日本鳥学会

学会賞

内田奨学賞

日本鳥学会は,本学会員のなかで優れた鳥学の論文を発表し,奨励が当該個人の研究活動の発展に大いに寄与すると判断される者を対象に,長年,日本鳥学会奨学賞を設けていた.2010年度からは基金名を冠とした内田奨学賞と改名した.本賞は,発展途上にある受賞者を励ます趣旨から設けられている(詳細は日本鳥学会内田奨学賞規定を参照).

副賞5万円の財源は内田清之助元会頭の形見分けとして寄付された内田基金(および学会基金・小口基金)である.

2018年度受賞者:才木道雄(東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林)

基金運営委員会で規定・運営指針に則して検討,審査の上,受賞候補者を評議員会に推薦し,上記の通り選定された.

推薦根拠論文:
1. 才木道雄 (2016) 秩父山地におけるヨタカのさえずり頻度の季節変化. 日鳥学誌 65(1): 31-35.
2. 才木道雄・後藤晋 (2017) さえずり頻度の時間的変異を考慮したヨタカの効率的な生息調査法. 日鳥学誌 66(1): 19-28.

才木道雄氏は,準絶滅危惧種であるヨタカを対象に,さえずり頻度の季節変化を定量的に記載した上で(根拠論文1),録音音声に基づいた利用しやすく簡便なモニタリング手法のデザインを探っている(根拠論文2).根拠論文1の成果は,不明な点の多かったヨタカのさえずり頻度の日周変化や季節変化を詳細に記載したものである.夜行性鳥類の音声研究上,たとえば音響学的特性の解析などのきっかけともなる基礎的成果である.さらに注目すべきは,そのヨタカの音声研究を本種のモニタリング手法の開発へと発展させた点にある.夜行性であり直接観察も難しいヨタカは,情報がないままに個体数を減らしている可能性も大きい.根拠論文2は,経験の浅い人による本種の生息状況調査を可能にする手法開発の第一歩として,鳥類モニタリングや保全生態学の観点から貴重な成果である.この研究がきっかけとなり,ヨタカ生息数の過大評価や過少評価が生じる可能性の検討など,より実用性の高いモニタリング手法確立を目指す研究が進むことが期待される.


過去の受賞者一覧

1999年以前は,日本鳥学会100周年記念特別号「日本鳥学会100年の歴史」120-122ページをご覧下さい.

  •  奨学賞
      2000年度 (該当者無し)
      2001年度 遠藤菜緒子・清水義雄
      2002年度 (該当者無し)
      2003年度 小池重人
      2004年度 小岩井彰
      2005年度 吉田保晴
      2006年度 (該当者無し)
      2007年度 (該当者無し)
      2008年度 堀江玲子
      2009年度 (該当者無し)
     内田奨学賞
      2010年度 (該当者無し)
      2011年度 (該当者無し)
      2012年度 (該当者無し)
      2013年度 渡辺朝一
      2014年度 (該当者無し)
      2015年度 (該当者無し)
      2016年度 (該当者無し)
      2017年度 (該当者無し)
      2018年度 才木道雄

中村司奨励賞

日本鳥学会は,本学会員のなかで国際誌に優れた論文を発表した若手会員を対象に,2018年度より中村司奨励賞を授与する.本賞は,まだ十分な実績を蓄積していないが将来の鳥学会を担うことが期待される若手会員を,国際誌での発表論文から評価するものである.

副賞5万円は,若手会員の奨励のためとして元会頭・中村司名誉会員から寄付された中村基金から支出される.

2018年度受賞者:加藤貴大(総合研究大学院大学・先導科学研究科)

基金運営委員会で規定・運営指針に則して研究内容のオリジナリティ,鳥類学における重要性,将来性などについて検討,審査の上,受賞候補者を評議員会に推薦し,上記の通り選定された.

推薦根拠論文: Kato, Matsui, Terai, Tanabe, Hashimi, Kasahara, Morimoto, Mikami, Ueda & Kutsukake (2017) Male-specific mortality biases secondary sex ratio in Eurasian tree sparrows Passer montanus. Ecology and Evolution 7: 10675-10682.

個体が子の性を雄と雌にどう配分するかという問題は,進化生物学・行動生態学にとって大きな問題のひとつである.鳥類でも性配分の偏りは報告されているが,どの時期にどのように性の偏りが生じるのかについての詳細は明らかになっていなかった.加藤貴大氏は,スズメを対象に,この性の偏りが産卵時から巣立ちまでのどの段階で生じているのか,その偏りはどのようなメカニズムで生じるのかという問題に取り組み,雌に偏る性比は産卵時には見られず,その後の胚発生の過程で雄胚が雌胚よりも高確率で死亡することによること,およびこの過程は両親の抱卵行動とは無関係に生じることを明らかにした.性比の制御過程を明らかにしたこの研究は他の動物種にも応用可能であり,鳥類学はもとより,生物学の広い分野で注目を集める重要な結果として高く評価できる.本研究で用いられた野外調査,細胞観察,孵化実験,分子実験などの手法の多様さと高い独創性,技術的・労力的困難さを乗り越えた実行力は,加藤氏の研究者としての高い能力を示している.共同研究者は多いものの,本研究の本質的な部分はほぼ全て加藤氏が主導して計画・実行しており,研究組織の運営能力も高いことが示唆され,今後の研究についても発展が期待できる.

