鳥学通信 no. 40 (2013.11.12発行)

もし鳥学会の評議員と事務局が、ドラッカーの「マネジメント」を読んだら ~~ IOC後の鳥学会を考える ~~

渡辺朝一

このたび、2013年度内田奨学賞をいただきました。たいへんありがとうございます。かねてから目標としていた賞をいただくことができた喜びと共に、論文化の過程や学会大会での発表などの際にいろいろ意見をいただいて、鳥学会の皆さまに育てていただいたと考えている研究で賞をいただけた、という感慨もあります。また、他の学会のことはわかりませんが、鳥学会は、At Homeで面倒見がいい学会であると感じています。鳥学会に所属している幸福感をかみしめつつ、この後もあらためて初心に返り、研究に取り組みます。

しかし、今回のこの原稿に関しては、何を書かせていただくのがよいのか、少し困ってしまいました。研究の内容は既に大半が発表されているので、内容に関しては、そちらをみていただければいいわけです。また、学会外の賞であれば、どのような賞であるのか、とか、受賞に至までの過程などを書けば、読者の皆さまの参考になるでしょう。が、内田奨学賞は鳥学会の賞です。受賞に至るまでの過程を書いても参考になるとは思えません。

そこで、今回は、鳥学会の未来について、何をヒントにして考えるのがいいか、僭越ながら、外部者の目で思うところを書かせていただくことにしました。

鳥学会は、昨年2012年に、創立100周年を迎えました。来年2014年には、国際鳥学会(IOC)の日本開催を控えています。これはたいへんすばらしいことです。このめざましい発展の流れは、1990年代の、森岡会長時代から始まった改革の流れの中にあると認識しています。その流れの中で、博士号を取得したプロの研究者数も増え、会員数も増え、研究のレベルも大きく上がっています。鳥学会は1990年代から2010年にかけて、成長期にあったと言え、IOC開催はその集大成とも言えるでしょう。

今は、IOCの開催を成功に導くことに全力を尽くす時ですが、同時に、IOC後の鳥学会について考える時でもあります。考えるって、何を考えるのか、別に考える必要ってあるのか、と思われる方も多いのかもしれません。私は、IOC後の鳥学会についてトコトン考えた方がいいと思っています。今までのような成長期の学会ではなく、IOCのホストを務めることができるような大人の学会に変わっているのですから、この後、どのような姿の会を目指すのか明らかにすることは重要と思います。

では、そもそも、何をどのように考えてゆけばよいのでしょうか?その参考になるのが、アメリカの経営学者であるドラッカーの著作です。

鳥学会員の皆さまは、2009年のベストセラー小説『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(岩崎2009)を、お読みでしょうか?

読んでいらっしゃらない方のために、簡単にストーリーを説明します。都立高校野球部の女子マネージャーが、ドラッカーの著書「マネジメント」(ドラッカー2001)を参考に、野球部を変貌させてゆき、甲子園出場に導く、というストーリーです。

主人公は、まず最初に、野球部とは何かという定義をはっきりさせます。続いて目標を定め、マーケティングを進めて顧客の満足を引き出します。更に、練習方法を改善し、戦術的なイノベーションを試み、社会貢献を通じて周囲の協力を得、監督や選手のモチベーションを高めただけでなく、周囲も巻き込む形で組織を劇的に変貌させてゆきます。その全ての指針となっているのが、ドラッカーの著書「マネジメント」なのです。

ドラッカーの「マネジメント」は、組織を運営してゆくのに必要なさまざまな原則を平易な表現で述べています。これらの原則が当てはまるのは企業に限ったことでなく、汎用性が高いと思います。

鳥学会でも、マーケティングやマネジメントは今までも行われてきました。会長や評議委員会による会の運営はマネジメントと言えますし、会員のニーズに応えようとする各種の委員会活動はマーケティングであると言えます。”将来計画ワーキンググループ”が活動していた時期もありました。最近の「鳥学通信」上でみることができる「鳥学会におけるポスドク問題の現状」(三上2012)などは優れたマーケティング活動の例です。

今までも行われてきたマーケティングやマネジメントを、ドラッカーを参考にした切り口から深化させていければ、鳥学会の未来はより明るいものになるでしょう。

受付日 2013.10.15


第4回黒田賞をいただいて

三上修
岩手医科大学

このたび名誉ある黒田賞をいただくことができ、大変感謝しております。関係者のみなさまに改めてお礼申し上げます。

受賞講演でも述べましたが、今回の私のスズメに関する研究は、一般の方に鳥学を知ってもらうこと、興味を持ってもらうこと、楽しんでもらうことを強く意識して行ったものです。そのために、わかりやすいテーマ、わかりやすい調査方法、そして、テンポよく成果を出すやり方を、練りに練って行いました。

もちろん、今回の黒田賞では、私のそれ以外の学術的な研究も評価していただいたかと思います。が、やはり、スズメに関する一連の研究のウェイトは大きかったと思っています。そういう意味で、これまで受賞された方とは違い、いわば、奇策、搦め手による受賞といえるかもしれません。とはいえ、黒田の名を冠する賞ですから、それも許されるかもしれません。黒田家のご先祖様をさかのぼれば、秀吉の軍師だった黒田如水にあたります(2014年度の大河ドラマの主人公です)。それゆえ、そういった奇策によって黒田賞をいただいても「勘弁(かんべえ)」してもらえるのではないかと思うのです。

ただし、これも講演で述べたことですが、誰もがこういった研究方針をとるべきだとは思いません。そんなことばかりしていたら、学問分野としての格や質が下がってしまうからです。しかし、鳥学を一般の方に理解してもらって社会に必要としてもらうためにも、そして、若い人が、鳥の研究をしてみたいと思ってもらうためにも、社会への発信は不可欠になっています。それゆえ、鳥学会の中に、社会への発信を認める雰囲気が、あるとよいのではないでしょうか。

