鳥学通信 no. 30 (2010.11.5発行)

 

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日本鳥学会・伊藤基金による第25回国際鳥類会議派遣者による参加報告報告

  • 松井 晋
  • 森口 紗千子
  • 森 さやか

第25回IOCブラジル大会に参加して(伊藤基金による派遣)

立教大学 松井 晋

第25回国際鳥類学会議(25th International Ornithological Congress: IOC)に,日本鳥学会から伊藤基金による派遣助成を受け,参加できたことに感謝致します.次号の日本鳥学会誌のフォーラムに,研究に関する内容を中心にIOC参加報告を記すことに先立ち,本稿では国際会議に参加する楽しみのひとつであるエクスカーションと現地の自然や文化に触れた体験について報告します.

ブラジルのサンパウロ空港に到着したとき,腹に違和感を覚えていた.長時間のフライトによる疲れがあったが,乗り継ぎのニューアーク空港構内のバーで食べたサンドウィッチが原因かもしれない.もしくは,その店に入る前に入口でメニューをみていたら,スーツ姿の若い客の一人が ‘Has go on!’といって中に招いてくれたので,それに気をよくして少し飲みすぎたのが影響したのかもしれない.日本では腹の具合を悪くすることはめったにないが,海外に行くときには,薬は必需品だと痛感した.

サンパウロについたのは現地時間で8月21日の朝.そこから会場まではバスで数時間かかる.森さやかさんが旅行会社にかけあってくれたお陰で,会場のあるカンポスドジョルダンに向かう前に,サンパウロに立ち寄ることができた.

サンパウロは活気に満ち溢れていた.日系人も多く,「丸海」というスーパーでは味噌,醤油,寿司,日本のお菓子(例えば,柿の種)をはじめ,日本酒,焼酎,泡盛も売っていた.途中で立ち寄った,屋外にテントを並べた市場では,日系ブラジル人のおばさんが,日本語で魚の説明をしてくれた.中村司先生は店員から積極的に話しかけられており,珍しいブラジルの果物を味見しながら,熱心に写真を撮られていた.こんなに楽しい所にいるのに,歩くだけで腹痛を感じ始めたので内心はらはらしていたが,徳江紀穂子さんから正露丸をもらい,何とか持ちこたえた.カンポスドジョルダンについたのは,この日の夕方で,季節が日本とは逆で冬ということもあり,標高1500m以上に位置する会場付近は,夜になると冷え込んだ.

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写真1:サンパウロの魚屋の日本語が上手なおばさん.

 

翌朝,体調が回復してひと安心する.学会期間中はほぼ毎朝,高木昌興先生と会場周辺で鳥を見ながら散歩するのが日課となった.ナンヨウスギが優占する林には,着生植物が多く付着しており,その周囲で亜鳴禽類が鳴いている.このような光景に,南米大陸に来たなと改めて実感できた.キスカディーの声は朝の散歩の時に最もよく耳にした.キスカディーの名は,その声が由来しているようで,ヒヨドリを連想させる大きな声が,朝の林に幾分やかましく響いていた.この印象的な声は,会議の中で発表が始まる合図に使われていた.

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写真2:面白い樹形のナンヨウスギの仲間.
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写真3:鳴き声が特徴的なGreat Kiskadee.

 

発表内容は多岐にわたり,例えばポスター発表の区分は,行動生態学・進化生物学・マクロ生態学・個体群生態学・群集および景観生態学・形態および発生・分子生物学・集団遺伝学・生物地理学・渡り・保全などの分野に分かれていた.私は南大東島におけるモズの雛の鳥マラリア感染に関する研究成果をポスターで発表した.オランダ・台湾・ブラジルなどの研究者が発表に関心をもってくれた.欧米では鳥マラリア感染に関する研究が進んでいるが,アジアではあまり研究例がない.このような現状で,台湾の研究者は,自国の鳥類で鳥マラリア感染の調査を実施したいといっていたので,今後アジアの研究者と共同研究する機会を作っていきたいと感じた.

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写真4:ポスター発表の様子.

最近注目されている研究課題で,自分のテーマとも関連しそうなものとして,抱卵期の子育てコストに関する研究がある.この一見古典的とも思える研究は,実は最近まであまり注目されてこなかったようで,Olson CR & Nilsson JA が主催する「生活史進化や抱卵行動に鳥類の胚が果たす役割」と題されたシンポジウムは大変面白かった.Baker AJ & Edwards S が主催するシンポジウム「鳥類の系統樹を解明する」の中で発表していた,Ericson Pの陸生鳥類における生態的適応の平行進化に関する研究も興味深かった.詳細は次号の日本鳥学会誌のフォーラムで紹介したい.

