絵師のチュウシャク

今回の大会で絵を担当させて頂きました,東大海洋研で絵師稼業(10%)をしております橋口です.アナログものについては,「日本」鳥学会なのだから,と和風仕立てを試みました.ただ,何が描かれているのか,注釈が無いと判らない方が多いかもしれない,と一寸この場を設けて頂きました.


【大会ポスター】
「母島扉に母島目黒」(ははじまとべらにははじまめぐろ)
使用画材:ウッドボード,顔彩

トベラは内地の海岸などに生えておりますが,ハハジマトベラは母島の固有種.そしてメグロも固有種,ということで固有種三昧.この絵のためだけに,初めての母島へ.

メグロだけを描くわけにもいくまい,と選んだお題が,ハハジマトベラ.現地の方もあまり知らない,かなりマニアックな植物.4月に行ったとき,丁度さくらんぼの様な可愛い実が.枝振りも好く,これを描かずに何を描く!

紙も持って行っておりましたが,A3のかさばるウッドボードをこんなところまで持ってきて描かないで帰る,というのはどうも...と,いうことでこんな絵に.

 

 


【要旨集・表紙】
「溝五位文様傘に柳」

羽?と云われる方,多し.巣で警戒しているミゾゴイを,文様化したものを傘に貼り付けてみました.胸の文様を柳と一緒にしてみたところ,面白かったのです.

目玉を入れるとそのまんまなので,目玉は描き入れませんでしたが,そのため判りにくかったかと.「こんなものは,ミゾゴイとは云わない」という方も居られることと存じますが,千鳥文様や雁紋と同じで,文様なんてこんなものです.

 


【要旨集・ポスター発表,参加者名簿扉絵】
「干潟に河鵜文様」(部分)
描いた生物その1:アマモ,ウミヒルモ,ホソウミニナ,カワウ
描いた生物その2:マテガイ,ツメタガイ,ヒメコザラ,チドリ,ヤマトオサガニ,シオフキ,ウズマキゴカイ,ヤムシ,ホソウミニナ,カワウ.

「鳥屋は鳥しか観ていない」.ベントス学会で,そう云われました.ベントス屋さんは,鳥に喰われる生物である関係で,鳥をよく御存知なのです.

確かに,そのとおりだと感じたので,少し啓蒙を.鳥を観るのもいいが,鳥を養っているピラミッド下の,生物にも関心を持って欲しい.彼らが居なければ,鳥も存在し得ない...

 


【要旨集・扉絵】
「砂浴雀文様」

水浴びにも見えますが,地面の楕円は雀が作った砂浴び痕.要旨集の扉絵は,すべて和更紗風文様仕立てにしてみました.

 


文責 橋口陽子(2008年9月20日掲載)

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