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研究室紹介
自由集会報告
・野鳥を知るための学習教材ー屋内でも環境教育ー (脇坂英弥・桑原和之・西野文智)
・森林性大型猛禽類の採餌環境改善の取り組みとその課題 (前田 琢) ・第13回 ちょっと長めの話を聞く会 (中村雅彦) ・カワウを通して野生生物と人との共存を考える (その11) ーカワウのコロニー管理ー (加藤ななえ) ・日本における稀少海鳥類の現状と保護 (伊藤元裕) 学会参加報告
連載
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立教大学理学部生命理学科 動物生態学研究室杉田典正
研究室概要
大阪生まれの上田先生から連発される冗談によって、研究室には笑いが絶えません。そんな先生はその人柄と学生思いの行動で、皆に慕われています。学生が執筆した論文への添削の素早さや、ゼミでの的確なコメントや思いもよらぬアイデアを披露するなどで皆が感心させられることが多いです。いつも優しい先生ですが、時には厳しい一面を見せるときもあります。 研究室のゼミは、週 1 回 10 月から 3 月の間に行われます。夏の間ゼミが行われないのは、鳥の繁殖期のためほとんどの院生が野外調査中で大学にいないからです。今年度から、春の研究計画、秋の研究中間発表は、立教大の宿泊施設を利用して合宿形式でゼミを行っています。 上田研の論文アウトプットは、末尾のリンクから上田研 HP をご覧下さい。
上田研では、鳥類を材料にした行動生態学研究を行っていますが、研究材料は鳥類ばかりではなく、哺乳類やヒトを対象に研究している人も在籍しており、広い意味では進化生態学・社会生物学を扱う研究室です。過去には昆虫を研究した学生もいます。つまり、自分の研究したい材料・テーマがあって、それを実行するやる気があれば何を研究して良いという方針です。 上田研では、各個人が個別に研究を実行しており、研究室としての明確な研究テーマはないように思われます。ただし、ここ数年間は上田先生と上田研の院生、九州大学の江口和洋さんたちが中心となって、オーストラリアにおける野外調査が進められています。いくつかあるテーマの一つが、ミドリカッコウ類とセンニョムシクイ類の託卵関係の研究です。マングローブ林に生息する2種のセンニョムシクイ類(ハシブトセンニョムシクイとマングローブセンニョムシクイ)は、高頻度でミドリカッコウに託卵をされます。宿主であるセンニョムシクイらは、託卵されると自分自身の子どもを巣立たせることができないので、彼らは巣からミドリカッコウを排除します。このミドリカッコウの排除行動が他の鳥と大きく異なる独特の行動をするのですが、なぜそんな排除行動が進化したのかという点に注目してこのなぞを解明している最中です(詳しくは、近日中に投稿される論文が出版されるのをお待ち下さい)。
上田研ってどうなの?
研究するには文献を収集することが必要です。立教大学で購読されている行動・生態学関連の学術雑誌は少ないためPDF等の電子論文の入手性は低いのです。鳥類学・行動生態学関連の主要雑誌は、上田先生が個人購読されているものを研究室内で自由に閲覧可能ですので、これらの分野であれば閲覧・複写は比較的容易です。他の分野であれば、必要な論文がすぐに手に入らないこともあります。これは、立教大学生命理学科はミクロ系生物学の研究室が多いことと研究より教育に重点を置いているからと考えられます。しかし、最近はネット上で無料公開される論文も増えてきたことから、以前よりこの問題は小さくなっています。どうしても入手できない文献は、図書館経由での一般的な文献複写依頼で取り寄せることになります。または、立地が都内であるという地理的な利点を活かして、直接、他大学の図書館へ複写に行くことも可能です。私立大学の一般的な欠点としては、授業料が高いことがありますですが、これは立教大学では国立大学とあまり差がありません。これについては、次の段落で述べます。