それと、私が、若手を褒めて育てることを強調したために、「学会から、厳しい意見がなくなるのは、それはさみしいのではないか」という貴重なご意見をいただきました。もちろん、そうだと思います。互いに対等な立場で、喧々囂々なやり取りは、むしろ好ましいと思います。しかし、どんな場所でどんな形で意見を交えるかは、相手との信頼関係の上に成り立っています。講演の中で、私が若かりし頃、ある方から厳しいコメントをいただいて、かえって発奮したという話をしましたが、その方との間には信頼関係があったと思いますし、私はそれに応えるべく努力をしました。ですから、そのあたりを見極めて行えばよいかと思います。ただ、信頼関係があるかどうかはやっかいな問題です。厳しいコメント(内容が厳しいかどうかではなく、高圧的な言い方になっていないか、相手を尊重する言い方を欠いていないか)を発する側が、「これは相手のためだ」と思うかはどうでも良いことで、受ける側が、どう感じるかだけが重要です。特に学会会場は公衆の面前です。年齢が上、社会的立場が上のものは、すでに不利な状況にあると思った方が良いかもしれません。

それから、これも講演でのべ、その後、総会でも話題になりましたが、現在若手研究者が減っていると考えられます。総会では、「そうでもないのでは?」、という意見もありましたが、それは若手というのが曖昧な表現だからだと思います。年配の方は、かつて若手だったものが年をとっても、やはり若手という意識があるため、若手研究者の数は時間とともに増えて行っているように感じてしまうかもしれません。が、私が言っているのは20代と30代の研究者、さらに特定すれば、学位取得を目指す若き研究者の減少です。学生会員数の推移がわかれば、減少については、根拠に基づいて議論できると思います(ただし、昔は「もぐり」の学生会員が沢山いましたので、またそれも実状とは違うかもしれません。それから、学会会場には若手研究者が多いので、見た目は若者の割合が多いように思えますが、重要なのは若手研究者の絶対数の増減です)。少子化や、そもそも大学院に進む学生が減った、そして、鳥の研究室が減ったなどの構造的な問題などもありますから、すぐに解決できるわけではありません。それに減っているからといって悲観しても何も良いことはありません(総会でのご発言はそういう意図だったかと思います)。大事なことは、現在いる若い研究者の人たちが、鳥学会のなかで、夢をもってやっていけることです。私は、来期から(2014年から)評議員にもなります。そのために学会としてできることを検討していければと考えています。

以上はすべて私の意見であって、みんなが同じように考えるべきだとは思いません。むしろ、皆が自分と同じ意見を持つ学会なんて気持ち悪いので、私はご免こうむりたい。多様な意見がこれからも巻き起こればよいと思っています。

講演当日に行われた大会の懇親会の後、友人・知人・先輩方・後輩があつまって、受賞パーティをしてくれました(写真1・2)。なんと70名近くもの方が集まりました。そこでは、若手で盛り上がっていこうという話が出ましたし、それを思うと、まだまだ日本の鳥学は大丈夫と思います。しかし、だからこそ、今のうちに、若手が戦える雰囲気を作っていきたいと感じます。

数十年後、私が研究者をやめる時に、このとき思ったことはすべて杞憂であり、鳥学会があいも変わらず盛り上がっていることを期待して。

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写真1:お祝いの品として、つぼ(イエスズメの巣箱)に寄せ書きをいただいものを持って立つ筆者(田口文男氏撮影)
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写真2:いただいたつぼ

 

受付日 2013.10.23


AOU/COS joint meeting 2013に参加して

岡久雄二
立教大・院・理/日本学術振興会特別研究員DC2

8月13日から17日にかけてイリノイ州シカゴで行われた American ornithologist's union and Cooper ornithological society joint meeting 2013(アメリカ鳥学会とクーパー鳥学会の合同大会)に参加してきました。144題のポスター発表と228題の口頭発表、シンポジウムが10つ、5題のplenary sessionがあり、主として南北アメリカ大陸を中心とした地域から600名程度が参加し、毎日熱い議論が交わされました。日本からは立教大学上田研究室の上田教授と院生の上沖正欣、Kyungsun Seoと私が参加し、学生はそれぞれポスターと口頭での発表を行いました。

AOU/COSはどちらもアメリカの鳥学会なので、鳥類に関する非常に多岐にわたる学問領域についての発表があったのですが、一つ一つの発表が個性的かつ専門性が高く、様々な学問領域の融合体として鳥類学が存在しているのだということを強く感じさせられました。全体としては行動、生活史形質、系統地理学に関わる研究が多い一方で、日本の鳥学会や生態学会では比較的多い景観生態学や生息地選択に関する発表は少ない印象でした。

口頭発表ではアメリカンジョークを飛ばす場面が多く、一題につき何度も会場が笑いに包まれます。そのせいか質疑応答も建設的な議論をしながらジョークを応酬していることが多く、皆が学問や発表を楽しんでいるという雰囲気をとても心地良く感じました。緊張した面持ちで発表している方の多い日本の学会とは少し違うかもしれないと思わされます。

研究の内容で日本と違うのは何と言ってもサンプルサイズです。例えば捕食圧の研究では800巣、ラジオテレメトリの研究でも200羽、といった100の単位のサンプルサイズが当たり前でした。さすがサンプルサイズの多い研究を数多く掲載する傾向の強いAukを発行している学会だと感じさせられます。また、もう一つ驚かされることは発表の最後の謝辞に非常に多くの獲得資金やアシスタントの名前が出てくることです。およそすべての発表がグラントを獲得しており、比較的潤沢な予算のもと多くのボランティアやフィールドスタッフを雇って行われています。これが大きなサンプルサイズに基づく力強い研究成果につながっているのだと感じさせられます。

私は今回、キビタキの営巣環境選択についてポスター発表を行ったのですが、会場では日本や東アジアに興味関心の強い研究者や現地の大学生などが発表を聞きに来てくださり、2時間の発表時間のほとんどを議論に費やし、ポスター会場に置かれているお酒や軽食を一切口にする暇がありませんでした。今回のAOU/COSでは旧大陸における鳥類の分化と多様性についてのシンポジウムがあったこと、来年はIOC(国際鳥類学会議)が日本で開かれることもあって多くの方に関心を抱いていただけたのではないかと思います。加えて、やはり鳥が好きな方が多いということもあり、キビタキの写真を「きれいな鳥だね!」といって話しかけてくださる方や、調査地である富士山について「そんな美しいところで研究できるのはうらやましい」と言ってくださる方も多く、研究対象・調査地がウケていたという面もあるかな、と感じました。

