第9回男女共同参画学協会連絡会シンポジウム参加報告

日本鳥学会企画委員会 藤原宏子・吉田保志子

 年に1度のシンポジウムも9回目となりました.「男女共同参画」ということばがやや古い響きをもち,「ダイバーシティ」や「ワークライフバランス」ということばが目立つ,という印象をもちました.ダイバーシティ(多様性)やワークライフバランス(仕事と生活の調和)は,大学,研究所,企業などで最近良く使われ,これらの必要性は社会的に認識されつつあると思います.どちらの言葉も,女性研究者問題に重要でありつつ,この問題を女性だけの問題ではないと気付かせてくれる良い言葉なのかもしれません.
 女性研究者の問題は,ポスドク問題と密接に関係しています.国の「第4期科学技術基本計画」(平成23年度より5か年,平成23年8月閣議決定)では,「若手の問題」と「女性の問題」は,同じ問題として扱われています.男女共同参画学協会連絡会の活動は,日本鳥学会の若手および女性の問題の改善に向けて重要であると考えられます.特に,日本鳥学会との関連性で重要な活動は,大規模なアンケートだと思います.連絡会による大規模なアンケート(第一回は2003年,第二回は2007年に実施)は,これまで,女性研究者を支援するための国や各学協会の事業に反映されてきました.シンポジウムでは, 第三回アンケートを2012年に実施するために準備が進められていることが,担当グループより報告されました.日本鳥学会は,2007年から男女共同参画学協会のオブザーバー加盟団体となりましたので,2012年のアンケートからは,アンケート実施後に,鳥学会会員の回答を抽出することも可能になります.2012年のアンケートに鳥学会員の皆様が積極的に参加し,意見を伝えていただけますようお願いします.
 シンポジウムは,例年,午前中に2,3の分科会,午後に全体会議とポスター発表というプログラム構成です.分科会では保育問題,ポスドク問題など具体的なテーマが例年扱われます.私が出席した分科会のテーマは「これからの若手,女性リーダー育成に向けた取り組み」でした.理系研究者全体に占める女性の割合は約1割でしかありません.産業技術総合研究所の方が,202030(2020年までにリーダーとなる女性研究者30パーセントにするという数値目標)と話された後で,東京大学の方が申し訳なさそうに「こちらは2020年までに教員を20パーセントにする目標が達成できるかどうか・・・」と話されていました.達成されますように!と心の中で思いました.他方,全体会議では,例年,今後の方向性を探るためにやや抽象的な講演などが行われます.今年の全体会議のテーマは「社会が求める科学と科学者〜女性科学者への期待」でした.3.11東日本大震災の後,今後の科学と社会との関係について深く考えている科学者が多いと思います.女性科学者への期待とどう関わっていくのか,女性科学者として何を考えるべきか,初心に戻り考えてみるための企画でした.

添付資料
 第9回男女共同参画学協会連絡会シンポジウム
【日 時】2011年10月31日(月) 09:30〜17:00
【場 所】筑波大学・大学会館
【テーマ】今,社会が科学者に求めること‐ソーシャル・ウィッシュ
【主 催】男女共同参画学協会連絡会
【共 催】国立大学法人筑波大学
【後 援】文部科学省,独立行政法人科学技術振興機構,内閣府男女共同参画局,茨城県つくば市
 
◆プログラム◆
ポスター掲示09:00〜15:40
午前の部(09:30〜12:00)
分科会
 A.震災で浮き彫りとなった科学のこれまでと今後
 B.これからの若手,女性リーダー育成に向けた取り組み
午後の部(13:00〜17:00)
全体会議I(13:00〜13:30)
 主催者挨拶:跡見順子(日本宇宙生物科学会・東京大学)(第9期委員長)
 ビデオメッセージ:吉川弘之(JST研究開発戦略センター長)
 来賓挨拶
 歓迎の辞:筑波大学学長
全体会議II-1(13:30〜15:20)
 パネル討論Iテーマ:社会が求める科学と科学者−女性科学者への期待
 講演者:跡見順子(日本宇宙生物科学会・東京大学)
     なだいなだ(作家・精神科医)
     樋口恵子(NPO法人高齢社会をよくする女性の会理事長)
     菊池吉晃(首都大学東京大学院人間健康科学研究科教授)
全体会議II-2(15:30〜16:40)
 パネル討論II:社会が求める連絡会 女性科学者(だから)できること,連絡会の今後のあり方
 第三回大規模アンケート調査に向けて
全体会議III(16:40〜17:00)
 各種報告
 分科会報告:各分科会世話人
 第9期連絡会活動報告:第9期委員(日本宇宙生物科学会・生態工学会・筑波大学)
 新規加盟学会紹介:各新規加盟学会代表者
 次期連絡会委員長挨拶:第10期委員長(日本生理学会)
閉会の辞:第9期委員長