第4回日本鳥学会ポスター賞受賞の感想

大阪市立大学理学研究科 西田有佑

この度、日本鳥学会2019年度大会にてポスター賞を頂くことができました。ありがとうございました。過去の受賞者の方々をみてみると、毎年おもしろい研究発表をされている若手の方がずらっと並んでいて、私の研究も少し認められたのかな?と思っています。これからも調査・研究がんばるぞ!

モンベル様からは超豪華なレインパーカーを記念品としていただきました。ありがとうございます。調査での着心地も良さそうで今年の調査が楽しみです。

ポスター内容の概略
今回の受賞ポスターのテーマは「餌資源の豊富ななわばりで冬を越せた個体は、その後の繁殖が上手くいくのか?」というものです。越冬環境がもたらす繁殖パフォーマンスへの影響のことを、専門的には「キャリーオーバー効果」と呼びます。あたりまえの現象のように思えますが、野生動物で調べた例はかなり少なく、まだまだ分かっていないことの多い生態学的現象の1つです。

私はとくに「越冬環境がもたらすオスの繁殖成功へのキャリーオーバー効果」に興味がありました。オスの繁殖成功はメスと交尾できるかでほぼ決まるのですが、上手に求愛できたオスほどメスにモテます。そして栄養状態が良く元気なオスほど上手に求愛できることが多くの鳥類で知られています。もし餌資源の豊富ななわばりで冬を越したオスほど、繁殖開始時の栄養状態が良くなり、求愛行動の質も高くなってメスにモテることを示せれば、オスの繁殖成功へのキャリーオーバー効果の存在を確かめられそうです。

そこで注目したのがモズです。エサをなわばり内の木々の枝先に突き刺す「はやにえ行動」で有名な小鳥です。はやにえはエサの少ない冬に備えた保存食で、たくさんのはやにえを食べた個体は繁殖開始時の栄養状態が良くなることが知られています (Nishida & Takagi, 2019, Anim. Behav.)。また、繁殖期になると、オスは歌をつかってメスに求愛します。栄養状態の良いオスほど魅力的な歌をもつことができて、メスにモテることが私の先行研究で分かっています(Nishida & Takagi, 2018, J. Avian Biol.)。

ということで、次のような仮説を立てて検証しました。「良い越冬なわばりをもつオスは、たくさんはやにえを貯えられて、そのはやにえを食べることで繁殖期の歌の魅力を高められて、メスにモテるようになる?」という仮説です。詳しい結果は省きますが、この仮説を強く支持する証拠が、観察と実験の両方で集めることができました。

つまり、モズのオスでは、越冬環境がはやにえの貯蔵・消費を介して、繁殖期の求愛行動の質・配偶成功にまで影響していたのです。性選択の文脈でキャリーオーバー効果が生じることを示したおそらく初めての研究です。生き物の生態をちゃんと理解するには、繁殖期だけじゃなくて越冬期にまで目を向けないといけないようです。

西田_カエルの仲間のはやにえ.jpg
カエルの仲間のはやにえ
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