会議の中日にあるエクスカーションでは,会場の近くにある州立公園のツアーに参加した.John C. Wingfield,Ian Newton,Chris M. Perrinsなどの有名な研究者も同じツアーだ.ツアーといっても,バスで現地にいった後は自由行動で,全く鳥の解説がなかったのは残念だった.見つけた鳥は,日本から持参したブラジルの鳥図鑑を頼りに識別した.セキレイのような白と黒のツートンカラーの鳥を見つけたので双眼鏡でよく観察してみると,タイランチョウの一種(Masked Water-tyrant)だ!日本では鳴禽類が占めるニッチを亜鳴禽類が占有していることを目の当たりにできたことは大きな収穫だった.昼食は州立公園内のレストランで,現地で養殖しているトラウト(マスの仲間)を食べて,ビールを飲んだ.昼間に飲むビールは最高で,一緒に参加した高木先生や堀江明香さんらと,昼食後は公園の芝生で昼寝した.そんな風に気楽に行動していた結果,帰りのバスに乗り遅れてしまった.ツアーのバスが参加者を置き去りにするなんて!と嘆きつつ,運転の荒い路線バスに揺られてホテルまで戻った.

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写真5:州立公園でのエクスカーション.
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写真6:セキレイに似た亜鳴禽類Masked Water-tyrant(撮影:堀江明香氏).

大会期間中,スタッフによって面白い企画が考案されていた.「鳥の鳴きまねコンテスト」は各国の若者を集めたクラブイベントのような企画で,世界にはダンスのうまい研究者が沢山いることに驚いた.夜10時から開演だったのだが,コンテストが始まった夜中の12時頃だった.アジアから唯一出場した外山雅大さんがシマフクロウの声をステージ上で披露して盛り上がった.別の企画として,会場のボランティアスタッフが秘密裏に行っていたのは,参加者の中で最もナイスな男性と女性,そして髭の持ち主を選んで表彰する企画だ.ナイスな髭の持ち主には,左右対称にカールした髭が特徴的なJan-Ake Nilsson氏(アオガラの研究で有名)が選ばれた.ナイスな男性には日本人女性の参加者に人気だったブラットピット似のカッコウの研究者もノミネートされたが,別の若い研究者が選ばれた.ナイスな女性に選ばれたのは可愛らしい若い研究者で,後で自分の撮った写真を見返すと,最もナイスな女性しか撮っていなかったことに気づいた.

会議後半の夜,「鳥類の生活史の地理変異:概念と技術の発展・挑戦・解決」と題するラウンドテーブルに参加した.椅子を円形に並べて皆で向かい合って座り,特定のテーマについて二時間議論していたのだが,視覚情報がなく会話のみから内容を把握しなければいけないので大変だった.私は熱帯と温帯の鳥類の生活史形質の違いに感染症が及ぼす影響に関心があるので,その話題がでることを期待していたが,その議論はほとんどなかった.巣箱による調査では捕食圧の地理変異が正しく測れないことや,研究者が連携して調査することの重要性が主に話題になっていたようだが,ほとんど議論についていけなかった.

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写真7:ラウンドテーブルで議論している様子.

 

今回の大会では日本からの参加者も多く,樋口先生のプレナリー講演,綿貫先生や高須先生らが主催したシンポジウム,若手研究者の口頭発表,多くのポスター発表など,日本人研究者からの刺激も大きかった.四年後の国際鳥類学会議の日本開催を控え,英語力の向上やより広い視野から自分の研究を位置づけることなど,克服すべき課題も多くみつかった.

大会終了後,ブラジルとアルゼンチンの国境に位置するイグアス国立公園の自然観察ツアーに参加した.イグアスの滝の迫力は想像以上で,滝から生じる上昇気流にのって,クロコンドル20-30羽が群れており,コンドル柱とでもいえそうな光景だった.滝周辺ではオオハシやブラックバードの仲間が比較的普通に見られたのが驚きだった.バードパークでは,日本ではあまり馴染みのないシギダチョウ類(シギダチョウ目),サケビドリ(カモ目),ホウカンチョウ類(キジ目),従来ツル目と思われていたノガンモドキ(ノガンモドキ目)などを間近に観察できた.日本から遠く離れたブラジルは,再び訪れたい魅力的な国だった.


