鳥類保護委員会報告2011

鳥類保護委員会報告

日時：2011年9月17日　18:00～20:00

場所：大阪市立大学全学共通教育棟　５階　502講義室

出席者：早矢仕有子・佐藤重穂・石田健・小高信彦・中村司・大迫義人・尾崎清明・須川恒・高橋満彦

欠席者：なし

Ⅰ．総会決議後の経過
（１）沖縄島在駐米軍北部訓練場内ヘリパッド移設計画の見直しの要望書（1999年度）
① この１年間、高江区においてヘリパッド移設のための本格的土木工事は行われていない。
② やんばる地域においては、2011年もヤンバルクイナの交通事故が39件発生している（2011年12月15日現在）。マングースに関しては、防除事業の成果により捕獲個体数が大幅に減少していることから、生息数減少が期待されている。

（２）愛知県渥美半島での自衛隊ヘリコプター離着陸訓練場計画の再検討を求める要望書（2004年度）
① 防衛庁陸上自衛隊は2010年9月～2012年3月の期間、猛禽類の渡りおよび繁殖調査を実施している。
② 「渥美自然の会」は引き続き、サシバ、ハチクマ、オオタカ等、猛禽類の生息調査を継続している。
③ 愛知県自然環境課は防衛省に対し、「引き続き、地元自然保護団体と話し合うよう要請している」と、渥美自然の会に口頭で伝えている。

（３）上関原子力発電所建設計画に係る希少鳥類保護に関する要望書（2008年度）
① 瀬戸内海の生物多様性保全のための第5回三学会合同シンポジウム「上関（かみのせき）：瀬戸内海の豊かさが残る最後の場所」（2010年9月23日）
会場：南山大学（愛知県名古屋市）
主催：日本生態学会自然保護専門委員会、日本鳥学会鳥類保護委員会、日本ベントス学会自然環境保全委員会
＊佐藤重穂副委員長が鳥学会総会決議の内容を紹介した。

② “カンムリウミスズメと上関（瀬戸内海）の生物多様性” 国際シンポジウム
　　～奇跡の海を守ろう～（2011年4月10日）
会場：広島市平和記念公園内　国際会議場「ヒマワリ」
主催：長島の自然を守る会
後援：日本生態学会・日本ベントス学会自然環境保全委員会・日本鳥学会・日本自然保護協会・日本環境法律家連盟・WWFジャパン・パタゴニア
＊パネルディスカッションで、早矢仕有子委員長が総会決議等、保護委員会の活動を紹介した。

③ 上関原子力発電所建設計画の現状
　2011年3月の東日本大震災以降、山口県は建設計画に対し慎重な姿勢に転じ、6月の山口県議会で知事は、中国電力に対する上関原発にかかる海域の埋め立て免許（2012年10月に失効予定）の更新を許可しない方針を表明した。

Ⅱ．環境省自然環境局「絶滅のおそれのある野生動植物種の野生復帰に関する基本的な考え方（案）」に対する意見提出
　2010年12月8日付けで、日本鳥学会会長宛に環境省自然環境局野生生物課から寄せられた標記案への意見聴取に対し、鳥類保護委員会は意見書を作成し、2011年1月28日に学会長宛提出した（意見内容は、日本鳥学会誌60(2):267に掲載）。

Ⅲ．環境省総合環境政策局「風力発電施設に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会報告書（案）」に対する意見提出
　2011年5月16日に環境省総合環境政策局が公表した「『風力発電施設に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会』報告書」への意見募集（パブリックコメント）に対し、鳥類保護委員会は意見書を作成し、6月9日に提出した。意見の概要は、日本鳥学会誌60(2):267に、意見書の全文は、http://wwwsoc.nii.ac.jp/osj/japanese/NotificationMain.html#wind_20110609に掲載されている。

Ⅳ．環境省自然環境局「絶滅のおそれのある野生生物の保全施策に関する意見聴取について」
環境省が設置した「我が国の絶滅のおそれのある野生生物の保全に関する点検会議」に関し、2011年11月15日付けで、日本鳥学会会長宛に環境省自然環境局野生生物課から意見提出の要望が寄せられた。そこで鳥類保護委員会が意見書を作成し、2011年12月22日に学会長宛提出した。意見内容の概要は以下のとおりである。
　1.種の保存法をはじめとする保全に関する各種法令を点検するにあたっては、必要に応じて政省令の改正、さらに場合によっては法改正までを視野に検討を進めた上で、法的な裏付けを持った保護施策の展開が促進されることを望む。
　2.「絶滅危惧種の減少要因把握と主要な減少原因に対応する有効な対策抽出」に、「絶滅危惧種の増加阻害要因の把握」を加えてほしい。絶滅危惧鳥類種については、希少性ゆえに写真撮影等による人為的干渉が増大し、繁殖や採餌に悪影響を及ぼす危険性が増幅するなど、減少要因とは異なる人為的要因が、個体数回復を妨げることに留意すべきである。
　3.絶滅のおそれのある野生生物の保全施策は、主にその生物の生息・生育している自治体で実施されることから、この会議への各都道府県の野生生物保護担当課の出席を求めたい。

Ⅴ．委員の交代
　中村司、石田健、早矢仕有子委員が2011年末で退任し、2012年より白木彩子、出口智広両氏が就任する。
　2012年から、委員長は大迫義人、副委員長は小高信彦・高橋満彦両氏が務める。
　
（鳥類保護委員長）