2023年度日本鳥学会 ポスター賞 受賞コメント(森 真結子)

森 真結子(帯広畜産大学 保全生態学研究室) 

 この度は、日本鳥学会2023年度大会において、「生態系管理/評価・保全・その他」部門のポスター賞に選んでいただき、誠にありがとうございます。今回発表させていた研究は、私自身の初めて行った研究であり、このような賞をいただくことができ、驚きと喜びの気持ちでいっぱいです。
 共に研究を作り上げて行く中で、いつも親身になって下さり、熱心にご指導いただきました保全生態学研究室の赤坂卓美先生には心よりお礼申し上げます。また、調査に同行して下さった研究室の皆様をはじめ、本研究に携わって下さった全ての皆様にもお礼申し上げます。
 本大会を通じて、多数の方々より貴重なご意見やアドバイスをいただきました。いただいた言葉ひとつひとつを整理し、さらに研究と向き合っていきたいと思います。また、大会を運営してくださった実行委員会の皆様および関係者の皆様にもお礼申し上げます。これまでにない貴重な経験をさせていただけたこと、感謝いたします。

研究の概要
 これまで鳥類による害虫抑制が、作物の収量増加に大きく貢献することが様々な研究で明らかになってきています。しかし、農業の集約化は鳥類の種数および個体数を著しく低下させています。世界の食料生産の需要が高まる中で、如何に生産量の増加と生態系サービスの享受を両立していくかが、今後の持続可能な社会の実現に欠かせない課題となっています。
近年、集約的農業において、土壌の質を改善するために緑肥作物が注目され始めています。休閑緑肥圃場は、農薬の散布や人の介入が少ないことから、鳥類にとって好適な生息場を提供し、周辺の農地への鳥類の害虫抑制機能をも増加させる可能性があります。そこで本研究では、持続可能な農業の実現を目的に、休閑緑肥圃場が有する鳥類の保全機能および周辺農地に対する鳥類の害虫捕食量を明らかにしました。
 北海道十勝平野において、休閑緑肥圃場と周囲に休閑緑肥圃場がない圃場を各11か所選定し、ラインセンサス法により鳥類相を調査しました。さらに、隣接する圃場内において鳥類による害虫捕食量を、疑似餌を用いて定量化しました。これにより得られたデータと休閑緑肥の有無、および周囲の土地被覆面積(森林面積と荒地面積)の関係をモデル化しました。

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調査圃場内において疑似餌を設置する様子
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設置した疑似餌についた鳥類による捕食痕

 結果は、鳥類の種数および個体数は休閑緑肥圃場内で増加しており、周囲の森林面積によっても増加していました。また、この鳥類の種数の増加を介して、休閑緑肥圃場に隣接する圃場内では疑似餌の捕食量が増加しました。本研究は、休閑緑肥圃場が有する新たな機能を明らかにし、休閑緑肥のさらなる導入が持続可能な集約的農業の実現に貢献することを示唆します。

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2023年度日本鳥学会 ポスター賞 受賞コメント(飯島大智)

東京都立大学・学振PD
飯島大智

 東京都立大学・学振PDの飯島大智です。このたびは日本鳥学会2023年度大会において「繁殖・生活史・個体群・群集」部門のポスター賞を授与していただき誠にありがとうございます。貴重な発表の場を設けていただいた大会関係者の皆様、ポスター発表でご意見を下さった皆様に御礼申し上げます。また、記念品をご提供いただいたモンベル様にもこの場を借りて感謝申し上げます。

研究の概要
 山岳は、垂直方向に気温や植生などの環境が劇的に変化するため、生物多様性や生物群集の地理的な勾配を形作るプロセスを探究するための理想的なシステムです。生物群集を種数などの指標に加えて、構成種の系統や形質から特徴づけ、環境との対応を調べることで、群集を形成するプロセスを深く理解することができます。しかし、山地帯から高山帯にかけた広い標高範囲にかけた生物の群集構造の標高勾配に対する自然環境と人間による土地利用の改変が与える相対的な影響は完全には解明されていません。

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野外調査中の風景。乗鞍岳の山頂(3,026m)を望む

 そこで本研究では、長野県乗鞍岳(標高3,026m)の山地帯から高山帯にかけて野外調査を実施し、鳥類群集を種数と、系統・形質構造から調べ、鳥類群集に自然環境と人間による土地利用の改変が与える相対的な影響を解明することを目的としました。種数、系統・形質構造は標高100mごとに調べました。具体的には、種構成をランダムに決定した群集と実際の群集の形質・系統構造を比較し、ランダム群集よりも実際の群集の構成種間の形質や系統が似ている群集(クラスター)、または異なっている群集(過分散)を調べました。群集のクラスター構造は、環境フィルターにより特定の生態を持つ種が選択されたこと示し、過分散構造は、種間競争などによって似た生態をもつ種が群集から排除されたことを意味する指標です。そして、種数と系統・形質構造に自然環境と人間による土地利用の改変が及ぼす影響を、空間自己相関を考慮した重回帰分析によって調べました。

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高山帯に生息するライチョウは、氷河期の生き残りと呼ばれる生物の1種である