受付日2010.10.28
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IOCに参加して(伊藤基金による派遣)

国立環境研究所 森口 紗千子

IOCへの参加は4年前のドイツ大会に続き、2回目になります。前回大会で次回開催地がブラジルに決まり、そんなめったに行けない国なら行ってみたいと思い参加しました。しかし地球の裏側まで行けるような先立つものもない中、幸いにも伊藤基金のIOC派遣助成を受けることができ、貴重な経験を積む機会を与えていただきました。ありがとうございました。

会場となった都市カンポス・ジョルダンはブラジルのスイスと呼ばれる高原のリゾート地です。街並みもヨーロッパ調で、チョコレートやチーズフォンデュ、ソーセージや地ビールが名物のようです。山の上ということもあって寒暖の差は激しく、日中汗をかくほど日差しが強いのに、夜はコートが必要なくらい寒い地域でした。ブラジル人にとっては寒さを楽しみに訪れる場所らしく、1ケタ台の気温の中、夕食は外のテラスで震えながら食べるのが基本でした。治安が悪いといわれるブラジルですが、この街は高級リゾートということもあり、とても快適に過ごすことができました。また、小さな街にIOC参加者が集まっているため、屋根にとまっているインコがいれば双眼鏡やカメラを携えた人々が群がり、一般客からみればさぞかし怪しい集団だったことでしょう。

前回はポスターで発表しましたが、お目当てのガン類研究者どころか日本人以外は数人にしかまともに説明できなかったので、次の機会があれば口頭発表にしようと思っていました。口頭発表はテーマごとにセッションが設定されており、それぞれのセッションで5人が発表しました。「日本と韓国におけるマガンの遺伝的構造」が私の発表テーマなので、「集団遺伝学と系統地理学」のセッションに振り分けられました。セッションの開始前に発表者が全員集まり、発表者の一人である座長が紹介用に全員の名前の発音を確認します。発表前の緊張の中、最前列でみんな並んで待っているからでしょうか。同じセッションの発表者の間に妙な連帯感ができ、目が合うとみんなニヤリとしていました。類似したテーマの発表者が集まるので、全員の発表終了後に研究内容について質問し合うのも、ポスターでは得られない体験でした。そして、質問してくださった聴衆の1人が他の人と話し終えるまで待ってくださっていて、話をしてみたら同じマガンの研究者でした。名札を見ると、マガンの研究を始めた修士の頃から何本も論文を読み、参考にしてきた研究者で、「あなたの論文読みました。」と伝えると、「私もあなたの論文読みましたよ。」と言ってもらえました。思いがけないうれしい瞬間でした。その後、街で買い物をしているときにも別の初対面の方からもいい発表だったと声をかけられたりして、反響の大きさにちょっとびっくりしました。

学会では、保全管理や渡りの生態、外来種の影響、そして遺伝的構造に関する研究を中心に見て回りました。遺伝的構造を解明する研究は多く、特に広範囲でサンプリングした渡り鳥の遺伝的構造に関する研究がとても参考になりました。留鳥では行動範囲が限られるため、狭い地域でも複数の遺伝集団が形成されます。しかし、カモやシギなどの渡り鳥は広範囲を移動するため、渡りにより毎年移動する南北方向だけでなく、東西方向でも何千キロという規模で遺伝集団が同一であり、交流があることが示されていました。今まで自分の研究で日本と韓国の遺伝集団が同じであることがどのくらい確かなのかわからないところがありましたが、長距離を移動する渡り鳥ではそれが一般的であることを知り、ようやく少し自信がもてました。
 エクスカーションではItatiana国立公園のツアーに参加しました。バスで2時間移動し、公園内のビジターセンター前で降ろされました。バスを降りる前の説明は、11時-14時の間に4km林道をのぼった先のホテルで昼食をとること、バスは16時になったらここを出発すること。以上、説明終わり。ガイドもおらず、かといって地図を渡されるわけでもなく、どこまで続くかわからない林道を歩き始めました。すでにビジターセンターの前から多くの鳥を観察でき、期待感が膨らみました。林道を歩くと、照葉樹、針葉樹、広葉樹、竹、ヤシ、寄生植物と日本ではありえない多様な種が森林を構成していました。同様に鳥の種類も多く、時折林道沿いに姿を現す鳥に飽きることはありませんでした。レストランではテラスに設置されている餌台に数種類のハチドリや小鳥類が物怖じせずにやってきては楽しませてくれました。そして、日本の名だたる先生方が見たり写真を撮ったりした鳥をお互いに披露する姿は少年のようでした。

この大会で、4年後のIOCは日本に決定しました。欧米の方々からは「行ったことがないから楽しみだ」、また、アジアの方々からは「近くで開催されてうれしい」、という声を聞きました。大会中、日本人の参加者同士で、エクスカーションはどこにしようかとか、チャイム代わりの鳥の声は何がいいだろうとか考えるのも楽しいひと時でした。今回の経験を生かし、海外からの参加者が安心して楽しんでもらえるような、そして日本からもたくさんの方々が参加し、発表する大会になるよう、微力ながらお手伝いできればと思います。

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カンポス・ジョルダンの街を見下ろす展望台へ
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カンポス・ジョルダンの街並み
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エンビセアオマイコドリ
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餌台にやってきたハチドリ
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ヒワミツドリ

 


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第25回 国際鳥類学会議 参加体験談(伊藤基金による派遣)

東京大学大学院・日本野鳥の会 森 さやか

このたび,鳥学会から伊藤基金による派遣助成をいただき,地球の真裏のブラジルで開催された第25回国際鳥類学会議(以下IOC)に参加してきました.

