2018年度 内田賞受賞理由

推薦根拠論文:


1. 才木道雄 (2016) 秩父山地におけるヨタカのさえずり頻度の季節変化. 日鳥学誌 65(1): 31-35.


2. 才木道雄・後藤晋 (2017) さえずり頻度の時間的変異を考慮したヨタカの効率的な生息調査法. 日鳥学誌 66(1): 19-28.


 才木道雄氏は,準絶滅危惧種であるヨタカを対象に,さえずり頻度の季節変化を定量的に記載した上で(根拠論文1),録音音声に基づいた利用しやすく簡便なモニタリング手法のデザインを探っている(根拠論文2).根拠論文1の成果は,不明な点の多かったヨタカのさえずり頻度の日周変化や季節変化を詳細に記載したものである.夜行性鳥類の音声研究上,たとえば音響学的特性の解析などのきっかけともなる基礎的成果である.さらに注目すべきは,そのヨタカの音声研究を本種のモニタリング手法の開発へと発展させた点にある.夜行性であり直接観察も難しいヨタカは,情報がないままに個体数を減らしている可能性も大きい.根拠論文2は,経験の浅い人による本種の生息状況調査を可能にする手法開発の第一歩として,鳥類モニタリングや保全生態学の観点から貴重な成果である.この研究がきっかけとなり,ヨタカ生息数の過大評価や過少評価が生じる可能性の検討など,より実用性の高いモニタリング手法確立を目指す研究が進むことが期待される.