日本鳥学会

学会賞

日本鳥学会 黒田賞


2021年度 日本鳥学会黒田賞選考報告

基金運営委員会委員会

基金運営委員会で規定・運営指針に則して研究内容のオリジナリティ,鳥類学における重要性,将来性などについて検討,審査の上,受賞候補者を評議員会に推薦し,下記の通り決定された.

受賞者:片山直樹(農研機構・農業環境変動研究センター)

片山直樹氏は,農地景観における鳥類を研究対象とし,主に農業の集約化や耕作放棄などが農地の生物多様性に与える危機の深刻さを明らかにしてきた.さらにその解決策とされる農地利用や農法の効果を文献レビューやメタ解析を駆使しながら長期・広域的な傾向をも含めて精緻に評価してきた.片山氏は農地生態系のなかでの鳥類の役割の解明や農地生態系の保全課題の解決に向けた研究テーマに一貫して取り組むことで,鳥類学,生態学,保全科学に関する多数の研究業績を着実に積み上げてきた.研究成果は多くの国際誌に掲載されている.鳥類研究を通じて社会的課題の理解や解決に貢献しようとする片山氏の研究姿勢は,鳥学会が果たすべき社会的責任の一つを明確に示していると言える.これまで複数の委員や事務局を務めるなど日本鳥学会にも様々な形で貢献してきた.片山氏のこれらの業績が高く評価され,黒田賞受賞候補者として選定された.ただし,一般への普及実績はまだ多くないため,今後は書籍の執筆などを通じて社会に向けたさらなる積極的な情報発信を期待する.
 なお,受賞内容は総説として日本鳥学会の学会誌に掲載予定である.


過去の受賞者一覧

2010年度 天野達也 (日本鳥学会誌 60巻2号, 2011)
2011年度 相馬雅代 (Ornithological Science 10巻2号, 2011)
2012年度 山浦悠一 (Ornithological Science 12巻2号, 2013)
2013年度 三上修 (日本鳥学会誌 68巻1号, 2019)
2014年度 (該当者無し)
2015年度 江田真毅 (日本鳥学会誌 68巻2号, 2019)
2016年度 風間健太郎(Ornithological Science 18巻2号, 2019)
2017年度 長谷川克 (Ornithological Science 17巻2号, 2018)
2018年度 鈴木俊貴
2019年度 吉川徹朗
2020年度 山本誉士
2021年度 片山直樹

日本鳥学会 中村司奨励賞


2021年度 日本鳥学会中村司奨励賞選考報告

基金運営委員会委員会

基金運営委員会で規定・運営指針に則して研究内容のオリジナリティ,鳥類学における重要性,将来性などについて検討,審査の上,受賞候補者を評議員会に推薦し,下記の通り2名に決定された.
 本賞の規定第3条では,「授賞は毎年原則として1名とする.ただし,受賞者を1名に絞りきれない場合はその限りではない.」とされている.両者の研究はどちらも十分に高いオリジナリティを持つ優れた成果をあげており,鳥類学における重要性並びに将来性は同等であると評価された.さらに,両者の研究は応用的な研究と基礎的な研究という点で分野と方向性が異なるため,明確に優劣をつけることは難しく,かつ適切ではないと判断された.これらのことから,今年度は2名が中村司奨励賞の受賞者として選考された.

受賞者:澤田明(北海道大学)

推薦根拠論文:Sawada, A., H. Ando, and M. Takagi. 2020. Evaluating the existence and benefit of major histocompatibility complex-based mate choice in an isolated owl population. Journal of Evolutionary Biology 33:762–772.