私にとって,今回のIOCは4年前にドイツのハンブルグで開催された第24回IOCに続いて2回目の参加でした.実は,前回は伊藤基金に落選したにもかかわらず,鳥学通信NO.9に,ずいぶん硬い文面の感想文を書いています.4年前に比べると成長したのでしょうか?2回目ともなると私も結構ほぐれてきました.前回は結局,東京大学内の助成金をいただいて渡航することができましたが,今回はついに伊藤基金の支援を受けることができました.助成金で交通費と滞在費の大部分を賄うことができ,大変感謝しております.この場をお借りして心からお礼申し上げます.

さて,第25回IOCはブラジルのカンポス ド ジョルダン(Campos do Jordao) という聞き慣れない街で2010年8月22-28日に開催されました.この街はサンパウロ州にあります.サンパウロと言えば,世界的にも治安がかなり悪いことで有名ですので,私は4月くらいから慎重に準備をはじめました.色々調べているうち,この街はサンパウロから直線距離で北東に150kmほど,車で3-4時間の場所にあり,宿はどこも随分高いということが分かってきました.大会開催中は夜も出歩くので,会場に近い方がよいですし,誰かと同じ宿の方が安心です.そこで,ちょっと高めの4人部屋にエクストラベッドを2台入れて女性6人でシェアするという奇策を思いつきました.早々にメンバーは集まり,おかげで素敵な宿にビジネスホテル並みの費用で泊まり,新旧の友人と濃い交流をしつつ,楽しい日々を過ごせました.

実際にカンポス ド ジョルダンを訪れてみると,思い描いていたブラジルとはだいぶ違う景観で,とても安全な街でした.この街は1,500mを超える高地にあり,ブラジルのスイスと呼ばれている高級リゾート地だそうです.町並みはまさにスイスのイメージ,スイス風の大きなホテルや,コテージのような小さなかわいいホテル,立派な別荘,オープンテラス付きのレストラン,やや高級なショッピングモールなどが立ち並び,レストランの料理もスイス風やドイツ風で,おいしい日本料理店もありました.少し残念なのは,そのせいでブラジル料理を食べる機会がほとんどなかったことです.

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カンポス ド ジョルダンの会場周辺

 

サンパウロからカンポス ド ジョルダンまでの交通手段の手配も一筋縄ではいきませんでした.大会事務局が用意した国際空港からカンポス ド ジョルダンまでの送迎バスは1日に3本しかありませんでした.しかも,我々の到着の直前にバスが出てしまい,約6時間後まで次の便がありません….路線バスを利用するのも難しく,事務局に増発はできないかとメールを出すも返事は一向にありませんでした.そこで,バスをチャーターし,ついでに日本語ガイド付きで数時間サンパウロの市内見物をしてから,夜にカンポス ド ジョルダンのホテルまで送り届けてもらい,かつ学会終了後も夜カンポス ド ジョルダンまで迎えに来てサンパウロの空港近くのホテルまで送り届けてくれという欲張りプランを現地の旅行会社に提案,交渉したところ,結構格安で手配してもらえました.ガイドさんの親切な案内で,都心にある大聖堂や,カラフルな野菜や果物,様々な魚や肉が並び陽気な市場,日本の物が何でもそろいそうな日本人街などをトラブルなく堪能できました.

こう言った感じで,会場まで辿り着く手段と,宿泊先の手配,そして帰りの手配も済んだところで,私は結構燃え尽きました.準備を通して,これまであまりお付き合いのなかった方たちも含めて,老若男女11名の日本の研究者のみなさんと交流を持てたので,IOCの目的の半分くらいは達成したような気分になりました.そんなわけで,発表の準備はずいぶんぎりぎりになってしまいました(本末転倒).

今回,私は国際学会では初めての口頭発表に挑戦しました.発表内容は「移入マツの結実量と冬の厳しさに影響されるアカゲラの繁殖個体群動態」にしました.プレゼンと発表原稿は,出国直前に出来たつもりでいましたが,いざ発表練習してみると時間が長すぎました.そのため,行きの飛行機内や現地のホテルで,同行のみなさんにもご協力いただいて発表直前まで改訂にいそしむことになりました.

