノネコ対策に向けた要望書提出について
・要望書の提出を依頼された学会員の岡 奈理子さんから、御蔵島は世界最大のオオ
ミズナギドリ生息地であり、個体群の維持に重要な場所であることや、繁殖成功率の
低下および個体数の減少がみられることなどから、早急な対策実施の必要性が説明さ
れた。
・提出された要望書(案)の内容について、1)ノネコ排除に対する地元の意向が不明で
あること、2)ノネコ排除によるネズミの増加、3)捕殺処分に対する動物愛護思想から
の批判、などが懸念されたことから、今回は学会総会決議によらない、学会長名での
要望書を提出する方向で検討していくことになった。
なお、提出に向けた意見として
・岡さんから、要望書提出について事前に地元への説明を行っていただくこと
・要望書には、提出先の役場関係の職員などが理解しやすい資料を添付すること
・要望書において、ノネコの「捕殺」は削除し「捕獲」とすること
・オオミズナギドリの有害鳥獣駆除を実施している東京都が困惑することなく、対応
しやすい内容とすること
などが挙げられたほか、学会がノネコ対策の科学的正当性について後押しすることは
重要である、という認識が確認された。
(2)オオタカの国内希少種解除について 佐藤委員長より説明
オオタカの希少種解除の動きに対し、野鳥の会など多くの環境団体が指定解除反対
の意向を表しているほか、社会的にも大きな関心を集めていることから、鳥学会と
しても何らかの対応が望まれる。指定解除は少なくとも、再度のパブリックコメン
トおよび審議会の開催後になるが、鳥類保護委員会としては早急に、「指定解除の妥
当性」、および「解除後に里山あるいは都市近郊の緑地を乱開発から守る代替手段」
の二点を中心に情報を整理するとともに、委員会企画として、和文誌での特集を組め
るよう検討を進める。
(3)北海道道北における風車建設計画について 呉地委員より説明
・学会員の長谷部 真氏より、道北風発7事業計画に対する鳥類保護委員会からの要望
書提出の依頼があった。
・日本野鳥の会および同会道北支部、サロベツ・エコ・ネットワーク、北海道ラムサー
ルネットワーク、日本雁を保護する会名で、道北風発7事業の事業者、環境大臣、北海
道知事、経済産業大臣に意見書を提出し、既に回答も得ている。
・鳥類への悪影響が懸念される事業であることから、鳥類保護委員会または鳥学会から
要望書等を提出できるよう、検討を進める。ただし、既に道北7事業の準備書に対して
環境省や北海道が意見を提出しようとしている段階であり、経済産業省が10月頃にそれ
らに対する意見を審議する予定であるため、出遅れたともいえる。そのため、要望書をど
の段階で提出するのかの見極めは重要である。
・その他に、
1)休耕地など鳥類の重要な生息地における太陽光発電も大きな問題ではないか、
2)学会として、原発も含めたエネルギー問題に対する方針を検討する場が必要ではないか、
3)道北7事業以外にも鳥類に影響を与える懸念のある風発事業は多数あることから、当
該事業だけを対象にすれば良いのか、などの意見が出された。
2.総会決議後の各要望に対する現況報告
(1)沖縄島在駐米軍北部訓練場内ヘリパッド移設計画の見直しの要望書(1999年度)小高
委員より説明
・2016年7月に高江でリパッド建設が再開され、それに抗議する市民集会が行われるなど住
民の反発が強まっている。すでに米軍が使用を開始しているヘリパッドではオスプレイの訓
練飛行が増加し、住民生活にも影響を与えていることが報道されている。
・やんばる国立公園が2016年9月15日に指定された。今回の指定は「やんばる国立公園」
を含む「奄美・琉球」地域の世界自然遺産登録を視野にいれたものであるが、隣接する米軍
北部訓練場は含まれておらず、過半の返還の条件としてヘリパッドの移設工事が実施されて
いることなどからも、引き続き情報収集に努める。
(2)上関原子力発電所建設計画に係る希少鳥類保護に関する要望書(2008年度)
・2016年8月3日、村岡嗣政山口県知事は上関原発建設に向け中国電力が進めている建設予
定地の海域の埋立免許の延長を許可した。その一方で、原発の本体工事着工時期の見通しが
つくまでは埋立てをしないように要望しており、早急な埋め立てはないと考えられるが、今
後も注視していく必要がある。
3.その他
鳥類保護委員会のホームページの更新権限を広報委員会から受けて、委員長・副委員長が
対応する。
(鳥類保護委員長)