 解析の結果、乗鞍岳の鳥類群集の種数、系統・形質構造は、高山帯、亜高山帯の上部、亜高山帯の下部から山地帯において、異なる特徴をもつことがわかりました。高山帯では低温、樹木のない環境、乏しい餌資源が、亜高山帯上部では数種の樹種が優占する針葉樹林が鳥類群集の構造に強い影響を与えていることが示されました。また、自然環境が鳥類群集に与える影響は、人間による土地利用の改変が与える影響よりも強いこともわかりました。以上の発見は、高山帯の鳥類群集は気候変動に対して、亜高山帯上部の鳥類群集は亜高山帯針葉樹林の開発に対して脆弱であることを示唆し、山岳の生物多様性保全に貢献するものです。今後は、鳥類群集だけでなく、高山帯や亜高山帯の生態系全体が気候変動や人為的撹乱に対してどのような影響を受けるのかを理解し、将来引き起こされうる変化の予測に寄与できる研究を進めていきたいと考えています。

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2023年度日本鳥学会 ポスター賞 受賞コメント (寺嶋太輝)

東京農工大学農学府共同獣医学専攻D2
寺嶋太輝

 この度は、日本鳥学会2023年度大会におきまして、「行動・進化・形態・生理」部門のポスター賞をいただき誠にありがとうございます。ポスター発表に足を運んでくださった皆様に御礼申し上げます。本研究は、日本野鳥の会の皆様や現地でサポートしてくださる神津島の皆様をはじめとする多くの方々のご協力の上で成り立っています。この場をお借りして感謝申し上げます。

ポスター発表の概要
 尾腺は鳥類に特有の分泌腺であり、その分泌物は羽づくろいの際に全身に塗り広げられます。近年、いくつかの鳥種において、分泌物組成に種差や性差、季節変化が報告されています。中でも、嗅覚の発達する海鳥では、尾腺分泌物の個体差を識別している可能性が示唆されています。本研究では予備的な研究として、国内に繁殖する海鳥2種について、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いた尾腺分泌物の定性解析方法を確立した上で、種差および性差が存在するかを調べました。

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オーストンウミツバメ成鳥。捕獲は学術申請許可のもと実施した。

 その結果、対象としたオーストンウミツバメおよびオオミズナギドリについて、明確に異なるクロマトグラムを得ました。一方、この2種間で互いに共通して存在するいくつかの代謝物を同定しました。また、オーストンウミツバメでは雌雄で有意に異なる代謝物が6つ同定されました。2種で共通して存在する代謝物は、種の違いを超えた共通の尾腺分泌物の役割を担っている可能性があります。今後は、採取時期や個体数を増やすことで種差や性差を生む代謝物が繁殖期を通じて変化するのかを明らかにしていきたいと考えています。
 ウミツバメ科の海鳥は、謎多き海鳥の中でも、その体の小ささや専ら遠洋性の行動、繁殖地においての夜行性の活動がゆえに、その生理・生態系はほとんどわかっていません。私はオーストンウミツバメの尾腺分泌物組成に関する基礎研究に加え、尾腺分泌物を利用した環境汚染調査やジオロケータによる生態調査などの応用研究も行っています。これらの情報を有機的に繋ぎ合わせ、国内の他種ウミツバメ、特に絶滅の危機に瀕したウミツバメ、さらには世界中の小型海鳥の保全に役立たせることを夢見ています。

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第7回日本鳥学会ポスター賞 飯島さん・寺嶋さん・森さんが受賞しました

日本鳥学会企画委員会 中原 亨

 日本鳥学会ポスター賞は、若手の独創的な研究を推奨する目的で設立されたものです。昨年に引き続き対面形式で開催された日本鳥学会2023年度大会では、第7回ポスター賞を実施いたしました。厳正なる審査の結果、本年度は、飯島大智さん(東京都立大学)、寺嶋太輝さん(東京農工大学)、森真結子さん(帯広畜産大学)が受賞しました。おめでとうございます。

 応募総数は、多かった昨年度をさらに上回り、57件と過去最高を更新しました。チャレンジする若手は着実に増えてきているようです。会場は熱気に包まれ、活発な議論が行われていました。ポスター賞は30歳まで、受賞するまで何度でも応募できますので、あと一歩だった方も、2次審査に残れなかった方も、是非来年再挑戦してください。

 最後に、ポスター賞の審査を快諾して頂いた9名の皆様、記念品をご提供頂いた株式会社モンベル様にこの場をお借りして御礼申し上げます。

日本鳥学会2023年度大会ポスター賞
応募総数:57件
 繁殖・生活史・個体群・群集部門:14件
 行動・進化・形態・生理部門:21件
 生態系管理/評価・保全・その他部門:22件

