鳥学通信 no. 32 (2011.5.6発行)
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「小林平一コレクション目録・鳥類編」刊行・公開の紹介黒田治男
◎ 兵庫県姫路市で、故小林平一さんが、収集された昆虫、鳥、獣や化石、岩石などの膨大な標本を平成17年に姫路科学館が収蔵しました。その後、「小林平一コレクション目録 」として鳥類のみ整理され、発行の公開となりましたので紹介します。 また、目録の製本部数が少なく配布先は、主に図書館、博物館であり、個人への目録配布の予定はないので、閲覧はホームページにより、平成23年2月14日から公開されました。(PDFファイルのダウンロード可) なお、標本の利用希望の場合は学術研究目的で許可されています。 ◎ 標本利用での注意 ◎目録内容の補足 ◎ 小林平一さんの鳥の標本について 小林平一さんのことや標本のことについては、ほとんどの人がご存じないと思われ、この場を借りて紹介していきたいと思います。 私が、故小林平一さんの名前を知ったのは、姫路周辺で鳥の好きそうな人々が活動する「西播愛鳥会(昭和41年発足)」に中学生のとき入会後、何度か探鳥会に参加する内に、この会の名誉会長として耳にしたことです。 その後、姫路科学館へ標本が収蔵される前から、文献として、鳥獣集報で「八丈島の鳥について」(Vol.16, No.1 June, 1957)を、また、本では「消えた翼 湿原の女神コウノトリ」を出版されている藤本勉さんから小林平一さんのことを簡単にお聞きしたことがありました。小林平一さんは、標本を集める際には、のちに研究にも役立つような集め方で当時の文献を参考に分類されていることや、種によっては個体数が多く、雌雄もかならず自分で確認し標本を作成されているという話しでした。そのときはまだ、あまり気にとめていなかったのですが、去年に、標本の整理途中の収蔵庫に入ることができるようになり、いくつか抽斗を開け、その標本の数や並びに圧倒されました。 その後、もっとくわしく藤本勉さんにお話しをお聞きしているうちに1冊の本「瓦に生きる - 鬼瓦師・小林平一の世界」を渡されました。その本の中の小林平一さんのことばとして「今現在の博物館では、だめなんです・・・ある専門の者が辞めて次に別の専門家になったら、その分野は全然進歩しません。」(p65第一章 半生の話)という内容から、現在の姫路科学館に収蔵されても、ほとんどの鳥の研究者が知らなかったら進歩しないのではないかと思い込み、少しでも標本の利用があるよう、みなさんに呼びかけるようになりました。 少し、話しがずれてきましたが、ざっと収蔵庫を見た感じを紹介します。 標本(仮剥製)は、ほとんどが木製の標本ダンスに収納されたままです。姫路科学館に収蔵されてから整理前に一部段ボールに山積みだったものがありますが、現在は、スチールケースに整理されています。(木製のタンスは、高価で購入できないため) 木製の標本ダンスの鳥のすべては、故小林平一さん個人が標本を収納し、並べられたままの状態で保管されています。抽斗の並びも小林さん流の並べ方なので、種を調べるときは、抽斗番号を科学館の担当者に聞くか、もしくは抽斗を担当者に出してもらわなければなりません。
去年より、一部の人に標本の利用を呼びかけたところ、東京からK.I氏がキツツキ類の測定に来られました。 そのときの様子からお話します。まず、事前に測定する種の標本数を確認し、日程を調整したのち当日は、2日間の測定をおこないました。そのときは、コゲラだけでも90羽、オオアカゲラでも84羽を測定対象としていました。 それ以外にセグロコゲラ23羽(台湾)などすべては測定しませんでしたが、この2日間の測定で要する時間は余裕が無いほど数がありました。キツツキ類でいうと上記以外には、クマゲラ(北海道:18)、アカゲラ(北海道と本州を合わせて:70,韓国:16)、ヤマゲラ(北海道:41,台湾:10,韓国:14)、アオゲラ(本州:14)などの数が揃っており、本剥製ではありますが、「キタタキ」も1羽見ることができます。ただ、残念なのは、ノグチゲラの標本がないことです。 また、今年に入り東京からS.H氏が猛禽類の測定に来られたときも事前に種数を確認し、姫路科学館の担当の方が準備していただいていたので、ハチクマ10羽、クマタカ21羽、オオタカ26羽、サシバ33羽、ノスリ13羽の中から吟味して測定と写真撮影を実施し、ほぼ1日で測定が終わりました。 当時はまだ、目録が作成されていなかったので、事前に姫路科学館の担当者と対応しながら日程調整をおこない、作業の効率を考えながら測定作業をしていました。その後、目録も作成され、ダウンロードで確認できるようになり、「標本の利用(p251)」についての姫路科学館への対応も掲載されているため、研究への利用で対応しやすくなったので活用していってもらいたいと思います。 その他の種で私の感じたことを述べますと、ウグイス(本州:5)、イイジマウグイス1954とハチジョウウグイス1962(八丈島:6)、シナウグイス(台湾:8)、チョウセンウグイス(台湾:4,韓国:60)など、また、年代は不明でしたが奄美大島(2)のウグイスも見られ、本州、八丈島、奄美大島のウグイスが閲覧できたり、各国ごとでの比較が見られます。 