「若手生態学者が見ている世界-研究者支援写真展-」に研究者として参加して

東京大学大学院 農学生命科学研究科
水村春香

 野外で調査研究をしていると、必ず写真を撮る機会がある。その多くは調査現場や対象種の生態の記録のためだが、私は調査地とさせていただいていた富士山麓に5年通ううちに、目にした多くの生き物や千変万化する風景を、たくさん写真に残していた。おそらく研究をしていなければ、見ることはなかった景色や生き物である。このような写真をどこかで表現、共有できたらいいなと前々から思っており、もし今年博士課程が無事に修了できたら、大学の展示スペースとかで写真展でもやってみようかと朧げに考えていた。しかし、私が知っていた学内のスペースは誰もが見に来られない場所のため、この案は消えそうになっていた。
 そんな中、「若手研究者の写真展しようかと思ってるんだけど興味ある?」との連絡を主催者の清水拓海さんからいただいた。内容を聞くと、単純に研究者が調査中に撮った写真を並べるだけでなく、各研究者の研究内容の紹介とともに写真が展示され、さらに写真の販売を行い、その収益は展示した各研究者へ全額寄付され各自の研究活動に活用されるというものだった。今までにはない研究支援や研究発信の形であると思い、そして何より、死蔵しそうになっていた写真を展示できるまたとないチャンスと感じた。
 出展した写真は、メッセージ性の強いものや調査中の風景といったものを中心に選んだ。また、鳥に関心がなくても興味を持ってもらえるよう、間違い探しとして鳥を探してもらうものも入れた。

どこに鳥がいるでしょう? (ヨタカ).JPG
どこに鳥がいるでしょう?(ヨタカが隠れています)

開催中にはお客様とお話する機会があり、研究の内容や展示写真の背景、野外調査の実態などたくさんお話した。私の研究内容は二次草原の鳥類の保全を目的としたものだったが、その大切さに共感してくださる方も多く、また「研究頑張ってくださいね!」と応援のお言葉をいただき非常に励みになった。普段の学会や講演会にはないギャラリーという雰囲気やお客様の反応に、新鮮な気持ちで研究を見つめなおすきっかけとなった。
 今回の企画に参加して、研究者の支援や研究内容の発信方法として写真展という方法があることに、私自身初めて気づいた。これはもし自分で写真展を企画していたらまったく意識していなかったことである。その可能性は写真展に限らず、絵画などアート全般に反映できると考えられ、今後様々な活動が展開され、多くの研究者が参加していくことが期待される。最後に、このような機会を与えていただいた企画者の清水さんに厚くお礼申し上げるとともに、一緒に研究者として出展し、写真展を作り上げた北沢宗大さん、高田陽さん、田谷昌仁さん、湯浅拓輝さんに心より感謝いたします。

(写真の正解は、真ん中の右端です。わかりましたでしょうか?)

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