私の発表会場は割と小さな部屋でした.まず,発表開始の10分以上前から最前列でキツツキの図鑑も手掛けるHans Winklerさんが待ち構えてくれていました.発表が始まるころには会場は満席となり,立ち見の方も結構いらっしゃって緊張感も倍増.発表本番は,つっかからずに話しても制限時間ぎりぎりになりそうでしたので,不本意ながら原稿を読みました.でも,イラストやグラフを多用したプレゼンで,自慢のアカゲラが動いた時に「おぉ」とどよめきが起こったのには,してやったりでした.発表時間はぎりぎりになったとしても,質疑応答を聴衆の面前でする自信はないので好都合か?と思いきや,みなさんの改訂へのご協力のかいあって,質問出来る時間が普通に出来てしまいました.座長の問いかけに,白い立派なヒゲのおじいさんがすっと手を挙げました,「やばいっ…」たじろいだ私でしたが,その顔は満面の笑みだったそうです.応援に来てくださった日本のみなさん曰く,余裕の表情あるいはとてもうれしそうだと思ったと….しかし案の定,質問をよく聞きとれず,一応答えましたが,永田尚志さん曰く90度くらいずれた答えだったそうです.180度はずれてなかったので,まあよしとすることにします….発表が終わった後,私の答えでよかったのか,お席まで一応フォローしにいきましたし….ヒゲのおじいさんの正体は,カラ類の研究で有名なArie J. van Noordwijkさんでした.

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口頭発表「やばい」の瞬間

 

発表後には,Winklerさんをはじめ,海外の主にキツツキや樹洞の研究者の方々に,何度か声をかけていただけました.前回IOCの発表に比べると今回は中身のある発表ができたため,前回よりも興味を持ってくださった方が多かったようで,うれしかったです.ポーランドの原生林におけるキツツキ類の個体数変動のポスター発表していたDorota Czeszczewikさんからは,心強いお話を聞けました.私の発表では,個体群パラメータの年変動とそれをもたらす要因について議論しましたが,1年に1回のデータしか取れないので,反復が少ないのが気にかかっていました.でも,ポーランドのアカゲラでも,定量的なデータはないものの,長年の観察から,感覚的には私が考えているような傾向がありそうだということで,自分の結果に自信を深めました.

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エクスカーションで行ったItatiaia国立公園で砂糖水のフィーダーに来たハチドリ

 

前回のハンブルグ大会では,キツツキのラウンドテーブルがあり,多くの欧米のキツツキ研究者とお会いすることができましたが,今回の大会では,キツツキだけでなく樹洞利用の研究のシンポジウムがあったのが個人的には目玉でした.私が帯広でアカゲラを調査対象に選んだのも,森林生態系における樹洞提供者であるという点に研究の発展可能性を感じたからです.日本では,まだ研究が少ない分野ですし,今後はこうした視点で樹洞を利用する動物群集とアカゲラの果たしている役割についての研究もしていきたいと思いました.樹洞に関連した研究をしている欧米や国内の若手研究者と,一緒に語り合ったことを今後の研究活動に実際に活かしていきたいです.

学会の後は,世界3大瀑布のひとつであるイグアスの滝にも寄ってきました.ブラジルとアルゼンチンの両側からの眺めを楽しみ,最後はボートで滝壺に突っ込み,ずぶぬれになってはしゃぎました.鳥もたくさん見られました.学会中日のエクスカーションと合わせて,今回の旅では4種類ものキツツキを見ることができました.ちょうど造巣期だったようで,巣作りの様子も観察できたのはラッキーでした.でも,世間の大半の方は,かわいらしいハチドリやユーモラスな姿のオオハシ類,カラフルな小鳥たちに最も感動するところでしょう.

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ボートでイグアスで2番目に大きい滝壺に突入

 

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イグアスの鳥類園で見たオニオオハシのユーモラスな寝姿

 

 

そんなわけで,依然として発表能力,英会話能力に課題は残されていますが,前回よりは格段に,IOCを自分の物に出来た実感がありました.次回大会は2014年に日本で開催されることになりましたので,ホスト国の若手研究者として,大会の成功に貢献できるよう,研究も英語の練習も引き続きコツコツやっていきたいと思っています.学会のみなさまには,今後ともご指導よろしくお願いします.