上田研の良いところは、いろいろありますが、特に 2 点を挙げます。まず、研究室の雰囲気のよさが挙げられます。院生の研究上の相談、論文を書いているときのちょっとした分からないところの質問などを、ポスドク・上田先生に気軽に相談でき、適切な返答が期待できるので、院生にとって大変ありがたいです。次に、鳥ゼミという外部から演者を招いての勉強会がほぼ毎月、立教大で開催されることです。鳥ゼミでは、東京近辺の鳥研究者が集まるため、鳥類研究の最新成果の発表を聞く機会が得られ、多くの参加者と議論をすることができます。 まとめると、立教大は研究設備(ネット関連)が弱いが、学生への福利厚生が良い。上田研は院生の数に対してポスドクが多いことと、鳥ゼミで最新の研究成果が聴くことができるため、院生の研究上のつまずきを最小に抑え、研究への動機が維持されやすいという利点があると考えられます。
以上、簡単ですが、大学院生という立場から立教大上田研について紹介をさせていただきました。 |
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野鳥を知るための学習教材ー屋内でも環境教育ー企画:大畑孝二・脇坂英弥・原田修 (財団法人日本野鳥の会 サンクチュアリ室)
西野文智・橋口朝光 (千葉県木質バイオマス新用途開発プロジェクト) 桑原和之 (千葉県立中央博物館) 文:脇坂英弥・桑原和之・西野文智 【はじめに】
野外と屋内のプログラムをうまく関連づけられるプログラムを展開できないだろうか?この環境教育のプログラムを企画できれば、より効果的な環境教育のツールとなるのではないか?それを探るべく、体験的な自由集会を企画しました。
ポスターや口頭発表では、実際に私どもが取り組んでいる活動をうまく説明できないと考えました。自由集会では、野外の観察会でも人気のガンカモをテーマとして取り上げ、環境教育の活動をお互いに紹介してみることとなったのです。屋内で展開しているこのガンカモに関するプログラム2題を紹介し、参加者に実際に体験していただきました。それぞれが、1時間くらいの内容です。 1. 実物大のガンカモをつくろう
最初に千葉県産木質プラスチックの概要を説明しました。そして、阿久津義広さんの指導で希望者にエコデコイの彩色を体験していただきました。色を塗ることで鳥たちのかたちや羽色を自然と意識するようになります。エコデコイは、カモ型のシンプルなデザインであるため、たいていのカモ類に応用できます。5 cm くらいの大きさなので、色塗りも 20 分くらいあれば十分です。楽しみながら鳥類の形態を学べる格好の教材といえます。女性の参加者を中心に大いに盛り上がっていました。これまで開催した講座でも、子供よりむしろ大人、特に女性?の方がこだわって彩色を楽しんでいるようにも感じていました。 【参加者の声】
鳥学会の大会に参加する研究者がどれほど環境教育に興味をもっているのか?果たして本当に参加者は現れるのか?そんな不安を抱きつつ当日を迎えました。ところが蓋を開けてみると約50人の参加がありました。主催者側の予想をはるかに上回る盛り上がりに感激していました。そのため用意していた配布資料が足りず、参加者の皆様にご迷惑をおかけしてしまいました。ふだん鳥類の研究や解析に邁進している参加者も、この日ばかりは童心に返りよい気分転換となったのではないでしょうか? 決して人材が豊富とはいえない鳥類学の世界において、これからは研究活動だけでなく普及・啓発活動も求められるはずです。屋内での環境教育の教材はその一例として紹介しました。今回の自由集会が何かのお役に立つことができれば幸いです。
「ガンカモティーチャーズガイド?身近な野鳥からはじめる環境学習?」に興味のある方はこちらをご覧ください。 http://www.wbsj.org/fukyu/teachers/index.html 財団法人日本野鳥の会のサイトはこちらです。 http://www.wbsj.org 千葉県 HP にバイオマス・プロジェクトやエコデコイの取組みなどを紹介した資料が公開されています。 http://www.pref.chiba.lg.jp/syozoku/e_ichihai/bio/wood.htm#2 エコデコイ、こがもちゃんに関しては、阿久津樹脂工業のサイトをご覧下さい。 http://www.akutsu-jyushi.jp (連絡先:阿久津義広:yujifg8.so-net.ne.jp ) 千葉県立中央博物館のサイトはこちらです。 http://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/ 森林性大型猛禽類の採餌環境改善の取り組みとその課題企画:高橋 誠 (猛禽類保護センター活用協議会)
