国後島訪問記(2018年6月1~4日)Part2

(公財)宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団 嶋田哲郎

2018年6月2日(Day 2)

 朝,私たちを迎えに来てくれた車は日本で言えば車高の高いワンボックスカーのような感じでした.人を乗せて運ぶことだけに特化されたような装備で,質実剛健,無駄なものは一切ないという作りです.このことがどれだけ重要なことか,あとで知ることになります.
 この日は,古釜布から南の方へ向かい,オホーツク海側の材木岩を目指します.アスファルトの道路は町を出るとすぐに砂利道に変わります.林の中の砂利道を車はなんなく疾走し,途中でオジロワシの巣を観察しました(写真4).
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写真4.オジロワシの巣.

 私はオジロワシの巣をじっくりと観察するのは初めてでした.国後島でのオジロワシの繁殖は比較的うまくいっているようで,ヒナらしきものも観察できました.
 東沸湖近くの湖ではオオジシギが賑やかにさえずる中,スズガモの群れが見られました.ここで繁殖しているそうです(写真5).
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写真5.スズガモの群れ.

 気持ちのよい景色をしばらく楽しんだあと,シマフクロウが繁殖しているというアンドレーエフ川に向かいました.日本から流れ着く牡蠣筏のブイを再利用してシマフクロウの人工巣を作っているそうで(写真6),シマフクロウにけっこう気に入られてるとのこと.
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写真6.シマフクロウの人工巣.

 川沿いにすすみ,人工巣に近づくと大きなフクロウが飛ぶのが見えました.シマフクロウです.木に止まって振り返ったところを双眼鏡でみることができました.初めて見るシマフクロウ,鳥とは思えないその威厳に圧倒されました.
 道中,キスレイコ所長の案内は絶好調です.英語が通じないため,小笹さんの通訳だけが便りです.小笹さんは所長の後ろにぴったりと付き従い,時折立ち止まって説明する所長の通訳をしてくれます.所長は説明したいことがたくさんあるようで,なかなかに長い説明です.所長の説明長いなあ,言葉は通じなくとも全員が共有する感情が芽生えてきました.
 次に向かったのは材木岩に向かうトレイルです.しばらく林の中を歩き,海岸に出ます.トドマツやアカエゾマツなどの林からアオジやウグイス,エゾムシクイなどの声が聞こえてきます(写真7).
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写真7.林の中の様子.

 ここは人一人通れるくらいの狭い道.どうしても人と人の間が空きます.小笹さんが大好きな所長は,彼が近くにいないとわかると遠慮なく,”ジュニア~”と叫びます.そのたびにタッタッタッと小笹さんが走っていきます.”大変ですね,どんな話でしたか?”と後から聞くと”ちょっとした小話なんですよね”とのこと.所長と小笹さんの間合いが気になり始めたのはこの頃からでした.
 海岸に出た後,材木岩を目指して歩きます.海岸にはたくさんのアマモがありました(写真8).
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写真8.干潮時にあらわれたアマモ群落.

 アオサもあります.コクガンはこのアマモが大好物です.野付湾で多くのコクガンが中継するのもアマモがたくさん生えているためです.今回の調査の私の目的のひとつはこのコクガンの生息可能性を評価することです.エフゲニーさんから沖にはアマモの群落があり,ホッカイシマエビがたくさんいると聞きました.コクガンの飛来する条件は十分に揃っています.2014年春に衛星追跡したコクガンはオホーツク海側には滞在しませんでしたが,きっとここにも来ているのだろうなと思いました.
 時折遠くから聞こえてくる”ジュニア~”という声を聞きつつ,海岸線を踏査していきます(写真9).
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写真9.海岸線.対岸に知床半島を望む.

 材木岩周辺の海岸は歩くには危険なため,林の中を迂回することになったのですが,これがなかなかの急傾斜.かなりしんどかったのですが,材木岩の奇観をみると疲れも飛びます.柱状節理によってできあがったまさに材木をたばねたような岩.自然に形成されたものとは思えないほど美しい姿でした(写真10).
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写真10.材木岩.

