6月1日から、日本鳥学会石川大会の申し込みが始まりました。現地での発表を検討されている方も多いのではないかと思います。若手会員の中には、ポスター賞へ応募される方もいらっしゃることでしょう。今回は、ポスター賞について、少し書かせていただこうと思います。
日本鳥学会ポスター賞は、若手の独創的な研究を推奨する目的で設立されたものです。2016年度から常設の賞となり、2023年度大会で第7回を迎えます。30歳以下の若手会員が対象となっており、毎年学生を中心とした多くの方々が応募しています。以前は2部門で募集を行っていましたが、内容の多様化や応募者の増加に伴って2021年度から審査部門を再編し、現在は「繁殖・生活史・個体群・群集」「行動・進化・形態・生理」「生態系管理/評価・保全・その他」の3部門で募集を行っております。
さて、ポスター賞は、どのように審査されているのでしょうか?
ポスター賞は毎年、前もって企画委員会からお願いをし、ご承諾いただいた方々によって審査が行われています。各部門数名の審査員が、手分けしてすべての応募発表に目を通しています。多くの場合は一次審査と二次審査を行っており(大会スケジュールによっては二次審査を実施しない場合もあります)、一次審査では講演要旨とポスターをもとに「研究のオリジナリティ」「妥当性」「学術的・社会的な重要性」「研究テーマの将来性」「ポスターのわかりやすさ」について評価して受賞候補を絞り込みます。二次審査では、絞り込んだ受賞候補者のプレゼンテーションを実際に聞いて、同様の評価項目について再度検討し、受賞者を選出しています。喫緊2回(2021年と2022年)のポスター賞の審査状況を見てみると、応募総数が33件と48件、一次審査通過が11件と13件で、そのうちそれぞれ3件がポスター賞を受賞しています。
ここで1つ、注目してほしいことがあります。それは、参加申し込み時に提出する「講演要旨」が一次審査の対象に含まれているということです。つまり、審査はポスター賞応募と同時に始まっているのです。皆さんの中に、講演要旨をただの「予告」と考えている方はいませんか?それは大きな間違いです。講演要旨は論文のabstractと同様に、発表内容を要約したものである必要があります。つまり、要旨の中にも「緒言、材料・方法、結果、考察」が端的にまとめられているべきなのです。しかし講演要旨の中には、最後が「~について報告する予定である」や、「~について検証する」のような形で終わっていて、ほぼ緒言に終始していて方法・結果・考察が書かれていないものが散見されます。こうしたものは、講演要旨としては不十分であると言わざるを得ないでしょう。要旨を読んだだけで研究の全体をつかめるようにすることは重要です。結果がまだ出ていないからという理由で予告めいた形で書く方もいらっしゃいますが、少なくともポスター賞に応募する方々には、論文のabstractを書く時と同じだと考えて、整った講演要旨を作成していただきたいところです。ちなみに私は学生時代に指導教員から「要旨の中で結果を述べるときは具体的な数値も書いたほうが良い」とアドバイスを受けました。サンプル数や解析値などを記述することで、具体性を高める効果が期待できます。
さて、ここでは講演要旨に注目してみましたが、ポスターの内容をわかりやすく他人に伝えるためには、様々なノウハウがあります。近年はポスタープレゼンの指南書が発売されていたり、気を付けるべきポイントがWEBサイトで紹介されていたりします(ぜひ検索してみてください)。また、百戦錬磨の先生方や先輩方からの教えもあるかもしれません。こうした資料や意見を参考にしつつ、ポスター賞に応募される皆さんは、見た目にもわかりやすいポスターの作成を目指してください。研究の魅力や面白さをわかりやすく他人に伝えることは意外と難しいですが、伝えようとする努力を怠らなければ、内容に注目してくれる方々も増えることでしょう。たくさんのご応募、お待ちしております。