【受賞】
《繁殖・生活史・個体群・群集》部門
「系統・形質アプローチから解明する山岳の鳥類群集の群集集合」
飯島大智・小林篤・森本元・村上正志

《行動・進化・形態・生理》部門
「オーストンウミツバメとオオミズナギドリにおける尾腺分泌物の定性分析」
寺嶋太輝・山本裕・田尻浩伸・手嶋洋子・永岡謙太郎

《生態系管理/評価・保全・その他》部門
「集約的農業景観における鳥類の保全と生態系サービスの享受に対する休閑緑肥圃場の貢献」
森真結子・赤坂卓美

【次点】
《繁殖・生活史・個体群・群集》部門
「ヒクイナは巣立ち雛のために新たに“抱雛巣”をつくる」
大槻恒介

《行動・進化・形態・生理》部門(同点2件)
「鳥類の鳴き声行動の理解に対するロボット聴覚に基づく観測と生成進化モデル」
古山諒・鈴木麗璽・中臺一博・有田隆也

「亜種リュウキュウオオコノハズクにおける翼の性的二形と育雛行動の関連」
江指万里・宮城国太郎・熊谷隼・細江隼平・榛沢日菜子・武居風香・高木昌興

※9月17日の授賞式にて、スクリーンに表示していたにもかかわらず、読み上げそびれていました。この場を借りてお詫び申し上げます。大変申し訳ございませんでした。

《生態系管理/評価・保全・その他》部門
「公立鳥取環境大学構内における鳥の窓ガラス衝突と紫外線カットフィルムを使った対策の効果」
市原晨太郎

【一次審査通過者】
《繁殖・生活史・個体群・群集》部門
「津軽平野で繁殖するゴイサギの繁殖期の行動パターンと渡り」
  柴野未悠・東信行

《行動・進化・形態・生理》部門
「種内の体色評価に画像利用は有効か?スペクトロメーターを利用した体色研究」
  榛沢日菜子・武居風香・髙木昌興

《生態系管理/評価・保全・その他》部門
「野生のウミネコのテロメア長は水銀暴露によって短縮する」
  大野夏実・水谷友一・細田晃文・新妻靖章

「DNAバーコーディングで明らかになった、絶滅危惧種カンムリワシの季節的な食性の差」
  戸部有紗・佐藤行人・伊澤雅子

「小笠原諸島で採集した海鳥巣材に含まれる種子の組成-海鳥による種子分散の観点から-」
  水越かのん・上條隆志・川上和人

「江戸時代の歴史資料から探る北海道におけるワシの分布」
  池田圭吾・久井貴世

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左から寺嶋さん、飯島さん、森さん、綿貫会長
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ポスター賞応募のいろは ~講演要旨は大事~

企画委員会 中原 亨

6月1日から、日本鳥学会石川大会の申し込みが始まりました。現地での発表を検討されている方も多いのではないかと思います。若手会員の中には、ポスター賞へ応募される方もいらっしゃることでしょう。今回は、ポスター賞について、少し書かせていただこうと思います。

日本鳥学会ポスター賞は、若手の独創的な研究を推奨する目的で設立されたものです。2016年度から常設の賞となり、2023年度大会で第7回を迎えます。30歳以下の若手会員が対象となっており、毎年学生を中心とした多くの方々が応募しています。以前は2部門で募集を行っていましたが、内容の多様化や応募者の増加に伴って2021年度から審査部門を再編し、現在は「繁殖・生活史・個体群・群集」「行動・進化・形態・生理」「生態系管理/評価・保全・その他」の3部門で募集を行っております。

さて、ポスター賞は、どのように審査されているのでしょうか?
ポスター賞は毎年、前もって企画委員会からお願いをし、ご承諾いただいた方々によって審査が行われています。各部門数名の審査員が、手分けしてすべての応募発表に目を通しています。多くの場合は一次審査と二次審査を行っており(大会スケジュールによっては二次審査を実施しない場合もあります)、一次審査では講演要旨とポスターをもとに「研究のオリジナリティ」「妥当性」「学術的・社会的な重要性」「研究テーマの将来性」「ポスターのわかりやすさ」について評価して受賞候補を絞り込みます。二次審査では、絞り込んだ受賞候補者のプレゼンテーションを実際に聞いて、同様の評価項目について再度検討し、受賞者を選出しています。喫緊2回(2021年と2022年)のポスター賞の審査状況を見てみると、応募総数が33件と48件、一次審査通過が11件と13件で、そのうちそれぞれ3件がポスター賞を受賞しています。

ここで1つ、注目してほしいことがあります。それは、参加申し込み時に提出する「講演要旨」が一次審査の対象に含まれているということです。つまり、審査はポスター賞応募と同時に始まっているのです。皆さんの中に、講演要旨をただの「予告」と考えている方はいませんか?それは大きな間違いです。講演要旨は論文のabstractと同様に、発表内容を要約したものである必要があります。つまり、要旨の中にも「緒言、材料・方法、結果、考察」が端的にまとめられているべきなのです。しかし講演要旨の中には、最後が「~について報告する予定である」や、「~について検証する」のような形で終わっていて、ほぼ緒言に終始していて方法・結果・考察が書かれていないものが散見されます。こうしたものは、講演要旨としては不十分であると言わざるを得ないでしょう。要旨を読んだだけで研究の全体をつかめるようにすることは重要です。結果がまだ出ていないからという理由で予告めいた形で書く方もいらっしゃいますが、少なくともポスター賞に応募する方々には、論文のabstractを書く時と同じだと考えて、整った講演要旨を作成していただきたいところです。ちなみに私は学生時代に指導教員から「要旨の中で結果を述べるときは具体的な数値も書いたほうが良い」とアドバイスを受けました。サンプル数や解析値などを記述することで、具体性を高める効果が期待できます。

