卒論、修論を書いている学生さんたちに役に立つかもしれない2つの情報

広報委員会 三上修

 鳥学通信、月二報を維持しようとしている三上です(今月はまだ一報なので、がんばっています)。

 さて大晦日です。大晦日といえば、卒論だったり修論だったりするのではないでしょうか。私も、修士2年のときは、大学で新年を迎えた気がします。今は、あんまりそういうことをすると問題になったりするので、みなさんはそこまではしていないかもしれません。

 そんな苦労をしているかもしれない学生のみなさまに情報を2つ。

英名と学名を調べる

 1つは英名や学名です。

 鳥の論文を書いているときに面倒なのが英名や学名です。研究対象1種ならいいのですが、何種も出てきたりするとその都度、調べるのが面倒です。鳥類相を調査したり、あるいは引用したりする際に、一覧にしなくてはならない場合も出てきます。そういうときは以下のようなところで調べると早いです。

バードリサーチの鳥名リスト
https://www.bird-research.jp/1_shiryo/index.html

IOCのLife List

IOC Lists

 学名は、最終的には、鳥類目録を確認するのも忘れずに。

 なお繁殖している鳥に限られてしまいますが、学名やその他の生態情報を調べる際に、JAVIANデータベースもとても有用です。
http://www.bird-research.jp/appendix/br07/07r03.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/birdresearch/7/0/7_0_R9/_article/-char/ja/

 ちなみに私は一覧とか作るときの手間を省くために、エクセルで適当に作ったファイルを持っています。何かの役に立つかもしれないので添付しておきます(注意!:マクロとか埋め込んだりませんし、ウイルスチェックもしましたが、使用に際して不利益があっても責任はもちませんので、ご注意ください)。
標準和名から学名と英名を調べる_20211231.xlsx

 1つめのシートのA列に標準和名を入れると、横に英名や学名のリストがでます。これを作成する際に、バードリサーチの鳥名リストとIOCのLife Listを使っています。分類の変更などによってIOCのほうの学名や英名が出てこない場合もありますが、その場合はIOCのリストを詳しく読むとだいたい解決します。

引用文献のページ数を表す横棒

 もう1つは「横棒」の問題です。

 引用文献を作る際にはEndNoteなどの便利なアプリがありますが、学部4年生は、そのアプリを使いこなすこともなく卒論を書くことになるでしょう。となると引用文献を手打ち入力(なんか美味しそう)しなくてはならなくなります。そんなときに迷うのが横棒です。

 論文を引用して、100ページから120ページと示したいときに、横棒はたくさんあって、どれを使うのが正しいのか迷います。たとえば、このように。
100-120
100‐120
100–120
100—120

 上から、マイナス、ハイフン、エヌダッシュ、エムダッシュと呼ばれる記号です(正確に表示されているかどうかはわかりません)。ほかにも横棒はいろいろあってとかく面倒です。このうち「間(つまりページの間)」を表す記号は3つ目のエヌダッシュです。

Hyphen, en-dash, em-dash

 エヌダッシュは、MS Wordで書いていて、テンキーがあって、Winであれば、Ctrlキーを押しながら、マイナス記号を押すと出てくるはずです(Macの場合は、Ctrlキーの代わりにOptキー)。ノートPCの場合はテンキーがないのでNumLkキーを使ってやればいいはずです。

 ここでも条件を書きながら説明したように、実際にエヌダッシュをどうやって書くかは、OS、アプリ、キーボードなどの複数の要因が関わってきます。詳しくは、自分の使用環境を把握して検索してみてください。一回だけ書いて、後は使いまわすといいですよ。

 では、体調を崩さないように論文作成をがんばってください。

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広報委員長退任のご挨拶

森さやか(酪農学園大学)

2021年も残りわずかとなってまいりました.私は12月末をもって2期4年間勤めた委員長任期の満了を迎えることになりました.広報委員会では,学会Webサイトの日々の更新やエラー修正,サーバーおよびメーリングリストの管理,この鳥学通信の運営とSNSでの情報発信などをおこなっています.委員のみなさんにはそれぞれ本業でお忙しい中,委員会活動を円滑に進めるべくご協力いただき,誠にありがとうございました.

この4年の間に学会のWebサイトは,各種委員会ページの様式変更,会員マイページや役員選挙のサイドメニューの追加,リンクポリシーの掲載,SNSリンクボタンの設置などの仕様変更を進めてまいりました.任期の後半には広報委員会の活動にも少なからずコロナ禍の影響がありました.2020年度は大会が中止となり,総会も初めて書面総会となりました.それに伴い,Webサイトには例年とは異なった編集作業も生じました.鳥学通信には例年大会関連の報告記事が多かったのですが,それがなくなってしまったことから目標投稿数を大幅に下回ってしまいました.そのような状況下でも,鳥学通信には毎日100名を超えるユーザーのアクセスがあり,記事が連動投稿されるFacebookやTwitterのフォロワー数はこの2年間で大幅に増加し続けています.今年度は大会が初のオンライン開催となりましたが,報告をたくさん掲載することができ,読者のみなさんにもお楽しみいただいているようです.前例のないオンライン開催にご尽力いただいた大会事務局のみなさん,報告をご投稿いただいたみなさん,ありがとうございました.

