シマアオジが近年急激に減少し、環境省やIUCNのレッドリストでCRに指定され種の保存法に指定されたのは皆さんご存じかと思います(図1)。減少は日本だけでなく世界的な繁殖地全域に及んでいます。渡りの中継地である中国における密猟や越冬地における生息環境の悪化が減少の主な原因として上げられていますが、正確なところはわかっていません。シマアオジの減少を食い止めるために、2016年に中国の広州でワークショップが開催されました。ここでは各国の関係者が一同に集まり、シマアオジの保全のための調査・研究・普及啓発対策について話し合われました。シマアオジの保全に向けた国際的な活動はこの時から継続的に行われています。
シマアオジは1980年代まで北海道の草原に広く分布していましたが、1990年以降急激に減少し、2015年以降はサロベツ湿原でしか繁殖が確認されなくなりました。サロベツでは2017年よりシマアオジの調査が実施され、2017年の31つがいから2021年には18つがいと減少傾向が続いています(図2)。繁殖地はほぼ一箇所に集約され繁殖個体群消滅の危機が続いています。
一方で海外ではシマアオジの標識・発信機調査により渡りの状況が明らかになってきています。中国では保護指定が上がるなど保全対応も実施され、数が回復している国や地域もあります。
私たちはこの状況を周知するためにシマアオジ展示・パンフレット作成・Tシャツ・トートバッグ・ステッカーの販売等により普及啓発活動を実施してきました(図3)。オンラインでは陸鳥モニタリング会議・日本鳥学会・東アジア鳥学会(The 1st Asian Ornithological Conference)の自由集会でシマアオジについて発表し、今後の保全活動について話し合ってきました(学会の様子が分かる中国鳥類学会による報告記事はこちら)。東アジア鳥学会では中国ワークショップ以来つながってきた各国の仲間からの発表があり、最新情報や研究成果を知ることができました。保全活動として近年までシマアオジが生息していた環境を保全するために国立公園外の湿原環境を購入し、シマアオジ保護区(14.7ha)を創設しました(図4)。
シマアオジはサロベツで調査・保全活動を行っているタンチョウやチュウヒと異なり、小鳥のためか一部の愛好家を除き知名度も低く、一般にその存在や重要性が十分に周知されていない状況ですが、今後もシマアオジ繁殖個体群の回復のために繁殖調査や普及啓発活動を継続していきます。