さて、ここでは講演要旨に注目してみましたが、ポスターの内容をわかりやすく他人に伝えるためには、様々なノウハウがあります。近年はポスタープレゼンの指南書が発売されていたり、気を付けるべきポイントがWEBサイトで紹介されていたりします(ぜひ検索してみてください)。また、百戦錬磨の先生方や先輩方からの教えもあるかもしれません。こうした資料や意見を参考にしつつ、ポスター賞に応募される皆さんは、見た目にもわかりやすいポスターの作成を目指してください。研究の魅力や面白さをわかりやすく他人に伝えることは意外と難しいですが、伝えようとする努力を怠らなければ、内容に注目してくれる方々も増えることでしょう。たくさんのご応募、お待ちしております。

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2022年度日本鳥学会大会自由集会報告:W07 個体群行列モデルと集団的思考

森元良太(北海道医療大学)・島谷健一郎(統計数理研究所)

1.序 
 個体数のカウントデータを伴う研究発表は本学会で毎年多数見られる.ところが,個体数の増減を扱う基本的手法の一つである個体群行列モデルを用いる研究はほとんど見られない.このような現状を鑑み,その普及を図る目的で,生育段階と生活史,個体群行列の固有値という数学,行列成分のデータからの統計的推定という三つの基本概念を解説する自由集会を企画した.また,集団内変異や個体差という生態学の概念について,科学哲学の視点からダーウィンの進化論を起源とする集団的思考に関する解説も行った.20–30名の参加者のほぼすべてが若手会員だった.3つの話題について数学や哲学の話を聞くことは初めてに近い人が多く見えたので,これからのデータ解析や野外調査現場とつながりやすい話題も混ぜるよう意識した.

2.生残・成長・繁殖を表す個体群行列 
 鳥類に個体群行列モデルを適用した研究の多くは,個体を幼鳥や成鳥,または幼鳥,亜成鳥,成鳥という生育段階に分ける.幼鳥が生残すれば翌年,(亜)成鳥に成長する.成鳥は繁殖し幼鳥を生む.この過程を,各生育段階の個体数をベクトル,生残,成長,繁殖を個体群行列と呼ばれる行列で表し,ベクトルと行列の積という数学で表現するのが個体群行列モデルである.もっとも,これだけなら,数学は単に個体数の変化を計算させる便利な道具でしかない.ところで,個体数がある生育段階では増え,別な生育段階では減ったりすると,個体群全体として増加傾向にあるのか減少傾向にあるのかよくわからない.ところが,線形代数学の定理を用いれば,同じ個体群行列による個体数の変動が続くと,次第にどの生育段階の個体数も同じ率で変動するようになり,その率(個体群成長率)は個体群行列の固有値で与えられることが示される(高田・島谷,2022,3章参照).さらに,例えば稀少種の保全を図るうえで,営巣地の保護と成鳥の生残のどちらに重点を置くべきかの一つの指標として,感度分析という手法も確立されている(高田・島谷,2022,5章参照).
 2000年代に入り,複数の個体群を局所個体群と捉え,全体を一つの個体群とみなし,各個体が属する局所個体群を生育段階に組み入れ,局所個体群間の移出や移入を生育段階の推移として個体群行列の中で扱う研究が盛んに行われている.特に,局所個体群として渡り鳥の越冬地や巣箱を設置した地域を用いることにより,もし移出が移入を上回れば,その越冬地や巣箱はその個体群の維持,成長に貢献するsourceとして働き,移入が上回ればsinkとなっていると判断する.生育段階のアイデア次第で,様々な斬新な研究を実践できるのである.
 ところで,生育段階とは,基本的には個体差や集団内変異に基づく個体のカテゴリー分けである.この最初のステップの理解を深めるには,集団的思考というキーワードについて科学哲学の視点から学習することを推奨する.