 昨日買い込んだ食材でお昼.私は1992年にコリマ川河口のツンドラでガン類の捕獲調査に参加させていただいたことがあり,そのとき一番印象に残っていた食べ物が黒パンでした.その黒パンにチーズやハムをのせて食べる,幸せなお昼でした.そのときキョーン,キョーンという声,西沢さんがすかさず“クマゲラだ!”.林に双眼鏡を向けるとカラス大のキツツキが移動しています.シマフクロウに続き,初めてのクマゲラ.ありがたい気持ちでいっぱいでした.
 海岸を歩きながらも所長の話は相変わらず絶好調です.所長,早く帰ろうよ,という他のロシア人の気持ちがなんとなく伝わってきます.あとで理由がわかりました.車は途中まで迎えにくれていて海岸沿いの道なき道を走って帰ります.そのため潮が満ちたら帰れないのです.実際にもう少し遅かったら潮が満ちて通れないなという場所があり,けっこうまずい状況だったのではないかと思いました.車高の高い頑丈な車が大活躍です.けっこうな水深の海や川をなんなく越え,そのまま倒れるのではないかと思えるくらい車体が傾いてもガンガン走り続けます.私たちは無事に古釜布まで戻りました.
 帰った後は博物館で情報交換会です.このことを地元の方にも広報していたようで,保護区以外の方々もいらしていました(写真11).
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写真11.情報交換会.

 小笹さんの通訳のもと,私たちはそれぞれの専門の鳥について順番にプレゼンしていきました.すごいなと思ったのは古南さん.グーグル翻訳を使ってプレゼンの文字をロシア語表記にしていました.機械翻訳なので十分ではないとおっしゃっていましたが,英語より断然通じるはずです.エフゲニーさんのプレゼン&ビデオ紹介もあり,お互いに鳥類の情報交換を行いました.
 こうして極めて中味の濃い一日が終わりました.振り返ってやはり片言でも意思疎通できたらいいなと思った私は,小笹さんからいただいたロシア語会話の小冊子から,どこ(グジェ),何(シトー),どんな(カーク),いつ(カクダー)などをフィールドノートに書いておきました.これを言えばなんとかなるかなと思いつつ.

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国後島訪問記(2018年6月1~4日)Part1

(公財)宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団 嶋田哲郎

2018年6月1日(Day 1)

 根室駅前のえびす屋旅館を出ると,かなりな風.昨日の手続きで船は出ると決まったものの,大丈夫かという不安が出てきました.準備を終えて桟橋に行くと,目前に1000トン余りのえとぴりか号がドーンとあるものの,その沖では白波が立っていました.“最近珍しいほどの強風です”と古南さんのダメ押しのコメント.久しぶりの船旅の私はなるようにしかならないと思い定め,船に乗り込みました.
 今回の国後島鳥類調査の目的は,1.生息状況や保全にかかわる情報交換,2.往復航路も含めた鳥類の生息状況調査と日露共同経済活動による風力発電候補地の視察,3.今後の鳥類の共同調査,および風力発電などの経済活動と鳥類保全との両立に向けた意見交換です.調査団は沿岸・海洋域に生息する鳥類を専門とする6名(団長の白木彩子さん(猛禽類),福田佳弘さん・西沢文吾さん(海鳥),古南幸弘さん(シギ・チドリ),嶋田(ガンカモ),松田実希さん(白木さんの学生でオジロワシを研究))に加え,小笹純弥さん(通訳),根上泰子さん(環境省・政府同行者)の2名を加えた計8名です(写真1).
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写真1.えとぴりか号の前にて(左から根上,松田,西沢,福田,小笹,
白木,古南,嶋田).

