ポスター賞を受賞して

2016年10月13日
東邦大学生物学科 松下浩也

(1)受賞時の心境
 人生初の学会参加ということもあり、学会がどのような場所なのかわからず、私のように形態学を学んでいる人間が果たして受け入れてもらえるのか不安だった。そのため、学会ではポスター賞のことは何も考えず、学会を楽しむことに専念しようと思っていた。最初にポスター賞の受賞を知った時には、「本当に僕でいいんですか?」と審査委員の方々に聞きたくなった。しかし、今となっては、自身の研究をこれだけ評価していただけたことは光栄であり、人生で最もうれしい出来事の一つであったと実感している。そして、今まで苦手であった人前での発表に対して自信がついた。これを励みにして、これからも新たな発見ができるように日々精進したいと思う。

(2)ポスターの概略
 鳥類の特徴といえば、嘴や翼、羽毛などの形態を想像する人が多いと思う。しかし、鳥類の特徴は足にも見られる。鳥類の足は生息環境や行動に対応して多様な形態が見られるが、多くの水鳥の足は水かきをもち、それは蹼足や全蹼足、弁足などに分類される。蹼足や全蹼足は水かきが趾どうしをつなぐ構造をもつ。一方で、弁足は独立した各趾の縁に弁膜と呼ばれる葉状の膜構造をもつ。弁足は現生鳥類のうちツル目クイナ科のオオバン属(Fulica)の全種、ツル目のヒレアシ科(Heliornithidae)の全種、カイツブリ目(Podicipediformes)の全種、チドリ目シギ科のヒレアシシギ属(Phalaropus)の全種の4系統のみで見られる珍しい形態である。しかし、弁足が形成される仕組みは未だ解明されていない。今回、私は弁足を持つツル目クイナ科のオオバン(Fulica atra)と、その近縁種で弁足を持たないツル目クイナ科のバン(Gallinula chloropus)の胚発生を調べた。趾の外部形態と内部形態を2種で比較し、オオバンの弁足形成で観察された新発見について報告した。

オオバン-IMG_6048.JPG
弁足をもつオオバン
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ポスター賞を受賞した感想

2016年10月13日
総合研究大学院大学 加藤貴大

 この度は日本鳥学会のポスター賞を頂くことができ、嬉しく思います.私は研究を始めた2010年から鳥学会に参加しており,今大会で7回目の参加となります.その間に,鳥学会での発表を通して色々な方からアドバイスを頂き,お手伝いをして頂きました.学会の皆様のご助力があっての受賞だと思います.

 他の学会にも実質的に学生を対象としたポスター賞などがありますが,鳥学会が公式に執り行うポスター賞はこれまでにありませんでした.今回,鳥学会の変化に立ち会うとともに,第一回の受賞者となれたことが大変ありがたいです.今後,若手の鳥類研究者にとっては,鳥学会のポスター賞こそが最も身近な目標の1つとなるのではないかと思います.さらに,副賞として学会スタッフTシャツを,mont-bellさんからサンダーパスジャケットを頂きました!(写真1)。これほど豪華なポスター賞は鳥学会にしかないと思います.早く寒くならないかと,いつにも増して天気予報を気にするこの頃です.

 嬉しさがある一方で,少し戸惑うこともあります.もちろん賞を頂いたことは大変ありがたいのですが,ややプレッシャーでもあります.今回が第一回ということもあるので,より一層精進しなければと,身の引き締まる思いです.

 最後になりますが,ポスター賞を創設して下さった評議員の方々,2016年度大会を運営された方々,ポスター賞審査員の方々,そして研究協力して下さった方々にお礼申し上げます.ありがとうございました.

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写真1. mont-bellさんから頂いたレインジャケットを着て野外観察している様子.

発表内容
 スズメ Passer montanusの♂胚死亡率が繁殖条件とホルモンレベルに応じて変化する,という研究を発表しました.スズメの孵化率が6割程度であり,他の鳥類よりも孵化率が低いことが知られています(写真2).この孵化率の低さはイエスズメやスペインスズメなどのスズメ属鳥類でも報告されています.「なぜ,孵化率が低いのだろうか?」という単純な疑問が本研究の出発点です.

 研究を進めていくうちに,多くの未孵化卵は受精卵であり発生初期段階で死亡していること,また,死亡する胚のほとんどが♂であることが分かりました(性特異的死亡).そして,繁殖密度が高い場所や,巣場所競争が激しい場所で繁殖する場合,性特異的死亡が多く見られました.さらに、性特異的死亡の生理的な要因も調べました.性特異的死亡は,♀親や卵黄のステロイドホルモンレベルとの関連が報告されています.そこで,雛の糞中ホルモンなどからコルチコステロン量を測定し,性特異的死亡の関連を示唆しました(前後しますが,繁殖密度などに注目した理由はこれです).

 鳥類では発生段階の他に,巣内雛,巣立ち後段階などでも性特異的死亡が報告されていますが,どのような状況下で死亡率が高まるかについては不明でした.本研究は,繁殖条件に応じて性特異的死亡が起こることを明らかにしました.今後は性特異的死亡の生態学的機能についても調べたいと考えています.

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写真2. スズメの孵化雛と未孵化卵.多くの巣で,孵化しない卵(胚発生初期に死亡する卵)が見られる.

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鳥学会前会長上田恵介先生の受賞

2016年7月11日

鳥学会の前会長の上田恵介先生が、今年度4月に、「みどりの日」自然環境功労者環境大臣表彰者(調査・学術研究部門)に選ばれました。
http://www.env.go.jp/press/102398.html

また、先月末に、第19回山階芳麿賞が贈呈されることが決定しました

第19回山階芳麿賞を、上田恵介・立教大学名誉教授に贈呈することを決定しました


http://www.rikkyo.ac.jp/news/2016/06/17913/

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