日本鳥学会


2024年度 日本鳥学会 中村司奨励賞 決定報告

 基金運営委員会で規定・運営指針に則して、研究内容のオリジナリティ、鳥類学における重要性、将来性などについて検討、審査を行い、理事会に推薦した結果、飯島大智さんが2024年度中村司奨励賞の受賞者に決定されました。


受賞者

飯島大智(東京都立大学大学院 都市環境科学研究科)


選定根拠論文

Iijima D, Kobayashi A, Morimoto G & Murakami M (2023)
Drivers of functional and phylogenetic structures of mountain bird assemblages along an altitudinal gradient from the montane to alpine zones. Global Ecology and Conservation 48: e02689.


選定理由

 生物多様性と標高勾配の関係を探ることは、生態学における重要なテーマである。一方で、標高勾配に着目して、生物群集の特性やパターンおよびその背後にあるメカニズムを解明しようとする研究は限られていた。
 飯島大智氏は、日本の乗鞍岳において、標高700mから3026mに生息する鳥類の群集を調査し、丁寧かつ徹底した分析を行った。この分析により、高山帯では鳥類群集の機能形質が集中傾向を示し、低標高帯ではその傾向が見られないことなどが明らかになった。これらの結果は、高山帯では厳しい環境によるフィルタリングが鳥類群集に強く働いていることを意味し、鳥類の群集集合プロセスが標高帯によって異なることを示唆するものである。
 また、高標高地の鳥類群集が気候変動に対して脆弱である可能性も指摘した。これらの結果は気候変動などの環境問題との関連からも重要であり、本論文は国際的な引用が期待される重要な研究と言える。
 以上の理由から、飯島氏の研究は中村司奨励賞が要件とする研究内容のオリジナリティ、鳥類学における重要性、研究者としての将来性のいずれについても高い水準で満たすものと評価された。


基金運営委員会



↑ PAGE TOP