発表以外の部分では、学会の初日と最終日に懇親会があったほか、映画鑑賞会、バードウォッチングツアー、オークション、クイズ大会、マラソン大会、アコースティックライブなど本当に様々なイベントが目白押しで、すべて参加するととても体力が持たないほどでした。娯楽ともいえるこうした企画が参加者同士を打ち解けさせ、学会全体の活気を生んでいました。学会を楽しむべきお祭りだと捉えるこうした要素は日本の学会にも取り込んで良いものではないかと感じます。

今回のAOU/COSが私にとっては初めての海外での学会参加でしたが、多くの方と話す機会を得ることができ、本当に楽しむことができました。研究の内容も本当に刺激的で、まだまだ未知の鳥類の生態が溢れていることを痛感させられました。今回得たものを自分の研究に生かせるように、早く日本に戻って論文に取り掛かりたい思いが募っています。来年のAOU/COSは9月22日から9月28日にコロラド州で行われます。ロケーションがとてもよく、フクロウ類のバンディングなども行われるようですので、来年もとても楽しいイベントになることでしょう。都合の合う方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

最後に、多くの場面で来年のIOCの広報を行うことを許可して下さり、懇親会でわざわざ日本からの参加者を紹介して下さったChairmanのJohn Bate氏に心からお礼を申し上げて、参加報告を終わらせていただきます。

 

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写真1:毎朝行われるPlenary sessionの様子 (撮影 上沖正欣)
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写真2:ポスターセッション 会場でIOCの広報も行った (撮影 上沖正欣)
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写真3:会場周辺でもよく見られたコマツグミTurdus migratorius (撮影 Kyungsun Seo)
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写真4:The field museumで行われた懇親会 化石や剥製に囲まれての食事 (撮影 上沖正欣)
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写真5:学会後のField trip Midewin National Tallgrass Prairieで鳥を探す (撮影 上沖正欣)
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写真6:草原を飛んでいたヒメコンドルCathartes aura (撮影 Kyungsun Seo)

 

受付日 2013.8.29


キイロスズメバチによる刺傷被害について

村濱史郎
特定非営利活動法人日本バードレスキュー協会

8月下旬にカワウ巣の調査のため樹に登っている途中、キイロスズメバチの襲撃に会い、刺傷被害を受けました。自戒のためと、類似の調査に従事されている、あるいはこれから調査をしようと企画されている方の参考になればと思い報告します。

1.刺傷被害に至った経緯

樹上15m付近に架巣されたカワウ巣を調査するためにザイルを用いて樹に登っている途中、同じ樹に巣を作っていたキイロスズメバチから、地上7~8m付近で襲撃を受けました。登っていた樹種はシイで、スズメバチの巣はその地上7~8m付近の幹にあった樹洞の中に作られていました。葉が茂り樹の全体が見にくい中、十分な確認作業を行わないまま登り始めたこと、樹洞内に巣があったため地上からは視認することが難しかったことが被害を受けることになった原因でした。登攀用のヘルメットを被り、首にタオルを巻き、長袖のシャツを着て、革製の手袋(甲の部分は布)を着用していましたが、ヘルメット以外はほとんど防備の役を果たしませんでした。

樹に登る手段として、Single Rope Technique(SRT)を用いていました。対象とする樹の適当な枝にザイルを通し、一端を少し離れた位置にある別の樹の幹の地上付近に固定し、反対側のザイルを枝から幹に沿って垂直に降ろし、そのザイルにアッセンダーを取り付けて登っていました。アッセンダーはザイルにセットした状態で下向きに荷重がかかっているとロックされて取り外すことはできません。このことが刺傷被害を大きくした原因でした。

スズメバチから襲撃を受ける前におそらくは威嚇を受けていたと思われますが、登ることに意識が集中していたために、手を刺されて初めてスズメバチの存在に気付きました。この時、アッセンダーに下向きに荷重がかかっている状態であったため外すことができず、また付近にアッセンダーへの荷重を抜くための足場となる適当な枝もなかったことから宙づりで身動きの取れないまま、主に両手、両腕を刺され続けました。

地上で待機していた共同研究者に固定していたザイルを緩めてもらい、余裕のあったギリギリまで伸ばして、1~2mほど降ろしてもらいました。これによりスズメバチの襲撃はほぼ収まりましたが、その時にはすでに両手、両腕が通常の1.5倍ほどに腫れあがり、刺された激痛のため手を動かせない状態に陥っていました。

被害を受け始めてすぐに消防に通報してもらい、30分後くらいには救助隊が現場に到着していたのですが、通常装備であったため対応できず、そこからさらに特別救助隊の出動を要請することとなり、地上に降りることができたのは2時間ほど経過した後でした。その後救助隊員によって車道まで担送され、そこから救急車で病院に運ばれ集中治療室に入院となりました。

刺傷被害の症状について

体が動かせるようになってから全身の被害箇所を数えたところ、150ヶ所ほどありました。樹上で宙づりになっている間は、激痛、視野狭窄(周辺からだんだん暗くなり最後はほとんど見えなくなることが不定期に繰り返された)、呼吸困難、意識混濁(何度か気が遠くなった)、失禁、などがありました。集中治療室で、足首の静脈(腕の血管は腫れのため位置が判らなくなっていた)から痛み止めとステロイド剤を輸液、刺傷被害を受けた箇所にはステロイド軟膏を塗布するなどの治療を受けましたが。激痛のため、ほとんど動くことができず、さらに吐血(極度の痛みとストレスのため胃と食道に炎症(潰瘍)ができ、そこから出血した)したため、2日ほど食事をとることができませんでした。

動けるようになったのは3日目入ってからでした。その後は痛み止めと炎症を抑える薬を服用し普通に動けるようになりました。刺された跡は直径1cmほどの大きさで赤く腫れ、中心部は陥没してクレーター状となりその底部の組織は壊死して真っ黒になりました。痛みが去った後は猛烈に痒くなり、3週間ほどはステロイド軟膏とアレルギー反応を抑える飲み薬が欠かせませんでした。痒みも徐々に治まり薬の服用をやめた頃に、今度は傷跡から雑菌が入ったらしく、両手、両腕が再び腫れあがって、指を曲げることができなくなり、お箸も持てないような状態になりました。このため、被害を受けてからほぼ1ヶ月後に通院することになりステロイドの静脈注射と炎症を抑える薬を服用する羽目になりました。事故後2ヶ月経過した現在では、多少の痒みは残っていますが、ほぼ完治した状態になっています。もっとも、刺傷痕の変色は残り、体中に赤色の水玉模様があり、病気と間違われる可能性があることから温泉や銭湯には行けない状態が続いています。

