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飛び立つ!

野外調査のTips

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飛び立つ!


「博物館人類学担当、藤田です」

藤田祐樹 (沖縄県立博物館)

この春から沖縄県立博物館の学芸員として働いております。担当は人類学です。本当です。嘘だと思ったら県博にお電話ください。タイトルのように応対します。今まで内緒にしていましたが、私はもともと東大理学部の人類学教室出身で、二足歩行の研究で学位論文を書いています。え?対象種?ヒトとハトでしたが何か?

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写真1. 沖縄出土の人骨をクリーニングする筆者.いかにも学芸員らしい.
 この4年間、東大樋口研でお世話になり、思う存分鳥の運動の研究をやらせていただきました。首振りとか歩き方とか木登りとか、そんな趣味的な自由気ままな研究を、思うままに好きなだけやれる幸せな時間を過ごさせていただきました。しかし私も、そろそろ少しオトナにならなくてはいけない時期がきたようです。そうして私は、南の島へ旅立ちました。青い海、白い砂浜、やんばるの自然、そして沖縄は、化石の宝庫でもあるのです!ああ、たいへん魅力的なこの土地で、私は果たしてオトナになれるのでしょうか。

 沖縄県博では、自然史展示の一部、人類学の企画展、沖縄出土の化石標本のキュレーティング(写真1)、人類学的な発掘調査の実施(写真2)などを当面は担当します。実は、発掘調査は昨年度より動き始めていて、絶滅したリュウキュウジカやリュウキュウムカシキョンの化石が多数見つかっています。そこで現在は、その分析にも取り組んでいます。古生物学はこれまでも興味を持っていましたが、過去にいた動物を調べることは、過去の環境や地形の変化を知ることにつながります。断片的な化石から当時のようすを探るのは、難しいことが多いですが、実に興味深く、毎日が刺激的です。現在の鳥類相や動物相の成り立ちを知るためにも、古生物学は重要な分野だと痛感している今日このごろです。

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写真2. 沖縄県南城市の洞窟で化石の調査をする筆者.いかにも人類学者らしい.
 さて、私の勤務する沖縄県立博物館は、首里城の近くにあった旧博物館が昨年より閉館しており、那覇市の「おもろまち」という沖縄でいちばんオシャレな街に、2007年11月に新館がオープンします。現在はまだ内装工事をしている状況ですが、沖縄の自然や、琉球列島の成り立ち、古生物、民俗、文化、そして、沖縄出土の古人骨である港川人の特別展などを開催する予定です。こどもたちの体験学習コーナーを充実させたり、参加型のイベントもこれからどんどん実施していく予定です。みなさま、沖縄本島へおこしのさいには、ぜひとも当館へお立ち寄りください。

 え?首振りですか?もちろん続けますよ。運動研究は僕の研究者としての出発点ですから、初心を忘れずに、暇を見つけて、あるいは時間を無理に捻出してでも続けていきます。あわよくば、首振り展示なんかもできるんじゃなかろうかと、無謀なこともひそかにたくらんでいたりして…。やりたいことには、何でも取り組む。さふいふ人に、私はなりたひ。



受付日2007.04.17


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医学部でだって鳥類学

江田真毅 (鳥取大学・医学部・機能形態統御学講座)

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アホウドリの骨を採集する筆者.
今年の4月から鳥取大学医学部・機能形態統御学講座・形態解析学研究室に助教として勤務しています。職場は、冬季にはたくさんの水鳥で賑わう中海のほとり、鳥取県の米子市にあります。私の所属する研究室は医者の卵である医学生を対象とした解剖学の座学と実習を担当しています。また、山陰地方の遺跡から出土したヒトや動物の骨の分析も手掛けています。ニュースで大きく取り上げられた鳥取市の青谷上寺地遺跡の弥生人の脳は、こちらの研究室での分析によって発見されました。