 調査はいたってシンプルで,行く先々で見た鳥をすべて記録します.根室港から国後島の古釜布港までの海上ももちろん調査します.白波立つ強風の海上で調査できるのかと思いきや,海鳥調査の猛者の福田さんと西沢さんはさっそく調査開始.見た鳥を記録係の松田さんにどんどん伝えていきます.普段海鳥を見慣れてなく,さらにこの高波,私は二人の発するウトウ○〇羽やボソ(ハシボソミズナギドリのこと)〇〇羽を頼りに水面に目を向けるもなかなか鳥を見つけることができません.そして西沢さんは調査しながらも合間に写真を撮っています.カシャカシャカシャという連写音を聞きながら,この状況でなぜ写真が撮れる!?と思ってました.
 中間ライン(国境ではない)を過ぎ,国後島に近づくにつれてだんだん波もおさまり,私も少しずつ海鳥を見られるようになってきました.傍らで彼らが頑張って調査をしている中,私は純粋にバードウオッチングを楽しんでいました.しかし,鳥がどうしても遠い上にじっくり見られない,うーん,もっとしっかりばっちり見たいという思いでした.
 古釜布港に近づくと全員,船室に入るように指示され,写真撮影は禁止されます.今回のビザなし交流は,墓参で択捉島へ向かう方々と国後島へ向かう私たち専門家チームに分かれていました.えとぴりか号は我々を国後島へ下したあと,択捉島へ向かうのです.ただ,入域手続き(入国ではない)は古釜布で行うようでした.
 古釜布港は水深が浅いため,えとぴりか号は桟橋に横付けできません.沖合に停泊し,迎えの船を待ちます.事前準備の段階でGPSやスマホ,パソコンなど電子機器の持ち込みが厳しく制限されており,違反したら日本に帰れないのか!?とビクビクしている中での手続きです.書類の顔写真との照合の後,迎えの船(友好丸と日本語表記がありました)に乗り込み,無事に古釜布港に到着しました.結局,チェックといえば,その顔照合だけで,荷物検査もなくそのまま迎えの車に乗り込んで,保護区の事務所に向かいました.
 途中,国後島での調査経験のある福田さんが道路がアスファルトになっていると驚いていました.以前はすべて砂利道の道路だったそうです.保護区の事務所に到着すると,すでにお茶の準備がしてあり,キスレイコ所長をはじめ,副所長のエフゲニーさん,数日前に赴任したばかりのガリーナさんとさっそく打ち合わせ開始.保護区側はジャムや卓上カレンダーなどのプレゼントを個別に準備くださっており,こちらも根室で準備した贈り物でまずはプレゼント交換.古南さんのご厚意で準備いただいた木彫りのフクロウ,通訳の小笹さんの機転で保護区あてが所長あてとなったという勘違いもありつつも所長はとても喜んで下さいました.結果オーライです.それでテンションが上がったのかもしれませんが,所長のマシンガントークが続きます.なんとなくこれからの旅の雰囲気を予感させるものがありました(写真2).
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写真2.左からキスレイコ所長,エフゲニー副所長,ヤーコブレフさん,
ガリーナさん.

 行程の確認をした後,白木さんのご提案で古釜布近くの風車建設予定地をご案内いただくことになりました.所長たちのご案内で徒歩で現場に向かいます.すれ違うロシア人の中にはニコニコしながら,”こんにちは”と”に”にアクセントをつけた発音で挨拶してくれる人もいます.私は前日に覚えたばかりのズドラーストヴィチェ(こんにちは)で返しました.2階建てのアパートの屋根にオオセグロカモメが営巣しているのを観察しつつ,町を抜けると海岸線に出ました(写真3).
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写真3.アパートの屋根で営巣するオオセグロカモメ.

 海食崖になっていてたしかに風況は良さそうです.しかし,こうした海食崖に風車を立てるとオジロワシがよく衝突することがすでにわかっています.それに人家にも近い.さらに雄大な爺爺岳を遠くに眺めるすばらしい景観.ここに立てなくもいいのに,と思いつつ散策しました.翌日の食料などを買い込んだ後,宿泊場所となる日露友好の家に戻りました.
 翌朝,待ち合わせの時間通り所長さんたちが迎えに来てくれました.所長が”ジュニア~はどうした?”という身振りで聞きます.ジュニア?,純弥,ああ小笹さんのことかと合点がいきました.旅のキーワードとなる”ジュニア~”を聞いた最初の瞬間でした.

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連載「国後島訪問記」

広報委員長 森さやか

(公財)宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団の嶋田哲郎さんから,国後島鳥類調査と学術交流の様子を紹介する原稿を投稿していただきました.豊富な写真とともに,全3回に渡って配信いたします.お楽しみに!

なお,鳥学通信では,学会員の皆様からの様々な研究・教育・普及活動のご報告や宣伝等の投稿を歓迎しております.
原稿の投稿およびご相談は,koho[at]ornithology.jpまで!
※メール送信の際は[at]を@に変えてください.