事故から1ヶ月が経過した頃に血液中のハチ毒抗体の量を調べる検査を受けました。結果は陽性で、次にハチに刺された場合、アナフィラキシーショックを起こす可能性が高いとされ、エピペンと呼ばれるアドレナリン溶液を自分で注射できる器具を常時携帯するように医者から言い渡されました。

反省と対策

今回、医者が驚くほど大量に刺されたにもかかわらず、死に至らなかったことは本当に僥倖であったと思っています。集中治療室のベッドに横たわりながら、反省すべき点と今後の対策について色々と考えてみました。

反省点

1. それまでの調査では、繁殖終了直後の初夏が多く、夏季後半から秋にかけて巣に登ことがなかったので、スズメバチの被害に合うことをまったく想定していなかった。このため十分な確認作業をすることなく登りだした
2. 登っている途中、登ることに意識が集中し周囲の状況に目を配る余裕がなかった
3. 本人が登っている途中で事故等に会い、動けなくなった場合に安全に地上に降ろす手段を考えていなかった

対策

1. 登る作業に入る前に必ず対象とする樹の安全を確認する。特にスズメバチなどの有害な生物の有無を入念に確認してから作業に取り掛かる
2. 登っている途中でも、周辺の状況に常に気を配り、注意を怠らない
3. 調査者が樹上で動けなくなることを想定し、地上からでも安全に降下させることができるようなシステムを構築する。例えば2本のザイルを枝にかけ、1本は従来通り端を地上に固定し、アッセンダーをセットして登る作業に使用。もう1本は調査者のハーネスに固定して反対側の端を地上の確保者が確保し、事故が発生した場合には地上に固定していたザイルを切断して、確保者が確保していたザイルを伸ばして調査者を降下させるような方法を検討する

事故に会った際の降下方法としては他にも色々な方法があると思われます。良い手法をご存知の方は是非お知らせください。

最後に、事故に会ったことにより調査を中断せざるを得なくなったことや、消防への通報、関係機関への事後処理等で多大なご迷惑をお掛けした共同研究者の皆さまにこの場を借りて深くお詫び申し上げます。

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写真1:刺傷痕 刺傷被害を受けた3日後に撮影

 

受付日 2013.11.1


鳥学会名城大学大会 自由集会 2013年9月13日
「英語での学会発表に必要なことは?」

黒沢令子(自由集会企画者)

初日の夜の自由集会3題のうちの一つとあって、どのていど人が来てくれるだろうか?と企画者はやや心配をしていました。それでもいざ開始してみると、鳥学会の中堅どころの人々を中心に人が入り始め、20人近くは来てくれたでしょうか?グループワークに入ると、主催者側のリーダー役もいっしょになり、30人近い人々の英語会話の場になっていました。

以下は大まかな実施内容です。また、配付資料を付けました。資料5)は自己評価のための点検シートで、当日は時間の関係で全員による利用はできませんでしたが、参考にしていただきたいと思います。資料4)の英文要旨作成の手引きはIOCの要旨提出の際に役立つ情報を付けたものです。こちらもご参考になれば幸いです。
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写真1:自由集会会場風景 (写真 Shimba Chan)


第1部

(1)英語で伝える、わかり合うとは:趣旨説明 (黒沢)
(2)英語による意思疎通体験談紹介(堀江・森・田口・長谷川)

体験談

i) 田口文男 WGUS(Working Group on Urban Sparrows)欧州

1977年~2001年、イタリアとアイルランドに日系企業の現地駐在員として滞在し、ビジネスや会議などで英語によるコミュニケーションを経験した。

ネイティヴスピーカーでない我々日本人がする英語での会話の基本は、①度胸(=間違えてもいい、間違えるのは当たり前という開き直り)、②積極性(=どうしても伝えたいという強い気持ち)と③社交性(=外国人と外国の文化習慣への好奇心。友達、ビジネスパートナーになりたいが、相手の気持ちも尊重しつつ仲間になりたい気持ち)だと思う。

生の外国語と対峙した最初の経験は、27歳でアイルランド勤務となり、日系銀行のロンドン支店の現地人担当者と初めて電話で話したとき。相手の言うことが一言も分からなかった。ロンドン下町の「コックニーアクセント」という独特な英語(映画「マイフェアレディー」で花売りイライザ(オードリー・ヘップバーン)の英語を、もっと酷くしたもの)だった。大学の英文学科で「純粋培養」で育てられた英語力では、何も分からないというショック。アイルランド駐在時代に、現地でアメリカ人観光客(英語のネイティヴスピーカー)とアイルランド人(英語のネイティヴスピーカー)の間の会話が成立しないことを何度も見て、「通訳」として間に入る経験を何度もし、また会社の欧州会議の英語の議論から、英語の発音には大きな違いがあること、ノンネイティヴの話す英語は、母国語の強い影響があることを認識した。これは武器となり、欧州北欧系諸国の人々、欧州地中海系諸国の人々、アジアでもインドの人々、フィリピンの人々など、それぞれが話す英語の「おおまかな」特色を理解すれば、「あれっ、今の言葉は何だ?!」という事態を、かなり避けることが出来た。まずは、いろいろな発音の英語に慣れること、そして時間がない時は、会議の前日に港夕食を取って、歓談する間に、それぞれの英語の特徴をとらえておけば、会議での会話が随分と楽になった。

もうひとつ大切なことは、相手の英語での説明、質問などが分からないときには、必ず確かめること。ただし、あまり話を中断しすぎて会話が成立しないような愚は避けること。要するに臨機応変。

