巻末資料6

 

National Wildlife Health Center/鳥インフルエンザ

鳥インフルエンザと野鳥に関するQ&A

                                 (翻訳;渡辺ユキ)

鳥インフルエンザについて以下のURLから情報が得られます。

1.  米国地質調査局 野生動物疾病マニュアル;野鳥の病気と野外での一般処置

  (http://www.nwhc.usgs.gov/pub_metadata/field_manual/chapter_22.pdf)

2.  Pro Med 医学検索 (http://www.promedmail.org/pls/askus/f?p=2400:1000)

3.  野生生物医学検索

(http://lists.services.wisc.edu:81/cgi-bin/lyris.pl?visit=wildlifehealth&id=237265307)

4.  世界保健機構(WHO) (http://www.who.int/csr/disease/avian_influenza/en/)

5.  国連食糧農業機関(FAO)

(http://www.fao.org/ag/againfo/subjects/en/health/diseases-cards/special_avian.html)

6.  世界獣疫機構(OIE) (http://www.oie.int/downld/AVIAN%20INFLUENZA/A_AI-Asia.htm)

7.  疾病管理センター(CDC)  (http://www.cdc.gov/flu/avian/index.htm)

8.  米国農務省  (http://www.aphis.usda.gov/lpa/issues/ai/ai.html)

 

1.アジアでの鳥インフルエンザ(AI)のことを知りました。野鳥個体群に危険がありますか?

2004年に鳥インフルエンザは、アジアの少なくとも9ヶ国で、養鶏と飼育アヒルの集団に検出されました。アジアの家禽群で感染のあったほとんどの亜型(“strain”とも言う)はH5N1でした。この亜型は養鶏では高度な病原性があり、しばしばHPAI(高病原性鳥インフルエンザ)と呼ばれています。これまでのAIの流行は、これらの高病原株によるものも含めて、普通は野鳥に影響していません。現在アジアで発生しているH5N1のHPAI亜型ウイルスは、何種類かの野鳥、即ち日本とタイのカラス、香港のハヤブサ、タイの動物園の水鳥(種不明)やスキハシコウ、などについて報告されています。これらの地域の何ヶ所かでは野鳥からAIウィルスを検出するための調査が行われています。

2.AIウィルスをアジアから北米に運ぶ渡り鳥の可能性とは?

アジアと北米からの渡り鳥の夏の繁殖地は、アラスカやロシア極東で重なるので、渡り鳥によってHPAI H5N1ウイルスが北米へ運ばれる可能性が完全にないとは言えません。しかし、そういった鳥の数や分散が相対的に少ないので、HPAIに感染した鳥が長距離に渡りウイルスを運び、さらに他の渡り鳥群に感染させる能力には遠く、こういう可能性はあまりありません。事実野鳥がアジアでHPAIを広げているという証拠はまだありません。

3.鳥インフルエンザ発生が最近北米でありました。流行における野鳥の役割はなんですか?

2004年に鳥インフルエンザは、アメリカおよびブリティッシュコロンビア(カナダ)の5州の家禽で検出されました。アジアで発生したAIのH5N1亜型は北米では発生していませんが、他のいくつかの亜型は流行しました。2ヶ所での発生がHPAI株(テキサスのH5N2とブリティッシュコロンビアのH7N3の亜型)でしたが、他は低病原性株の鳥インフルエンザウイルス(LPAI)と同定されました。北米で流行したすべてのAIは制圧されています。

野鳥、とくにカモとシギ・チドリ、はAIウィルスの主な保有源です。野鳥の個体群では多くのAIウィルスの亜型(“strains”)が循環しています。しかしこれらは野鳥にはほとんど疾病を起こしません。2004年の北米のどの家禽の発生地でも、野鳥が影響を受けている事は報告されていません。野鳥が家禽にAIを運びこむ可能性はあり、家禽群ではウイルスが突然変異をおこし、病気や死亡を起こすより重篤な株へと変異します。一旦AIが家禽に感染して突然変異した後、変異ウイルスが野鳥に2次感染して、それを野鳥が運搬するという証拠はありません。家禽間での感染は一般に、感染した家禽とその生産品、汚染した器具、餌、人、その他の物品等の移動によって起こります。

. 北米のAIが家禽で見つかった地域に住んでいます。野鳥を呼び寄せたり餌や水をやるのを止めるべきですか?

鳥の餌台や水浴び盤を空にすべき理由はありません。鳥インフルエンザウイルスは、主としてカモやシギ・チドリで検出されます。庭によく見られる小鳥(コマドリ、アオカケス、カーディナル、コガラ、ウソなど)にではありません。これらの野鳥が家禽にAIを運ぶ重要な役割をするとは考えられません。一般論としては、野鳥に他の病気が広がることや、人共通感染症(サルモネラなど)のリスクを減らす為に、鳥の餌台や水浴び盤の常識的な手入れや掃除は必要です。鳥の餌台に関連する疾病や予防対策についての情報は以下。

http://www.nwhc.usgs.gov/whats_new/fact_sheet/fact_birdfeeder.html.

5.野鳥を呼び寄せたり餌を与えることで鳥インフルエンザに感染する危険が高くなりますか?

