【連載】家族4人で研究留学 in オーストラリア(4)鳥がつなげる縁

瞳も綺麗な色のアオアズマヤドリ

熊田那央(バードリサーチ嘱託研究員)

前回の片山さんの記事の最後、サザエさん的次回予告の中から、研究以外で出会ったさまざまな出会いについて紹介いたします。

1人目は、同じ街に住むピアーズさんです。ピアーズさんは道端で片山さんと長女が日本語で話しているのを聞いて話しかけてくださった方です。初回は簡単に雑談をしただけでしたが、後日再会。鳥の研究をしていることや、ピアーズさんが生き物や鳥が好きで日本語を勉強中ということをお話しし、連絡先を交換しました。その後ピアーズさんのご家族とのお茶会に呼んでいただき、以前ピアーズさんが住まわれていたアイスランドの話を聞いたり、お父さんのマックスさんが撮影した鳥の写真を見せていただいたり、大変楽しい時間を過ごしました。その時に前々回に紹介した探鳥地のオクスリー クリーク コモンを教えてもらい、早速翌週に行って楽しい鳥見をすることができました。それ以来、ピアーズさんと私は定期的にお茶をさせていただいており、通う研究室があるわけではない私にとって英語を話せる大変ありがたい機会をもらっています。

近所の公園で長女の日本語課題につきあってもらう
近所の公園で長女の日本語課題につきあってもらう

ピアーズさんは一昨年出水にツルを見に行かれ、そこで地元の方にとても親切に現地を案内してもらったそうです。このことも私たちに声をかけてくれるきっかけの1つかと思うので、出水の方には感謝しかありません。私も日本で海外の方にお会いした際には積極的に声をかけていきたいと思います。

20年前に出水で見たツル。日本の鳥の中で人気のようで数人の人に見に行きたいと言われました。
20年前に出水で見たツル。日本の鳥の中で人気のようで数人の人に見に行きたいと言われました。

次に紹介するのは、キリスト教会の英会話クラスの方たちです。家から歩いて2,3分のところにある教会では、毎週無料で外国人向けの英会話教室が開かれています。オーストラリアでは移民の定着に熱心に取り組んでいるからか、こういった無料の英会話教室が各地の教会等で数多く開かれています。授業後にはモーニングティーがあり、生徒や先生達とのんびりおしゃべりができます。先生の1人のジェーンさんは、私が鳥の研究をしていてバードウォッチングが趣味だと話すと、オーストラリアの鳥の鳴き声のテープを貸してくれたり、おすすめのキャンプ地を紹介してくれたりとたくさん鳥の話題をふってくれました。その中でも、熱心に紹介してくれたマウントバーニー国立公園地域には、せっかくなので実際にキャンプにいってみることにしました。ブリスベンから車で2時間もかからないくらいのそう遠くない場所ではあるのですが、とても美しい山岳森林地域で、キャンプ場は携帯の圏外。Wifiもない完全なネット断絶状態はものすごく久しぶりで、英単語を調べようとしては検索が出来ず、明日行く場所の計画を立てようとしては地図アプリが表示されず、と無意識にネットを使おうとしては普段頼りっきりであることを痛感しました。また、見た鳥の識別もアプリでその地域で可能性の高い鳥を絞り込んでもらいそこから識別していたのを、一から図鑑の情報だけを使って識別せねばならず、パッと見た鳥を絞り込むには図鑑の予習が大切と初心を思い出すこととなりました。子連れ登山は回避し、川遊びをしながら麓をうろうろしているだけではありましたがブリスベンではまだ見たことのなかったアオアズマヤドリやルリミツユビカワセミ等をじっくりとみて、のんびりした鳥見を楽しみました。ジェーンさんに紹介してもらわなければ名前も知らないままの場所だったと思うので、行くことができて本当によかったです。

瞳も綺麗な色のアオアズマヤドリ
瞳も綺麗な色のアオアズマヤドリ

最後はウォーヴィック&ウェンディ夫妻です。ジェーンさんから鳥が好きな人がいるからと教会での日曜日の礼拝とモーニングティーにも誘われ、たくさんの鳥好きの方とお会いしました。そこで美しい鳥の写真を見せていただいたり、庭に東屋をつくったアオアズマヤドリのオスが一生懸命踊りをおどるもあえなくふられてしまったといった話しを聞いたりしました。もちろん私はウの魅力を語ったのですが、なかなか乗ってくれる人はおらず、あれ、おかしいな、英語がんばらないと、とおしりを叩いてくれる機会ともなりました。その中でお会いしたのがこの2人です。ウォーヴィックさんはクイーンズランド大学で採掘関係の仕事をされている方で、熱心なバードウォッチャーです。先日ケアンズに行った際に同じく鳥を見にきたウォーヴィックさんとケアンズ空港で出会い、帰ってから見た鳥リストを見せ合ったのですが、我々の倍くらいの種数を見ており子連れというハンデを考えても圧倒されました。ウェンディさんは学校の先生をしており、子供と遊ぶのがとても上手で、我が家の2人ともあっという間に仲良くなりました。2人が誘ってくださりブリスベン北東部のブライビー島周辺に一緒に鳥見に行った際にはウェンディさんが2人を見てくれている間にじっくりと鳥を見ることができ、大変贅沢な時間をもつことができました。

ブライビー島とその周辺には美しい砂浜が各地にあり、2人にいくつか案内してもらいながらオーストラリアヘラサギや渡ってきたたくさんのシギチドリ類を見ることができました。種自体はチュウシャクシギやオオソリハシシギ、オグロシギなどの日本でもおなじみのものでしたが、ここ数年は海浜にシギチを見に行くこともなかったのでたくさんのシギチが飛び交う光景を久しぶりに見て大変興奮しました。他にも地図に載っていないような小さなバードハイドがある場所をいくつも案内してもらったうえ、お昼を食べて午後は海で遊んでと、子供達も退屈せず、かつ鳥もたくさん見られるコースを案内してくださり大変充実した一日を過ごさせていただきました。
研究室のメンバーにはもちろんたくさんの鳥情報を教えてもらえているのですが、来るまでは想像もしていなかった出会いから、たくさんの鳥仲間を得ることができたことはこちらに来て一番嬉しかったことです。

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