鳥学通信では今年度は特に,大会報告だけでなく様々なトピックで積極的な記事集めに努めています.ニューノーマル時代に会員相互の情報交換や次世代の若者を含めた学会外への情報の発信を促進し,鳥学会の活動を盛り上げる一助となればと願っています.鳥学通信は委員からの依頼がなくても会員の方なら誰でもいつでもご自由に投稿していただけます(投稿先アドレスは本ブログのヘッダーに記載されています).調査・研究,教育活動の紹介や宣伝などにお気軽にご活用いただければ幸いです.

1月からは委員長は上沖正欣さんに交代しますが,私ももうしばらくは引き続き委員として活動してまいります.これをお読みのみなさんにも原稿執筆のご相談を差し上げることもあるかと思いますが,その際はご協力どうぞよろしくお願いいたします.

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画像がないとさみしいので,4年以内に見て最もうれしかった鳥の写真を上げておきます(ナキイスカ オス 2019年10月29日 利尻島).

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日本鳥学会誌70巻2号 注目論文のお知らせ

藤田 剛 (日本鳥学会誌編集委員長)

今号の注目論文が決まりました。

著者:山路公紀・宝田延彦・石井華香
タイトル:八ケ岳周辺と高山市におけるジョウビタキの繁殖環境の選好性

DOI: https://doi.org/10.3838/jjo.70.139

国内で冬鳥とされていたジョウビタキが、国内で繁殖しはじめたことをご存知の方も多いと思います。そのジョウビタキの国内での繁殖場所選択の研究です。ぜひご一読を。

この論文の謝辞を見ていただければ分るように、ほんとうにたくさんの方たちの協力によって、実現した研究です。

以下は、鳥学会編集委員のひとりとして、うれしくなるような著者のお一人からのメッセージ

この論文の掲載は、日本鳥学会に、アマチュアがプロの丁寧な指導を受けながら原著論文を発表できる場があることを証明してくれました。掲載に加えて、エディターズチョイスに選定されたことは光栄であり、感謝しております。ジョウビタキは人の生活に近い場所で繁殖します。地域の人々の生活の場から寄せられた一つ一つの情報とコミュニケーションを大切にすることで、広い調査地に感動の輪を広げることができました。この鳥は、環境順応性が高いこともあり、今後、林縁に近い住宅地や緑被の多い都市部への繁殖拡大が予想されます。しかし、まだ分かっていないことが多いです。解決のために、より多くの方々が研究されることを希望します。(山路公紀)

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市街地の住宅のベランダで営巣 2020年5月8日 長野県諏訪市(巣立ち後撮影)撮影: 山路公紀

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店舗前の郵便受けで営巣 2020年4月27日 山梨県北杜市 撮影: 山路公紀

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換羽が始まった雄が巣に餌を運ぶ 2017年8月20日 長野県茅野市(標高1,760m)撮影: 山路公紀

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巣立ち雛への給餌 2015年7月13日 長野県霧ヶ峰高原 撮影: 野中 治

(* 日本鳥学会誌では、毎号の掲載論文から編集委員全員の投票で注目論文を毎号選んでいます。選ばれた論文は、掲載直後から J-stage でダウンロード可能になります)

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2021年度中村司奨励賞を受賞して

横浜国立大学 夏川遼生

 横浜国立大学の夏川遼生です.2021年度中村司奨励賞をいただけたことを大変光栄に思います.審査委員の皆様,受賞研究の実施にご協力いただいた皆様に心より感謝申し上げます.この場をお借りして,受賞研究(オオタカが繁殖期における鳥類多様性の指標になることを都市生態系で実証した研究)とその関連論文について簡単に紹介させていただきます.

受賞研究を実施するに至った経緯
 都市化は生息地の劣化や損失をもたらすため,都市生態系の生物多様性は自然生態系のそれよりも低いことが多いです.しかし,無視してよいほど低くはなく,場合によっては自然生態系と同等かそれ以上の保全価値を持つことがあります.したがって,生物多様性の保全を考える上では都市域の保全も重要です.

 生物多様性の保全には多様性が高い地域の特定が不可欠ですが,包括的な生物相調査は限定的な時間や予算によって困難なことが多いです.そのため,生物多様性指標を使用した生物相調査の簡略化が注目されています.

 受賞研究では,生物多様性指標としての猛禽類の実用性を検証することにしました.この理由は,①猛禽類は魅力的な形態を持ち,市民や行政による保全への理解と資金の拠出を促進しやすいことと,②頂点捕食者としての機能的な重要性とその希少性から猛禽類の保護が法制度や地域条例で(多くの場合)義務化/推進されていることです.言い換えれば,猛禽類が生物多様性指標として機能することがわかれば,市民や行政の協力の下,潤沢な資金を確保し,法的に担保された生物多様性保全を実現できる可能性があります.