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刺激に満ちたIOCブラジル大会

立教大学 徳江紀穂子

IOC(国際鳥学会)がブラジルで開かれると知ってから、絶対に参加するぞ!と決意していた。小さい頃から海外で育ったため、東南アジア・アメリカ・オーストラリアには住んだ経験があるが南米にはまだ一度も行ったことがなかった。そのため発表の準備よりも、初南米上陸にドキドキ・ワクワクしていたのだ。

成田を9月2日の午後3時に出発。サンパウロまでニューヨーク経由で地球の反対側を目指した。約2日後、飛行機の窓から見える濃い緑の大地は、想像していたブラジルそのものだった。2009年フランスで開催されたIEC参加の際もフランス語には悩まされたが、ブラジルでもポルトガル語に悩まされることになった。1週間の滞在でだいぶん単語は覚えたが、それよりもジェスチャーの上達のほうが早かった気がする・・・

サンパウロから陸路で2時間半、着いた学会会場Campos do Jordaoは、ブラジルのスイスと言われるだけあってかわいらしいヨーロッパ調の町だった。一般的なブラジルのイメージとは少し違うかもしれない。

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泊まった宿

 

IOCの参加は初めてだが、国際学会での口頭発表は6回目となる。周囲は、「海外経験が豊富」というイメージからか、「発表に不安を抱いている」と言ってもあまり信じて貰えなかった。大会2日目には、カッコウのシンポジウムが行われた。論文でしか見たことのない名前の研究者達が同じ会場にいることが夢のように感じられた。カッコウ研究者達に「君たちの研究を知っているよ」と言われ、社交辞令だろうと思いながらも素直に嬉しくなってしまった。さらに運の良いことに、シンポジウムの後の昼食会で発表の宣伝をする機会にも恵まれた。そして、発表本番の日がやってきた。1年前のIEC(フランス大会)の発表では、緊張のあまり喉がカラカラになってしまった。その教訓から、今回は発表前に水を買ったが、その水を最後の練習をするために戻った宿に置いてきてしまうという、オッチョコチョイの本領発揮。再び買いに走るはめに・・・

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カッコウ研究者達と

今回の発表(マングローブセンニョムシクイによるアカメテリカッコウの雛排除)のメインは、なんといってもビデオだ。ビデオや音声ファイルの再生でのハプニングは、学会に参加すると必ずと言って良いほど遭遇する。そんな不安から、2日前に発表のファイルを会場のコンピューターで動作チェックをした。さらに心配性の私は、当日の発表2時間前にも再度動作チェックをしていたのだ。

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IOCメイン会場

 

できるだけのことはやったと信じて、発表を始めた。最初のスライド、アカメテリカッコウの雛が宿主の卵を排除するビデオを紹介しようとすると・・・ビデオの部分が真っ黒。とっさに、ビデオはとばして、次のスライドへ進めようとクリックすると今度は、全画面ブラックアウト・・・私の頭の中は、真っ白になった。とりあえず、この導入部のビデオはおまけだったのだから、最悪このままスライドなしで話さなければならないか?と思ったその時、画面が戻ってきた。そして、順調に発表を続け、もっとも重要な宿主がカッコウの雛を排除する瞬間のビデオは、問題なくみせることができた。

このハプニングで私の心臓にも「産毛」くらい生えたかもしれない。発表を聞いていてくれたカッコウ研究者からは、ハプニングにも落ち着いて対応していたように思うとコメントをもらった。今回IOCに参加して、大会のプレナリーが行われた会場で発表をする貴重な経験も得たし、各国の鳥研究者がどんな研究をしているのかを研究者本人から聞く良い機会でもあった。
そしてIOC閉会後は、仲間達とイグアスの滝をブラジルそしてアルゼンチン側からも眺め、体感する経験もできた。滝の音を体で感じるだけでなく実際にボートに乗って滝の「水しぶき」(殆どバケツをひっくり返したような大量の水)にうたれるツアーに参加したためだ。ブラジルの滝の水は、何故かちょっぴり、しょっぱく感じられた。そして、2日間イグアス周辺の観光を楽しんだ後、帰国した。「一生忘れる事がないだろう思い出」を作ることができた素晴らしい10日間だった。

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Campos do Jordaoの町
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イグアスの滝

 

 

受付日2010.10.22【topに戻る


第25回国際鳥学会に参加して

新潟大学 布野隆之

2010年8月22日から8月28日にかけて、南米のブラジルにおいて第25回国際鳥学会(International Ornithological Congress)が開催されました。みなさんご存じのとおり、ブラジルという国は日本の裏側に位置しており、地球上で日本から最も遠い国となります。私はこれまで海外旅行というものに全く興味がなく、海外の国々を遠い存在のように思っており、当然のことながら、自分が日本の裏側の国に行くことなど想像したこともありませんでした。しかしながら、いざ、海外に渡航してみると、日本からニューヨークまでのフライト時間が約14時間であり、さらに、プラス14時間のフライトで、あっという間に日本の裏側に行けるという事実を知り、海外は一気に身近な存在へと変わりました。ちなみに、私にとって14時間という移動時間は、現在私が住んでいる新潟から実家の島根県までの移動時間と同じであり、実家に帰る感覚でニューヨークやブラジルに行けたということが、海外を身近に感じさせた一因と思っています(写真1)。

