鳥の学校・第8回テーマ別講習会「鳥類研究のためのGIS講習」

2016年7月26日
企画委員会

9月16日~19日に開かれる日本鳥学会2016年度大会に連結し、鳥の学校・第8回テーマ別講習会「鳥類研究のためのGIS講習」を9月20日(火)に開きます。席数にはまだ十分な余裕がありますので、皆様ぜひご参加ください。大会HPにも同様の案内を掲載しています。
http://osj-2016.ornithology.jp/lecture.html

日程:9月20日(火)10:00~15:30
会場:酪農学園大学(〒069-0836 北海道江別市文京台緑町582)A1号館3階304(PC5)
アクセスマップ:http://www.rakuno.ac.jp/outline/guide/access.html
定員:50名
講師:鈴木透 准教授(酪農学園大学農食環境学群・環境共生学類)

概要:
近年、鳥類の研究においてGIS(地理情報システム)がよく用いられます。個体のなわばり配置や営巣環境の把握といった小さな空間スケールから、ある種にとっての好適な生息環境の解明、渡りのルートの追跡といった大きな空間スケールまで、GISはさまざまな研究に適用することができます。最近は無料で使用できるソフトも機能が充実してきており、GISはもはや鳥類研究に欠くことのできないツールのひとつであるといっても過言ではないでしょう。本講習会では、特に無料のソフト「QGIS」を中心に、その基本的な使い方から応用例まで、専門家に詳しく解説していただきます。

講義内容:
・GISとは?
・QGISの基本操作「データの取得」「データの作成」
・QGISの応用操作「行動圏の作成」「環境選好性の分析」
など

受講対象:
GISを使ったことがなくこれから使いたいと考えている方、少し使ったことはあるけれど操作方法がよくわからない方など、GIS初心者を対象とします。ある程度使っているけれど基礎からもう一度勉強したいという方も受講していただいてかまいません。

準備するもの:
酪農学園大学のPCルームにあるQGISがインストールされたPCを使わせていただきますので、自分のPCを持ってくる必要はありません。ノート、筆記具等はご持参ください。

参加申込・問合せ先:
参加をご希望の方は、下記の申込先までメールでお申し込みください。
水田拓(鳥学会企画委員会) TAKU_MIZUTA(at)env.go.jp[(at)を@に換えてください]

参加申込締切:
7月31日(日)

・参加者は日本鳥学会会員に限ります。非会員の方は開催までにご入会ください。

この記事を共有する

鳥の学校で学んだこと

2016年7月26日
中川寛子(鹿児島大学農学部5年)

私は昨年にバンダーの資格を頂き、初めて自分自身で標識調査を進めることになりました。その中で、調査方法や死体の保存など、これで衛生的に問題ないのだろうかとか、調査中に鳥に怪我を負わせてしまったらどうしよう、といった不安が出てきました。調査では研究目的で糞の採取も行っており、サンプルのコンタミを防ぐのはもちろん、研究方法が一般の人に誤解や疑念を与えるようなものではいけません。しかし現実的に何をどうすれば良いのか分からない、そんな折にちょうど鳥の学校でこの講義があることを知り、迷わず参加を決めました。

葉山先生の講義では正しい手洗いの仕方から、使用目的に合わせた消毒液の選択や、死体の処理や送付時の注意点、使用した衣類や器具の洗浄・消毒方法などまさに日ごろ疑問に思っていたことを細かく教えて頂けました。先生が実際に使用されている道具なども見せて頂け、具体的にイメージができ道具をそろえる際の参考になりました。

高木先生の鳥の救護方法は大変興味深く聞かせて頂きました。鳥にも人工呼吸できるなんて考えてもみませんでしたし、捕獲時筋障害という病態があることも初めて知りました。アロンアルファが骨折の治療に使えることは特に驚きでした。救護には丁寧な観察と様々な工夫がなされていることを感じると同時に、鳥の研究をさせてもらっている身として、もっと鳥のことを勉強しなくてはと思いました。

講義の後も調査方法についてアドバイスを頂き、他の参加者の方々のお話も勉強になることが多くたいへん内容の濃い講義で時間があっという間に感じられました。

鹿児島に戻ってから、さっそく感染・コンタミ防止のために調査の後には専用の服をすぐに洗い、鳥袋も個体ごとに替え使用後は洗浄・消毒するようにしました。鳥の怪我にも備えて、アロンアルファと綿棒、止血鉗子なども用意しています。技術など不十分な面もありますが、自分なりに対策や準備をしておくことで、今までの不安がかなり払拭されました。受講して本当に良かったと思います。お世話になった先生方と企画委員の皆様に、心から感謝申し上げます。

鳥の学校2015風景2.jpg
この記事を共有する

鳥の学校「鳥類調査のための獣医学講座」に参加して

2016年7月26日
小林さやか(山階鳥類研究所)