 上記のような背景から,生物多様性指標としての猛禽類の性能は様々な生態系で評価されてきました.しかし,前述した都市生態系の重要性にもかかわらず,都市域での研究はありませんでした.以上が今回の受賞研究を行うに至った経緯です.

調査結果とその解釈
 本研究では都市生態系に生息するオオタカを対象に生物多様性指標としての性能を評価しました.まず,神奈川県内の都市域に調査地を設定し,オオタカ繁殖地を探索しました.そして,発見したオオタカ繁殖地と無作為に選定した非繁殖地の両方で繁殖期の鳥類群集を調査し,それぞれの鳥類多様性を統計的に比較しました.その結果,オオタカ繁殖地は非繁殖地よりも高い鳥類多様性を保持することが明らかになりました.興味深いことに,森林面積のような土地被覆要因よりも,オオタカ繁殖地の存在の方が鳥類多様性をよく予測することもわかりました.この結果は,「オオタカが鳥類多様性の高い地域を選択する」という相関的なメカニズムだけでなく,「オオタカがトップダウン効果を介して高い鳥類多様性を促進する」という因果的なメカニズムが存在する可能性を示唆しています.

 トップダウン効果は本研究結果を解釈するために重要な概念です.最近の研究によると,既にオオタカが消失してしまった繁殖地であってもペアが繁殖していたときと同様のトップダウン効果が(少なくとも一定の期間は)維持されることが示唆されています1.この成果に注目し,オオタカが繁殖地に執着しなくなる越冬期にも,上記と同様の鳥類群集の調査を行いました.さらに,生物多様性指標の性能を評価するには,指標候補との生態学的な関連性(例えば,捕食-被食の関係)が弱い分類群にも注目することが望ましいことを踏まえ,木本植物群集の調査も行いました.これらの調査の結果,オオタカは越冬期鳥類と木本植物を対象とした場合も,優れた指標性能を発揮することがわかりました.さらに,繁殖期鳥類の場合と同様に,オオタカ繁殖地の存在の方が土地被覆要因よりも各分類群の多様性をよく予測しました.

 結論として,都市生態系では猛禽類が生物多様性指標として優れていることがわかりました.ただし,生物多様性指標としての猛禽類の実用性は生態系によって様々であり,同じ指標種を対象にした研究であっても完全には性能が一致しません.例えば,オオタカはイタリア2やフィンランド3の森林生態系や本研究で対象とした都市生態系では優れた指標性能を示しますが,北海道の農地生態系では生物多様性指標にならないとのことです4.したがって,この概念を他の生態系に外挿する場合は,先行事例を妄信するのではなく,背後にあるメカニズムも含めて関心地域のローカルな状況を十分に考慮することが重要です.

受賞論文とその関連研究
繁殖期鳥類の多様性に関する研究(受賞論文)
Natsukawa H. 2020. Raptor breeding sites as a surrogate for conserving high avian taxonomic richness and functional diversity in urban ecosystems. Ecological Indicators 119, 106874.

越冬期鳥類の多様性に関する研究
Natsukawa H. 2021. Raptor breeding sites indicate high taxonomic and functional diversities of wintering birds in urban ecosystems. Urban Forestry & Urban Greening 60, 127066.

木本植物の多様性に関する研究
Natsukawa H, Yuasa H, Komuro S, Sergio F. 2021. Raptor breeding sites indicate high plant biodiversity in urban ecosystems. Scientific Reports 11, 21139.

引用文献
1. Burgas D, Ovaskainen O, Blanchet FG, Byholm P. 2021. The ghost of the hawk: top predator shaping bird communities in space and time. Frontiers in Ecology and Evolution 9, 638039.

2. Sergio F, Newton I, Marchesi L. 2005. Top predators and biodiversity. Nature 236, 192.

3. Burgas D, Byholm P, Parkkima T. 2014. Raptors as surrogates of biodiversity along a landscape gradient. Journal of Applied Ecology 51, 786–794.

4. Ozaki K, Isono M, Kawahara T, Iida S, Kudo T, Fukuyama K. 2006. A mechanistic approach to evaluation of umbrella species as conservation surrogates. Conservation Biology 20, 1507–1515.

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11月11日は電柱の日?

広報委員 三上修

1年ほど前になりますが、電柱鳥類学という本を出しました。

電柱鳥類学.jpg

その本を、なぜ今頃になって紹介するかと言えば、理由は大きく2つあります。

1つは、鳥学通信は「ひと月に二報」を目指しているのですが、今月は今のところ記事が無いため、広報委員である私が自作自演(!?)をするためです。

もう1つは、今日はこの本を紹介するのにふさわしい日だからです。そう、タイトルにもあるように本日11月11日は電柱の日なのです(※厳密には、そのように一部界隈で言われているだけで、誰かが制定したわけではないようです)。

11月11日は、1が並ぶため、他にもたくさんの「〇〇の日」があります。ポッキーの日だったり、チンアナゴの日だったり、きりたんぽの日だったり。まあでも、一番ふさわしいのは電柱の日でしょう。