 振り返れば大学も学部もともに4つ目となりました。大学は筑波大学の人文学類、大学院は東京大学の農学生命科学研究科、ポスドクは九州大学の比較社会文化研究院、そして現在。所属を転々とする中で唯一変らなかったもの、あるいは所属を転々としてきた原動力は、遺跡から出土した鳥類の骨に対するこだわりです。考古学徒として参加した発掘現場で大量のアホウドリの骨と出会ってしまって以来、遺跡試料を使った鳥類の歴史、特にヒトとのかかわりの歴史を復原してみたいという思いに駆られて、いつの間にかここまで来てしまいました。多くの方から「面白そうな研究材料ですね」というお言葉をいただける反面、これまでほとんど研究されてこなかった分野であるため、如何に生物学や考古学の土俵に乗せるか、如何に試料から情報を引き出すかには思案を重ねてきました。骨標本に基づく試料の肉眼同定にはじまり、薄板スプライン法、古代DNA分析、安定同位体比分析など、目的のためには手段を選ばず分析を試みてきました。このように多様な視点をもつことができたのは、この間にご指導いただいた先生方と、学会などでお会いしたたくさんの方からの刺激とご支援のおかげだと感謝しております。

 今後はヒトの解剖学に関する授業や人骨の古代DNA分析などが主たる活動になりますが、遺跡から出土する鳥類の骨の分析は続けていきます。人体という先進の解剖学の現場に関わることで、鳥骨を見る新たな視点を養うことができると期待しています。また、中海や宍道湖という格好のバードウオッチングのフィールドを利用して、これまであまり機会を持てなかった生身の鳥を見る、声を聴くという楽しみも味わっていきたいと考えています。鳥学会大会には今後も参加したいと考えていますので、是非いろいろなお話をお聞かせください。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。



受付日2007.04.23





東北から関東へ、そして関西弁の地へ

遠藤菜緒子 (兵庫県立人と自然の博物館)

私が立教大学の大学院博士課程後期課程に入学するために青森から上京したのは、もう6年も前になります。当時は、研究がどういうものかを知らず、調査=研究だと考えていたきらいがありました。それが、研究室のメンバーに揉まれて、研究者とはどうあるべきかという意識を持てるようにまで成長できたのです。また、東京で勉強したおかげで、多くの研究者と知り合うことができました。人付き合いが苦手な私でも、研究者同士の交流がとても大きな影響力を持っていることを実感しています。人脈は力なり。

 そんな環境の中で、なんとか学位を取得して、ほっと一息と思ったのも束の間、4月から兵庫県立人と自然の博物館で研究員として働くことになりました。2月末まで進路が未定だったこともあり、生まれ育った東北から遠く離れた関西圏に自分がいるということが不思議でなりません。道を歩けば関西弁。しかし、想像していたような怖い土地ではありませんでした。兵庫県だからでしょうか、みな親切でおっとりとした雰囲気があります。

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博物館外観.
 着任してからまだ1ヶ月も経っていないため、今のところ、博物館の事業や組織などを勉強したり、博物館への問い合わせに答えるために現場へ視察に行ったりということをしています。研究を行うための人脈づくりも、仕事の一環です。『ひとはく』では、研究員が積極的に博物館の外で活動しています。研究員は、いかに博物館を宣伝するかというところで日々とても努力されています。その最たるものがキャラバンです。これは、兵庫県の色々な地域へ博物館の展示を持っていくという事業です。地域の方々と連携して企画展を開催することにより人材育成を図っているほか、各地域に根ざした展示を企画することで博物館の研究員が地域研究を行うことになっています。ついでに、『ひとはく』のある三田市は都市から離れているので、来館者が多くありません。キャラバンを行うことは、その点を補い、ビジター数を増やす目的もあります。学生時代は、このような経営的な視点を持つことがなかったので、目からウロコという感じです。とにかく見るもの全てが新鮮で、充実した毎日を送っています。

 『ひとはく』には、多様な分野の研究者の方々が所属しておられます。知識や見識を広めるまたとないよい機会です。臆せず、様々な方々と交流し、研究者として、また人間として成長していきたいと思っています。ただ、目の前の仕事に追われて、研究者として必要な努力を怠らないようにとの自戒を忘れずに。



受付日2007.04.23




野外調査のTips


自動撮影法で地上性の鳥類を調査するには?

