向井喜果(新潟大)
私は鳥の研究を始めて6年目になりますが、実は日本鳥学会に参加するのはこれで2度目だったりします。ポスター発表のコアタイムでは、研究を聞きに来てくださった方々と議論しているうちに楽しくなってきて、ポスター賞のこともすっかり忘れて話をしていましたが、審査委員の方が現れてポスター賞受賞とのこと、びっくりしました。自身の研究を評価していただけてとても嬉しく光栄に思うとともに、ポスター賞受賞に恥じないように、これからも日々研究に邁進していかなくてはと身を引き締める思いです。最後に、現地調査や実験などにご指導・ご協力していただいた多くの方々にこの場を借りて御礼を申し上げます。
ポスターの概略
希少種の生息地保全を行う上で、対象種がなにをどのくらい食べているかといった食性情報は必要不可欠となっています。従来の食性解析では、直接観察や胃内容物分析といった形態学的な手法が行われてきましたが、餌内容の大半を不明種が占めていたり、観察者によるバイアスがかかったりといった問題点が挙げられていました。これらの問題を解決するため、近年、対象種の糞に含まれるDNA情報を基に餌種を特定するDNAバーコーディング法という分子学的手法が注目を集めています。しかし、DNAバーコーディング法のみでは植食性動物の餌となっている植物の葉や実などの部位のどこをどのくらい食べているかを特定することが難しいです。そこで、本研究では、準絶滅危惧種オオヒシクイAnser fabalis middendorffiiがなにをどのくらい食べているのか明らかにするため、DNAバーコーディング法によって餌種の特定を行い、さらに特定された餌植物について部位に分けて餌構成割合を炭素・窒素安定同位体比分析によって評価しました。これまで国内で報告されていなかった種を含む60種の餌植物が検出されるとともに、主要餌植物の各部位の炭素・窒素安定同位体比が有意に異なっていたため、餌植物の部位を含めたオオヒシクイの食物構成割合が明らかになりました。