さて、電柱鳥類学とは聞きなれない言葉ですが、何かといえば、当然ながら電柱と鳥の関係を解明する学問分野として、私が勝手につけたものです。そんなの勝手につけていいのかと怒られそうですが、道路とそれにかかわる生物との関係を研究する道路生態学(Road ecology)なども、ある研究者が勝手につけて、いつの間にか定着してしまっています。

電柱およびそれに架かっている電線と、鳥との関わりだって、割と深いのです。森林に生息する鳥にとって、木々は、止まり木であり、営巣場所であり、索餌場所になります。一方、都市に進出した鳥たちにとっては、電柱電線が同じ役割をします。都市にいる鳥は、電柱電線に止まり、巣を作り、餌を探す場所として利用するのです。森林において、木と鳥の関係を研究する意味があるのであれば、電柱と鳥の関係だって研究したって良いではないですか。

確かに、誰かに「こんなものを研究として扱ってよいのか!?」と問われれば、正直、私も「こんな研究でいいのでしょうか?」と伏し目がちに問い返さなければならないくらいの自信しかありません。まあでも基礎研究は、究極的には面白いかどうか(知的好奇心を満たすかどうか)なので、自分が面白いと思ったらやればいいのだと思います。

それに、この研究は今しかできません。おそらく将来的に電柱電線は地中化されます。となると、我々は、電線に止まっている鳥を観察できる貴重な時代を生きていることになります。

というわけで、お散歩ついでに電線に止まっている鳥を目に焼き付けてみていはいかがでしょうか?

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第5回日本鳥学会ポスター賞 澤田さん・小原さん・井川さんが受賞しました

日本鳥学会企画委員会 中原 亨

 オンラインで開催された日本鳥学会2021年度大会では、2019年度大会に引き続きポスター賞を実施いたしました。日本鳥学会ポスター賞は、若手の独創的な研究を推奨する目的で設立されたものです。第5回となる本年度は、厳正なる審査の結果、澤田明さん(国環研・学振PD)、小原愛美さん(東京農工大連合農)、井川洋さん(信大・理)が受賞しました。おめでとうございます。

 ポスター賞の審査区分は2019年度大会の後に再編を行い、分野の近いものをまとめて3部門へと変更しました。部門数が増えたことで、受賞の機会は以前より増加したと言えます。ポスター賞は30歳になるまで何度でも応募できますので、あと一歩だった方も、2次審査に残れなかった方も、是非来年再挑戦してください。
 
 最後に、ポスター賞の審査をご快諾して頂いた6名の皆様、記念品をご提供頂いた株式会社モンベル様、サントリーホールディングス株式会社様、公益財団法⼈⽇本野⿃の会様、ならびに大会実行委員の皆様にこの場をお借りして御礼申し上げます。

2021年日本鳥学会ポスター賞


応募総数:33件(繁殖・生活史・個体群・群集部門:8件、行動・進化・形態・生理部門:13件、生態系管理/評価・保全・その他部門:12件)

【受賞】
《繁殖・生活史・個体群・群集》部門
「メスの生存が南大東島のリュウキュウコノハズク個体群の運命を左右する」澤田明・岩崎哲也・井上千歳・中岡香奈・中西啄実・澤田純平・麻生成美・永井秀弥・小野遥・高木昌興

《行動・進化・形態・生理》部門
「ハシブトガラスによる画像弁別はなにを手がかりにしているか?」小原愛美・青山真人・杉田昭栄

《生態系管理/評価・保全・その他》部門
「長野県諏訪湖湖岸のヨシ原における繁殖期のオオヨシキリ出現に影響する要因の検討」井川洋・笠原里恵

【次点】
《繁殖・生活史・個体群・群集》部門
「亜高山帯から高山帯への資源補償と高山性鳥類の餌生物」飯島大智・村上正志

《行動・進化・形態・生理》部門
「海洋島に進出した陸鳥は島嶼適応として飛翔能力を維持することがある」辻本大地・安藤温子・中嶋信美・鈴木創・堀越和夫・陶山佳久・松尾歩・藤井智子・井鷺裕司

《生態系管理/評価・保全・その他》部門
「希少種アカモズの繁殖に好適な果樹園環境と個体数減少要因を探る」赤松あかり・青木大輔・松宮裕秋・原星一・古巻翔平・髙木昌興

【一次審査通過者】
《繁殖・生活史・個体群・群集》部門
「伊豆諸島新島に、シチトウメジロとホオジロは何羽いるのか」立川大聖・長谷川雅美
「二次草原で繁殖する開放地性鳥類群集と草原の管理方法、植生構造や節足動物相との関係」水村春香・渡邊通人・久保田耕平・樋口広芳

《行動・進化・形態・生理》部門
「モズの給餌様式を決定する要因」江指万里・青木大輔・千田万里子・松井晋・高木昌興
「リュウキュウコノハズクの広告声の血縁者間での類似性について」中村晴歌・澤田明・高木昌興

