2024年度日本鳥学会 ポスター賞 受賞コメント(天野孝保)

長崎大学大学院 水産・環境科学総合研究科
天野孝保

日本鳥類学会2024年度大会にて、「繁殖・生活史・個体群・群集・生物間相互作用」部門のポスター賞を受賞でき、大変光栄です。本研究は大学院研究ではなく、休学期間に個人研究として実施したものです。私はかねてから、高速道路のSA/PAに多くのツバメの巣があることに興味を持っており、今回その利用状況を知るために全国規模での調査を実施しました。自由時間が十分にある休学期間を活用することで、このような調査を行うことができました。調査期間中は、早稲田大学の風間健太郎准教授、指導教員の山口典之教授、その他大勢の方のご指導、ご協力をいただきながら、安全第一で調査を実施いたしました。厚く御礼申し上げます。また、記念品をいただきました株式会社モンベル様にもこの場をお借りしてお礼申し上げます。そしてなにより、私のポスター発表を見てくださり、たくさんのご意見やコメントをいただいた皆様、本当にありがとうございました。今後は、より一層研究活動に従事し、研究成果としてこれまでお世話になった方々や調査対象種であるツバメ、その他環境保全に還元できるように取組んでいきたいと思います。
さらに、本大会では私にとって初めての大会実行委員を務めさせていただき、非常に大きな経験となりました。大会運営関係者の皆様にもこの場をお借りして感謝申し上げます。

 

成長に差のある雛たち。高速道路では防犯カメラの上にもよく営巣している。

ポスター発表の概要
都市鳥と呼ばれる鳥類種は都市に適応し、繁殖・生息をしています。高速道路は都市間の移動時間の短縮、物流支援や災害時の対応にも幅広く活用され、多くの人々の生活を支える役割を果たし、そこに建設される人工物はツバメもよく利用します。そのため、日本全国を繋ぐ高速道路はツバメの全国繁殖分布調査を行うのに最適な環境であると考え、本研究では日本の高速道路のSA/PA(北海道士別剣淵ICから鹿児島県鹿児島IC)におけるツバメの繁殖状況について可能な限り踏査しました。総走行距離は、約13,000km、停車SA/PAは(上下)約400ヶ所でツバメの巣の有無とその数をカウントし、GLMMを用いて解析しました。

半年間で北海道から九州を2回往復。撮影地は青森県。北海道行きの船を待つ。

その結果、高速道路はツバメにとってSA/PAが集団繁殖の場として利用されており、特にPAよりも人や車の出入りが多いSAが好適環境となっていました。また、中日本エリアのNEO PASA・EX PASAと呼ばれる独自の新ブランドは、ハイウェイオアシスなども含めて人間の休憩施設を充実させるだけでなく、ツバメの住みやすい商業施設にもなっていました。高速道路は、一般国道よりも空間的に高い位置に建設され、山間部や起伏の激しい環境を跨ぐ形で建設されます。本来ツバメが繁殖不可能な山間部上空などでもSA/PAなどの建造物があることで営巣を可能にしていました。今後は、高速道路がある程度独立した「高速道路生態系」となっている可能性について評価し、都市鳥と人間活動の関係性について研究を進めていきたいと考えています。

 

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