今回の「自由集会」で感じたのは、「英語での会話に自信がない」と言っている人達でも、自分が言いたいことを表現することは十分に出来るということ。これで英語の会話での3分の1を成しえたも同然。ということは「丸腰」で立ち向かうわけではないということ。その皆さんに共通するのは「質問を正しく理解できるか自信がない」。それへの対策は「②積極性(=どうしても伝えたいという強い気持ち)」しかないと思う。その気持ちがあれば、若い日本人男性が外国に住んで、その国の女の子が好きになったら、何が何でも、会話力が弱くても、何とかして自分の気持ちを伝えようとするのと同じで、相手の質問を何とかして分かろうと、質問に対する最善の質問をして、理解のレベルを上げるようにすることだけ。「学問に王道なし」。大切なのは失敗を恐れず経験を積むこと。それが将来に必ず生きてくるはず。

ii) 近藤紀子 (日本学術振興会,総合研究大学院大学)

私は,2008年4月から7月までの3か月間、オーストリアのKonrad Lorenz Forschungsstelle (KLF)でハイイロガン(Anser anser)を育てておりました。その間,言語は英語を使っていたので、その時のお話を書きます。

この時、いっしょにいたのは私以外に2人のドイツ人でした。KLFのメンバーはほとんどがドイツまたはオーストリア出身なので、基本的に皆さんドイツ語で会話していました。私は全然ドイツ語が話せないので、親切なKLFメンバーたちは皆英語を使ってくれました。その時に感じたことは、英語ネイティブでない人たちは結構適当な英語を話している、ということでした。文法はかなり適当でも大丈夫で、過去形と現在形が1文の中に同居しているということはよくありました。要は言いたいことが伝わればいいので、文法を気にして話の流れを止めてしまうよりも、適当な文法で自信満々に言い切れば通じるんだな、と思いました。これは、学会でのポスター発表にも共通しており、とにかく自信満々に言い切れば、文法が多少間違っていても相手はあまり気にしないようです。

その他、難しい単語は誰も知らなかったので、その時々でとても簡単な英語に言い換えたり、ジェスチャーでどうにかしたりしていました。“添え木”を英語で何と言うのか誰も知らなかったので(splintといいます)、私たちは“the wood”や“foot assisting wood”などと適当に呼んでいましたが、意思疎通の上で問題はありませんでした。むしろ、難しい単語を辞書で調べて颯爽と使うと、全く通じないという事態もありました(白内障=cataractなど)。ネイティブではない人たちがいる場合、頑張って難しい単語を使う必要は全くないようです。

今回の自由集会では、経験豊富な方々が多かったので、むしろ私のような雑魚が何をどうしたらいいのかわからない点もありました。すみません。しかし、それぞれに英語プレゼンのコツを持っていらっしゃり、それを知ることができて勉強になりました。長谷川さんもおっしゃっていましたが、日本人の前で英語を話すというのはキャラ激変を強いられるためにとてもこっぱずかしいものです。こっぱずかしさを払拭するのは慣れしかないと思うので、日本人の前でも恥ずかしくないよう、多少文法を間違えても堂々と話せるようになりたいなと思った自由集会でした。

あと、自由集会の内容とは全く関係ないのですが、打ち上げ会場で居酒屋のスタッフのお兄さんが完全にこちら側に引きずり込まれ(巻き込まれ?)ていた姿がとても印象的でした。企画者の黒沢さん、長谷川さん、お手伝い係の方々と参加者の皆さん、どうもありがとうございました。

iii) 堀江明香(大阪市立大学大学院理学研究科)

私が海外に行った経験は全5回で、そのうち3回はアジア圏(タイ・モンゴル・中国)への旅行、残り2回が国際学会(ブラジル・スウェーデン)への参加です。アジアへの3回の旅行時は英語以外の言語がメインでしたので(私は話せませんが)、博士課程5年目の2010年にブラジルで行われた、the 25th IOC(第25回国際鳥学会議)への参加が、海外の方と英語でコミュニケーションをとる必要にせまられた初めての場でした。

ブラジルに行けること自体は楽しみだったのですが、初めて庇護者なしで海外に出たので、最初のうちは怖くて、知り合いの陰に隠れてばかりだった気がします。しかし、ポスター発表を行う際には何かが吹っ切れたようで、ポスターの前に足を止めてくださる方に自分から声をかけるようにしました。ちょっと迷惑そうな方もいましたが、概ねつたない私の説明に耳を傾けてくれました。自分の発表内容の説明自体は準備していったものですので思ったより難はありませんでしたが、困ったのは質疑応答でした。質問の内容が聞き取れず、何度聞き返しても分からない場合はノートに質問を書いてもらい、何とか答える、ということをくり返しました。他の方の口頭発表も、よほど集中しないと内容がつかめず、代替手段としてスライドの写真を撮って後でゆっくり文章を読んだりしていました。この学会では、英語力のなさが本当に大きな制約になること、でも笑顔と懸命さがあればコミュニケーション自体は何とかなることを学びました。

2012年にスウェーデンのルンドで行われたthe 14th ISBE(第14回国際行動生態学会)では初めて英語での口頭発表に挑戦しました。スライドはもちろん、説明の文言まで全て事前に準備し、スライドに載っているキーワードを見れば説明を思い出せるように暗記に努めました。そして発表よりも質疑応答が心配だったので、とにかく自分で思いつく限りの質問を先に考え、その返答や対応スライドをあらかじめ作っておきました。さらに、当日は座長の方に挨拶に行き、「ネイティブではないので、もし質問者の英語が分かっていないようだったら、その質問をゆっくりくり返してもらえないか」と頼んでおきました。練習のかいがあって、発表自体は特に間違えることも時間をオーバーすることもなく終えられましたが、やはり質疑は緊張しました。一人目の質問は何とかこなしましたが、二人目の質問は聞き取れたものの質問自体の意味がよく分からず、質問の確認をしているうちに発表時間が終了となりました。質問者の方には発表終了後にお話を聞きに行きました。英語力はブラジルでのIOCに比べると多少マシになっていましたが、発表以外の「雑談」などにはやはりなかなかついていけず、まだ英語は課題のままです。

