鳥学通信

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IOC 誘致活動

会員より

海外留学記




IOC 誘致


IOC(国際鳥類学会議)2014の日本開催に向けて

上田恵介(日本鳥学会 IOC 招致委員会委員長)

IOC(国際鳥類学会議)は 4 年に一度、各国の持ち回りで開催されます。前回はハンブルク、来年の第 25 回はブラジルのサンパウロです。日本鳥学会は、その次の 2014 年、第 26 回の会議を日本に招致することを決め、そのための準備を進めています。

現在、招致のために招致委員会が発足し、活動しています。委員会は昨年の大会時と今年の 5 月に 2 回の会合を持ち、委員長に私が、副委員長に永田尚志さんと百瀬浩さんが就任しました。委員は金井裕・尾崎清明・西海功 ・高木昌興・藤田剛・中村雅彦・日野輝明・綿貫豊・藤原宏子・須川恒・高須夫吾の 11 名。また、中村会長の前に IOC の Executive Committee だった樋口広芳さんに委員会の顧問をお願いしました。

IOC のロゴ(シンボルマーク)の鳥は議論の末、ヤマガラに決まりました。会員の藤田薫さんがかわいいロゴを作ってくださいました。今後、このロゴを学会内外で普及していきたいと思っています。

IOC の開催予定地は立教大学(東京・池袋)を予定しています。開催予定日は 2014 年 8 月 18 日(月)?24 日(日)、アジアでは北京に続いて、2 度目の開催です。IOC を日本で開催することで、日本だけでなく、アジア地域の鳥学研究を活性化し、アジア全体の鳥学の国際化をめざすことが大きな目的です。

招致委員会では、現在、立候補に向けての bid (申請書)とプレゼン用のパワーポイントの作成に取り組んでいます。2014 年の会議の開催地は来年のブラジル大会で、IOC 委員会の委員の投票で決定されます。IOC の委員会は 200 名近い委員から構成されています。各国の委員を納得させる、しっかりした提案をしなくてはなりません。また同時に、ブラジル大会に日本から多くのメンバーが参加することも大切です。ブラジル大会への参加申し込みは、下記のウェブサイトからできます。
http://www.ib.usp.br/25ioc/

2014 年 IOC 日本開催に向けて、来年のブラジル大会への多くの若い研究者の参加と、今後の招致活動への会員の皆様のご協力をお願いいたします。

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受付日 2009.08.11


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会員より


高音域が聞こえない

松田道生(立教大学兼任講師、(財)日本野鳥の会評議員)

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ヤブサメのさえずりの声紋。「シシシ・・・」と聞こえるさえずり。音の中心は 8,000Hz、高い部分は、10,000Hz 近い。
 ヤブサメの声が聞こえなくなってしばらくたちます。

 私は、1991 年から栃木県日光に通っています。日光はヤブサメが多く、藪の中から聞こえてくる虫のようなさえずりを聞くと初夏の訪れを感じました。しかし、2000 年あたりから日光ではヤブサメを聞くこと少なくなり、減ってしまったと思っていました。私が 50 歳になった時です。

この頃、探鳥地ガイドの取材で檜原都民の森に行ったとき、同行した 40 歳代の編集者が「ヤブサメが鳴いている」と教えてくれました。しかし、私には聞こえません。「また、私を年寄り扱いして...」と、持っていたマイクと録音機を通してヘッドホーンで聞くとヤブサメ特有の「シシシシ...」というさえずりが聞こえます。録音機を通すことで音が増幅され、聞こえたのです。それまで日光のヤブサメが減ったと思ったのは間違い、私の耳が悪くなっていたことがわかり愕然といたしました。

 その後、毎年受けている人間ドックのメニューに耳の検査が加わり、そこでも高音域が聞こえていないというマークが付くようになりました。ヤブサメのさえずりは、8,000Hz-10,000Hz にあります。人は 20Hz-20,000Hz まで聞こえると言われていますから、ヤブサメのさえずりは人に十分聞こえる音域にあります。