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写真1.意外と身近だったブラジル。写真は学会会場付近の町並み

 

さて、ブラジルに到着した時点で、海外というものは身近な存在へと大きく変わった訳ですが、その後も海外をさらに身近に感じる出来事の連続であり、今まで感じていた海外との距離感は今回の旅によって完全に崩壊してしまいました。その中で特に驚いたことは、ブラジルの方をはじめ多くの国々の人が、まるで友達のように気さくに声かけてくることと、そして、こちらからも声をかけやすいということでした。日本人の感覚からすると、初対面の人に対しては遠慮しがちですが、彼らとのコミュニケーションには一切の遠慮はいらなかったため、初対面の時から常に友達に話しかける感覚で会話できることは、とても驚きであったと同時に、海外を身近に感じさせる最大の要因となりました。

上述のように、この旅でのコミュニケーションには一切の遠慮はなかったため、いろいろなところで気さくな会話が楽しめました。例えば、学会会場の近くにあるオープンカフェでは、店のご主人がカプチーノと一緒にお店で一番おすすめのチョコレートを私にサービスしながら、とてもうれしそうに「ガールフレンドに買って行かないのか?」と笑顔で話しかけてきました。そのような時には「じゃあ、この店のチョコレートが全部必要だね。」と笑顔で返してあげると、「よし!わかった!!」と言わんばかりにさらに笑顔が返ってきました。その後もこの店では、ご主人との会話がはずみ、お気に入りの店として毎日通うこととなりました。もちろん、学会期間の最終日には、ご主人へのお礼の意味を込めて、ご主人おすすめのチョコレートをたくさん購入しました(写真2)。今回の旅では、どこに行ってもこのような気さくな人達ばかりで、会話の最後には、とても素敵な笑顔と親指を立てるポーズが返ってきました。子供からお婆ちゃんまで、本当にたくさんの人達とふれ合う機会に恵まれしたが、みんな友達のように親しく私に接してくれたことは、この旅での大切な思い出です。そして、言うまでもなく、もっと英語力があればより楽しくコミュニケーションがはかれるはずなので、今後は、さらに英語力を高め、もっと会話を楽しみたいと思いました。

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写真2.カプチーノとご主人おすすめのチョコレート。最終日にこのチョコレートを購入し、お店のカップとソーサー(非売品)も譲ってもらった

 

さて、ここからは本題の国際学会に参加した感想です。この章では、学会会場での私の奮闘ぶりを披露させて頂くと共に、今回の国際学会から見えてきた課題を中心に記述させて頂きたいと思います。今回の国際学会では、私はポスター部門にエントリーし、2日間で合計4時間のポスター発表を行いました。発表時間を通して、おおよそ60人の方に私のポスター説明を聞いてもらいましたが、当然、そのうちの殆どの人は、たまたま私のポスターの前を通りすがっただけであり、私の研究対象であるイヌワシという種名をかろうじて知っているどうかという人が大半を占めていました。従って、今回の発表では、予備知識のない人達に私の研究内容を理解してもらい、さらに興味をもってもらえるのかどうかがポスターを説明する上で最も大切なポイントとなりました。そこで私は、研究の問題設定と結果の要点をとにかくシンプルに説明し、説明時間も1分-3分以内にすることにしました。これは、イヌワシに対する予備知識のない聞き手を飽きさせずに、しかも簡単に研究内容を把握してもらうための私なりの工夫であり、その工夫がとても効果的であったことは、ポスターの説明終了後、多くの聞き手から頂いた様々な質問や意見、そして賞賛の言葉が実証してくれたと思います。そして、頂いた質問や意見を基に、ディスカッションや研究の将来展望へと話が発展した時は、とても楽しく、充実感に満ちた瞬間でした。これが国際学会での楽しさの一つであり、次回もより良い結果を持って学会に参加し、世界中の鳥類研究者と意見交換したいと思いました(写真3)。

一方、今回の国際学会から見えてきた課題は、他人の研究について議論する時の私の英語力にあると思いました。先述した自分の研究ついての議論とは異なり、他人の研究について議論する場合は、他人の英語を瞬時に理解する読解力に加え、自分の意見をすぐさま英語で伝える能力も必要となります。つまり、英語で瞬時にやりとりできる能力がなければ、他人の研究について快適に議論することはできない訳です。当然のことながら、私の英語力はそれほど高くないため、学会会場では快適に議論できないストレスと屈辱感でいっぱいでした。例えば、ポスター会場では、興味深い研究内容があっても、ぜいぜい1回の質疑応答が精一杯であり、そこから話を掘り下げて議論することは全くできませんでした。また、複数の人が議論しているポスターの前では、会話のスピードに全くついて行けず、その場の議論に一切参加することが出来ませんでした。いずれの場合も、日本語であれば何の問題もなく議論できる内容でしたが、私の今の英語力では議論が全くできないという現実を知り、本当に悔しかったです。

