第7回男女共同参画学協会連絡会シンポジウム参加報告

日本鳥学会企画委員会 藤原宏子

 男女共同参画学協会連絡会の第7回シンポジウム(2009年10月,東京工業大学)に日本鳥学会を代表して参加いたしました。ご参考のために、当日のプログラムを添付します。
 今年は男女共同参画基本法が制定されてから10年になるそうです。この間、理系の女性研究者は増加傾向にあるものの、理系研究者全体に占める女性の割合は、現在13パーセントにとどまっています。複数の発表者から女性研究者の少ない現状が指摘され、シンポジウム全体をとおして印象に残りました。また、日本鳥学会の企画委員会の規定に「鳥学研究にたずさわる者が性別にかかわりなく,その個性と能力を発揮できる研究環境づくりのために男女共同参画活動を行う.」という一文が盛り込まれることになりましたが、「性別に関りなく個性と能力を発揮できる社会へ」という理念を複数の発表者から聞くことができ、勇気づけられました。
 男女共同参画学協会連絡会は2004年に発足しましたが、その初代の委員長であった小舘香椎子氏(日本女子大名誉教授・学長特別補佐)により特別講演「男女共同参画推進に向けた学協会連絡会の展望」がありました。男女共同参画学協会連絡会の過去、未来についてのお話の中で、日本鳥学会との関連で心に残ったことは2点でした。1点目は過去のことです。連絡会の委員長は、当初は女性であったけれども、ここ数年は男性にお願いしたそうです。男女共同参画は性別に関らず全ての人の問題ですが、とかく女性の問題ととらえられます。男性にも意識を高めてもらうことを意図して、委員長を男性にお願いしたそうです。わが日本鳥学会は、幸いにも酒井委員、藤岡委員が大活躍してくださっています。この流れを大切にしていかなければならないと思いました。2点目は今後の展望についてです。小規模研究機関に属する女性研究者は、研究費、設備、情報等、様々な点で不十分な研究環境にあります。このような環境にある女性研究者の発掘と育成を学協会連絡会が率先してやっていくべきだ、というのが小舘氏の意見でした。日本鳥学会員には、小規模研究機関に属していたり、アマチュアの研究者が多いのではないかと思います。学協会連絡会の今後の活動に期待したいと思います。また、小舘氏は、理系女性研究者が少ない理由の一つとして、「ロールモデル」の少なさを強調していました。独立行政法人・科学技術振興機構(JST)が「理系女性のきらめく未来」と題したロールモデル集(小冊子)を作って配布していることも紹介されました。日本鳥学会会員へ、このようなロールモデルを紹介していくことは、ホームページや鳥学通信などを介してすぐやれることだと思いました。
 また、全体会議「持続可能社会に向けての女性研究者・技術者への期待」では、企業に所属される方4名の講演がありました。大学・研究所もがんばっていますが、企業でも男女共同参画へのとりくみは進んでいて、参考になることが多いそうです。資生堂副社長の岩田喜美枝氏は「人材の完全有効活用」と「社員構成の多様化」が会社の発展には欠かすことができず、そのためにも男女共同参画は大切であると力説しました。
 各学会等と文部科学省振興調整費「女性研究者支援モデル育成」・「女性研究者育成システム改革加速プログラム」採択機関によるポスター発表も例年通り行われました。分子生物学会では、大会発表者における女性の比率を調査し、女性研究者の発表を増やすためにはどうすべきかを検討していました。日本鳥学会でも、託児室の運営を今後も継続するとともに、女性会員が発表しやすい、もしくは参加しやすい大会にしていくことを考える必要があると思いました。
 これらを参考に、今後の活動について議論させていただきたいと思います。

添付資料
第7回男女共同参画学協会連絡会シンポジウム
【日 時】 2009 年10 月7 日(水) 10:00〜17:30
【場 所】 東京工業大学 蔵前会館(TOKYO TECH FRONT)
    (東京都目黒区大岡山2−12−1)
【テーマ】 持続可能社会と男女共同参画
【主 催】 男女共同参画学協会連絡会
【共 催】 東京工業大学
【後 援】 東京工業大学 男女共同参画推進センター,文部科学省(申請中),日本学術会議(申請中),科学技術振興機構
◆プログラム◆
午前の部 (10:00〜12:00)
分科会
A.学協会での男女共同参画のとりくみ 【くらまえホール】
コーディネータ:森 義仁氏(日本化学会・お茶の水女子大学)
話題提供者:中島明子氏(日本建築学会・和洋女子大学)
吉岡耕治氏(日本獣医学会・動物衛生研究所)
荒川 薫氏(電子情報通信学会・明治大学)
B. 若手研究者の異分野交流とネットワーク作り 【ロイヤルブルーホール】
コーディネータ:光武亜代理氏(日本蛋白質科学会・慶應義塾大学)
話題提供者:小柴-竹内和子氏(日本発生生物学会・東京工業大学)
渡邉恵理子氏(応用物理学会・日本女子大学)
中野享香氏(日本物理学会・新潟大学)
 
午後の部 (13:00〜17:30)
全体会議㈵ (13:00〜14:45) 【くらまえホール】
司 会:坂庭 好一氏(電子情報通信学会・東京工業大学)
 
13:00
主催者挨拶:広崎膨太郎氏(電子情報通信学会・NEC)
来賓挨拶:泉 紳一郎氏(文部科学省 科学技術・学術政策局長)
来賓挨拶:岡島 敦子氏(内閣府 男女共同参画局長)
歓迎の辞:伊賀 健一氏(東京工業大学学長)
 
13:45
特別講演
司 会:原島 博氏(電子情報通信学会副会長)
講演者:小舘香椎子氏(日本女子大名誉教授・学長特別補佐)
「男女共同参画推進に向けた学協会連絡会の展望」
 
ポスターセッション (14:4〜15:30) 【ギャラリー】
 
全体会議㈼ (15:30〜17:30) 【くらまえホール】
 
15:30
講演「持続可能社会に向けての女性研究者・技術者への期待」
司 会:石川 悦子氏(電子情報通信学会・富士通)
講演者:岩田喜美枝氏(資生堂 代表取締役副社長)
高木 朋子氏(IHI原子力事業部 高エネルギーシステム部)
高橋 和枝氏(NTT環境エネルギー研究所)
田中 千穂氏(三井化学 人事・労制部)
 
17:00
各種報告
司 会:大柴小枝子氏(電子情報通信学会・京都工芸繊維大学)
分科会報告 A,B:各分科会担当者
連絡会活動報告:荒川 薫氏(電子情報通信学会・明治大学)
新規加盟学会紹介:新規加盟学会代表者
次期連絡会委員長挨拶:栗原和枝氏(高分子学会・東北大学)
閉会の辞:広崎膨太郎氏(電子情報通信学会・NEC)
 
懇親会 (18:00〜20:00) 【百年記念館3Fフェライト会議室】
司 会:猪俣芳栄氏(日本女性科学者の会・上智大学)