日本鳥学会2023年度大会の感想

都立国分寺高校 生物部
納谷莉子

私達都立国分寺高校生物部はカラスバトについて音声分析班とGPS班を編成し,グループでカラスバト研究を行っています.その中で私はGPS班に所属しています。私達国分寺高校生物部がカラスバトの研究を始めたのは約12年前です.はじめはカラスバトの生息する伊豆大島の林道を中心に観察を進めていましたが,カラスバトは警戒心が強く,人前にめったに姿を現さないため調査は困難でした.そこで目を付けたのが羽でした.大島公園の飼育個体の羽を拾い,いつ抜けたのかなどを調べてカラスバトの羽の生え替わりなども解明しようとしたり,安定同位体比の調査を進めたりしました.しかし,これらのことはカラスバトの生態解明にはあまり繋がらないのではないか,と考え,他の調査が始まりました.

それが,音声分析班が行っているフィードバック実験です.島の林道でスピーカーを用いてカラスバトの鳴き声を流し,それに対して野生のカラスバトはどのように反応するのか,また,その時の行動などとも照らし合わせることでカラスバトはどのようなときに,どう鳴くかを調査しました.その結果,島内でカラスバトがよく鳴く,つまりカラスバトが多くいる場所が分かり,その場所は今ではカラスバト調査の定番の場所となっています.黒田治男先生による音声分析方法の指導や,株式会社リバネスによる録音機の貸し出し等の支援もあって音声分析班は今も調査を続けています.ドローンによってカラスバトの生息地等の環境を調べることでカラスバトがどのような環境を好むか,という調査も行いました.

約2年前,大島公園でケガを負って保護していたカラスバトが回復し,放鳥されることになりました.この時,本校生物部顧問の市石博先生へ,「可能な範囲であれば研究にご協力できます」との連絡が入りました.そこで日本野鳥の会会長である上田恵介先生を通じて,国立環境研究所の安藤温子博士と連絡をとり,保護個体にGPS発信機を取り付けて放鳥しました.こうして安藤博士,大島公園との共同研究に発展し,私達GPS班の活動が始まりました.

そして,今回鳥学会大会に参加し,同じように鳥を研究する同年代の仲間たちと研究結果を共有することができ,とても充実した2日間を過ごしました.同年代の仲間のみならず,研究者の方々からも様々な方面からのアドバイスが寄せられ,これからの研究を進めるにあたり私たちが注意するべき点,よりよい研究にするためのポイント等をメンバーの皆と改めて考えるきっかけにもなりました.さらにGPS班は今回科学賞を受賞させていただきました。このような光栄な賞をいただくことができ、とても嬉しかったです。この研究を進めていく上で、GPS発信機による位置情報を取得できずデータ数が少ないこと、カラスバトの行動観察が困難なことに悩まされたこともありましたが、私たちの研究が発表を聞いてくださった方々に評価していただけたことはこれからの研究に対する意欲を高めるものとなりました。今回いただいた意見を基にこれからの研究活動に真摯に向き合い,私たちを支えてくださる皆様への感謝を忘れずにカラスバトの生態解明に励み続けたいと考えています.

最後に国分寺高校生物部は,中谷医工計測財団から助成を受けて研究活動を実施しています。この場を借りて,お礼申し上げます.

この記事を共有する