3.集団的思考と誤差論的考え方 
 チャールズ・ダーウィンは自然選択説を唱えたことで有名だが,自然選択が働くための条件は,生物集団に変異があり,その変異が適応度の違いをもたらし,変異が遺伝することである.このように,集団内変異が自然選択の条件の根底をなしている.集団現象を捉えるときに,集団を構成する個々の対象の振舞いを積み上げていくのでなく,集団内変異に焦点を当て,集団自体を基礎的なものとする思考の枠組みを,エルンスト・マイアは「集団的思考(population thinking)」と呼んだ.現代進化論はこの集団的思考に依拠しており,マイアは集団的思考の生物学への導入をダーウィンの偉業として讃えた.
 集団的思考を精緻にしたのは,ダーウィンの従弟フランシス・ゴールトンである.ゴールトンはダーウィンの『種の起源』に感銘を受け,進化論を数学的に表現する先駆的な研究をはじめた.その際,参考にしたのが,社会学に誤差論を導入した社会学者アドルフ・ケトレーの研究である.ここで誤差論とは,測定値から誤差を取り除いて真値を求めるための理論である.測定において本来知りたいのは真値であるが,測定値には誤差が不可避的に含まれるため,真値を直接測定できない.同じ対象を繰返し測ると測定値はばらき,真値は一つだけのはずなのに,測定値は誤差によりずれてしまう.だが,測定回数を増やしていくと,測定結果の分布はしだいに釣鐘型に近づいていく.この釣鐘型の分布は「ガウス分布」と呼ばれ,誤差論ではガウス分布の平均は真値とされ,真値と測定値のずれは誤差とみなされる.ケトレーはこの解釈をもとに,人についても平均を典型的な特徴として捉え,その平均的特徴をもつ架空の人を「平均人」と呼んだ.このように,ケトレーは分布を扱ったが,集団内変異を重視せず,あくまで平均に注目した.誤差論では,集団内変異は単なる誤差にすぎず,真値が推定されれば誤差は用済みとされる.
 一方,集団内変異に注目し,分布の捉え方を大きく変えたのが先述のゴールトンである.人の身体的特徴や精神的特徴を測定することが人間の本性の理解につながると考え,さまざまな人種や階級の人を測定した.その結果,例えば身長や知能は,どの人種や階級で測定してもガウス分布になることを実証し,釣鐘型分布がどこにでも見られる現象であることを確信した.誤差論では,ガウス分布の平均を真値として,測定値のばらつきを誤差とみなす.実在の特性は真値である平均のみで,ばらつきは誤差にすぎず,実在の特性を表してはいない.それに対し,ゴールトンにとって,同じ釣鐘型分布はもはや単なる測定誤差ではなく,分布自体に法則が働くような集団の特性を示すものであった.ゴールトンにとって,釣鐘型分布の平均は実在する真値ではなく代表値の一つであり,分布のばらつきは誤差ではなく実在する集団の特性を表す.実際,フランス議員たちの身長やスコットランド兵たちの胸囲の測定値のばらつきは実在する.同じ釣鐘型分布でも誤差論とゴールトンでは解釈が異なるのである.そこでゴールトンは,ガウス分布と呼ばれている釣鐘型分布に,集団が示す「正常」で当たり前の現象という意味で「Normal Distribution」という新しい名前を与えた(日本語では彼の意図が反映されず,「正規分布」と訳される).誤差論は誤差を取り除いて真値を推定することが目的であるが,ゴールトンにとって,正規分布の有するばらつきこそが失われないよう残したかったものである.ゴールトンの分布の捉え方はその後,ロナルド・フィッシャーたちを通じて,現代の進化論や統計学に受け継がれている.
 さて,個体群行列モデルに話を戻そう.生育段階ごとの繁殖率や生残率など行列の各要素を,データと統計モデルからなるべく正確に推定しようとするのは(次節参照),誤差論的考え方である.一方,生育段階に分け,それらの個体数のばらつきが個体群の特性を示すというのは,集団的思考に依拠している.すなわち,個体群行列モデルには誤差論的考え方と集団的思考の二つが混在している.
鳥類研究の現場においても,この二つの見方が混在している.例えば,鳥の体サイズを測るとき,なるべく正確に測ろうと二回計って平均をとるのは誤差論的考え方,体サイズの分布をみるのは集団的思考である.おそらく,鳥学会会員の多くはこの二つの見方を区別しないで実践してきている.分布についての二つの捉え方を意識して区別することで,数理モデルや統計モデルに関する概念的理解は深まるにちがいない.

4.行列成分の統計モデルによる推定 
 個体に標識を付け,毎年,発見調査を行う.発見できれば,その個体は生残していたことがわかる.一方,発見できなかった場合,それは,その個体が死亡したからか,生残していたのに発見に失敗したかを判断できない.しかし,発見調査を繰り返し,発見できたか,できなかったかというデータに統計モデルを適用すれば,生残率と発見率を分離して推定できる(高田・島谷 2022,4章参照).
 大切なのは,生残率と発見率の推定は,標識調査を繰り返すだけではできず,一回こっきりの発見調査データに統計モデルを適用してもできず,両者を併用することではじめて可能になる点である.生育段階が齢の場合,幼鳥は生残したら(亜)成鳥へ推移し,繁殖調査と合わせて個体群行列の成分が推定される.なお,限られたデータからの推定なので,その不確かさも明示しておくことが望まれる.ベイズ統計により,行列成分とそこから計算される固有値(個体群成長率)を事後分布という確率分布で不確実さを明示できる(高田・島谷 2022,6章参照).

5.結語に代えて:
 標識調査のすすめ 個体群行列モデルを用いる研究の実践において,個体識別して経年的に追跡したデータは一つの出発点である.概して動物に標識を付ける作業は,捕獲技術や動物倫理など,解決すべき問題は多い.幸いなことに,鳥類では足環という個体識別技術が確立されており,国内においても膨大な標識調査データが蓄積されている.
 標識調査は動植物問わず野外生物調査の一つの基本であるが,それだけからからわかることは,移出と死亡の区別をつけられないなど,決して多くない.標識データを基盤に置き,そこに本学会で見られるような独自仕様の様々なオリジナルデータと複合させることで,二種類のデータは相互作用し,得られる成果は大きく膨張するのである.
 ところが,標識調査データを踏まえた研究発表が,鳥学会では驚くほど稀少である.本自由集会を企画する際,鳥学会会員の大半は標識データをダウンロードし保有しているものと思い込んでいた.どうして蓄積されているはずの標識調査データが共有され活用されていないのか.何人もの会員に尋ねたが,理由はわからないままである.

