綿貫 豊 (2004) 海鳥における採食域の定着性と個体変異. 日本鳥学会誌 53:1-10.
【摘要】 海鳥は潜在的には広い範囲で採食できる.最近,沿岸性および外洋性の海鳥数種類において,個体毎に採食場所定着性があることと同時に個体変異があることが報告された.その採食場所の定着性と個体変異がみられる生態的条件とメカニズムについてレビューした.採食場所定着性は,海流や潮汐,海底地形などに依存した比較的安定した良い餌場で採食することと関連しているらしい.また,相対的に安定した餌である底魚を食う場合にハビタットの定着性が見られた例があった.個体は続けて同じ場所へ採食にでかける傾向があり,場所定着性が短期記憶によるものであることが示唆された.特定の良い餌場にくりかえし出かけることで採食効率が上がり,結果的に繁殖成績も高くなる,という仮説が出されているが,直接的な検証はまだなされていない.場所定着性を解析する適切な統計的方法による比較研究によって,いかにして餌の安定性が採食場所定着性と個体変異に関連するか,空間スケールを考慮した研究が必要である.
【キーワード】 海鳥,餌の安定性,個体変異,採食域定着性,スケール