また、日本国内のメジロでは、メジロ(北海道:7,奈良:1,兵庫:13,佐賀:2)、シチトウメジロ(八丈島:4)、リュウキュウメジロ(奄美大島: 11)などで台湾のヒメメジロ(10)、韓国(4)と各国ごとの比較や日本国内でも北海道から九州や八丈島、奄美大島などの特化した地域の比較で標本を見られることができます。 これらは、私の感想でもあり実際の研究で標本を見たり計測する場合はその目的に応じて閲覧、測定を進めていただければよいかと思います。 これまで、仮剥製について述べてきましたが、本剥製については、写真にあるようにひと部屋にぎっしり納められています。ただ、本剥製のラベルについては、採集日や採集場所などの記載がほとんどされていません。 標本の収集方法では、当時、兵庫県の鳥の研究者で採集許可を持っていた人は、小林桂助さんと重田芳夫さんと小林平一さんの3人おられ、そのうち、小林平一さんだけは一年間フリーパスのライセンスの許可を農林省で受けていました。そのためほとんど自分でも採集し、昭和23年頃から十年くらいです。「瓦に生きる - 鬼瓦師・小林平一の世界」参照 それ以外に藤本勉さんにお聞きしたところ、東京・上野に標本屋があってそこからも購入していたそうです。また、北海道の苫小牧付近の鳥の収集には、どのように連絡をとったのかはわかりませんが、折居彪二郎さんにお願いして1950年以降の鳥を送ってもらっていたようです。写真は、タンチョウ旅行(1969年)で北海道に行ったとき、帰る途中に苫小牧に住んでおられた折居彪二郎さん宅に立ち寄り撮影されたものです。 台湾の標本については、蝶類と合わせ鳥の採集をするため5年間で100回ぐらい通われたそうです。藤本勉さんも同行されたときの話しを聞くと、台湾の中央部の宿に泊まり、当時は、台湾で狩猟する先住民でないと鳥を集めることができなかったため、その先住民と交渉し、採集してもらい、宿でさばいて日本に持ち帰ったということです。韓国については、藤本勉さんは同行されたことがないのでくわしい話しを聞くことが出来ませんでしたが、5年で50回ぐらい行かれたそうです。「瓦に生きる - 鬼瓦師・小林平一の世界」参照 姫路科学館の鳥の標本「小林平一コレクション目録」について、私なりの説明で不十分なところもただありますが、少しでも参考にしていただき、鳥の研究の進歩にもつなげていってもらいたいと思います。 最後に、姫路科学館に収蔵された「小林平一コレクション」の整理途中にもかかわらず収蔵庫の閲覧をさせていただいた担当の三谷さんや小林平一さんと特に親しい間柄の藤本勉さんには、写真や昔のお話しを聞かせていただき深く感謝申し上げます。 小林平一さんの鳥の標本で参考にしたもの
受付日2011.3.22
【topに戻る】 報告・鳥の学校(第4回テーマ別講習会)「鳥の鳴き声を分析しよう」企画委員会 吉田保志子
鳥の学校?テーマ別講習会?では、鳥学会員および会員外の専門家を講師として迎え、会員のレベルアップに役立つ講演や実習を行っている。第4回は鳥の鳴き声の分析方法をテーマとして、2010年度大会の翌日9月21日に、食と農の科学館(つくば市)において行われた。参加者は39名であった。 午前は、音声分析の理論および鳥の鳴き声の特徴や録音についての講義があり、午後は音声ファイルの編集や処理の方法、サウンドスペクトログラム(声紋)の表示や音声の合成方法について、Rなどの無料のソフトウェアを使い、各自持参のパソコンで実習を行った。
実習で用いた音声ファイル (wav): 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7 参加者からは、講義がわかりやすくて良かったという声が多く、「音の性質やデジタル化など、今までよくわからなかったことが今回理解できた」「音声の分析の全体像がわかった」等の感想があった。実習は時間に対して内容が多めだったこともあり、Rを使うのが初めての方からは難しかったという声があったが、「フリーソフトで音声解析を始めるやり方を学べた」「スクリプト例で使い方が体験できて良かった」等の感想があった。 (講師)百瀬浩 鳥の学校?テーマ別講習会?は、今後も大会に接続した日程で、さまざまなテーマで開催する予定である。案内は、学会ホームページや学会誌に掲載する。 (企画委員会) |
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受付日2011.4.30【topに戻る】
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編集後記:今号は、黒田会員による「小林平一コレクション目録・鳥類編」刊行・公開の紹介と、日本鳥学会2010年度大会での鳥の学校の報告1本の合計2本の記事をお届けしました(編集長)
鳥学通信は、皆様からの原稿投稿・企画をお待ちしております。鳥学会への意見、調査のおもしろグッズ、研究アイデア等、読みたい連載ネタ、なんでもよろしいですので会員のみなさまの原稿・意見をお待ちしています。原稿・意見の投稿は、編集担当者宛 (ornith_letterslagopus.com) までメールでお願いします。 |
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鳥学通信 No.31 (2011年2月5日) 編集・電子出版:日本鳥学会広報委員会 高須夫悟(編集長)・百瀬浩(副編集長)
天野達也・東條一史・時田賢一
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