《生態系管理/評価・保全・その他》部門
「新潟県に生息するチゴモズの繁殖場所規定要因解明」立石幸輝・鎌田泰斗・高岡奏多・冨田健斗・関島恒夫

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ポスター賞を受賞して

澤田明(国環研・学振PD)

 こんにちは、国立環境研究所・学振PDの澤田明です。このたびは日本鳥学会2021年度大会において「繁殖・生活史・個体群・群集」部門のポスター賞をいただき誠にありがとうございます。この研究は私の所属する研究グループが長期的に蓄積してきた南大東島のリュウキュウコノハズクの基礎データを用いたものでした。長期調査を立ち上げ維持してきた先生や先輩たち、一緒に野外調査をしてきた学生たち、いつも島で私たちを受けいれ応援してくださる島民の皆さま、研究費を助成いただいた複数の財団や企業さまにお礼申し上げます。また、鳥学会の運営の皆様、記念品をご提供いただいたモンベル様、サントリー様、日本野鳥の会様にもこの場を借りてお礼申し上げます。毎年私たちの調査研究に付き合ってもらっているリュウキュウコノハズクたちにも感謝いたします。

ポスターの概略
 高次捕食者はしばしば保全の対象とされてきました。なぜなら高次捕食者はその生息地の生物多様性の指標として機能する可能性があったり、知名度の高さから保全活動の象徴的存在となったりするからです。フクロウ科は全世界に広く分布している主要な高次捕食者です。しかし、調査研究の進んでいる種はほとんどが、温帯から亜寒帯に生息する大陸の種で、科の大半を占める熱帯や亜熱帯の種は、保全対象としてあまり注目されていません。生息域のアクセスの悪さと,夜行性であることで調査がしにくいことが大きな理由です。しかし、特定地域や島の固有種である種も多く、それらは人知れず絶滅の危機に瀕している可能性があります。

 保全の目的は個体数を把握し絶滅をしないように維持することなので、個体群動態解析は保全研究の中心的な仕事です。近年用いられている個体群動態解析にIntegrated population model (IPM)という手法があります。IPMは個体群動態に関わる様々なデータ(生存履歴、巣立ち雛数、性別、センサスで数えた個体数など)をひとまとめに用いて、個体群動態の様々なパラメータ(生存率,産仔数、個体数,個体群成長率など)を同時推定する手法です。複数のデータを用いてパラメータを一度に推定することにより,各データに含まれる情報が効率よくパラメータ推定に利用され、各パラメータをそれぞれの別のデータで個別に推定する場合よりも,優れた推定ができるとされています。

 私は熱帯・亜熱帯・島嶼域のフクロウの個体群動態研究のモデルケースとして、南大東島のリュウキュウコノハズク(亜種ダイトウコノハズク)の個体群動態解析を行いました。ダイトウコノハズクは2002年から現在に至るまで繁殖モニタリングが継続され、特に2012年以降は島内の全個体を対象にした詳細な調査が毎年実施されています。今回の解析では2012年から2018年の間にのべ2526個体から得られた生存履歴、繁殖成績、性別、縄張り情報のデータを利用しました。

図_澤田.png
実際の捕食事例

A:捕食に会い、片方の翼をもがれてしまった雛。
B:巣立ち目前の雛が捕食されたあと。巣立ちが近づくと巣の入り口に立って餌をねだるため捕食に会いやすいのかもしれない
 解析の結果、個体数はオスが297個体、メスが273個体と推定されました。個体群成長率(ある年の個体数/前年の個体数)は0.98と推定され、個体数の減少傾向が確認されました。Life-stage simulation analysisという解析により、メスの年間生存率の低下が個体群成長率の低下をもたらすことも示され、メスの死亡が個体数変動に影響することが示されました。南大東島では人為移入されたネコやイタチによる繁殖中のメスや雛の捕食がしばしば確認されています(上図)。これらの捕食が個体群に悪影響を与えている可能性があります。本研究は熱帯・亜熱帯・島嶼域のフクロウ研究としては最も詳しい個体群動態の基礎データを提示しており、世界のフクロウ保護に貢献するものです。
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ポスター賞を受賞して

小原愛美(東京農工大連合農)

  

 このたびは2021年度の鳥学会ポスター賞をいただきまして誠にありがとうございました。

 受賞の連絡を受けたのはカラスたちの世話をしようと家を出たところでした。まさか自分が選ばれるとは露ほども考えていなかったのでたいへん驚きました。
 
 オンライン学会では、気軽な質問がしにくいというデメリットを感じたものの、過去の質疑応答が閲覧できたり、外部のより詳細な論文への誘導を気軽に行えたりというメリットが大きく、楽しい時間を過ごせました。鳥学会大会事務局の方々など関係者の皆様にお礼申し上げます。貴重な機会をいただきましてありがとうございました。

今回の発表の内容について
 ハシブトガラスは都市や農村における代表的な害鳥です。カラスは嗅覚があまり発達していないため、食物の探索や物の認識には主に視覚を利用していると考えられています。カラスをはじめとした鳥類はヒトとは大きく異なる視覚機能を持つことから、カラスの物の認識の仕方はヒトと異なっている可能性があります。