澤田明氏の論文は,高い標識率を誇る長期研究個体群である南大東島のリュウキュウコノハズク個体群を対象に,性淘汰におけるMHCの役割を世代間の利益を含めて検討し,MHCに基づく選択が生じ近親交配を避けて交配していることを明らかにしている.本研究では,野外の個体群を対象にMHC遺伝子に対する雌による選り好みが存在していることを示し,生涯繁殖成功にもとづいて実証している.長期間の観察データと網羅的なDNAサンプルに基づき,野生個体群を対象に実証的な結果を示しているという点でオリジナリティが高いと評価できる.得られた成果は,配偶者選択の問題に進展を与えるもので,進化生態学的,行動生態学的に高い価値があり,鳥類学的にも重要な成果といえる.長期調査に基づくデータの蓄積があっての研究成果なので,これまでに候補者の属する研究グループによる多くの協力があったと考えられるが,本研究をまとめるためには野外調査,分子実験の解釈と取扱い,統計的解析の全てを高い次元で統合する必要があり,澤田氏自身の研究能力の高さがうかがえ,将来性も高く評価された.

受賞者:夏川遼生(横浜国立大学)

推薦根拠論文:Natsukawa, H. 2020. Raptor breeding sites as a surrogate for conserving high avian taxonomic richness and functional diversity in urban ecosystems. Ecological Indicators, 119, 106874.

夏川遼生氏の論文は,都市域におけるオオタカの指標性を種の多様性と機能的多様性の側面から評価している.本研究では,鳥類の中でもしばしばアンブレラ種とみなされるオオタカを対象として,それが実際に「アンブレラ種」であり,オオタカが存在している環境はそうでないところよりも豊かな生態系であることを示している.近年生物多様性保全上の重要性が高まっている都市生態系に注目し,そうした都市にも生息する上位捕食者として注目度の高いオオタカを対象にして,一般論とされてきた事象を丁寧に実証しているという点でオリジナリティが高い研究である.また,得られた成果は,生態系モニタリングや環境影響評価の点で重要なもので,鳥類学的に価値が高い.本研究における調査と解析は丁寧かつ綿密に計画・実施されていて,単著論文として発表されたことからも研究者としての能力の高さがうかがえ,将来性も高く評価された.


過去の受賞者一覧

2018年度 加藤貴大
2019年度 太田菜央
2020年度 西田有佑
2021年度 澤田明・夏川遼生

日本鳥学会 内田奨学賞


2021年度 日本鳥学会内田奨学賞選考報告

基金運営委員会委員会

今年度は応募がなかったため、採択がなかった.


過去の受賞者一覧

1999年以前は,日本鳥学会100周年記念特別号「日本鳥学会100年の歴史」120-122ページをご覧下さい.

奨学賞
2000年度 (該当者無し)
2001年度 遠藤菜緒子・清水義雄
2002年度 (該当者無し)
2003年度 小池重人
2004年度 小岩井彰
2005年度 吉田保晴
2006年度 (該当者無し)
2007年度 (該当者無し)
2008年度 堀江玲子
2009年度 (該当者無し)

内田奨学賞
2010年度 (該当者無し)
2011年度 (該当者無し)
2012年度 (該当者無し)
2013年度 渡辺朝一
2014年度 (該当者無し)
2015年度 (該当者無し)
2016年度 (該当者無し)
2017年度 (該当者無し)
2018年度 才木道雄
2019年度 (該当者無し)
2020年度 (該当者無し)
2021年度 (該当者無し)

助成

津戸基金によるシンポジウム開催の助成


2021年度 津戸基金によるシンポジウム開催選考報告

基金運営委員会委員会

今年度は応募がなかったため、採択がなかった.


過去の助成一覧

1988年「カッコウと宿主の相互進化」(中村浩志)
1989年「セキレイ3種の社会構造の比較」(大迫義人)
1990年「ハシブトガラスの生息環境の違いによる生態の比較」(福田道夫)
1993年「鳥の学習と文化」(樋口広芳・中村浩志)
1994年「小笠原における最近の鳥類研究」(上田恵介)
1994年「ツルの現状と保護・研究への展望」(古賀公也)
1995年「北海道における希少鳥類研究の現状と鳥類生態学研究」(高木昌興・林英子)
1997年「アジア・太平洋地域における鳥類進化・生態学とDNA多型利用の可能性」(上田恵介・石田健)
2007年「世界と日本の水田における鳥類保全の課題」(藤岡正博)
2009年「オオヒシクイと人の共存を目指して」(布野隆之)
2017年「チュウヒサミット2017」(近藤義孝)
2019年「新技術をもちいた鳥類モニタリングと生態系管理」(嶋田哲郎)
2021年(応募無し)

・1998年までは毎年募集.1999~2006年は募集休止.2007年から隔年募集.