山階鳥類研究所では研究用の標本を収集しており、その材料となる鳥の死体を受け入れるのが私の仕事で、日常的に鳥の死体を扱っています。死体に触れるだけではなく、解剖することも日常です。さらに自分で扱うだけではなく、窓に衝突したり、交通事故などで死亡した鳥を一般の方々からいただいたりすることもありますし、受け取ったこれらの死体をアルバイトさんに扱ってもらうこともありますので、今までの扱い方を確認するためにも今回参加することにしました。

前半は講師の葉山さんが野生動物の死体の安全な取り扱いについて、後半は高木さんが生きている鳥をケガさせた場合の処置の仕方をお話ししてくださいました。前半の葉山さんの話が私の業務にとっては関心事です。これまで自分たちがしてきた死体の扱い方、マスクや手袋、白衣を身につける、触った後は手洗い、うがい、特に手洗いは入念にする、ことで問題なさそうということが確認できて、安心しました。今まであまり気にしていなかったのが体調管理です。体調が悪いときには抵抗力が落ちているので、健康なときには感染しなくても、体調が悪いときには感染する可能性が高まるので要注意、と葉山さんのお話しにあり、その通りに思いました。皆さんもどうぞご注意ください。

後半の高木さんのお話についても、バンダーとして鳥を捕獲して標識し、山階鳥研の組織サンプル収集の目的で採血もしているので、興味深く拝聴しました。今まで私が見てきたケガした鳥の症状と高木さんのお話を頭の中で照らし合わせながら、「あの症状の時は、こんなことが起こっていたんだ」と納得することも多々ありました。今回、講演のなかで会場の関係で採血などの実習ができないと説明されていて、企画された方々のご苦労もしのばれるのですが、実習や見学がなかったのがちょっと残念に思いました。次の機会に期待したいと思います。

鳥の学校2015風景1.jpg
この記事を共有する

鳥の学校報告(2015年):第7回テーマ別講習会「鳥類調査のための獣医学講習」

2016年7月26日
企画委員会(文責:吉田保志子)

鳥の学校-テーマ別講習会-では、鳥学会員および会員外の専門家を講師として迎え、会員のレベルアップに役立つ講演や実習を行っています。第7回は「鳥類調査のための獣医学講習」をテーマとして、2015年度大会の初日(9月18日)、兵庫県立大学神戸商科キャンパスで行われました。講師は、会員であり獣医師である高木(林)英子氏と葉山久世氏に担当いただきました。受講者は45名でした。

最初の講義は、葉山氏による「捕獲調査・サンプル採取・救護における衛生的な取り扱い ~自分と周囲の人の安全を守り,他に感染症などを広げないために~」で、捕獲、傷病鳥獣の世話、解剖、サンプリング等の、生体や死体を扱う、人獣共通感染症のリスクが伴う活動における衛生対策の知識と考え方について説明されました。実際の調査やボランティア活動等を想定した、危険度に応じた防護方法の例や、家庭用の塩素系漂白剤など身近で入手できる資材を使った実践的な対策方法も紹介され、受講者は自分が行っている活動と引き比べて理解を深めていました。

次の講義は、高木(林)氏による「現場でできる野鳥救護法 ~鳥の体の構造、現場で起こりうる事故や病気の概要とその応急処置法~」で、捕獲調査において起こりやすい事故について、鳥の体の構造に基づく発生理由と対処・治療の方法について、豊富な事例や写真を用いて詳しく説明されました。鳥の種類に応じた安全な保定方法、輸送時の収容方法、給餌方法などについても、獣医師が用いる手法が詳しく説明されました。事前アンケートで希望が多かった、鳥の採血の手技については、動画を用いた説明も行われました。受講者からは、専門的な内容を具体的な説明で知ることができ、自分の活動に役立ちそうという意見が多く寄せられました。

消毒薬や衛生資材等の実物も展示され、2つの講義の終了後には、受講者はそれらを手にとりつつ、講師を囲んで自由な質疑が行われました。

2015鳥の学校_用具.jpg

講師のお二人からは、講義で使われたスライドを公開用に提供いただきました。当日の講義内容と、ほぼ同じものとなっています。野生動物の生体、死体、サンプルなどを扱うとき、自分や周囲の人の安全を確保するには具体的にどうしたらよいのか、鳥になるべく負担をかけない取り扱いや、鳥を傷つけてしまったときの対処方法など、当日参加されなかった方も、講義スライドからぜひ知識を得てください(上記文中の講義タイトルをクリック)。

受講者のなかからお二人が参加レポートを寄せてくださり(鳥の学校「鳥類調査のための獣医学講座」に参加して鳥の学校で学んだこと)、ご自分の仕事や研究との関わり、ためになった点などについて詳しく書いてくださいました。

なお、今年の鳥の学校-テーマ別講習会-は、2016年度大会の終了翌日の9月20日(火)に、「鳥類研究のためのGIS講習」を行います。鳥類の研究において、近年よく用いられるGIS(地理情報システム)について、無料のソフト「QGIS」を中心に、その基本的な使い方から応用例まで、専門家に詳しく解説していただきます。会場は、大会が行われる北海道大学札幌キャンパスから近い、酪農学園大学です。詳細は2016年度大会のサイトでお知らせしています。申し込み締め切りは2016年7月31日(日)です。

この記事を共有する