 これまでにハシブトガラスでは、ヒトの顔写真から男女の弁別ができることなどが報告されていますが、カラスが画像をどのように認識し、弁別を行っていたかは分かりませんでした。そこでこの研究では、「ハシブトガラスは画像に写っているものを認識するためにどんな手がかりを使っているのか?」を明らかにするために実験を行いました。
 
 実験では、4羽のカラスに様々な鳥の画像を2枚1組で提示し、その中から正解となる特定の種の鳥の写真を選ぶように訓練しました。訓練を終えたのちに、カラスが見たことのない写真や、加工を施した画像でも正解を選択できるかどうか観察しました。その後、カラスがどのような画像を正解として認識していたのか、どんな手がかりを利用して画像を弁別していたのかを検討しました。

井川.png
スズメの色をしたハトの画像をつついたカラス

 その結果、カラスの弁別は、「画像の色や模様の情報」と「鳥の形の情報」の二つを手がかりとして正解を選択していたことが示唆されました。この色や形の情報は、それぞれ単独では正解を認識するための手がかりとはならず、両方の手がかりを組み合わせて使用していたと考えられました。この結果は、カラスがハトとは異なった認知の方法をとっている可能性を示しています。

 今回の研究は実験に参加した個体数が少なく、さらにそれぞれに個体差が生じているために、すべてのカラスでこの結果と共通の結果を得られるかどうかはわかりません。また、画像を実際の鳥として見ていたかどうかもわかりません。今後はそのあたりを明らかにするために研究を行っていきたいと考えています。

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日本鳥学会ポスター賞[生態系管理/評価・保全・その他部門]を受賞して

信州大学 井川 洋

 この度は2021年鳥学会大会でポスター発賞を頂くことができ,大変光栄に思っております.

 私は信州大学の鳥類学研究室の一期生であることに加え,時勢の影響もあり,先輩や他の研究者との交流が少ない中で研究を暗中模索する必要があり,とりあえず湖畔を自転車で巡る日々でした.そんな中でも,笠原先生や長野県環境保全研究所の堀田様をはじめ,様々な方にお助けいただき,何とか計画がまとまり,発表にこぎつけることができました.研究に協力いただいた皆様に心より御礼申し上げます.

 今回のポスター発表に際しては,データの性質上粗くなってしまった研究結果をできる限り分かりやすく考察し,意見を頂くことに注力しました.そのおかげか,多くの方々に情報や指導を頂き,大きく成長できたと感じています.鳥学会の運営の皆様,審査員の皆様,ポスターをご覧いただいた皆様に感謝しております.
 今回の受賞によってまた更に多くの方の注目と期待を頂いたことを自覚して,それに恥じないよう,今後とも研究に励む所存です.

 ポスター賞の記念品として,mont-bell様からマウンテンパーカー,日本野鳥の会様からアホウドリの水筒,サントリー様からシャンパンを頂きました.前の二点は今後の調査で使い,シャンパンは論文投稿の祝いにとっておこうと思います.その頃にはもう少しコロナの感染状況も落ち着いているといいのですが…

ポスター発表の概要
 ヨシ原は水辺の代表的な植物群落で,様々な生物の生息地ですが,近年の水辺開発による分断化が問題となっています.しかし,分断化されたヨシ原の中でも,条件によっては生育が可能な種もいます.本研究ではヨシ原を利用する生物としてオオヨシキリに着目しました.諏訪湖周辺において,分断化されたヨシ原を本種が利用する上で重要な環境要因について検討しました.

図_井川1.JPG

 諏訪湖の湖岸には面積0.01~0.4haのヨシ原が点在するのみですが,5~8月の繁殖期にはオオヨシキリが盛んにさえずっています.そこで,彼らの個体数を目的変数,ヨシ原の面積や構成する植物等の環境要因を説明変数として一般化線形混合モデルで分析を行い,彼らの好む環境を解析しました.結果として,ほぼ全ての調査地点でオオヨシキリは記録されました.また,解析結果から,本種の個体数には繁殖場所となるヨシ原面積やヨシの被度が有意な正の効果を持ち,その重要性が示唆されました.一方でヨシの刈り取りは有意な負の影響を示し,好まれないことが示されました.また,ヨシ原だけではなく,マコモ等の水辺植物も個体数に有意な正の効果を示し,採食場所である可能性が示唆されました.また,特定の月にのみ影響を与える変数も見られました.

図_井川2.JPG

 これらのことから,オオヨシキリの繁殖からみた湖岸のヨシ原管理では,主な生息地であるヨシの他,マコモなどのイネ科植物を採食場所として残すことが重要だと考えられます.

 本研究では行動追跡や繁殖成功の調査は行えていないため,個々の変数の機能や重要性は不明ですが,現在の分断化されたヨシ原とオオヨシキリの関係を粗く広く把握することができました.今後,分断化されたヨシ原の研究の詳細な調査が発展することが期待されます.