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鳥の学校「鳥類研究のためのDNAバーコーディング」に参加して

水村春香

 DNAバーコーディングは羽一枚、肉片一かけら、血液一滴からその持ち主を特定できる、夢のような種同定方法です。私は猛禽類のペリットや食痕からその食性を調べることがあるので、このDNAによる方法が使えれば、より精度高く餌の種同定ができるのではないかと考え、今回の鳥の学校に参加させていただきました。
 講習では講師の方々の説明を聞きながら、用意された謎の肉片の種同定を試みました。タンパク質の溶解、PCR、電気泳動、シーケンス反応、解析配列の決定を経て、世界中の生物のDNA配列がデータベース化されているBOLDシステムを用いて種同定するという一連の過程を体感することができました。実験過程は上記のように書くと短く感じられますが、これらの中にはさらに細かい過程がいくつもあり、DNA解析の苦労を実感しました。機械の問題で配列の解読ができないアクシデントもありましたが、用意されていた配列から無事に種同定できました。
 各種反応の待ち時間にはDNAバーコーディングの原理と応用、BOLDシステムの使い方を勉強しました。DNAバーコーディングにより形態では判別が難しい隠蔽種が発見され、バードストライクにおいては衝突を起こした種を血痕から同定し対策に役立てられているそうです。また、糞中の種子から種子散布する種を特定できるなど、様々な分野でこの技術が応用されていることがわかりました。そして全世界の鳥類のDNA解析を目標とし、世界中の研究者、研究機関が協力してBOLDシステムに標本とDNA配列を登録していることも初めて知りました。現在鳥類では4261種がBOLDシステムに登録されているそうです。今後さらに充実し、多様な分野で応用されていくのではないかと思います。
 DNAバーコーディングは設備や費用の問題もあり、誰でも今すぐに解析できるというわけではないと思います。しかしこの講習を受けて、手順を踏めば誰でも解析できること、そして何より分析の現場を体感することができました。時間の制約もあった中、数多くの実験内容をわかりやすく解説してくださった講師のみなさま、そして企画していただいた方々にこの場を借りて感謝申し上げます。

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各自のパソコンでBOLDシステムを参照

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「未知の肉片」の種同定の答え合わせ

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鳥の学校2017:DNAバーコーディング

黒沢令子

 2017年の鳥の学校は、筑波大学開催の鳥学会大会とシンポジウムが終わった9月18日から2日間、国立科学博物館の実験室で実習が行なわれた。受講生16人と聴講生6人に対して、講師4人と企画委員会から1人がついてくれるという恵まれた環境だった。
 まず、講師の齋藤さんから原理の説明があり、種名のわからない生物の体部からDNAを抽出して、種の同定をすることで、バンディングを含めて鳥類学、バードストライク対策、種子散布、また多くの人間活動の幅広い分野で応用が利く手法であるという話があった。
 実習では受講生は2つのテーブルに分かれて2~4人のチームを組み、サンプルからPCR、DNAの抽出、シークエンシング、完成した配列をBOLD systemsを使って種同定をする工程を行なった。
 受講生は2日目の昼食時に自己紹介をした。その後親睦を図る時間をとる予定だったが、自己紹介が熱心だったので時間が満ちるほどだった。年齢層は思ったよりも幅が広く、若い人は大学2年生から、年配の人は退職後、野外研究を続けている人まで、老若男女がいた。目的も野外で拾った羽を種同定したい、糞や胃内容物から食物同定したい、個体識別をしたい等々、多岐にわたっていた。
 実験の各過程でうまくいかない場合もあったが、講師陣が事前にそうした事態を見越して必要な資料を準備しておいてくれたので、最後まで作業を続けることができた。通常なら、3日ほどかかる工程を、2日間の計16時間で駆け足で行なったことになるが、配布資料が充実していたので、ついていくことができた。
 個人的に役に立ったと思う点は、分子生物学の手法について全く経験がないと、翻訳など一般の人向けに説明するときにうまく伝えられないが、今回のように一通りの過程を実物に触れて体験したことで、自信が付いた。今後、新しい用語や技術に出会ったときにも、この経験を元にすれば、自力で勉強することができるのではないかと思う。
 一方、機材や試薬が高価なので、一般人が簡単に自力で実験を行なえるものではないこともわかった。少数のサンプルならば、外注するという方法があることも学んだ。
 年齢がいってから新しい技術に接したわけだが、実体験できたことで、たいそうな充実感を覚えている。企画・主催してくれた鳥学会企画委員会、共催と場所提供をしてくれた国立科学博物館、および講師の皆さまにくれぐれもお礼を申し上げたい。

