ポスター賞を受賞して

小原愛美(東京農工大連合農)

  

 このたびは2021年度の鳥学会ポスター賞をいただきまして誠にありがとうございました。

 受賞の連絡を受けたのはカラスたちの世話をしようと家を出たところでした。まさか自分が選ばれるとは露ほども考えていなかったのでたいへん驚きました。
 
 オンライン学会では、気軽な質問がしにくいというデメリットを感じたものの、過去の質疑応答が閲覧できたり、外部のより詳細な論文への誘導を気軽に行えたりというメリットが大きく、楽しい時間を過ごせました。鳥学会大会事務局の方々など関係者の皆様にお礼申し上げます。貴重な機会をいただきましてありがとうございました。

今回の発表の内容について
 ハシブトガラスは都市や農村における代表的な害鳥です。カラスは嗅覚があまり発達していないため、食物の探索や物の認識には主に視覚を利用していると考えられています。カラスをはじめとした鳥類はヒトとは大きく異なる視覚機能を持つことから、カラスの物の認識の仕方はヒトと異なっている可能性があります。

 これまでにハシブトガラスでは、ヒトの顔写真から男女の弁別ができることなどが報告されていますが、カラスが画像をどのように認識し、弁別を行っていたかは分かりませんでした。そこでこの研究では、「ハシブトガラスは画像に写っているものを認識するためにどんな手がかりを使っているのか?」を明らかにするために実験を行いました。
 
 実験では、4羽のカラスに様々な鳥の画像を2枚1組で提示し、その中から正解となる特定の種の鳥の写真を選ぶように訓練しました。訓練を終えたのちに、カラスが見たことのない写真や、加工を施した画像でも正解を選択できるかどうか観察しました。その後、カラスがどのような画像を正解として認識していたのか、どんな手がかりを利用して画像を弁別していたのかを検討しました。

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スズメの色をしたハトの画像をつついたカラス

 その結果、カラスの弁別は、「画像の色や模様の情報」と「鳥の形の情報」の二つを手がかりとして正解を選択していたことが示唆されました。この色や形の情報は、それぞれ単独では正解を認識するための手がかりとはならず、両方の手がかりを組み合わせて使用していたと考えられました。この結果は、カラスがハトとは異なった認知の方法をとっている可能性を示しています。

 今回の研究は実験に参加した個体数が少なく、さらにそれぞれに個体差が生じているために、すべてのカラスでこの結果と共通の結果を得られるかどうかはわかりません。また、画像を実際の鳥として見ていたかどうかもわかりません。今後はそのあたりを明らかにするために研究を行っていきたいと考えています。

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