日本鳥学会2015年度大会自由集会報告:砂浜の自由集会を企画して

2015年10月14日
奴賀俊光(NPO法人バードリサーチ)

今回、初めて自由集会というものを企画しました。

砂浜という環境は、その環境自体が少ないこと、波浪や潮の干満、砂の流動等により環境変動が激しいことなどから、研究が盛んではない環境です。実際、鳥も魚もベントスも、砂浜海岸での調査研究例は少ないと思います。修士研究で砂浜のミユビシギの採食生態を調べた時は、文献の少なさに苦労しました。。。

現在、防潮堤建設、海面上昇、砂浜浸食などで、もともと少ない砂浜がさらに失われようとしています。しかし、そんなマイナーな環境でも、シロチドリ、コアジサシといった絶滅危惧種の主な生息環境となっているのに、全然注目されていません。10年以上続いていた環境省のコアジサシ調査もコアジサシの全貌をつかめぬままH23で終了してしまいました。シロチドリについても、激減していることが明らかとなり、現在も減少傾向が続いています。

本当に注目されていないのか、しなくて良いのか、危機的な現状を周知しなくては、ということから、一度、砂浜の自由集会を企画してみようと思いました。

初めての企画、マイナーな砂浜という環境をテーマにして、いったいどれだけ人が集まるのか、話題提供者の中でもビクビク不安に思いながら、準備をしました。学会プログラムが公表されると、なんと同時に8つの自由集会が開催されることを知り、さらに不安になりました。(今回のように自由集会が集中してしまった時には、事務局から、自由集会が少ない別の日に移ってもよい集会があるかどうか呼びかけたりして、可能なら分散させることはできませんか?)

IMGP9167.JPG

とりあえず、30人来れば上出来だと思っていたのですが、始まってみると、参加者36名。後に聞いた情報では、その他の会場はだいたい20名前後が多かったと聞いています。勝った!と思いました(笑)。

シロチドリ、コアジサシ、防潮堤と砂浜についての話で現状の情報を共有し、問題点や今後の展望なども共有、議論できればという目的でした。参加者がどう思っているか知るために、自由集会時に簡単なアンケートを行ったのですが、その結果を以下に掲載します。22名の方から回答がありました。ありがとうございます。

アンケート結果
Qこの集会を何で知ったか?
鳥学会HP:18人
バードリサーチHP:2人
鳥学会要旨:2人

Q興味があるものは?(複数回答あり)
砂浜:6人
シロチドリ:14人
コアジサシ:15人
防潮堤:1人
その他:6人
(奴賀感想:これまで研究例や話題の多いコアジの方が多いかなと思っていたのですが、シロチも同じくらいでした。防潮堤が予想より少なかった。。。)

Q砂浜のメーリスがあったら入りたいか?
参加希望:18人
参加したくない:0人
参加したいがメーリスが多すぎる:4人

Q感想、意見
シロチドリ、コアジサシの減少具合と、仙台の海岸の現状に驚いた等の感想がありました。他の地域の情報が知りたいとか、ネットワークに入りたい、自分の地域の情報を提供してくれたり、より関心を持ったというような感想がありました。

企画者個人の感想としては、予想以上に参加者が多かったので開催してよかったと思いました。少数かもしれませんが、全国各地に関心のある人もいそうですし、また、他の地域の情報を求めている方が多いような感じがしました。砂浜の保全の問題は、鳥だけでなく、砂浜を利用する様々な方と協力していかなければならず、なかなか大変な事だという共有もできたと思いました。演者の方、参加者の方、ありがとうございました。

次回学会でも、何か違う地域の話、話題で、砂浜の集会があっても良いかなと思いました。砂浜の話をしたい方、一緒に砂浜について考えたい方、調査したい方、シロチドリ、コアジサシについて相談したい方、メーリス(今後作成予定?)に入りたい方は奴賀(nuka*bird-research.jp *を@に変換)までご連絡ください。

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日本鳥学会2015年度大会自由集会報告:鳥好きのためのGIS入門(その3)

2015年10月12日
企画者 上野裕介(国土交通省国土技術政策総合研究所)
文責 上野裕介・吉井千晶・前田義志

3回目を迎えた「鳥好きのためのGIS入門」,今回も60名を超える方々に参加いただき,GIS(地理情報システム)に対する学会員の関心の高さが感じられた。

冒頭で企画者から,今回の趣旨説明と過去2回の自由集会の内容について,過去の演者のスライドも交えた紹介を行った。最初に,第1回の2013年度大会(名城大学)で扱った“GISを使った環境データの集計・加工”と“植生図や地形図などのデータ入手法”,2014年度大会(立教大学)で扱った“様々な空間解析法を用いた鳥類の生息適地推定”の概略について,GISに触れたことのない方々にも伝わりやすいよう丁寧に説明した。その上で今回は「GISを使った鳥類研究を一歩先へ!」と題し,“脱”入門を目指すべく,GISでの研究をより深く,豊かにする最新技術や活用法について各演者から発表した。集会風景.jpg