<参考文献>
高田荘則・島谷健一郎 (2022) 個体群生態学と行列モデル:統計学がつなぐ野外調査と数理の世界.近代科学社,東京.
森元良太 (2015) 集団的思考:集団現象を捉える思考の枠組み.哲學 134: 33–54.
森元良太・田中泉吏 (2016) 生物学の哲学入門.勁草書房,東京.

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第6回日本鳥学会ポスター賞「生態系管理・評価・保全・その他」部門を受賞して

徳長ゆり香 (日本獣医生命科学大学)

 この度は、日本鳥学会2022年度大会において、「生態系管理・評価・保全・その他」部門のポスター賞に選んでいただき、誠にありがとうございます。研究の指導をして下さった先生方や共著者の皆様に良い報告ができたことを嬉しく思います。

 初めて発表者として参加した鳥学会でしたが、沢山の参加者の皆様から様々な意見をいただいたりディスカッションをしたりすることができたため、自身の研究を多角的な視点で捉え直すきっかけとなりました。コロナ禍が続く中、対面開催の準備・運営をしてくださった大会関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。貴重な機会をいただきありがとうございました。今後も良い研究成果が得られるよう、研究に邁進してまいります。

ポスター発表の概要
 マイクロプラスチック(MPs)による汚染問題は地球規模に広がっています。大気中マイクロプラスチック(AMPs)は、MPsの中でも小さく、都市部だけでなく自由対流圏、さらに、ヒトの肺からも検出されており、MPsを吸入することによる健康被害が懸念されています。鳥類は哺乳類よりも呼吸効率が良いため大気汚染の影響を受けやすいことで知られていますが、これまで鳥類がMPsを吸入し、それが肺に到達・蓄積するかどうかは解明されていませんでした。
本研究では、野生鳥類の肺における MPs の存在を明らかにするため、日本国内で有害鳥獣として捕獲され安楽死させられたカワラバト、ツバメ、トビの肺サンプルを、顕微フーリエ変換赤外分光光度計のATRイメージング法で分析しました。

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感染症対策を講じて検体を解剖し肺を採材する

 その結果、3種22羽のうち、2羽のカワラバトと1羽のツバメから計6個の破片状MPsが検出されました。MPsのポリマー材質はレジ袋、ラップ、バケツなどの原料であるポリエチレン(PE)、ストロー、医療器具、自動車部品などの原料であるポリプロピレン(PP)、スニーカーやランニングシューズのソール、クロッグサンダル、建築資材にも使われるエチレン酢酸ビニル(EVA)の3種類であり、いずれも日本の大気から検出事例のあるポリマーでした。日本においてカワラバトは留鳥であり、ツバメは夏鳥ですがMPsが検出された個体は幼鳥であったことから、いずれのMPsも日本で吸入されたものであることが判明しました。

 本研究は、一部の野生鳥類が摂食だけでなく吸入によってもMPsに汚染されていること、吸入したMPsが肺に到達することを初めて証明しました。MPsは有害な化学物質を含んでいたり吸着したりしている場合があるだけでなく、小さなMPsは肺から血流に入り全身臓器に到達する可能性があるため、摂取量が少なくても重大な健康影響を及ぼす恐れがあります。今後は、気嚢を含む呼吸器系や循環系におけるMPs の汚染実態と健康影響を解明するために研究を続けていきたいと考えています。

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第6回日本鳥学会ポスター賞「行動・進化・形態・生理」部門を受賞して

姜雅珺(千葉大・院・機能生態研究室)

 この度、日本鳥学会2022年度大会において「行動・進化・形態・生理」部門のポスター賞を授与して頂き誠にありがとうございました。

 終始熱心なご指導を頂いた千葉大学機能生態研究室の村上正志教授に感謝の意を表します。また、実験の実施にあたり、千葉大学生物機械工学研究室劉浩教授、日本野鳥の会十勝支部室瀬秋宏様、行徳野鳥観察舎友人会佐藤達夫様、久米島ホタル館佐藤文保様、山階鳥類研究所山崎剛史様に大変お世話になりました。ありがとうございました。とくに、風洞実験を指導して頂いた千葉大学生物機械工学研究室・D3村山友太様に感謝の意を表します。

 そして、わたしのポスターをご覧にいただき、たくさんの有益なコメントを頂いた皆様に感謝しております。また、鳥学会の運営の皆様、記念品をご提供いただいたモンベル様に感謝の意を表します。今大会を通じて、多くの示唆と刺激を得ることができました。皆様から頂いた貴重なご意見を踏まえて、今後研究を進めていきたいと思っています。
 
 本研究はJST奨学金の支援を受けて実施しています。

研究の概略
 鳥類の翼は「飛翔」という鳥類にとって最も重要な機能を司っています。その形態は各種の生態学的ニッチと関係し、操縦性能や飛翔速度といった機能に影響を与えると考えられます。先行研究で、羽ばたき飛翔において翼先端部 =hand-wingで生じた揚力と推進力が重要であることが示されており、翼先端の形態が飛翔機能と密接に関連すると考えられます。このような翼先端の形態として、翼端スロットの有無が注目されます。これまで、鳥の翼機能形態と飛翔に関してはたくさんの研究が行われていますが、翼先端の形質に集中してその飛翔性能との関係を解析することで、鳥類種間での翼機能の違いをより詳しく評価できると考え、研究を進めています。
 