安田雅俊 (森林総合研究所・九州支所・森林動物研究グループ)

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図1.自動撮影法の概念図.市販されている多くの自動撮影カメラは,赤外線センサーでその検知エリアに入った動物を検知し撮影を行う.調査では,地上高 1 - 1.2 m に,林床に置いた誘引餌を見下ろすようにカメラを仕掛けた.筆者らは,主に麻里府商事(ウェブサイト http://www.marif.co.jp)のSensorCamera Fieldnote I (フィルムタイプ)を使用している.最近では,デジタルカメラタイプも販売されている.後者では,フィルムタイプと比べて格段に撮影可能枚数が多い点は優れているが,動物の検知から撮影までのタイムラグが多少長い(約3秒)という短所がある.誘引餌を用いることでこの短所は十分カバーできる.一方,誘引餌を用いる場合,消費や腐敗によって誘引力が変化することに注意すべきである.しかしそれも,標準化した手法で調査した結果を比較する場合には大きな問題にならないと考えられる.
地上性の鳥類のセンサスには,一般的に,ルートセンサス法での出会い頻度などが利用される.他のセンサス法として,自動撮影法(図1)を適用することは可能だろうか?地上性の鳥類といってもいろいろな鳥種があり,生態も様々なので,一概にひとつの方法論の適用の可不可を議論することはできないだろう.そこで,東南アジアの熱帯林をフィールドとした最近の論文を引用しつつ,著者の「自動撮影法でこのような鳥種が撮影された」という個人的経験を報告する.本稿では,とくに鳥類の自動撮影調査における誘引餌の有効性について考えたい.今後の議論に資すれば幸いである.

 自動撮影法の利点は,無人で昼夜を問わず連続観察ができることにある.筆者は1993年以来,日本や東南アジアの森林において,自動撮影法を用いた野生動物相の調査を行ってきた(Yasuda 2004; Numata et al. 2005).主な調査対象は哺乳類なのだが,鳥類もしばしば撮影される.これまでに撮影された鳥類のなかにはルートセンサス法や捕獲法では記録が困難な鳥種も含まれている.問題は撮影頻度であり,その向上のためには,“誘引”という手段をとる必要があると考えている.

 例えば,2000年から2003年までにボルネオ島北西部のブルネイ(図2のMerimbun)で行った調査では,334カメラ日の調査努力で,36枚撮フィルム86本中の約20枚に8種の鳥類が記録された.得られた写真の99%以上は鳥類以外の動物であった.自分が調査対象としている哺乳類がよく写るようにカメラを仕掛けていることを考慮しても,鳥類調査としては効率がかなり悪いと言わざるをえない.このときは,ボルネオ島で自動撮影カメラを使い始めたばかりで,「どのような餌にどのような動物種が来るのか」の経験を積むために様々な誘引餌を試した時期であった.そして,誘引餌としてバナナと生の小エビを使うと,多様な哺乳類を効率よく撮影できることが分かった.バナナには主に果実食の哺乳類が,エビには主に偶蹄類とジャコウネコ類が誘引された.

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図2.調査地の位置.Merinbun:ブルネイ国マリンブン湖自然遺産公園.Bukit Soeharto:インドネシア国ムラワルマン大学ブキットスハルト演習林.
 地上性の鳥類では,ニオイマンゴー Mangifera odorata (ウルシ科)の熟した果実を誘引餌としたときに,美しいカンムリシャコ Rollulus rouloul (キジ科)の一群が撮影された(写真1).ガイドブックによると,本種は林床に落下した果実を食べるらしい.実際に餌の果実をついばんでいる瞬間も撮影されたので,カンムリシャコはニオイマンゴーの果実に誘引されたと考えられる.