今年の8月末、長谷川理さんからお電話をいただき、日本鳥学会2013年度大会の初日に行われる英語自由集会への参加依頼をいただきました。長谷川さんはこの英語自由集会の企画者のお一人で、当日、自由集会の参加者をリードする海外経験者を捜して声をかけておられたとのこと。上記の通り、私自身は英語がとても苦手で、海外経験もさほど多くないのですが、そのくらいのレベルの方が参加者の方には身近でよい、とおっしゃっていただけたので参加させていただきました。参加者の方は意外とベテラン・中堅の方が多くて妙に緊張しましたが、私の後輩にあたる学生も来てくれており、彼らとグループを組みました。対象種の説明をその場で考え、英語で発表するというグループワークはとても新鮮で、参加者の方々もみな、初めは控えめに、だんだん楽しそうに説明をしていました。来年東京で開催されるthe 26th IOCに向けて、英語のスキルを学ぶというより、発表に前向きになれた、という気持ちの面で大きな意義のある自由集会でした。参加させてもらえてよかったです。

第2部

(3)英語スピーチの基本項目:(黒沢)
  原稿(パラグラフライティング)、発声(腹式呼吸)、発音(子音、苦手発音の練習)、語彙
  非言語コミュニケーション
 ここで、グループ作成。各グループにリーダーが配置につく。
(4)グループワーク (黒沢)
 目的:「伝わりやすくする工夫」。
   方法:1分間スピーチ。長さ:パラグラフ1~2個(100~200語)。
 ・準備。各自の研究対象(鳥)の基礎生態を説明する。
 ・パラグラフライティング
   原稿準備の留意点に即して。
 ・読み上げ(1~2分/人)
   スピーチの留意点に即して。
 ・ピアレビュー(グループの他メンバーから改善点を伝えてもらう)(2~3分/人)
 ・二巡目(グループの人数によってできなかったところもあった)
   レビュー結果を取り入れ、工夫して再挑戦。
(5)まとめ

英語発表の留意点 配付資料

1)様々な口頭発表と留意点
1.原稿読み上げ
 利点: 全て準備済み、手元にあるので忘れない。
 欠点: 手に原稿を持っているので、ダサい。読んでいる場所を見失うことあり。不自然感。
 留意点: 不自然にならないよう工夫
2.暗記
 利点: 全て準備済み、暗記済み。手に原稿なく、格好よい。
 欠点: 4,5分が限度。ど忘れする可能性。
 留意点: 不自然にならないよう工夫。
3.箇条書きやメモ←推奨
 利点: 概ね準備済み、手元にメモで格好よさ中程度。自然。聴衆の態度を見てフィードバックできる。
4.即興
 利点: シンプルで格好よい。どんな場面でもできる。自然。
 欠点: 不適な表現をしてしまう危険性。要経験。
 留意点:その場で、内容、証拠、結論、などをまとめ上げ、用語を選ぶことが必要。

2)事前準備がある場合のスピーチの工夫点
1.原稿準備。
 ・原稿:テーマ、パラグラフライティング、まとめ、タイトル。自分の立場の表明。
 ・スライド:図の示し方、表現など。
 ・文は短く、単純に。文法チェックをしておくこと。
 ・重要な語は専門用語を使用するが、それ以外の部分は平易な発音しやすい用語を使う。
 ・印刷原稿:大きな文字で、段落/頁くらい。大事な点は大文字や太字、利用。
 
2.事前練習
 ・速度の調節:自分の速度や癖を知っておく。 通常は120~150語/分。
 ・発音しにくい単語は辞書で発音を確認し、滑らかに言えるようになるまで、くり返し練習。
  発音がわからない単語はWeblio辞書や、「Forvo」で事前に調査しておくとよい。
  次に、文章に入れて練習。
  最後に、言い換え練習。←これが質疑応答に利く。
 ・図表の説明。順序も考慮。
  軸の説明。単位の説明。要因の説明。結果(解釈)

3.発表の実際
 ・身振り態度(非言語部分)
  ジェスチャー。自分の動作の意図を相手に伝える手段。口述内容への導入、予測、強調ができる。
   発表開始時。途中の強調部分、ポーズ、最後の締めくくり。
  アイコンタクト。自信を示すと共に、相手への思いやりなどを伝える。
  服装や態度。TPO(Time, Place, Occasion)場面、聴衆、自分の性格などに応じて決める。
   性格、気分、自信の度合い、相手への思いやりなどを伝える自分の意図を伝える大事な手段。
  
 ・話し方(言語部分)
  声量:初心者や不慣れな場合は、大きめにした方が伝わりやすい。
  発音:子音の発音を強めに。口は大きく開け閉めする。できるだけ明瞭に。
  ピッチ:大事な点の強調などに利用。強調する部分は高めに、流す部分は通常にと変化を付ける。
  ポーズ:ダラダラ感を防ぐ。大事な点の強調、論理の変換点、聴衆の気を引きつけるなど。
  速度:神経質になると速くなりやすいので、適切な速さで。通常は120~150 語/分。
    息継ぎの時に、深呼吸をして、ポーズをとるとよい。

3)質疑応答への対応
 ・テーマに即した内容の質問
   テーマに沿って、自分で予測し、Q&Aを作成して、練習しておく。
   研究対象の種について、基礎生態は英語で説明できるように準備しておく。
   関連の書物・論文を読んで、語彙を豊富にしておく。
 ・予測外の質問
  質問者の人となりをよく見て、質問の予測をしながら聞き取る。
  聞き取りにくかった場合は、聞き取れた単語を述べて「What about ~ ?」と聞き返す。聞き取れた単語を鍵にして次の質問をしてくれるように促すことができる。
  一部分しか聞き取れないが、時間がないなどの時。「I would like to answer the ~ part of your question.」などと、相手の質問にあった重要語句と思われる部分を取り上げて、答える。何も言わずに失礼になるよりもよい。少なくとも誠意は示せる。
  まったく聞き取れなかった場合は、「Would you repeat slowly, please ?」などと聞き返す。
  時間切れ、テーマから外れる質問、聞き取れない等の場合。「I'm afraid it is hard to answer now. Would you ask me later please? Perhaps at a coffee break?」などと伝えておく。

 例)鳥種の説明                      Ian Newton. 1996. Monogamy in the Sparrowhawk.
The Sparrowhawk (Accipiter nisus) is a small raptor which breeds in forest and woodland throughout the Palaearctic region, and preys upon small birds. The sexes look much the same, except that females are bigger than males (at twice the weight). Both sexes are short-lived, with an annual mortality of around 33%, an age of first breeding of 1-3 years, and a maximum life span of around 9 years (Newton 1986). They space themselves through suitable habitat, and tend to nest in the same restricted localities year after year, giving a fairly uniform and stable distribution (Newton 1986).