 本研究では、91種のさまざまな飛翔行動と生息環境をもつ鳥類について、飛翔性能に関わると考えられる翼先端形質を、Klaassen van Oorschotの提案した指数 E (Emarginate index) とTi (wingtip sharp index) で評価し、さらに、アスペクト比とセミランドマーク法で翼全体の形を評価しました。その上で、これらの翼先端形質、及び翼形質が鳥類の飛翔行動や生息環境と相関を示すことを確かめました。つまり、短距離飛翔の鳥の翼は短く、先端が丸く、スロットのある形である一方、滑空飛翔の鳥の翼は長く、先端が尖って、スロットのない形でした。また、セミランドマーク法によって、翼先端の輪郭において羽ばたき飛翔の翼と滑空飛翔の翼が大きく異なっていることが示されました。これらの結果から、飛翔を特徴づける翼の形態として、初列風切羽分散度合、つまり、翼に占める初列風切羽の範囲が新たな形質指標と提案できます。羽ばたき飛翔と滑空する種では、初列風切羽分散度合が大きく異なっていました。

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 さらに、初列風切羽分散度合が、なぜ飛翔行動と関係するのか、機能的に調べるために、PIV粒子画像流速法によって風洞実験を実施しました。その結果、高迎角の際に、羽ばたき飛翔する鳥の翼は初列風切羽分散度合が小さいにもかかわらず、この部分を含むhand-wingで渦を安定させることで空力性能を維持していることがわかります。一方、滑空飛翔の翼は初列風切羽分散度合が大きいのですが、空力性能は翼全体で保っていることがわかりつつあります。風洞実験については、まだ条件が安定しないなど、課題がたくさんありますが、たくさん実験をして良い結果を得られればと頑張っているところです。

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第6回日本鳥学会ポスター賞「繁殖・生活史・個体群・群集」部門を受賞して

大泉龍太郎(岩手大学農学部森林科学科)

 このたびは日本鳥学会2022年度大会において「繁殖・生活史・個体群・群集」部門のポスター賞をいただき誠にありがとうございます。

 学部4年生でポスター発表を行うということには不安や緊張もありましたが、周りの支えがあり無事発表を行うことができました。背中を押してくださった先輩方、調査に同行してくれた同期、そして研究全般においてたくさんご指導をくださった山内貴義先生に改めて感謝申し上げます。また、大会を運営してくださった皆さま、記念品をご提供いただいた株式会社モンベル様にも感謝申し上げます。

ポスター発表の概要
 コムクドリは本州中部以北で繁殖する夏鳥で、その生息環境は、北海道では市街地・農耕地、本州中部では農耕地の他に落葉広葉樹林や針広混交林の疎林であるという先行研究があります。一方、東北地方での研究は少なく、特に北東北での生息環境については詳細が分かっていません。そこで本研究では岩手県盛岡市においてコムクドリの渡りと渡去の時期を明らかにし、そして繁殖期の生息環境の選好要因を明らかにすることとしました。さらに近縁種であるムクドリとの相互関係についても考察しました。

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調査地(市街地)

 盛岡市にある高松公園で定期調査ルートを設け、両側50m幅でコムクドリとムクドリを記録しました。また、盛岡市を3次メッシュで844区画に分けて「市街地」「農耕地」「森林」「市街地と農耕地(市・農)」「農耕地と森林(農・森)」「市街地と森林(市・森)」という6つのカテゴリーに区分し、その中から177区画を無作為に抽出しました。区画ごとに1kmの調査ルートを設け、両側50m幅でコムクドリとムクドリ及びその他の鳥類を記録しました。

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調査地(農・森)

 調査の結果、5月上旬から個体が発見され、7月上旬には確認されなくなりました。解析の結果、5月、6月に比べ7月の個体数発見が極端に少ないことが分かりました。生息環境に関してはカテゴリーごとと環境面積ごとに分けて解析を行いました。環境面積ごとの解析は、GLMによるモデル選択と、出現区画と未出現区画の面積を比べる古典的な解析の2種類を行いました。カテゴリーごとと合わせた3種類の解析で、コムクドリ、ムクドリともに市街地、農耕地、市・農に出現するが、コムクドリは市街地寄りに、ムクドリは農耕地寄りに生息していることが分かりました。また、森林には全く生息しないことも分かりました。この結果から北東北におけるコムクドリの生息環境が本州中部よりも北海道に近いと考えられました。また、市街地、農耕地ではコムクドリとムクドリの棲み分けが示唆されました。

 本研究及びポスター発表を通じて、多くの学びや課題を見つけることができました。また、発表ではたくさんのご指摘・アドバイスをいただきました。来年は修士課程へと進学するので、今後も引き続きコムクドリの生態について、新たな発見ができるよう努力していきたいと思います。

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日本鳥学会2022年度大会 高校生プログラム(小中学生も可!)のご報告

牛山克巳・山本麻希(企画委員会)

 
 例年大会を盛り上げてくれる高校生によるポスター発表ですが、それだけでは高校生のみなさんにせっかく網走まで来てもらうのに申し訳ない!と、今年はキャンパスツアー「突撃!東京農業大学北海道オホーツクキャンパス!」、さらにはキャリア育成ワークショップ「高校生のための鳥学講座」を実施しました。
 