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アオジの地鳴きの声紋。「チッ」と聞こえる声。音の中心は 8,000Hz 付近で、高い部分は 10,000Hz を越えている。
 今でもヤブサメのさえずりが、まったく聞こえないわけではありません。近くで鳴いてくれれば、わかります。また、いっしょにいるカミさんや鳥仲間がヤブサメが鳴いていると教えてくれて、耳を澄ませば聞こえることもあります。要するに高い音は大きくないと、あるいは近くでないと聞きづらくなっているのです。

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ミソサザイのさえずりの声紋。複雑で抑揚に富んだ金属的なさえずり。低い部分は 3,500Hz くらいだが、高い部分は 10,000Hz を越えている。
 高い声で鳴く鳥は、ヤブサメばかりではありません。最近では、アオジの地鳴きも同行者によって教えてもらえることがあります。また、センサスの記録がアオジやクロジは C (地鳴きの記録)から V (視認記録)が多くなっていることにも気がつきました。アオジの地鳴きも 8,000Hz 以上あり、これも聞きづらくなっています。

 また、ミソサザイのさえずりは 4,000-8,000Hz と幅広く、高音域まで広がっています。この高音域の部分が聞こえなくなってくることになります。mp3 などの音を圧縮したファイル形式は、人の声の音域のない高音域をカットしています。そのため、野鳥の声を mp3 に変換すると高音域がカットされ不自然な声になってしまいます。それと同じように聞いているのです。

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さえずるミソサザイ。この小さな身体からよくあれだけの声量と複雑なさえずりがだせるものだ。
 老眼になるのは比較的気がつく症状です。新聞が読みにくいなど日常生活に支障ができるからです。私は「清棲図鑑」の文献リストの小さな活字が読みづらくなったのを機会に老眼鏡を購入しました。しかし、高音域が聞こえなくなる症状は、なかなか気がつきません。人の話し声が 100-500Hz の音域にあり、ふだんの日常会話では困らないからでしょう。

 しかし、ボーカルコミュニケーションを行う鳥類の調査や研究を行う場合、鳴き声による記録がたいへん重要になります。私の場合、25 年続けている六義園のセンサス調査のデータが環境の変化よりも自分の調査能力の要因のほうが大きく作用する事態になりかねません。また、定年退職後に鳥類の調査や研究にいそしむ方がいた場合、あるいは調査員として参加してもらう場合も、聴力チェックが必要となるでしょう。鳥類の研究も高年齢化に対しての対応を考えないといけない時代になったと思います。

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越冬地のアオジ。ささやくような地鳴きは、冬の林でよく聞くことができる。
 私は仕事上、高音が聞こえないということはたいへん差し障りがあるので先日、病院に行き検査を受けました。大病院ですから、検査を受けるだけで 1 時間待たされました。さらに、先生の診察で呼び出されるまで 1 時間。検査の結果は案の定、耳の能力は 4,000Hz あたりから急に落ちています。そして、先生は「自然の摂理ですからしょうがないですね」というコメント。要するに年をとったのだからあきらめろと言うことなのでしょう。診察室の前で待っているなかには小学生もいて、親とのコミュニケーションは身振り手振りです。それに比べれば人の声が聞こえる私は、たいしたことのない患者ということになります。

 2 時間待って診察は 1 分間で終わりそうです。これではもったいないと「先生、これ以上、耳を悪くしないためにはどうしたら良いでしょうか」と、私はたずねました。すると先生は「自然のなかで自然の音を聞けばよろしい」。ということで、さらに仕事をしなくてはならなくなりました。

松田道生の録音と野鳥の声に関するサイト
野鳥録音の方法からエッセイ、考証。文献やレコードのリストの他、管理者が執筆した「野鳥大鑑」に未収録の野鳥の声などが聞ける。投稿された謎の鳥の声を聞いて、状況から種名を推理するのも面白い。BBS では、録音機の新機種など最新情報が寄せられている。



受付日 2009.06.24


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海外留学記


アマノノニッキ in ケンブリッジ (3)

天野達也 (農業環境技術研究所)

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通学途中の風景.
 試験が終わり帰省した大学生に代わって、ケンブリッジの街はヨーロッパ各国からの観光客やサマースクールに参加する学生たちでにぎわっています。1カ月弱の予定で家族と旅行に出かけた受入れ教官のビルのように長期休暇を取る人も多く、大学や関連研究機関も少々静かになったような気がします。自分はと言えばいよいよ帰国まで一カ月を切り、こちらでの仕事のまとめや帰国の準備が慌ただしくなってきました。