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写真3.ポスターの前で記念写真。撮影後も多くの方々との意見交換を楽しみました

 

今後は、議論に必要な英語力を高め、2014年に日本で開催される国際鳥学会の参加報告では、各国の鳥類研究者との興味深かった議論の内容について、皆さんに楽しく報告できるようになりたいと思います。

 

受付日2010.10.14【topに戻る

 


日本鳥学会2010年度大会自由集会・和文論文をスムーズに掲載する方法2 - 実践!査読対応

国立科学博物館・自然教育園 濱尾章二

研究の成果や新分布事例の観察は、論文として発表されることで意味を持つ。しかし、論文を書き慣れていないと、学術雑誌に投稿することは敷居が高いと感じられることも多い。そこで、投稿経験が少ない方に投稿のしかたや査読コメントへの対応のしかたを伝え、不要な手間を省き、またストレスなく掲載に至る道をたどって頂こうという趣旨で、昨年に引き続き集会を企画した(昨年の報告は鳥学通信26号をご覧下さい)。

今年は、投稿やその後の改訂でつまずきとなりやすい査読制度について理解を深めてもらうとともに、査読対応の仕方を考えた。話題提供者はそれぞれ山階鳥類学雑誌(浅井)、日本鳥学会誌(濱尾)、Strix・Bird Research(植田)の編集に深く関わってきた人である(内容はそれぞれの雑誌にしか当てはまらないというものではない)。

1. 査読とは? 浅井芝樹(山階鳥類研究所)

査読とは何か、コメントはどうとらえるべきかが説明された。特に、査読コメントは異議を感じる場合であっても、改善に活かしうることが強調された。さらに、原稿の「はじめに」「方法」「結果」「考察」で犯しやすい間違いについても詳しく説明された。
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2. 改訂稿と説明文書の作り方 濱尾章二(国立科学博物館・自然教育園)

査読コメントは一般に問題点を指摘し、改善方法を示すという構造になっている。問題の指摘、改善策それぞれについて著者が同意する場合としない場合について、対応の仕方が例をあげて説明された。
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3. 査読対応の実際、心構え 植田睦之(バードリサーチ)

査読コメントを受け取ったら、どのような心構えで、実際にどのように改訂すればよいのかが具体的に説明された。他者のコメントは自身で気付かない原稿の問題点を指摘してくれること、誠実に一つ一つの指摘に対応すべきことなどが述べられた。
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いずれの話題提供者も共通して述べたことをまとめておく。
・査読コメントは腹立たしく思えるが、冷静にとらえる
・一つ一つのコメントにどのように対応したかを具体的に説明した対応文書を作る
・査読コメントは同意できない点があっても、原稿の改善に活かしうる(例えば、誤解に基づくコメントでも、誤解を招かないように表現を改めるために役立つ)
・コメントに対応して書き直すことで原稿は改善される。恐れず対応しよう(恐れず投稿しよう)

集会には30余名の方が参加され、却下(リジェクト)の判定がなされる可能性、二名の査読者のコメントが対立した場合の対応などについて、時間一杯まで活発に質疑・意見が交わされた。

鳥学会は鳥を材料に科学を行う者の集まりである。自由集会も科学を中心にすえたものであるのが本来の姿だろう。今回の集会のように「手」のようなものを伝えたり、保全の活動自体を扱ったりする集会は、必要な場合はあるもののやはり「色物」と言えるだろう。研究のテーマや手法を掲げた集会が活発に企画され、学問について議論が交わされる方向をもう少し目指したいと思う。二年に渡り、論文発表に役立てて頂きたいと自由集会を企画したが、今年でひとまず閉じたい。参加下さった皆さんに感謝し、少しでも多くの研究成果が論文として公刊されることを願う。

 

 

受付日2010.10.7【topに戻る

 


編集後記:今号は、伊藤基金派遣者3名と一般参加の2名の方によるIOC 2010 ブラジル大会の報告と、日本鳥学会2010年度大会での自由集会の報告の6本の記事をお届けしました(編集長)。

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鳥学通信 No.30 (2010年11月5日)
編集・電子出版:日本鳥学会広報委員会
高須夫悟(編集長)・百瀬浩(副編集長)
天野達也・東條一史・時田賢一
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