4)英文要旨の書き方基礎

 留意点:情報量→必要最低限。表現→直接的、具体的、定量的に。
 基礎的な構成。これを基準に個人の味わいをつけて差し引きしていく。
  A)目的を紹介(イントロの主部分)
  B)方法(主要、または新規な方法について)
  C)結果(主要な結果)
  D)考察(主要な結果についての考察)
  E)(まとめ:ない場合も多い)
 キーワード:タイトルや要旨と重ならず、しかも重要な点を具体的に示す用語を選ぶ。
 ※1 実際の英文要旨ではつなげて書く 。本稿で、A~Eに文を小分けにしたのは説明のため。
 ※2 例1は仮説検証ができた事例で、例2は対立仮説が否定された場合の事例。

例1)
Foraging Ecology of Temperate-Zone and Tropical Woodpeckers
Robert A. Askins. 1983. Ecology

Key words: Central America, community structure, foraging behavior, guild, latitudinal gradient.

A) The foraging behavior of 11 species of woodpeckers in Guatemala, Maryland, and Minnesota was studied in order to test the seasonal stability hypothesis. This hypothesis predicts that specialization and species richness should be no greater for tropical wood-excavators than for those in the temperate zone because wood-excavators in both regions are buffered against seasonal change.
B) Niche breadth values for six variables that describe foraging methods and perches were calculated by two methods.
C) Unweighted niche breadth values were similar for tropical and temperate woodpeckers for all variables except foraging techniques; in this case the temperate species are more specialized. With weighted niche breadth values temperate species are more specialized for two variables and less specialized for two others.
D) Thus there is no consistent tendency for tropical species to be more specialized. However, the excavating guild includes twice as many species in Guatemala as in either of the northern study sites. Two of the three additional species in Guatemala use a configuration of foraging methods and perches not used by northern woodpeckers.
E)Hence the large number of tropical woodpecker species can be attributed partly to the greater range of resources available in the structurally complex rain forest.

例2)
Effect of climate change on breeding phenology, clutch size and chick survival of an upland bird. Fletcher, K. et al. 2013. Ibis.
Keywords: breeding success, moorland, phenotypic plasticity, weather

A) Upland birds are predicted to be particularly vulnerable to the effects of climate change, yet few studies have examined these effects on their breeding phenology and productivity.
C) Laying dates of Red Grouse (Lagopus lagopus scotica) in the Scottish Highlands advanced by 0.5 days/year between 1992 and 2011 and were inversely correlated with pre-laying temperature, with a near-significant increase in temperature over this period. Earlier clutches were larger and chick survival was greater in earlier nesting attempts.
D) However, chick survival was also higher in years with lower May temperatures and lower August temperatures in the previous year, the latter probably related to prey abundance in the subsequent breeding season.
E) Although laying dates are advancing, climate change does not currently appear to be having an overall effect on chick survival of Red Grouse within the climate range recorded in this study.

参考
1)口頭発表 http://members.tripod.com/teaching_is_reaching/delivering_your_speech.htm
    http://www.richspeaking.com/articles/manuscript_speech.html
2)観察や研究から論文へ 『フィールドの観察から論文を書く方法』濱尾章二2011文一総合出版
         『Observing Animal Behaviour』M.S.Dawkins 2010 Oxford Univ. Press
3)その他 辞書 http://ejje.weblio.jp/content/impromptu
       発音 http://ja.forvo.com/

(20130920 RK)


5)点検シート

内容      
 1)テーマに即しているか
 2)最低限、必要な情報はあるか
 3)パラグラフが整っているか

提示
 1)音量は適正か
 2)速度は適正か
 3)ポーズをうまく利用できているか
 4)子音などの発音は明確か
 5)ピッチの変化は利用できているか
 6)アイコンタクトはとれているか
 7)身振りはうまく利用できているか

質疑応答
 1)聞き取りはできたか
 2)質問に適切な返事はできたか
 3)聞き取りが十分でない場合でも、それなりの意図を表示できたか 

全体 (メモ)
 1)思うように提示できたか

 2)うまくいった点は何か

 3)うまく行かなかった点は何か

 4)うまく行かなかった点の原因は何か

 5)改善のために今後するとよい工夫や練習は何か

受付日 2013.11.12


-連載-ニューカレドニア通信 (7):海外調査の秘訣

佐藤 望
立教大学大学院理学研究科, 日本学術振興会特別研究員PD, Polish Academy of Science

2011年から開始したニューカレドニア調査も今年で3年目となりました.今年は私を含めて4人が10月1日に現地入りし,後から3人が合流して現在では7人で調査をおこなっています.今年度は外国からもフィールドアシスタントを受け入れたため,家の中でも英語と日本語が交錯しており,メンバーの英語能力向上には最高の環境となっています.毎日のように英語で研究の議論をする事は刺激的な上,日に日に英語能力が向上している事も実感できて,良いグループだなー,と手前味噌ながら感じています.

また,初年度はフランス語がほとんど理解できず,研究対象の巣もなかなか見つかず,アウェイの洗礼を受けておりましたが,現在では巣も順調に見つかり,地元の方とも世間話ができる程度の語学力がつき,公私ともに充実した日々を送っています.特に嬉しかったのは,色々な方が調査に協力してはじめた事です.まだ一ヶ月程度の滞在ですが,すでに数人の地元の方が「うちにもワピピ(研究対象種のローカル名)の巣があるよ」と教えてもらったり,私有地内での調査を快諾してもらっており,日本から遠く離れた調査地ですが,私たちが地元に受け入れてもらえている事を実感しました.

このように,今年はこれまで築き上げてきた信頼,実績,友情を強く感じながら調査をおこなっています.本号ではこれまでを少し振り返って,継続した海外調査を実現するための秘訣について考えてみます.これから先,日本の鳥類学者が海外に出るための参考になれば幸いです.
 
1. 全員に挨拶を
私が最も重要視しているのは挨拶です.日本人だけでなく,海外でも挨拶に重きをおいている事は多いように思います.また,形式的なものではなく,一人一人に合わせた挨拶をする事が重要だと思います.ここではフランス語だけではなく,現地の言語が存在するので,それぞれの言語,習慣(握手するのか,頬にキスをするのか,手を振るだけか)で挨拶をするようにしています.初年度はほとんどフランス語がわからなかったので,これだけを徹底して,見かけた人には全員に挨拶をしていました.その結果,現在では調査地付近の住民の方には全員,顔を覚えてもらっていると自負しておりますし,これが先述したような信頼や友情を生んだのだと思います.
 