前田 琢 (岩手県環境保健研究センター) 根本 理 (日本猛禽類研究フォーラム) 文:前田 琢
長期的な保護策の柱となるのは、採餌環境を増やすために森林環境を整えていくことです。管理不足で暗く閉鎖的になった人工林や二次林には間伐を施し、イヌワシやクマタカが餌捕りに使えるような開放的な林に変えていくことが望まれます。なかでも、採餌空間を効率的に供給する効果のある森林整備方法として注目されているのが列状間伐で、各地で試験的な施業が増えています。 しかし、列状間伐地に対する猛禽類や餌動物の反応は場所によって様々で、イヌワシの探餌頻度の増加や餌動物 (ノウサギ) の生息数の持続的な増加につながっていない事例もあります。より効果的に採餌場所を増やしていくためには、列状間伐に関する知見をさらに集めていく必要があります。それには、鳥類研究者のみならず哺乳類、植生等の専門家や森林管理関係者等との連携も重要になってきます。 このようなことから、2008 年 9 月 13 日、東京・立教大学で開かれた日本鳥学会大会において、「森林性大型猛禽類の採餌環境改善の取り組みとその課題: 列状間伐のより効果的な施業を目指して」と題する自由集会を開催しました。列状間伐の事例やその効果、餌動物への影響などについての最新の知見を、6 名の話題提供者が講演し、また、環境および林野行政の担当者や NGO の専門家にも参加頂き、それぞれの立場からコメントをもらいました。会場には 120 名を超える参加者が集まりました。 集会では主催者からの趣旨説明に続き、話題提供者から以下の講演がありました。なお、当日会場で配布した講演要旨は、次のサイトで見ることができます(PDF ファイル:約1MB)。 飯田知彦氏 (広島クマタカ生態研究会)
「東北地方におけるイヌワシ等のための森づくり活動事例と課題: 列状間伐を中心に」 東北地方やその他で実施されているイヌワシのための森林施業の事例を紹介し、とくに山形県・鳥海山麓における取り組みの成果と課題が提示されました。 阿部聖哉氏 (電力中央研究所) 関島恒夫氏 (新潟大学) 辻村千尋氏 (日本自然保護協会) 梨本 真氏 (電力中央研究所) 講演を聞いたコメンテーターや参加者からは、猛禽類だけでなく森林の生物全体を考えて列状間伐を進めることが重要であること、ノウサギの行動と猛禽類の捕食行動の接点を明らかにしていくべきであること、猛禽類の危機的状況を考えると対応を早く実施していく必要があること、林業やその他の産業とも関わりを持ちながら進めていくことなどについて発言がありました。また、林野行政関係者からは、森林施業等との共存を図りつつ採餌環境改善の取り組みを進めたいとのコメントをもらい、環境行政関係者からも一連の取り組みを評価する発言がありました。 最後にコーディネーターが、間伐施業の方法、生物多様性との関係、モニタリング方法などについての課題を整理しながら、列状間伐の取り組みを拡大していくために各方面からの協力が不可欠であることを述べて閉会となりました。 6 題もの話題提供を盛り込んだ当集会は、主催者が心配していたとおり時間不足となり、細かい議論の時間はほとんどとれませんでした。しかし、餌動物の生態や森林植生管理を含めて大型猛禽類の保護を考える初めての集会として、それぞれの専門家が研究・保護の両面において連携し発展するための良い契機となることができたと思います。 受付日2008.10.24 第13回 ちょっと長めの話を聞く会企画・文:中村雅彦 (上越教育大学・生物)
はじめに 創設時の目的 私の目的 今回の発表 研究の原動力 終わりに 受付日2008.10.25 【topに戻る】
カワウを通して野生生物と人との共存を考える (その11) ーカワウのコロニー管理ー企画・文:加藤ななえ (バードリサーチ)