黒田賞

日本鳥学会は,日本の鳥類学の発展に貢献した黒田長禮・長久両博士の功績を記念して,鳥類学で優れた業績を挙げ,これからの日本の鳥類学を担う本学会の若手・中堅会員を対象に,黒田賞を授与する.

副賞10万円の財源は黒田長禮博士の形見分けとして寄付された黒田基金(および学会基金・小口基金)である.

2018年度受賞者:鈴木俊貴(総合研究大学院大学・先導科学研究科)

基金運営委員会で規定・運営指針に則して研究内容のオリジナリティ,鳥類学における重要性,将来性などについて検討,審査の上,受賞候補者を評議員会に推薦し,上記の通り選定された.

鈴木俊貴氏は,シジュウカラ科鳥類を主たる対象として,野鳥の音声コミュニケーションの研究を行ってきた.その知見は,シジュウカラ科鳥類が警戒声や集合声によって捕食者のタイプを伝えたり,仲間を集めたりするという機能を明らかにしただけではなく,異なる音声を発する順が意味を持つことや,音声によって伝えられた捕食者のタイプによって受信者が適切な行動をとることをも示す非常に新規性の高いものである.一連の研究は,ヒトの言語によるコミュニケーションに固有と考えられてきた要素が鳥類でも進化してきた可能性を探るという独創的な視点から,詳細かつユニークな行動実験を用いて仮説を検証するという説得力のあるものであり,オリジナリティが高く,また論文業績としてもいずれも卓越したものである.このような成果は,鳥類のみならず動物のコミュニケーションや社会行動の理解を進める重要なものである.今後もユニークな視点と精力的な活動によって鳥類学の発展に大きく寄与することが期待される.

今年度の大会において,授与式と受賞記念講演が行なわれる.また,受賞内容は総説として日本鳥学会の学会誌に掲載予定である.


過去の受賞者一覧

助成

津戸基金によるシンポジウム開催の助成

趣旨

津戸基金は,1987年に日本鳥学会会員津戸英守氏が,日本の鳥学発展のために寄付された寄付金の運用のために設立されたもので,鳥学に関するシンポジウムの開催を助成する基金である.2年に1件,本学会会員が責任者となって開催する鳥学に関するシンポジウムを助成する.助成額は10万円を上限とする.募集要項は,日本鳥学会誌各巻2号および学会ホームページで,2年に一度,10月に発表する予定である.


過去の助成一覧

  •   1988年「カッコウと宿主の相互進化」(中村浩志)
      1989年「セキレイ3種の社会構造の比較」(大迫義人)
      1990年「ハシブトガラスの生息環境の違いによる生態の比較」(福田道夫)
      1993年「鳥の学習と文化」(樋口広芳・中村浩志)
      1994年「小笠原における最近の鳥類研究」(上田恵介)
      1994年「ツルの現状と保護・研究への展望」(古賀公也)
      1995年「北海道における希少鳥類研究の現状と鳥類生態学研究」(高木昌興・林英子)
      1997年「アジア・太平洋地域における鳥類進化・生態学とDNA多型利用の可能性」(上田恵介・石田健)
      2007年「世界と日本の水田における鳥類保全の課題」(藤岡正博)
      2009年「オオヒシクイと人の共存を目指して」(布野隆之)
      2017年「チュウヒサミット2017」(近藤義孝)

      ・1998年までは毎年募集。1999~2006年は募集休止。

伊藤基金による国際鳥類学会議の参加補助

趣旨

4年に一度開催される国際鳥類学会議(IOC)に参加し,発表をおこなう若手会員を支援するため,参加補助を伊藤基金によって行なう.伊藤基金は本会会員伊藤信義の寄付により設立された基金である.助成の時期はIOC開催年の前年4月頃の予定である。


IOC2018参加補助

2018IOC参加補助(伊藤基金)に3名から応募があり、選考小委員会による選考に基づいて基金運営委員会が候補者を決定し、評議員会で承認されました。選出された2名の氏名と発表題名は以下の通りです(肩書きは応募当時のものです)。IOCでの活躍を期待します。

  • 澤田 明氏(大阪市立大・修士2年):MHC-based mate choice in a nocturnal monogamous bird
  • 青木大輔氏(北海道大・修士1年):Repeated Quaternary climate changes triggered genetic divergence and parallel population dynamics of Eurasian Jay Garrulus glandarius in the circum-Japan Sea region

また、次点として、植村慎吾氏(北海道大・博士1年)を選定しました。選出された2名のいずれかがIOC2018に参加発表できなかった場合は、次点者が繰り上げられることになります。

基金運営委員会委員長 濱尾章二
選考小委員会 亀田佳代子(委員長)、川上和人、齋藤武馬、関伸一、藤田剛、森貴久 



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