人のAIの感染は非常にまれであり、特に北米ではそうです。人のAI感染例はすべて家禽やその糞便への接触に関係していると報告されています。野鳥やその糞便と接触して人のAIが起きたと報告された事はありません。覚えていなくてはいけないことは、野鳥や野生動物から人へ感染する病気(サルモネラなど)は、他にもいくつもあると言う事です。糞便で汚れているので、餌台や水盤などの器具を取り扱った後にはいつでも適切な衛生管理(手を洗うなど)をするべきです。

6.庭や近所で病気か死んでいる鳥を見つけました。鳥インフルエンザの懸念がありますか?

鳥インフルエンザは、一般に野鳥では病気を起こしません。家禽でのAIの症状は非特異的です。報告のある症状の多くは、元気消失、脆弱、呼吸器症状(咳、くしゃみ、努力呼吸、鼻汁)、下痢などです。他にも色々な疾病がAIと似た症状を示します。農薬暴露(殺虫剤など)、他のウィルス(西ナイルウィルスなど)、細菌(サルモネラ症など)、真菌(アスペルギルス症など)、寄生虫などです。死因の特定は専門知識をもった獣医師や野生生物官が行うべきです。

7.たくさんの鳥が死んでいるのを見つけたらどうすればいいですか?

集団で死んでいる鳥を見つけたら、州か連邦野生生物局(米国魚類野生動物局、州野生生物局、自然資源局)、または地方の公衆衛生局か、動物管理局に連絡してください。

. 死んでいる鳥はどのように扱えばいいですか?

州野生生物局または公衆衛生局が死体の廃棄に助言してくれます。病気や死んでいる動物を扱う時には、(最低限)ゴム手袋かビニール袋で手を覆い、そのあとすぐに適切な衛生管理(手を洗うなど)を行うことが推奨されます。死亡鳥の扱いの詳しいガイドラインは以下を参照。

http://www.nwhc.usgs.gov/research/west_nile/wnv_guidelines.html

. 野生生物学者で(又はバンダー、リハビリテーター)野鳥を日常的に扱います。鳥インフルエンザの感染について考慮すべきですか?

生きた野鳥から人に鳥インフルエンザが直接感染するという証拠はありません。野鳥が運ぶ可能性のある感染症は、他にも色々あります。扱っている種や行う仕事の性質によって、手袋、フェイスマスク、ゴーグルなどの様々な保護対策を個人個人考慮するべきです。最低限の適切な衛生管理は必要です。野鳥を扱うためのNWHCガイドラインは、北米への西ナイルウィルス侵入に際し作成されたものに近いものです。ガイドラインは以下にあります。

 http://www.nwhc.usgs.gov/research/west_nile/wnv_guidelines.html

10. 鶏を飼育しています。どうしたらいいですか?

米国農務省、疾病管理予防センター、世界保健機構のような専門機関は、鳥インフルエンザの新しい亜型が野鳥から鶏へ感染する可能性を減らす為に、鶏と野鳥(特に水鳥)の直接、間接の接触を最小限にするように勧めています。鶏の疾病の情報や予防対策の基準については、米国農務省

  http://www.aphis.usda.gov/lpa/pub/fsheet_faq_notice/fs_ahlpai.html

疾病対策センター http://www.cdc.gov/influenza/bird/index.htm  などにあります。

11. ハンターとして狩猟した鳥を食べることはどう考えればいいですか?

人が感染した狩猟鳥を食べてAIを起こすという証拠はありません。人の鳥インフルエンザはまれです。現在までの報告例はすべて、感染した家禽やその排泄物への接触によるものです。野鳥が運ぶ可能性のある他の潜在的感染症の拡大を防ぐために、肉は適切に処理し、充分に火を通すべきです。死体や鮮肉を扱った後にはいつも適切な衛生管理(手を洗うなど)が必要です。

12. 犬や猫は感染した鳥を食べて鳥インフルエンザにかかりますか?

アジア(HPAI H5N1)では、感染した鶏を与えられた動物園の飼育ネコ類(ウンピョウ、トラ)や飼い猫などに、鳥インフルエンザの感染が報告されましたが、北米で発生した鳥インフルエンザの亜型は犬と猫での感染は報告されていません。飼っている犬や猫が病気になったら、まず獣医師に相談してください。

13. 鳥インフルエンザを蔓延させないために野鳥を殺すべきですか?

野鳥が国内の家禽にAIを拡大させるとか、人への感染に重要な役割をもっているという証拠はありません。AI流行の拡大や人間への感染を防ぐ為に、野鳥を駆除することは適切ではありません。詳細は次の国連食糧農業機関(FAO)のページを見てください。

http://www.fao.org/newsroom/en/news/2004/37427/index.html

14. 野鳥をAIから守るためのワクチンがありますか?

鶏の予防注射に使えるAIワクチンがあります。このワクチンはAI感染をコントロールし防疫するために多くの家禽で使われました。このワクチンは野鳥ではテストされていませんので、野鳥での安全性や効果は未知です。野鳥では様々なAIの亜型があるので、予防注射をしてもAIは無くならないし、家禽飼育管理上での今後の流行を防ぐこともないでしょう。

 

http://www.nwhc.usgs.gov/research/avian_influenza/FAQ_avian_influenza.html

NWHCの好意により掲載. 19 Apr. 2004

 


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