藤田 剛 (日本鳥学会誌編集委員長)
今号の注目論文が決まりました。
著者: 濱尾 章二, 那須 義次
タイトル: 鳥の巣と昆虫の関係:鳥の繁殖活動が昆虫の生息場所を作り出す
DOI: https://doi.org/10.3838/jjo.71.13
鳥が新しい生息地をつくりだしたり、つくり変えたりする生態系エンジニアの役割を担っている可能性がある、というアイディアは比較的古くからありました。たとえば、この論文でも引用されている Sekercioglu (2006) もそのひとつと理解しています。しかし、その実証、とくに鳥の巣がもつ生態学的機能に注目した実証研究は遅れています。
今回、注目論文に選ばれた濱尾さんと那須さんの論文は、その実証に挑戦した興味深い論文です。ぜひ、ご一読を。
以下は、著者のひとり、濱尾さんのことばです。
私たちの論文を注目論文に選んで下さり、ありがとうございます。鳥の巣からいろいろな昆虫が見つかることについては多くの報文が出ていますが、鳥と昆虫それぞれの利益や生態系エンジニアとしての鳥の役割についてはまだほとんど調べられていません。この研究ではタイトルのテーマに迫ろうと、できるだけ明確な疑問を立て、計画的にデータを集めるよう努めました。共著者の那須さんの対応が素晴らしく早くて的確なので、解析、原稿執筆を含め、力を尽くすことができたと思っています。
注目論文に選ばれ、オープンアクセスで多くの人に見てもらえるということは嬉しいとともに、やはりいい仕事をしなくてはいけないなと思わされます。励みにもなり感謝しています。
(濱尾章二)
巣の中で抱卵、育雛が進むうちに昆虫の生息環境が作り出される (撮影: 濱尾氏)
巣立った後の巣材。白く蓄積しているのは羽鞘屑 (撮影: 濱尾氏)
ケラチン食の昆虫、マエモンクロヒロズコガ (撮影: 濱尾氏)