この自由集会を立ち上げてから 11 年経った。その間にもカワウは生息数を増し、分布地域の拡大傾向はいまだ進行中である。カワウはねぐらやコロニーに執着する傾向があるが、個体数が増えたり樹木の枯死が進んだりして生息密度が高くなると、若鳥を中心に分散して周辺に新しいねぐらやコロニーを形成するようになる。それに加えて、各地で行なわれているねぐらやコロニーからの追い出しなどの被害対策が、逆にカワウの分散を加速している要因にもなっているようだ。そこで、今回は、「追い出すだけ」ではなく「被害の軽減と個体群の維持の両立」を目指した管理を行なっている滋賀県と千葉県の現場から情報を提供していただき、コロニーでの問題や対策の整理をおこなうこととした。
管理方針を「追い出し」「許容(管理)」「許容(放置)」と分類し、これまでに各地で行なわれてきた対策事例とその具体的な手法および注意点を紹介した。そして、今後の課題は、以下のように整理された。 ・調査者・対策実施者の確保 ・長期にわたる費用や労力の負担 ・存続可能なコロニーの確保 ・管理方針決定のための合意形成 管理体制をどのようにつくるのか、カワウの追い出し先をどう設定すればよいのか、周辺住民や公園利用者等の理解を得るための努力をどのように行なっていくのかを、それぞれの地域や広域連携の場で探っていかなければならない。
琵琶湖の南東にある半島に位置する伊崎国有林では、およそ1万羽以上のカワウが生息し、樹木の枯死区域の拡大が進んできた。そのため、2004 年より自然再生に関する取組を立ち上げ、ワーキンググループでの検討を重ねてきた。森を 3 つの地域にゾーニングした。「カワウの被害から守る森」と「カワウ被害植生回復の森」ではカワウの進入を許さない対策を行い、「カワウが生活できる森」へ追い込む作戦を展開している。追い払い方法の工夫もさまざま行なわれているが、その中から会場におけるアンケートでも支持の高かったユニークな方法を紹介する。 「カワウと人の共生の森プロジェクト」、副題は「ハイキングで森を守ろう!」。カワウが人の接近を嫌がる性質を利用しようと、営巣のコントロール区間にハイキング歩道を整備した。カワウの生態や被害および緑の森を戻す取組みを紹介したパンフレットも作成した。伊崎の森を訪れた人はハイキングしながら、カワウによる樹木被害への理解を深め、吐き戻しの魚や糞のにおいなどを経験する。かつ、ハイキングのみなさんには、歩道周辺からのカワウの追い出し役をも担ってもらうという作戦である。 「行徳鳥獣保護区のカワウコロニー」蓮尾純子氏 (行徳野鳥観察舎) 発表いただいた伊崎国有林と行徳鳥獣保護区に共通している大切な点は、管理する人の側の体制が整っていることだろう。適正な調査を行ないながら、それぞれの方針のもとにカワウと樹林と人との共生をはかっている。対策事例はもちろんではあるが、このような管理体制と管理者の心意気が、カワウの問題に悩んでいる他の地域への参考になればと思われた。 受付日2008.10.25 【topに戻る】 日本における稀少海鳥類の現状と保護企画:伊藤元裕 (北海道大学)・新妻靖章 (名城大学)
文:伊藤元裕 【はじめに】 【集会の概要】 【発表内容の要約】
2.宮崎のカンムリウミスズメ現状報告 (中村豊 宮崎大学フロンティア科学実験総合センター)
3.天売島におけるウミガラス保護増殖事業 (新村靖 環境省 代理:伊藤 北大)
【まとめ】 受付日2008.10.25 【topに戻る】 |
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ISBE 2008(第12回国際行動生態学会)参加報告上沖正欣 (立教大学理学部生命理学科)
8 月 8 日、成田空港から上田研の森本さん、佐藤さんらと一緒にニューヨークへと出発しました。途中、悪天候のためシカゴに着陸するハプニングなどありましたが、大きな混乱もなく、12 時間ほどのフライトで夜の JFK 空港に降り立ちました。初めてのアメリカ、ニューヨークという素敵な響き。渡米前から胸躍らせていた私ですが、空港から地下鉄で宿のあるマンハッタンの中心部まで向っている間は、閑散としていてアメリカに来たという実感が湧いてきませんでした。しかし駅を上って地上に出た瞬間、「これがニューヨークだ!!」という空気を肌で感じ、そのパワーに圧倒されてしまいました。様々な人種が入り交じる人混み、飛び交う多国語、強烈なネオン、通りを走るイエローキャブ・・・。夜中近いのに活気に満ち溢れていて、長時間のフライトの疲れも吹き飛んでしまいました。宿に着いたのは日付が変わる少し前。明日から始まる日々に思いを巡らせながらベッドに入りました。