 修士課程に進学した現在は調査地を諏訪湖の水源でもある霧ヶ峰に移し,低木除去が鳥類に与える影響の研究を行っています.長野県には複雑な地形を人が改変し,共存してきた歴史があります.ここで人為的な操作に対する鳥類の応答の把握を試み,今後の研究や保全手法の発展につながる面白い研究をしていきたいと考えています.

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日本鳥学会2021年度大会運営始末記

山階鳥類研究所
浅井芝樹

 2021年度大会はCOVID-19感染拡大の影響を受け、日本鳥学会としては初めてのオンライン開催となりました。大過なく終えることができたようで、まずはほっとしていますが、ここに至る内幕や意見など散文調で書いてみたいと思います。

画像3.png

1)経緯など
 2021年度大会の事務局は山階鳥類研究所(山階鳥研)でしたが、山階鳥研がある我孫子市とその周辺では適切な会場を用意することが難しく、東邦大学を会場とすることで話を進めていました。2019年の秋には東邦大学の長谷川雅美さんに奔走していただき、会場を抑える準備をしていました。ところが、2020年の初めごろからCOVID-19感染拡大に伴って多くのイベントが中止になり、各自然史系学会も延期・中止となっていくなかで、ついに日本鳥学会2020年度大会(東京農業大学北海道オホーツクキャンパス(網走))も5月に中止の判断となったのでした。2021年度の東邦大はそのまま進めるつもりでしたが、COVID-19感染は縮小の気配を見せず、多くの大学キャンパスの使用について目処がたたないままとなりました。大会実行委員会では2020年夏頃からオンライン開催やむなしという意見が上がり、オンサイト開催の可能性も残して同時並行に進めるのはコストが大きいため、完全にオンライン開催へと舵を切りました。

 私自身は、2018年度より学会事務局長を務め、2020年度の東農大(網走)での開催提案、2021年度の山階鳥研(東邦大)による開催提案、東農大(網走)大会の中止判断、のすべてに関わっていました。2大会連続の中止だけは避けたいという思いがありました。2021年度は山階鳥研が大会事務局であり、自身が大会実行委員の一人ですから、オンラインでとにかくやるということを大会実行委員会内で自ら主張すべきだと考えていました。

 幸い、大会実行委員会はすぐにオンライン開催でまとまったのですが、山階鳥研で果たしてオンライン開催ができるのでしょうか?そもそも学会事務局長として、山階鳥研が大会事務局となって開催すれば良いと判断した理由は、経験が多い学会員が多数いるということが理由だったのですが、多数いるにしても自分も含めて残念なぐらい「ネット」とか「デジタル」とかに弱いメンバーではないか?!

 2020年度の鳥学会は中止となりましたが、バードリサーチが鳥類学大会2020をオンライン開催しました。そこでさっそくバードリサーチから神山和夫さんと高木憲太郎さんにスタッフへ加わってもらいました。また、学会ウェブサイトを切り盛りしている広報委員会から上沖正欣さん、普段からYouTubeでライブ配信を行っている我孫子市鳥の博物館の小田谷嘉弥さんにスタッフへ加わってもらってオンライン開催体制を整えました。
オンライン開催するために利用する配信システムの発注は、参加者数で見積もりする必要があります。そこで、急遽2021年1月に会員の皆さんへ参加・発表意思についてアンケート調査を行い、それに伴って予算策定し、参加費を確定しました。

 オンライン大会をイメージしやすくするために、普段の大会で実施する発表形式をできるだけ再現することを目指しました。そのため、口頭発表とポスター発表などの区分を例年通りに設けました。ポスター発表に代わるものとしてLINC Bizというサービスを利用することは比較的早くに決まっていましたが、(その当時の大会実行委員会判断では)LINC Bizは大会実行委員会側でアレンジするところはあまりありませんでした。一方、口頭発表に代わるものとして選んだZoomというサービスは利用方法を選ぶ必要がありました。しかし、使いこなしたメンバーが少ない大会実行委員会ではぎりぎりまでどんなことができるのか、どんな問題が生じうるのかわかっていませんでした。実際に認識し始めたのは、9月になって直前シミューレーションをし始めてからではなかったかと思います。ぶっつけ本番だったわけです。大会実行委員会自体がそんな状態だったので、参加者は利用に苦労するのではないかと危惧して、利用の仕方を丁寧に説明するマニュアル作成をしなければならないのではないか、それでも結局わからずにたくさん質問が届くのではないか、ということを危惧していました。それにもかかわらず、事前マニュアルはZoomやLINC Bizが作成したものの流用や、バードリサーチ鳥類学大会で作成されたものの流用しか用意しませんでした。当日は、「質問はチャットへ」とアナウンスした上で、電話番、メール番を常に配置することにして待っていましたが、蓋を開けてみると質問対応することはありませんでした。参加者は特に問題なく会場にアクセスしてきたようです。考えてみれば、このウイルス禍の中でZoomを始めとしたオンライン会議に慣れていて、参加することに特に違和感はなくなっていたのかもしれません。

