2001年度総会において、以下の要望書の内容と提出が採択されました。


敦賀市「中池見湿地」周辺の環境保全とLNG基地計画の見直しに関する要望書

 福井県敦賀市の「中池見湿地」(湿地とそれを取り囲む丘陵)には本州中部以南で
は数少ない低湿地、特に南限の泥炭湿地として、また市街地に近接して貴重な、自然
が残っている。
 中池見湿地の生物多様性はたいへん高く、京都・神戸・福井3大学合同調査チーム
他による「中池見湿地学術調査報告書」(1998、2000)等によると、湿地と丘陵にお
いて500種以上の植物、1300種以上の昆虫類、20種の哺乳類、そして121種の鳥類が記
録れた。湿地の指標となるトンボ類は69種、哺乳類ではツキノワグマ、ニホンカモシ
カのような大型種、絶滅危惧植物のイトトリゲモ、デンジソウ、ミズニラが記録され
、ナカイケミヒメテントウは新種の昆虫である。鳥類では、食物連鎖の最上位に位置
するワシタカ類のミサゴ、チュウヒ、サシバ、クマタカ、ハヤブサ等、多様な環境を
利用する多様な生態の13種が、記録されている。
 「中池見湿地」を核とする周辺の丘陵地帯は、このように多様で希少な自然地域と
して自然環境保全上・学術上の価値は極めて高いうえ、敦賀市という都市に1-2kmと
近く、市民にとっての環境教育などの多面的な価値も極めて高い。
 現在この「中池見湿地」に液化天然ガス(LNG)基地を建設する計画が進行して
いる。大阪ガス株式会社による計画では、「環境保全エリア」に指定された3.3ha
を除いて湿地部分を埋め立て、丘陵を削り、LNGタンクを設置するすることになっ
ている。この計画に基づいて環境が改変された場合には、上記したような複合的な生
態系(景観)の諸特性がほとんど失われてしまうと危惧される。
 以上の観点より日本鳥学会は、「中池見湿地」とその環境をささえる周辺の広い地
域における生態系が保全され、貴重な自然資源・財産を未来の世代に引き継げるよう
に、関係諸組織による慎重な計画見直しを要望します。

2001年10月7日
日本鳥学会2001年度大会総会

提出先:環境省大臣=川口順子殿、福井県知事=栗田幸雄殿、敦賀市長=河瀬一治
殿、株式会社大阪ガス社長=野村明雄殿