伊藤基金による国際鳥類学会議の参加補助


2022年度伊藤基金によるIOC参加補助金の申請募集

基金運営委員会

日本鳥学会は,2022年8月に南アフリカ,ダーバンで開催される第28回国際鳥類会議(IOC2022)に参加し研究発表をする若手会員に補助金を交付します.補助金交付を希望される方は下記要項に従いふるってご応募下さい.今回は,渡航する参加者については一人当たり25万円,オンラインでの参加の場合は一人当たり3万円を,合計50万円を目処に交付する予定です(新型ウィルスの感染状況および会議の開催形態・状況により変更になることがあります).交付者の決定は,基金運営委員会が選考小委員会の意見を参考におこないます.選考は発表内容(IOCへ提出したabstractおよび和文要旨)を60点,補助金を必要とする理由を20点,過去5年間の発表論文を20点満点で評価します.

申請資格: IOCで研究発表(口頭・ポスター・シンポジウム)を行う日本鳥学会会員で2022年末日に40歳未満の者.ただし他の機関等から会議参加に際して10万円以上の公的補助を受ける者および過去に本助成を受けた者をのぞく.

発表テーマ:鳥類学に関するもの.

申請書:指定の様式に氏名・生年月日・住所・電話・e-mail・所属または職業ならびに身分・補助金が必要な理由(経済的理由およびIOCでの発表を望む理由)・研究歴・過去5年間の主な発表論文(学会発表を含んでもよい)・IOCでの発表形式(口頭・ポスター・シンポジウム)を明記すること.なお,補助金が必要な理由には,他機関からの助成を得られにくい状況があれば具体的に記述すること.

申請方法:申請書と,IOCに提出する発表題目と英文abstract,および発表題目の和訳と発表内容の詳細を記した和文要旨(1,200文字以内)を基金運営委員長にe-mailで提出すること.なお,和文要旨への図表の添付は1枚以内(図表は文字制限に含めない)とする.申請書様式は学会ホームページよりダウンロードして用いること.

申請締切:2021年8月31日必着.可能な限り余裕を持って応募すること.

申請先:日本鳥学会基金運営委員長 川上和人(kazzto@ffpri.affrc.go.jp)
申請の受け取りはメールで連絡しますので,もし受け取り確認メールが届かない場合はご連絡下さい.

選考結果の通知:2021年10月末日までに申請者に選考結果および理由を通知する予定.なお選考結果の概要は学会ホームページ等で公表予定.

報告:補助金交付を受けた者は,基金運営委員会に報告の義務を有する.報告の体裁は被交付者に追って通知する.報告は日本鳥学会誌および鳥学通信で公開される.

注)補助金交付を受けたにもかかわらずIOCで発表しなかった場合,申請書に虚偽があった場合は補助金を返却していただきます.


過去の助成者一覧

1990年 江崎保男,永田尚志,中村雅彦 (開催地:ニュージーランド,クライストチャーチ)
1994年 濱尾章二,堀田昌伸,成末雅恵,浦野栄一郎 (開催地:オーストリア,ウィーン)
1998年 山口恭弘 (開催地:南アフリカ,ダーバン)
2002年 遠藤菜緒子,水田 拓 (開催地:中国,北京)
2006年 齋藤武馬,染谷さやか (開催地:ドイツ,ハンブルグ)
2010年 松井 晋,森 さやか,森口紗千子 (開催地:ブラジル,カンポス・ド・ジョルダン)
2014年 長谷川 克,一方井祐子,石井絢子,風間健太郎,西田有佑 (開催地:日本,東京)
2018年 青木大輔,澤田 明 (開催地:カナダ,バンクーバー)



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