防衛庁長官   
大野 功統 殿


愛知県渥美半島での自衛隊ヘリコプター離着陸訓練場計画の 再検討を求める要望書
愛知県渥美半島は猛禽類を含む鳥類の重要な渡りルートとしてよく知られ、その先端伊良湖岬の東12キロメートルには多数の鳥類が生息する20平方キロメートルほどの山林が残されている。渥美山塊はその多くが三河湾国定公園第3種特別地域に指定されており、その内、中腹にある社寺林の一つは第1種特別地域とされている。渥美半島での最高峰・越戸大山(おっとおおやま 328m)山頂近くにある、旧総理府(現内閣府)所有地約1,000平方メートルを、陸上自衛隊明野航空学校(三重県)のヘリコプターの離着陸訓練場とする計画がある。
 日本鳥学会は、この訓練場が鳥類に悪影響を与える恐れがあると憂慮し、計画の再検討を求める。

 なお、再検討にあたっては以下のような理由から、生物多様性や自然環境保全に十分配慮した新たな検討を行うことが妥当であると考える。  渥美半島は中部地方以東の太平洋岸で繁殖した猛禽類・小鳥類の多くが秋の渡り時に経由して行き、同半島は日本国内における大きな渡りルートの一つとされている。8月中旬から12月上旬まで続く猛禽類・小鳥類の渡り行動が、ヘリコプターとの遭遇によって著しく阻害される。ヘリコプターと鳥類との衝突事故の発生する可能性が高い。
 また、渥美山塊はハチクマ、サシバ、オオタカの繁殖が確認されている等、低山帯にしては貴重な猛禽類・小鳥類の繁殖地および越冬地となっている。オオタカの繁殖に関わる行動は1月から7月まで、ハチクマのそれは5月から8月まで続く。この間の求愛行動・造巣行動・抱卵行動・給餌行動および巣立った若鳥への影響が出る。一部の猛禽類の営巣地はヘリコプターの想定訓練域と重なっており、営巣放棄される可能性が高い。
 越戸大山山頂一帯には原生状態に近いウバメガシ林やカゴノキ・タブノキ林などの常緑広葉樹林が広がっている。鳥類以外の多様な生物も含めた、貴重な自然生態系として保全に十分配慮すべき場所である。

2004年9月19日
日本鳥学会2004年度大会総会決議
                         
                          日本鳥学会
                          会長 樋口 広芳


提出先:防衛庁長官   大野 功統殿   防衛施設庁長官 嶋口 武彦殿  
    環境大臣    小池百合子殿   愛知県知事   神田 真秋殿 
    愛知県田原市長 白井 孝市殿   愛知県渥美町長  原 功一殿