2. 報告,連絡,相談
私が一般企業に就職した時,「報・連・相」という言葉を何度も上司から言われましたが,海外での調査でも重要だと思います.国立公園や私有地でおこなう事が多いと思いますが,その場合,受け入れてくれた方は多少なりとも,私たちがどんな事をしているのかが気になると思います.特に,外国人である私たちは,コミュニケーションも100%ではないし,文化や考え方も違うので,受け入れ側からすれば不安は尽きないと思います.私たちは州立公園で調査をしているのですが,その日の出来事を公園の責任者だけでなく,なるべく多くの公園のスタッフの方々にも話す(“報告する”)ようにしています(写真).みんなしっかりと私たちの話を聞いてくれて,嬉しい事(巣の発見とか)があれば一緒に喜んでくれるし,辛い事(巣が捕食されるとか)があると,一緒に悔しがってくれました.そして,初年度は公園の責任者の方にも毎日のようにその日の成果を報告していました.報告といってもたいていは数秒程度のものですが,面白い映像が取れた時には一緒に興奮したりしていました.これは信頼だけでなく,友情の面でも非常に重要ですが,なにより私たち自身のモチベーションに繋がります.

また,調査を開始する際,今日はどこを調査するのかといった事も公園の方に“連絡”するようにしていました.最近はフレキシブルに動く必要が多いため,必ずしもできていないのが反省すべき点ですが,少なくとも信頼関係ができるまでは毎日,連絡するよう心がけていました.

次に調査地で何か新しい事をする時には,事前に公園側に“相談”するようにしています.海外と日本では色々な差異があるので,判断に少しでも迷う時は相談して了承を取るようにしています.これも結果的には信頼を得る事に繋がると思います.そして年度末には調査結果をレポートにして公園側に提出しています.

これらの現地との「報・連・相」は忙しいとついつい怠ってしまうのですが,少なくとも信頼関係が築けるまではしっかりとやった方が怪しまれずにすむと思います.

3. 海外を楽しむ
せっかく海外に来ているのだから海外を満喫する事を強くお薦めします.若かりし頃の佐藤はストイックな自分に酔いしれて,海外(ニュージーランド)でも調査と論文執筆のみをおこない,外国の調査チームのメンバーにパブやバレーボールを誘われても断ったりしていました.これでは海外でしか経験できない事を自ら拒否している事になってしまいます.昨年,近隣で調査している外国グループを招いて,何度かパーティーを開催しました.これはお互いの研究を知る事ができて良い刺激になります.

また,休みをしっかり取る事は海外での調査において非常に重要だと思います.英語を話さないといけない,慣れない場所で生活しないといけない,共同生活しないといけない,プライベートな時間も場所もないなど,日本にいる時以上のストレスがかかる上,日本と気候が異なるため,体力も予想以上に奪われてしまいます.

ニューカレドニアでは日差しが強く,気温も高いのですが,乾燥しているため汗がすぐに乾いてしまいます.そのため,暑い事に気づきにくく,結果,熱中症になってしまう事があります.

お金をかけて海外に調査に行くため,少しでも頑張らないと,という気持ちは私も過去にずっと思っていたのですが,チームの中心になると,全員が無事に帰る事が最重要であるという当たり前の事に気づきました.心身ともに健康で帰るためにも海外を満喫し,休みを取り過ぎと思うくらい取る事を強くお勧めします.

4. 主張をしっかり
日本では自己主張しなくとも察してもらえることがありますが,海外ではそうはいきません.やりたい事,やりたくない事はしっかり主張しないと後々大変な事になってしまいます.初年度,私は共同研究者の研究の手伝いをお願いされた時,すべてYesと答えていましたが,途中からNoと言わないとどんどん仕事が増えて行く事に気づきました.幸い,相手から「自分の研究を優先しろ」と言ってもらえたため,Noと言えるようになりました.ここまではよく聞く話だと思いますが,これ以上に日本人(佐藤)にとって難しかったのは,仕事をお願いしたり,何かを誘ったりする事です.「これを頼むと相手に申し訳ないな」,「これ,一緒にやりたいのだけど,相手はどう思っているのかな」と思ってしまったら負けです.相手はやりたくなければ断りますので,気にせずにお願いしてみる事が大事です.

以上がニューカレドニアをはじめオーストラリア,ニュージーランドでそれぞれのグループ,立場を経験して大事だと思ってきた事です.ほとんどは先輩たちから学んだものですが,唯一,佐藤らしい事を言うとしたら,「とりあえず,やってみる!」です.言語の壁,文化の違い,資金面など,海外で調査をする事の障壁,できない理由はいくらでもありますが,もし,海外で挑戦したいのであれば,そこらへんはそっと目をつぶって,安全面と実現可能性と,実現したときの達成感を考えて,プランを立てれば実現に一歩近づくと思います.

 

fig1

写真1:公園のスタッフにその日の成果を報告

 

受付日 2013.11.11


編集後記:今号は6本の記事をお届けしました。これ以外にも原稿を書いていただいたのですが、紙面と次回以降の原稿数を見越して次号に回させていただきます(例年11月号への投稿数が最も多いです)。鳥学通信では随時記事を受け付けております。お気軽に記事をお寄せください。皆さんのご協力を期待しています(編集長)。

鳥学通信は、皆様からの原稿投稿・企画をお待ちしております。鳥学会への意見、調査のおもしろグッズ、研究アイデア等、読みたい連載ネタ、なんでもよろしいですので会員のみなさまの原稿・意見をお待ちしています。原稿・意見の投稿は、編集担当者宛 (koho "at" ornithology.jp) までメールでお願いします。

鳥学通信は、2月,5月,8月,11月の1日に定期号を発行予定です。臨時号は、原稿が集まり次第、随時、発行します。

鳥学通信 No.40 (2013年11月12日) 編集・電子出版:日本鳥学会広報委員会 和田 岳(編集長)、高須夫悟(副編集長) 天野達也、東條一史、時田賢一、百瀬浩

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