日本鳥学会2001年度大会の講演要旨 |
【講演取り消し】●P27* コロニー営巣? それとも単独営巣?
もてない雄と雌の攻防
藤田 剛 (東大・農・生物多様性)
背景
コロニーで営巣した雌は頻繁に婚外交尾する.この事実をヒントに「婚外交尾のためにコロニーが形成される」というアイディアが出された (コロニー形成の婚外後尾仮説).しかし,この仮説には欠点がある.つがった雌が婚外交尾してしまうため,もてない雄はコロニーで営巣すると損をする可能性が高い.婚外後尾仮説は,このもてない雄のコストを無視しているのである.
問題
しかし,もしコストが生じるにも関わらず,もてない雄がコロニーで営巣してしまうような条件が存在すれば,婚外後尾のためにコロニーが形成されている可能性があることになる.この条件をシミュレーションで調べる.
モデル
基本アイディア: 鳥類では,つがい相手を探索する過程で雄が「待ち伏せ型」,雌が「移動探索型」の探索法をとる系統が多い.一方,つがい外後尾時には主に雄が「移動探索型」,雌が「待ち伏せ型」になる.これらの探索法の違いによって,同じ期間探索を続けた場合でも,首尾良くつがい相手や交尾相手を得られる効率が,雌雄で違ってくるのではないか.
モデルの概要: 個体ベースモデルを使う.性比が1:1,一夫一妻制の個体群を考える.生息地にはコロニーと単独巣,2種類の巣場所が過剰に存在する.雄には質のばらつきがあり,雌はその質を見分けることができ,質の良い雄を好む.雌雄とも,コロニーを好む個体と単独巣を好む個体の2種類が存在する.
つがい形成のため,雄は巣なわばりをつくり,つがってくれる雌を待つ.雌はさまざまな巣なわばりを移動探索し,質のいい雄とつがおうとする.婚外交尾のため,雄は巣を出発点に移動探索し,交尾を受け入れてくれる雌を探す.雌は巣でやってくる雄を待ち,自分の雄より質の良い雄とだけ婚外交尾する.
注目する条件は主に2つ.1) 探索時の移動速度と2) 一度選んだ場所(コロニー/単独巣)で探索し続ける時間.これらの値をさまざまに変化させ,各個体の利得を交尾効率で測る.
発表では,同じもてない雄でも,コロニーを好む個体の方が単独営巣を好む個体よりも有利になる1)と2)の条件が存在するかどうかを示す.また,鳥類に見られる営巣様式の多様性が,この機構でどれくらい説明できるかも検討する予定である.