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慣れないサンプル操作に真剣

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シーケンサーの設定を見守っています

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鳥の学校報告(2017年):第9回テーマ別講習会「鳥類研究のためのDNAバーコーディング」

企画委員会(文責:吉田保志子)

 鳥の学校-テーマ別講習会-では、鳥学会員および会員外の専門家を講師として迎え、会員のレベルアップに役立つ講演や実習を行っています。第9回は「鳥類研究のためのDNAバーコーディング」をテーマとして、2017年度大会の最終日午後から翌日にかけての1日半の日程で、国立科学博物館筑波研究施設で行われました(9月18-19日)。講師は、齋藤武馬(山階鳥研)、杉田典正(国立科博)、坂本大地(九大)、西海功(国立科博)の四氏に担当いただき、国立科学博物館との共催として実施されました。申込受付開始後まもなく16名の募集定員が一杯になってしまいましたが、実験機器の容量等の関係から増員はできないため、定員を超えた6名には聴講枠で参加していただき、合計22名が受講しました。
 通常であれば3日程度かかるDNA実験の操作手順を1日半にまとめるため、綿密な講習資料が用意され、実験操作がうまく進まなかった場合にも一通りの手順を体験できるように十分な準備がされていました。事前アンケートをもとに、DNA実験が初めての人と少し経験がある人を組み合わせたグループ編成がなされる等、よく練られた内容の濃い講習は、受講者にとって大変貴重な経験になったと思います。
 講習に使用された機器は実際に講師の方々が普段の研究に使用されているものであるとともに、受講者の様々な質問には複数の講師から即応の回答があり、DNAバーコーディング研究の最先端に触れる機会となっていました。実験器具の準備や機械の調整、施設の利用に関わる共催の手続き等、様々な手配をしてくださった講師の皆様、たいへんありがとうございました。
 受講者からは、概念のみで学習していたことを、今回の講習で実際の操作として体験でき、より深い理解につながった、近隣にある施設を利用して自分の研究にもDNAバーコーディングを取り入れることが出来そうだ、といった沢山の感想が寄せられました。
 講師の皆様から、当日の配付資料および参考資料を公開用に提供いただきました(資料[1][2][3][4][5][6]。今回参加されなかった方も、これらの資料からDNAバーコーディングに関する知識を得てください。
 鳥の学校-テーマ別講習会-は、今後も大会に接続した日程で、さまざまなテーマで開催していきます。案内は、ホームページや学会誌に掲載します。

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国立科博筑波研究施設の実験室で

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サンプルを遠心分離機にセット

 受講者のなかからお二人に参加レポートをお願いしました。ご自分の仕事や研究との関わり、ためになった点などについて詳しく書いてくださいました。お二人のレポートから、当日の様子を感じていただけると思います。

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鳥の学校報告(2016年):第8回テーマ別講習会「鳥類研究のためのGIS講習」

2017年1月16日
企画委員会(文責:水田拓)

鳥の学校-テーマ別講習会-では、鳥学会員および会員外の専門家を講師として迎え、会員のレベルアップに役立つ講演や実習を行っています。第8回は「鳥類研究のためのGIS講習」をテーマとして、2016年度大会の翌日(9月20日)、酪農学園大学において、同大学農食環境学群環境共生学類との共催で実施しました。講師は同大学の鈴木透氏、参加者は35名でした。

講義はパソコンが備え付けられた教室で行われ、参加者は各自そのパソコンを使用しながら受講しました。講師の説明はスクリーンに映し出され、また同じ内容の資料がきちんとファイルされて配られたため、参加者はそれを見ながらパソコンを操作することができました。講義は「GIS(地理情報システム)とは何か」についての説明から始まり、続いてその概念やデータの種類、どのような解析が可能かなど、GISを使用するにあたり知っておくべき基本についての解説が行われました。その後、フリーのGISソフト「QGIS」を各自パソコンにダウンロードし、地図の作成からデータベースの構築、データの作成、データの分析まで、鳥類研究者が実際に使いそうな分析の流れに沿って説明が行われました。