 その後,著者は2004年からボルネオ島東部のインドネシア共和国東カリマンタン州に調査地を移した(図2のBukit Soeharto).東カリマンタン州は,エルニーニョによって引き起こされた数ヶ月間におよぶ異常な少雨と度重なる失火が原因で 1982-83年と1997-98年に大規模な森林火災に見舞われた.そしてその度に四国の2倍の面積に相当する土地が火災の被害を受けたと推定されている.また,過去の火災の影響だけでなく,現在も不法な森林伐採,入植と開墾,狩猟等によって,現地の野生生物は大きな負の人為的影響を受けている.筆者らは,それらの影響の程度を把握することを目的のひとつとして,焼失をまぬがれたいくつかの森林において自動撮影法による野生生物相の調査を行ってきた.

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写真1.カンムリシャコ Rollulus rouloul (キジ科)の一群.一連の写真から4個体の雌と5個体の雄が確認された.餌はニオイマンゴーの果実.ニオイマンゴーは野生種に近く,果実の芳香がかなり強いため,果実食性の哺乳類もよく撮影された.結実に季節性があり,通年の調査には不向きであった.
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写真2.コシアカキジ Lophura ignita (キジ科).餌は生エビ.Bukit Soehartoで最も頻度高く撮影された鳥種で,雌雄が一緒に写ることが多い.
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写真3.キンバト Chalcophaps indica (ハト科).餌は生エビ.単独で撮影されることが多い.
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写真4.アオハシリカッコウ Carpococcyx radiatus (カッコウ科).餌は生エビ.単独で撮影されることが多い.
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写真5.アオハリシカッコウが誘引餌の生エビをくわえた瞬間.
 ここでの自動撮影では,誘引餌としてバナナの果実と生の小エビを用いた.これらの餌はいつでも現地の市場で手に入るので,通年の調査に大変都合がよい.現在までに集計が終わった630カメラ日の調査の結果を示すと,36枚撮フィルム90本中に約25種の哺乳類と3種の鳥類が記録されていた.鳥類では,撮影頻度が高い順に,コシアカキジ Lophura ignita (キジ科)(写真2),キンバト Chalcophaps indica (ハト科)(写真3),アオハシリカッコウ Carpococcyx radiatus (カッコウ科)(写真4)であった.計57枚の鳥類の写真のうち,生エビで31枚(54 %),バナナで26枚(46 %)が撮影された.撮影された鳥種は少ないが,鳥類の撮影頻度はブルネイでの調査の約3倍に向上した(生息密度の違いを反映している可能性もあるが).

 東南アジアで行われたいくつかの自動撮影法による調査をとりまとめたMohd. Azlan Jayasilan & Davison (2006) は,一般に,熱帯雨林の林床で自動撮影法を適用すると,哺乳類が撮影される頻度は十分高いが,鳥類が撮影される頻度はかなり低いと結論した.彼ら自身の調査で最も撮影頻度が高かったのはセイラン Argusianus argus (キジ科)であった.しかし,彼ら自身の調査および彼らが引用した自動撮影による調査は餌を使っていない(動物の通り道にカメラを仕掛けた)か,野生の果実を餌にしたものであった.

 動物性の餌をつかった自動撮影法というのは,著者の不勉強のせいかもしれないが,生き餌や卵をつかって捕食性の哺乳類を撮影すること以外には,あまり一般に行われていないようである.少なくとも,エビを誘引餌に使うのは新しい技法と言えるだろう.写真5は,アオハシリカッコウが餌の生エビをくわえた瞬間である.もちろん,熱帯雨林の林床にエビは生息していないので,普段から食べ慣れている餌という訳ではないだろう.「なぜ熱帯雨林の鳥類がエビを食べるのか」という問題の追及はさておき,重要なのは,「エビを餌にした場合に鳥類が撮影されることがある」という事実である.エビを餌にすることで,もしかすると,観察が難しい熱帯雨林の地上性カッコウのセンサス調査ができるのではないか,という期待が頭をよぎる.東カリマンタン州の別の森林における調査では,アオハシリカッコウとの出会い頻度は44ヶ月間の調査期間中に32回であったという(Fredriksson & Nijman 2004).適切な餌を用いて系統的にカメラを配置すれば,より高い効率で,調査者の経験の差を排除した,地上性鳥類のセンサスが可能になるのではないだろうか.