 当日はどこの大会実行委員会でもそうだと思いますが、朝からずっと忙しい一方で準備してきたことを粛々とこなす以外のことはありません。その点はオンラインでも変わらないことです。

2)開催の利点・問題点
 今回の大会は学会誌での事前説明がほとんどなく、内容が決まり次第ウェブサイトで周知するという態勢になりました。また、当日各会場への参加も参加者用ウェブページからリンクするといった方法を取りました。したがって、ウェブサイトの運営・編集が重要でしたが、スタッフとして参加してもらった上沖さんがスムーズにウェブサイト編集をしてくれたので大変助かりました。また、公開シンポジウムは会員外でも参加できるようにYouTube配信することに決めましたが、普段から利用している小田谷さんをスタッフに迎えたので、これも簡単にことが進みました。やはり、そういったことに強いスタッフが1人いるかどうかは大きな違いとなりそうです。
 
 オンライン大会は(少なくとも今回の方式では)事前申し込みでしかできません。このことが大会当日受付を考えなくてよい、ということにつながりました。今回は初めてのオンラインだったので、例年実施しているけれども難しいと思われたことはしないことに決めました。要旨集は手渡しできないから印刷しない、現金以外の支払い法を確立することにコストが大きいからグッズ販売はしない、エクスカーションはしない、といったことです。これらのことは収入見込みを容易にすることと支出の縮小につながりました。

 普段の学会運営を行う学会事務局と、大会運営する大会実行委員会は別組織です。普段の大会なら、評議員会や各種委員会、総会、各賞授賞式、受賞記念講演の開催は、大会実行委員会の企画ではなく、学会事務局が大会実行委員会から場所を借りて実施しています。2021年度の場合、各種委員会と評議員会はオンライン会議とするしかないので大会前に実施しました。総会は2020年度と同様に書面総会としました。これらのことによって大会実行委員会は会場管理の負担が減っています。今後、オンサイト開催が再びできるようになってからも考慮して良い事柄ではないでしょうか。

 大会実行委員会のなかで一番大きな反省点として、口頭発表の質問対応が十分ではなかったということがあります。座長が時間内にチャット質問を取り上げることでしか対応できませんでした。時間がなくなった時はいつもなら「個別に議論してください」と言って次の発表に移るところですが、オンラインで「個別に・・・」ということはどういうことを指すのか、大会実行委員会でアイディアがなく、案内することができませんでした。これは配信システムを熟知して便利な機能を使えばできたかもしれません。

 大会実行委員会ではできるだけ普段通りに実施するという方針で、展示ブースも用意しました。しかし、客の入りはよくありませんでした。Zoomで来店するのはやや敷居が高いらしいこと、来店しても売り物を直接見せることができないこと、支払いにワンクッション入ることなどが大きなハードルだったようです。

 オンラインだと遠隔地のメンバーで運営できるという漠然としたイメージがありましたが、実際には集まらなければなりませんでした。今回、口頭発表では、発表者と直接やり取りしているのは座長1人でしたが、次の発表者をZoomウェビナー上で待機させる係、タイムキーパー(座長はチャット質問に集中しているので時間管理はしていない)、Zoomウェビナーの管理者(ホスト)の4人が連絡を取り合える1部屋に集まっていました(発表中にどのようなトラブルがあるか分からないので関係者は1部屋にいた方が良い)。口頭発表会場は2会場あるので2部屋8人が常時集まっていたのです。感染対策のために机配置を考えたり、消毒液を用意したりしていましたが、大会実行委員会はやや密だったと言わざるを得ません。

3)大会後の全体的な印象
 何をするのも初めてだったというのが、大変さを感じた理由でした。これまでの大会実行委員会から引き継いだスケジュールもあまりあてになりません(あるいはあてにならないだろうと思ってあまり参照しなかった)。いろいろ考えてもそれがいい方向に向かっているのかどうか確信を持てないまま進めることになりました。どこまで進めても、何割進んだのか確かめる術がなかったのです。

 一方、逆の印象としては、やってみればなんとかなる、ということです。これは学会事務局メンバーである私個人の話ですが、昨年はやはり初めての試みとして書面総会を実施しました。これもどこまで進めてもうまくいっているのかどうか確信を持てないまま手探りでした。結果としてはなんとかなったと感じています。今年も書面総会とさせていただきましたが、ずっと気楽に実施できました。今回のオンライン大会もよかったかどうかは微妙ですが、一応こなせたと感じています。今回大会の参加者からのお叱りは、これから多数集まるかもしれませんが、少なくとも同じ形式で次に誰かが実施するときの土台は作れたのではないでしょうか。今回大会は、例年のオンサイト大会へ参加した時のイメージにできるだけ近づけることを1つの目標としていました。しかし、オンライン開催ならオンラインに特化した開催方法も考えられるでしょう。例年通りじゃなかったというお叱りでも、オンラインらしくなかったというお叱りでもどちらでもかまいません。そういう声をいただければ、大会実行委員会に最後に残された仕事は、それらの声を整理して、次期大会以降へ引き継ぐことだと考えています。

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