68巻1号の注目論文は三上さんの三上さんの鳥の人工構造物への営巣の総説に

和文誌編集委員長 植田睦之

2019年4月発行の日本鳥学会誌68巻1号の注目論文は三上さんの鳥の人工構造物への営巣の総説になりました。

三上修 (2019) 鳥類による人工構造物への営巣:日本における事例とその展望. 日本鳥学会誌 68: 1-18.

この論文は,鳥がどのような人工構造物を利用しているかと,その営巣の生態学的に位置づけについてまとめ,そして,鳥にとって,人にとってのプラスマイナスについて検討した総説です。
人と野生生物の係わり合いに注目が集まる中,人工物を営巣場所として利用している鳥類について総合的にまとめられており,今後のこの分野の研究の発展を促す論文と考え,注目論文とし選定しました。

論文は以下のURLより,どなたでも読むことができます。
http://doi.org/10.3838/jjo.68.1

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67巻2号の注目論文は白井さんの落葉広葉樹林再生過程における鳥相変化の論文に

和文誌編集委員長 植田睦之

2018年10月発行の日本鳥学会誌67巻2号の注目論文は白井さんの落葉広葉樹林再生過程における鳥相変化の論文になりました。

白井聡一 (2018) 針葉樹林ギャップ地を落葉広葉樹林に再生する過程における鳥相の変化. 日本鳥学会誌 67: 227-235

この論文は,人工林内に雪害で生じたギャップに広葉樹を植林し,その後の鳥相を10年にわたって追跡したものです。
現在,全国の森林は成熟が進み,鳥相が変わってきています。また,荒れた植林を再生する試みも行なわれており,その生物多様性への効果も注目されています。本研究はこうした今後の日本の鳥の変化を考える上での貴重な情報を提供しており,また,アマチュアによる長期の研究という日本鳥学会誌らしい論文でもあり,注目論文とし選定しました。

論文は以下のURLより,どなたでも読むことができます。
http://doi.org/10.3838/jjo.67.227

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67巻1号の注目論文は小林さんのライチョウの論文に

和文誌編集委員長 植田睦之

気候変動や捕食者の増加などで,ライチョウは絶滅の危機にあり,保全のための取り組みが進められています。今回注目論文に選定された論文は,そのライチョウについての論文です。

日本鳥学会誌 67巻1号 注目論文
小林篤・中村浩志 (2018) ライチョウの群れ構成と標高移動動の季節変化. 日本鳥学会誌 67: 69-86.

この論文は,ライチョウの一年を通した群れサイズやその構成,標高移動などについて明らかにしたものです。高山での調査は,特に厳冬期は大変な苦労のもとに行なわれたものと思います。そしてその貴重な情報は絶滅の危機にあるライチョウの保全のために今後役に立って行くものと考え,注目論文として選定しました。

論文は以下のURLより,どなたでも読むことができます。
http://doi.org/10.3838/jjo.67.69

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66巻2号の注目論文は内田さんのコサギの減少についての論文に

和文誌編集委員長 植田睦之

アオサギ,ダイサギ,カワウ。こうした大型の水鳥は全国的に分布を拡げ,どこでも見られるようになってきています。反面,分布が狭くなっているのが小型の水鳥です。今回注目論文に選定された論文は,そうした水鳥の1つ,コサギの減少について示した論文です。

日本鳥学会誌 66巻2号 注目論文
内田博 (2017) 埼玉県東松山市周辺でのコサギの減少. 日本鳥学会誌 66: 111-122.

この論文は,1980年代から現在までの長期のデータに基づき,埼玉県東松山周辺でのコサギの減少について示し,その原因について検討した論文です。長期にわたる調査結果に基づきコサギの減少を示している点,原因について食物そして捕食者の両面から検討した点が興味深く,注目論文として選定しました。

なお,表紙写真も内田さんによるオオタカがチュウサギを捕らえたシーンです(コサギではないのが今号の表紙としてはちょっと残念ですが)。
オオタカに足環がついていることで「かご脱け」のオオタカじゃないかとネットで話題になっていましたが,調査のために個体識別された野生のオオタカです。

論文は以下のURLより,どなたでも読むことができます。
http://doi.org/10.3838/jjo.66.111

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66巻1号の注目論文は須藤さんらによるスズメの論文に

2017年5月16日
和文誌編集委員長 植田睦之

2017年4月発行の日本鳥学会誌66巻1号の注目論文は須藤さんらによるスズメの論文になりました。

日本鳥学会誌 66巻1号 注目論文
須藤 翼・柿崎洸佑・青山怜史・三上 修 (2017) 緑地の存在と住宅地の隙間の数がスズメの営巣密度に与える影響. 日本鳥学会誌 66: 1-9.

この論文は,スズメの減少要因について検討したものです。近年,スズメの減少が注目され,その原因として採食地や営巣場所がおよぼす影響について個々に検討されてきました。本論文ではその両方について調査検討し,どちらともがスズメの生息密度に影響している可能性を示した点が興味深く,注目論文として選定しました。

以下のURLより,どなたでも読むことができます。
http://doi.org/10.3838/jjo.66.1

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65巻2号の注目論文は浅井さんの日本鳥類目録の検証についての総説

2016年11月22日
和文誌編集委員長 植田 睦之

日本鳥学会誌65巻2号の注目論文は浅井さんの総説論文になりました。

日本鳥学会誌 65巻2号 注目論文
浅井芝樹・岩見恭子・斉藤安行・亀谷辰朗 (2016) スズメ目15科を対象とした日本鳥類目録改訂第7版の学名と分類の検証. 日本鳥学会誌 65: 105-128.

この論文は,2012年に改訂された日本鳥類目録で採用された学名と分類の一部について,IOCの世界鳥類リストとの相違点に注目し,最近の分子系統学の観点から検証したものです。目録において,なぜこの鳥は変わっていて,なぜこの鳥は変わっていないのかという,目録を見た人の多くが感じる疑問に答えるものであり,また多くの学術的知見が盛り込まれているため,注目論文として選定しました。

以下のURLより,どなたでも読むことができます。
http://doi.org/10.3838/jjo.65.105

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最初のEditor's Choice「注目論文」は江口さんのカササギのモノグラフに決まりました

2016年5月30日
日本鳥学会誌編集委員長 植田睦之

今号より各号原則1編の注目論文を和文誌編集委員会の協議で選出することになりました。学会誌の論文は,発行から1年間のあいだ,非会員の人は読むことができませんが,注目論文は制限期間なしに読むことができます。

この制度は,投稿者の励みになることでの学会誌への投稿の増加と注目論文をすぐ読めるようにすることでの会員の増加を狙って実施しています。 

記念すべき最初の注目論文は,江口さんのカササギのモノグラフです。 

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日本鳥学会誌 65巻1号 注目論文
江口和洋 (2016) カササギ. 日本鳥学会誌 65: 5-30.

この論文は,江口さん自身の長期にわたる研究の成果に加え,古文書や各種調査報告書をあわせてまとめることで,九州北部のカササギの分布の変遷とその原因についてまとめた総説です。電柱を営巣場所として利用するという行動の獲得と,人間の開発による土地利用の変化が,それまで局所的にしか分布していなかったカササギの分布拡大や個体数の変動につながったのではないかというこの研究は生態学的に興味深いだけでなく,近年分布を広げて特定外来生物にも指定されているソウシチョウやガビチョウなどの外来種の分布拡大のメカニズムの解明などの応用面でも重要と考え,注目論文として選定しました。

以下のURLより,どなたでも読むことができます。
http://doi.org/10.3838/jjo.65.5

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