学会誌改革について考える

日野 輝明(森林総研関西) 浦野 栄一郎(京都大) 綿貫 豊(北海道大)

 日本鳥学会誌もあと数巻で発刊以来50巻を数えようとしています.この半世紀のあいだ,本誌は日本における鳥学研究をつねにリードし,学問の発展に大きく貢献してきました.しかしながら,学会誌のこれまでの英文・和文混交のスタイルは,徐々に時代の流れに合わなくなり,会員の要望や期待に応えられなくなってきています.例えば,英語で論文を書く研究者が近年増えてきましたが,その多くは日本鳥学会誌よりも国際的な英文誌に投稿する傾向がみられます.一方で,研究成果を日本語で発表しようとするアマチュアの研究者が増えてきているにもかかわらず,英語論文の割合が高くなってきた最近の日本鳥学会誌に対して逆に投稿するのをためらうという憂慮すべき状況が生じています.つまり,論文を英語で書く者にとっても日本語で書く者にとっても,現在の和洋混交の日本鳥学会誌は中途半端で魅力がなくなってきています.また最近では鳥の渡りや生物保全の研究の必要性から,国内に留まらずアジア近隣諸国をフィールドにした国際的な共同研究が増えてきました.さらには,日本の大学で学位を取ったアジアからの留学生が帰国してそれぞれの国でポストを得て活躍するようにもなってきています.このように研究の国際化や人的交流が進む中で,日本鳥学会誌は国内ばかりでなく,アジア諸国の鳥学研究の発展においても中心的な役割を果たし,それを世界に向けて発信して行くべき時期がきていると考えます.
 そこで私たちは,現在の和文英文混交の学会誌を,より投稿しやすく、そしてより質の高いものにしていくために、英文誌と和文誌に分けて編集・発行することを提案したいと考えています。そのような考えに基づいて、昨年度大会時に編集委員会からの依頼と評議員会での了承を受けて,学会誌改革案を検討してきました.すでにその「たたき台」とすべき第一次案については、鳥学ニュースNo.71に掲載し、それに対して会員の皆様から寄せられたご意見をNo.72に紹介いたしました。自由集会では、皆様からいただいたご意見を参考にして修正した案を提示して、皆様のご意見を仰ぎ、今後の方向性を含めてさらに議論を重ねたいと考えております。