 ちなみに,哺乳類の生息密度がそれほど高くない島嶼地域で自動撮影調査を行うと,高頻度に地上性の鳥類が撮影されるらしい(この詳細については,今秋の日本鳥学会熊本大会のシンポジウムで小高らによる発表が予定されている.乞うご期待!).このことから,「地上性の鳥類のセンサスに自動撮影法を適用することは可能か」という文頭の問題設定がよくなかったと思う.自動撮影法が地上の温血性動物のセンサスに十分適用できることは分かっている.問題は「何を知りたいのか」と「そのために,どのような工夫をするか」ということなのだ.工夫次第では,日本の森林でも,ヤマドリなどの地上性鳥類を自動撮影法でセンサスできるようになるかもしれない.そうすれば次には,得られたデータをどのように評価するかということになる.最近,筆者らは同僚とともに自動撮影で得られたデータの評価法について研究を行っているところである.


引用文献

・Fredriksson, G. M. & Nijman, V. 2004. Habitat use and conservation status of two elusive ground birds (Carpococcyx radiatus and Polyplectron schleiermacheri) in the Sungai Wain Protection Forest, East Kalimantan, Indonesian Borneo. Oryx 38: 297-303.

・Mohd. Azlan Jayasilan & Davison, G. W. H. 2006. Camera trapping as a tool to study ground dwelling birds? Malayan Nature Journal 57: 359-368.

・Numata, S., Okuda, T., Sugimoto, T., Nishimura, S., Yoshida, K., Quah, E. S., Yasuda, M., Muangkhum, K., Nur Supardi Md. Noor 2005. Camera trapping: a non-invasive approach as an additional tool in the study of mammals in Pasoh Forest Reserve and adjacent fragmented areas in Peninsular Malaysia. Malayan Nature Journal 57: 29-45.

・Yasuda, M. 2004. Monitoring diversity and abundance of mammals with camera traps: a case study on Mount Tsukuba, central Japan. Mammal Study 29: 37-46.



受付日2007.03.28


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連載


ダーウィン便り(8):イシチドリのたたり?トビの呪い?

上田恵介 (立教大院・理・生命理学)

ダーウィンで調査を初めて4年目になるが、これまで乗っていた車が鳥をはねたことはない(バンディクートはあるが...)。それが今回は1週間の間に2度も鳥との衝突事故を起こしてしまった。

 2回とも早朝にダーウィンから90キロほど南の調査地に車で向かう途中の出来事だった。1回目は、高木(昌)君の運転で、夜明け前、いつもの調査地へ向かった。Noonamah をすぎて、Wildlife Park への分岐点をすぎて少し行ったあたり。まだまわりは真っ暗である。道の左に1羽のイシチドリが立っていた。この鳥は昼間はめったに姿を見かけないが、夜になると、住宅地や公園の開けた場所に出てきて、トラツグミのような声でよく鳴いている。そのイシチドリが車が近づいたとたんに、道路の中央に向かって助走して飛び立とうとしたのだ。100キロで走っている車は、イシチドリを避けようがなく、車の右前部ではねてしまった。イシチドリ達は一夫一妻らしく、とても夫婦仲がいい。連れあいを亡くしたもう1羽のことを考えると胸が痛んだ。

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イシチドリ(撮影:永田尚志).
 次の朝、また同じ時間にそのあたりを走っていた。照明のない真っ暗な道である。「昨日のイシチドリのつれあいが立ってるんとちゃうか」と私。「上田さん、恐いこと言わんといてくださいよ」と高木君。

 4年間、調査地まで毎朝よく走ってくれた Hilux がついに壊れてしまったのはその日のことである。調査地から戻る途中で、まずはオイル切れでオーバーヒートした。Tさんにヒッチハイクでオイルを買いに行ってもらって事なき(?)を得たが、その夕方、西海夫妻らが買い物に出かけて戻る途中で、カラカラと大きな音がし始めた。なんとか家まではたどり着いたのだが、翌日、私が運転して修理屋へ持っていく途中、修理屋まであと100mで、ガーンと大きな衝撃が来て、止まってしまった。

