日本鳥学会2001年度大会の講演要旨
■■口頭発表10月6日■■
■A会場(E30)

●A102 オオタカ Accipiter gentilisの生息に影響する環境要因

百瀬浩1・植田睦之2・藤原宣夫1・石坂健彦1・山田泰広2
1 国土交通省国土技術政策総合研究所 緑化生態研究室
2 日本野鳥の会 研究センター


 オオタカは、国内希少野生動植物種に指定されている中型の猛禽類であり、全国のおもに平地から低山帯に生息する。このような場所は開発圧に強くさらされている場所なので、開発とオオタカの共存を図っていく上で、オオタカの生息に影響する環境要因を明らかにし、それを基に共存策を検討する必要がある。そこで、市街地、水田地帯、低山帯を含む栃木県の宇都宮市から芳賀郡にかけての南北11.0km、東西24.6kmの範囲(面積約270平方km)でオオタカの環境選好性を明らかにするための調査を行なった。
 調査地内に23巣のオオタカの巣を確認し、その巣から半径1800mの範囲を行動圏とした。調査地を約3km四方のメッシュで区切り、そのメッシュ内にオオタカの行動圏が占める面積と各環境要素との関係を重回帰分析により解析した。
 重回帰分析の結果、針葉樹林の面積、草地の面積、森林と草地の境界線長、人口からオオタカの行動圏面積を予測することができ、その式は有意だった。これらの要素の中では森林と草地の境界線長の正の影響が最も大きく、人口が及ぼす負の影響も大きかった。人口が多いことは市街地的な環境であることを示し、営巣、採食場所が少ないので、オオタカの行動圏が少ないことが考えられる。また、人が多くなることで、人による繁殖への妨害も多くなると考えられ、それも効いている可能性がある。
 猛禽類の分布はおもに営巣場所と採食場所によって決まってくると考えられている。営巣環境の量を示すと考えられる針葉樹林の面積の行動圏への影響は小さく、採食地の量を示すと考えられる森林と草地の接線長の影響が大きかったことは、本調査地のオオタカにとっては、営巣環境よりも採食環境の方が分布を決める上で重要な要素になっていることを示唆している。