ISBE 最終日、上田研からは徳江さんがアカメテリカッコウとセンニョムシクイ類の雛排除について口頭発表を行いました。しかし、最終日の朝一番ということで、会場は閑散としていて少し残念でした。それでも、発表が終わってから徳江さんは質問攻めにあっていて、大きな収穫があったようです。その後日中はコーネル大学の歴史ある建物を見物したり、キャンパスを散策して楽しみました。しかし ISBE 最後の最後、楽しみにしていた晩餐会やダンスというイベントは、とても残念なものでした。映画のようなシーンが繰り広げられるのかと勝手に期待していたのですが(期待しすぎたかも?)、晩餐会はごく普通の食事、ダンスホールはただの小さな部屋で、誰も踊らず立ち話をしているだけ・・・という、かなり拍子抜けする ISBE の終わり方だったのでした。
今回、私は演者として参加はしませんでした。国際学会で発表するなんて、到底無理だと思っていました。しかし、ISBE に参加して思い出したのは、高校生の時に初めて鳥学会で発表した時のことでした。つまり、国際学会だからといって、何も臆することはないということです。次回の ISBE は、2010 年にオーストラリアのパースにある Western Australia 大学で開催されるそうです(http://isbeperth2010.com)。その時には、私も発表することができるように、これからの研究活動を頑張ろうと決意しました。 最後に、ISBE に参加する事を快諾して下さった指導教官である上田恵介教授と、貴重な体験を報告する場を与えて下さった編集者の方々に、お礼申し上げます。有り難うございました。 |
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ダーウィン便り(11):何の祟りか?4 度のパンク江口和洋 (九州大学大学院理学研究院) 4 度ですよ!1 ヶ月ちょっとで 4 度もパンクです.これは,ただごとではない! 私たちの調査地クマリ地区は人里離れたサバンナです.ここで一番恐ろしいのは,毒蛇でも,毒蜘蛛でも,バッファローでもない.車のトラブルです.これまで,何度もトラブルに遭い.そのうちのいくつかは,すでに鳥学通信(第5号)で報告しています.その経験がトラウマになっている(?)という人もいるようですが.それでも,これまでは1調査年度(5 ? 6 ヶ月)に 4 ? 5 回でした.今回は自力で克服不可能なトラブルが 1 ヶ月ちょっとの間に 4 回も起きたから,これは事件です. 一昨年のイシチドリの祟り(?)で車が廃車になってしまったので(鳥学通信第13号),昨年車を買いました.今度は前のような野暮ったいトラックではなく,車底が高くて,ブルバー付き,アルミホイールの幅広,オフロード用タイヤのかっこいいハイラックスです.そのかっこよさに引かれて,ついつい買ってしまったのが,今回のトラブルの伏線です.買った後に,「タイヤが高価そうだなあ.パンクしたら物いりだなあ」と,ちょっとした懸念はありました.その懸念は昨年秋にちょっと現実味を帯びてきました.クマリから帰ろうとしたら,タイヤの一つの空気が抜けています.パンクは想定内と思い,スペアと交換しようとしたら,ホイールが通常のものと違うので,車に搭載の用具が合いません.仕方なく,おっかなびっくりダーウィンまで帰り,タイヤショップに行きました.「OK, 修理するからタイヤを置いていけ.今混んでいるから,2 時間ほどしたら取りに来い.」「いえね,タイヤが外せなかったんです.」ということで,車を置いてゆくはめになりました. その教訓で,ホイールのナット穴に合うレンチを買って,パンクならいつでも来いと準備をしたつもりでした.今回のトラブルが起きるまでは. 今年からニューサウスウェールズ大学出身の川崎典良君がアシスタントでクマリの調査を手伝ってくれています.