 改めて振り返って見たイギリス滞在中の経験の中で、英語によるコミュニケーションは言うまでもなく最も大きな比重を占めていたと感じています。それは同時に、日常生活でどれだけ周りの人と話す機会があるのか、否が応でも意識させられる経験でもありました。朝に同僚達と交わす挨拶、ティールームやパブでの会話、研究室セミナー前の雑談。研究内容を相談し合ったり、とりとめもない同僚の失敗談を聞いたり、ちょっとしたことで意見を聞かれたり。セミナーで発表しても、同僚とサッカーを見に行っても、学会に参加しても、そこに待ち受けるのは会話、会話、会話。その度に、何を話そうかと焦る気持ち、言いたいことをうまく伝えられないもどかしさ、そんな感情がうっ積して、全く苦痛でなかったかと言えば嘘になります。

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大学最古のピーターハウスカレッジ.
 ただその苦痛も裏を返せば貴重な特権だと考えられるのは、少しは余裕が出てきた今だからでしょうか。物心つく前から話していた言語で日常生活を送る同僚達の中で、いつものティールームに行くだけでもスリルを感じる自分。RSPB でセミナー発表をするなどに至ってはちょっとしたアドベンチャーです。不安や苦痛もある分、いつも通じなかったカフェでの「ブラック・コーヒー」が通じた時の喜びや、同僚達と何気ない会話を何気なく済ませた時の達成感は何倍にも大きく感じられました。もちろん研究室には英語が母国語でないメンバーもたくさんいて、それぞれが研究や生活上の悩みを抱えて過ごしているのは間違いないのですが、このメンバーの中で自分ほどの起伏に富んだ一年間を歩んできた人はなかなかいないだろうと思います。

その英語で多くの人とコミュニケーションすることで進めてきたこちらでの研究も、一年が経過して少しずつ形になり始めています。出版された共著論文や、執筆中の原稿に同僚達と並んでいる名前は、喜怒哀楽に満ちたこの一年間の成果をまぎれもなく示していて、これまでこちらで撮りためたどの写真よりも自分にとって大切なものとなりました。

今日もまた、小さな達成感と、感じ慣れた敗北感の交錯した一日が終わりました。今後も英語を母国語のように流暢に操れる日が来ることはないでしょう。しかし、英語一つで驚くほど広がる自分の世界を求めて、拙い会話を行っていく日は今後も続いていくことと思います。学位を取った直後に「留学はしないの?」と聞かれ、「行きません」と答えていた三年前の自分をふと思い出しました。今振り返ればあの時、少しも考えずに留学という選択肢を捨てていた自分の考え方こそが、最も高い「英語の壁」だったのではないかなと考えています。その壁の存在に気づいたことが、今回の滞在で得られた最も大きな収穫の一つなのかもしれません。



受付日 2009.08.07


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編集後記


鳥学通信第 25 号をお届けします。執筆者のスケジュールの都合で、発刊が遅れましたことをお詫び申し上げます。ご多忙中記事をお寄せいただいた執筆者の皆様にお礼を申し上げます。定期の発行を維持するためにも、会員の皆様からの投稿をぜひよろしくお願い致します。皆様が保護/研究を行っているフィールドや活動内容のご紹介など、様々な内容の記事をお待ちしております。 (編集長)



 鳥学通信は、皆様からの原稿投稿・企画をお待ちしております。鳥学会への意見、調査のおもしろグッズ、研究アイデア等、読みたい連載ネタ、なんでもよろしいですので会員のみなさまの原稿・意見をお待ちしています。原稿・意見の投稿は、編集担当者宛 (ornith_letterslagopus.com) までメールでお願いします。
 鳥学通信は、2月,5月,8月,11月の1日に定期号を発行します。臨時号は、原稿が集まり次第、随時、発行します。







鳥学通信 No.25 (2009年8月12日)
編集・電子出版:日本鳥学会広報委員会
百瀬 浩 (編集長)・山口典之 (副編集長)・
天野達也・染谷さやか・高須夫悟・東條一史・時田賢一・和田 岳
Copyright (C) 2005-09 Ornithological Society of Japan

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