 「もうだめだな」と、なんとなく感じたが、このために借りていたレンタカーで牽引して、修理屋まで運び込んで見てもらったところ、シリンダーが完全に破壊されてばらばらになっており、修理不能と言われてしまった。シリンダーがバラバラになるなんて...。日本では聞いたことがない壊れようであった。

 というわけで4年間働いてくれたHiluxは、廃車になったのである。
 注) ちなみにダーウィンではどんなボロイ車でも使える部品は取り外して使うので、修理屋はこんな車でもタダで引き取ってくれた。

 さて、新年を迎えたダーウィン。ここノーザンテリトリー準州では、酔っぱらい運転やスピード違反による事故が多いので、道路交通法が改正されて、取り締まりが厳しくなるよと、1週間くらい前間からテレビでお知らせが流れていた。

 元旦といえども、とくにすることがないので、西海夫妻と3人でフィールドへ出かけた。運転は西海君。いつもは真っ暗なうちにダーウィンを出発して調査地に向かうのだが、この日は少し遅め。いつもなら Noonamah の手前のクロコダイル・ファーム付近は真っ暗な道なのだが、もう明るくなっている。と、突然、「あーっ」という西海君の声。とたんにガツンと軽い衝撃。車がトビ(フエフキトビ?)をはねたのだった。ここクロコダイル・ファームにはワニのおこぼれを狙って、トビやフエフキトビがたくさん集まっている。トビたちは同時に、道で引かれている鳥や獣の死体も漁る。暗いうちは道路には鳥はいないが、明るくなるととたんに道路上に降りているトビやカラス(ミナミガラス)の姿が目につきはじめる。そうなのだ。明るくなってから宿舎を出たのが事故の遠因なのである。

 その帰り道。ちょうど同じあたりを走っていたときのことである。借りていたレンタカーは加速のいい車で、ついすいすいと前のキャンピングカーやら3台を抜いて、走行車線に戻ったら、いつのまにかうしろにパトカーがついていた。止まれと合図をするので止まったら、ポリスが降りてきて「130キロ出してただろう?なにか理由はあるのか?」と言う。「調査が終わって、早く昼飯を食いたいから」 と答えたら、「免許証を見せろ」。だが、あいにくその日は不携帯だった。さいわい西海君が免許証を持っていたので、「代わりに彼が運転するから大丈夫だ」。と言ったら「おまえは運転したらあかんぞ」と言われ、そのまま見逃してもらった。

 帰り道、さらに2台も、スピード違反取り締まり車両がとまっており、新年早々、NT警察も気合いが入ってるなと感じた1日であった。

 鳥をひくと、悪いことが起こる。
 皆さんも気をつけてくださいね。



受付日2007.02.06


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編集後記


 新年度が始まり、今年も鳥学会からも何人かの方が社会へ飛び立っていきました。今回は、その中から3人の方に、新しい職場の紹介と抱負について原稿を寄せていただきました。奇しくも2人の方は、二本足の鳥類から同じ二本足の人類に関わる職場へ赴任されました。しかし、本文中で述べているように化石や遺蹟の発掘を通して、過去に遡って、昔、日本にいた鳥類の様子を解き明せるかもしれません。新しい環境での3人の方の研究の発展、および活躍を期待しています。
 また、自動撮影を使った鳥類センサスの可能性について安田さんに原稿をお願いしました。彼は熱帯林で見えない小動物を観察するのに自動撮影装置を駆使しています。林床性鳥類の検出に自動撮影が有効な可能性を示唆しています。しかし、海老で鯛ならぬ鳥が釣(撮)れるとは意外でしたね!(編集長)



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 鳥学通信は、2月,5月,8月,11月の1日に定期号を発行します。臨時号は、原稿が集まり次第、随時、発行します。







鳥学通信 No.13 (2007年5月1日)
編集・電子出版:日本鳥学会広報委員会
永田尚志(編集長)・山口典之(副編集長)・
天野達也・染谷さやか・高須夫悟・時田賢一・百瀬 浩・和田 岳
Copyright (C) 2005-07 Ornithological Society of Japan

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