彼が最初にクマリの神の怒りに触れたようです(?)今年は雨季に暴風が荒れ狂ったらしく,クマリ内では異常に倒木が多く,7 月の仕事始めの時には,1 日に何度も車を降りては倒木をノコギリで切っては除去する作業に追われました.完全に除去できない所は少し道を外れて通過することになります.クマリは東西 5 キロほどの広がりがあり,西の端がハイウエーに接しています.今回のトラブルのうち 3 回は入り口から 4 キロ以上奥に入ったところで起きました.これが,トラブルを悲惨にした原因の一つです. 8 月 13 日,川崎君が東の果ての巣のチェックに行く途中,4 キロほど入ったところでパンクが起きました.倒木を除けて道を外れたときに鉄条網を踏んだのでしょう.パンクは想定内,昨年買ったレンチがある.ところが,このレンチが役立たず.ナットの堅さに負けて,レンチの方が歪んでしまいました.仕方なく,パンクしたまま低速でハイウエーまで出て,通りかかったキャンピングカーでオーストラリア中を旅行してまわっている家族に助けてもらったそうです. 8 月 15 日,新しいタイヤがまだ来ないので,タイヤの1本はスペアをつけたまま,クマリに行きました.クマリの中では無事でしたが,なぜかハイウエーでバーストしてしまい,また,交換することになりました.幸いにも,もともとこの車にはスペアが 2 本付いていたので,もう 1 本のスペアと交換することにしました.ところが,このスペアにまたレンチが合いません.それで,また助けを求めてタイヤを交換して帰着しました. 8月 21 日(この 3 日間は日付が飛んでいるようですが,実は,3 日連続でクマリに行くたびにパンクに遭ったものです!).2 回もパンクすればもう無いだろうと思うのは安心が早すぎた.そして,これが最悪のトラブルであるとは神ならぬ身の知るよしも無いことでした.タイヤも新品になり,レンチも新しく買い,何の懸念もなくクマリに来ました.東の奥の巣のチェックをしての帰りがけ,倒木をまたいだところでまたパンク.レンチも新しいのがあるし,何も心配ない.....ことはなかった.6 個のナットのうち 4 個は外れたが,残りの2個がはずれない.そのうちに,レンチの頭がこわれてしまって,どうしようもない.仕方なく,歩いてハイウエーの側のキャラバンパークまで助けを求めに行ったそうです.パンクが起きたのが 9 時半,自分で奮闘して諦めたのが 15 時,それから歩いて助けを求めて,帰りに着いたのが 18 時半という.ご愁傷様の一言しかありません.現地に行った者でないとわからないとは思いますが,あの酷暑の中を 4 キロ歩くのはつらいですよ.
不幸中の幸いと言えるのは,パンクしたタイヤは皆古かったということで,4 本全部が新しくなりました.古かったからこそパンクしたのかも知れませんが.神様がタイヤの交換時だと示されたのかも.しかし,総額十数万円は痛い!とほほ. 教訓:「安物買いの銭失い」 |
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秋も深まってきました。日々に下がる気温は寒がりの私を憂鬱にさせますが、この季節は高い空、紅葉、新米、きのこなど素晴らしいものばかりが自然から贈られてきて大好きな時期です。そして、少しずつ慌ただしそうになってくる院生達も深まる秋を感じさせてくれます(^^;)。 鳥学通信は、皆様からの原稿投稿・企画をお待ちしております。鳥学会への意見、調査のおもしろグッズ、研究アイデア等、読みたい連載ネタ、なんでもよろしいですので会員のみなさまの原稿・意見をお待ちしています。原稿・意見の投稿は、編集長の百瀬宛 (mailto: ornith_letterslagopus.com) までメールでお願いします。 |
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鳥学通信 No.22 (2008年11月1日) 編集・電子出版:日本鳥学会広報委員会 百瀬 浩(編集長)・山口典之(副編集長)・
天野達也・染谷さやか・高須夫悟・東條一史・時田賢一・和田 岳
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