 キャンパスツアーでは、東京農業大学家畜生産管理学研究室の大久保先生と大学院生の目黒さんから、学部のことやエミューの研究を紹介していただきました。エミューって2カ月もオスが飲まず食わずで抱卵し続けるのですね…。また、白木先生のもとで研究を行っていたお二人のOGにもいらしていただき、大学選びの過程からキャンパスライフ、今の職業に至った道筋などについて紹介していただきました。座学のあとはエミューの飼育施設を遠目から見学し、エゾシカの飼育施設にも行ってササをあげて癒されました。
 
 ポスター発表は一般のポスター発表が行われている体育館とは離れた教室で実施したので、大会参加者のみなさまに聞きに来てもらえるか心配でしたが、ふたを開けてみたら換気に追われるほどたくさんのみなさまにいらしていただきました。中高生のみなさんも自信を持って発表しているのが印象的でした。

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ポスター発表の様子1
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ポスター発表の様子2
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林内散策路で野鳥観察
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サケがたくさん泳いでいる網走川

 なお、今年度の高校生ポスター賞は以下の通りです。

● 最優秀賞
 「フクロウの給餌食物解明に向けたペリット分析と映像分析の比較」
  緒方 捷悟、坂井 智洋、門脇 優依、多湖 由海、田中 来瞳、
  藤田 直花(三重県立桑名高等学校 MIRAI研究所)

● 表現賞
 「フクロウが好む巣箱って知ってる?」
  丹下 翠(三重大学教育学部付属中学校)

● 科学賞
 「柳瀬地区におけるカラスの大量発生の原因について」
  角島 凪(中央大学附属高等学校)

● 努力賞
 「みや林における鳥類定点観察からの考察」
  西田 康平(桐朋高等学校 生物部 鳥類班)

 キャリア育成ワークショップでは、越智大介さん(水産研究・教育機構)と須藤明子さん(株式会社イーグレット・オフィス)から、それぞれ「日和見主義的鳥学生活~「楽しく」研究活動を続けるために~」、「野鳥をまもりたい獣医、野鳥を狙撃するのはなぜ?」と題してお話しいただきました。その後、キャリア形成に関わる疑問,将来に関する悩みなどについて考えるワークショップを行う予定でしたが、講師陣の熱の入ったプレゼンでタイムアップ!それでも普段聞けない面白い話しがたくさん聞けたと思います。

  最後に、参加者からの参加報告を紹介します!

「日本鳥学会感想文」 

角島凪(中央大学附属高等学校 3 年)

 この度、有難い事に高校生の部で科学賞を頂くことができました。ありがとうございました。
 私は当学会を通して多くの学びを得ました。公開シンポジウムで印象に残っているのは、アイスアルジーによる海底への餌の供給、シャチのサドルパッチの違いと食性の違いの二つです。また、私の研究対象と同じカラスを研究対象としている研究を多く拝見しました。特に私が自分の研究でつまずいていた、カラスによる農作物被害の対策案について、緑色のレーザー光が赤色レーザーに比べて効果的で、更には動かして放射した方が効果的であること。さらに、1305㎡以下の農地面積であれば「くぐれんテグスちゃん」(農研機構 吉田さん)を、それ以上であれば緑色レーザー(長岡技大 山本さん・笹野さん)を使用するのがコストの観点では良いという話がありました。私の調査地域の所有農地面積はバラバラであるため、所有面積に適した対策案を提示できる可能性に期待が膨らみました。
 高校生ポスター発表では、多くの方々 から多岐にわたる視点で助言を頂きました。
 このような機会を作ってくださった日本鳥学会の役員の皆様、私の研究に助言を下さいました研究者、学生の皆様、心より感謝申し上げ ます。

「日本鳥学会2022年度大会でポスター発表をしました!」

都立国分寺高等学校

 11月5日(土)~6日(日)、「日本鳥学会」に参加しました。会場は、北海道網走市の「東京農業大学 北海道オホーツクキャンパス」です。本校からは下記の2組(2年生3名,1年生1名)が校生ポスター部門で発表を行いました。
・ 「カラスバトの音声コミュニケーションについて」(久保・相田)
・ 「カラスバトのGPSを使ったその生態の解明」(石井・大野)
 また、受賞記念講演や高校生のための鳥学講座を聴講したり、野鳥研究会の学生さんの案内でキャンパス内の林内散策路を歩いて野鳥を探したり、飼育されているエゾシカやエミューを見せていただいたりして、とても充実した時間を過ごしました。

【生徒の感想】
・参加者の方々とたくさんディスカッションすることができて楽しかったです。
・発表を聞いてくださった研究者の方々から様々な視点でアドバイスをいただいたので、それらを今後の研究に活かして行きたいです。
・他校生の研究発表にも大変刺激を受けました。

【生徒が撮影した写真】

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朝の散策(オホーツク海)1
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早朝の散策(オホーツク海)2
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早朝の散策(オホーツク海)3
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キャンパス内の林道からの景色
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アカゲラ
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シノリガモ
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オオワシ
(撮影者:久保光次郎)
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