GISを使った希少鳥類の保全策

「動的分布モデルを用いたシマフクロウの分散と生息地の将来変化予測」
吉井千晶(北海道大学大学院・農学院/現(株)建設技術研究所)

演者は,第1回の鳥好きのためのGIS入門(2013年度大会)時には,GISに触れたことすらなかった「超初心者」であった。しかし講演を聞き,第2回時には,なんとか鳥類の生息適地推定を行うことが出来るようになり,初心者の立場からGISの面白さや難しさについて発表する機会を得た。

今大会では,昨年発表した鳥類の生息適地推定の“続き”として,研究を発展させ実際の保全に役立てるにはどのような方法があるのか,一例として希少鳥類の将来的な個体群分散と保全策の提示について話題提供をした。

講演では,まず生息適地推定によって得られた「生物の生息ポテンシャルマップ」が,現在その環境に生物が飽和しているという前提で描かれるものであり,分散前の希少種や外来生物にはその前提が当てはまらないことを説明した。そのうえで,その前提が当てはまらない生物種の生息ポテンシャルマップを得るためには,生物の分散のタイムラグを考慮した“動的分布モデル”が有用であることを説明し,シマフクロウの分散を材料として,動的分布モデルを用いた分散予測の紹介を行った。

演者は,本自由集会での経験や研究室の諸先輩方の協力もあって, 2年間で生息適地推定から成果の提示,希少種保護の実務への活用まで進むことができた。一般に,未経験者にはGISは難しいという印象を持たれがちだが,講演を通じて多くの人に「はじめてでもここまでできるんだ」という安心感や希望をもっていただけたのではないかと思う。今後,一人でも多くの方々にGISを利用した鳥類研究に取組んでいただき,研究の発展と鳥類の保全につながることを願っている。

GIS技術の基礎と最新動向
「GISとリモートセンシングの裏と表,お話しします」
前田義志((株)パスコ)

GISを使った鳥類研究を進めるために,詳細な植生図や地形図を作成する上で不可欠ながら馴染みの薄いリモートセンシング(衛星・航空測量)技術の基礎と最新動向について話題提供した。

講演では,リモートセンシングとはどういうもので,どんな技術を用い,どのように測っているのかについて,リモートセンシングの基礎的な内容と,身の回りにあるリモートセンシング技術の活用例(天気予報など)を簡単に説明した。特に,リモートセンシングで得られるマルチスペクトル写真を例に,光学的に波長を分けてデータを取得することの利点を解説し,実際の利用例として地図や植生図の作成における簡易な植生判読や土地利用区分データの自作手法について紹介した。

あわせてリモートセンシングの最新動向として,衛星光学写真の高解像度化が進んでいることや,衛星からのマイクロ波や航空機からの地上レーザー,水中レーザーを用いた地上と水中地形の計測技術,これらのデータの入手法等を紹介するとともに,準天頂衛星やドローンなどの導入による更なる精度向上の可能性について言及した。

今後,リモートセンシングで得られるデータやGISを活用することにより,鳥類研究における解析精度の向上や保全技術の向上,訴求性の高いビジュアル資料の作成など,研究や実務の発展につながることを願っている。
講演写真.jpg


GISと“鳥の目”で世界を測る

「UAV(ドローン)を用いた空撮・3次元環境測量の紹介と鳥類学研究への応用」
上野裕介(国土交通省・国土技術政策総合研究所)

近年の急速な小型UAV(ドローン)の進歩と普及は,研究や実務の現場を変えつつある。国内では特に防災分野での導入が進んでいる一方で,環境分野での活用は,まだまだ手探り状態にある。その原因の一つが,UAVに関する情報不足にあると考え,今回の話題を企画した。

講演では,まずUAVの歴史から構造,機種ごとの特徴と価格,国内外の開発動向を簡単に紹介した。次に,最新のUAVには,4kカメラと高性能のジンバル(カメラ取付用のアタッチメント),姿勢の自動制御機能(IMU)を搭載したものもあり,ラジコン初心者でも扱いやすく,簡単に空撮が可能なことを説明した。また演者が撮影した空撮画像をスライドに示し,高解像度のデジタル写真と滑らかな動画を撮影できること,それらの画像や動画を用いて植生判読や林冠図の作成,調査地などの現況把握を簡易に出来ることを紹介した。さらに,UAVで空撮した連続写真から,対象物の3次元構造を復元する写真測量技術(Sfm:Structure from Motion)を用いた立体測量の技術について解説し,野外での精度検証の結果を紹介した。最後に,UAV関する昨今の法規制の動向や運用ルールについてお話しした。

これまで空撮画像を得るには,高額な航空写真や衛星写真を購入する他なかった鳥類研究者にとって,安価で簡単に空撮を行うことができるUAVは大変便利な道具である。UAVという鳥の目を手に入れることで,新たな鳥類の生態解明や生息環境の把握,保護・保全につながることを願っている。
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