事前アンケートによると、参加者のほとんどはGISの初心者であったため、講師の鈴木氏にはこの参加者層に見合った懇切丁寧な講義をしていただきました。そのおかげで、参加者からは「とてもわかりやすかった」、「今後の研究におおいに役に立ちそう」などの意見が多く寄せられました。
受講者のなかからお二人が参加レポートを寄せてくださり(晝間さよこさん松本経さん)、ご自分の研究との関わり、ためになった点などについて詳しく書いてくださいました。

鳥の学校-テーマ別講習会-は、今後も大会に接続した日程で、さまざまなテーマで開催する予定です。案内は学会ホームページや学会誌に掲載しますので、関心のある方はぜひご参加ください。

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講習会風景
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鳥の学校「鳥類研究のためのGIS講習」に参加して

2017年1月17日
松本経(北見工業大学)

地理的な情報を扱うにはGIS(地理情報システム)ソフトが便利ですが、GISソフトは高額なソフトというイメージが私にはありました。ところが、今回の鳥の学校に参加して、そんな偏見を吹き飛ばしてくれるフリーのGISソフトが既に存在していることが分かりました。酪農学園大学にて開催された講習では、参加者1人1人に1台のデスクトップPCと講習テキストを用意していただき、酪農学園大学の鈴木透さんに講義をしていただきました。午前中は座標値を扱うために必須となる空間参照系や、ポイント、ポリゴンといった空間データの特性の説明から始まり、今回使用した「QGIS」というGISソフトのダウンロード方法と初歩的な操作について、実際にPCを操作しながら体験しました。午後は位置情報を含むデータを利用してQGIS上で地図を作成し、さらにより見栄えのよい地図を作成するための編集方法も教えていただきました。嬉しいことに、インターネット上に公開されている国内植生図、土地利用図、標高データ等の無料ダウンロードサイトについてもご紹介いただき、今後の研究にとってとても有益な情報も得ることができました。後半の講習では、GPSの測位データを地図上にポイントとして描画し、道路のようにラインとして表現される異なる種類の地理データとの間で最短距離を算出する方法や、ラインから一定の距離内にあるポイントを特定してラインとの距離を算出・集計する方法、さらには多数のポイントをもとに動物の行動圏を算出してその面積を求める方法などを体験し、GISソフトの便利さを実感しました。

これまで空間情報の分析には高価なGISソフトを購入するしかないという悲観的な思い込みがあったのですが、特殊な分析方法を必要としないのでしたら、QGISでも分析者の要求を十分に満たしてくれると思います。特に、日本語版QGISはソフト内の表記はほぼ全て日本語で表記されているため、GIS初心者にとってもありがたいソフトです。最近ではQGISに関する書物も増えてきているようですので、鳥類研究に限らず様々な分野でユーザー拡大の可能性を秘めている有望なフリーソフトといえるでしょう。今回の講習会を企画・運営してくださったスタッフの方々に改めて感謝いたします。

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鳥の学校「鳥類研究のためのGIS講座」に参加して

2017年1月16日
晝間さよこ(東海大学大学院人間環境学研究科1年)

私は現在、西表島に生息するカンムリワシの繁殖生態や生息環境の解析を研究テーマとして修士研究に取り組んでいます。カンムリワシの生息環境を解析するには、QGISを利用したいと考えており、これまでは操作方法などを独学で勉強していました。しかし、専門書や論文だけでは理解しきれないところが多く、思うように操作できないことが多々ありました。今回は鳥の学校で「鳥類研究のためのGIS講座」が開催され、QGISの専門家の方から詳しく操作方法を解説して頂けることを知り、基礎から学びたいと思い本講座に参加させて頂きました。

本講座では、QGISの導入として始めに「QGISとは何か」という説明がありました。QGISの基礎となる部分について、データの種類から形式、また空間参照系など、配布された資料をもとに順を追って説明をして頂きました。これにより、QGISが地理情報システムとしてどんなものなのかというイメージをより明確に掴むことができました。QGISで解析をするにあたって使用する基礎データは、国土地理院や環境省のサイトから無料でダウンロードすることができます。それに加えて、Rなどの統計ソフトも用いることで、データ同士の関係性の分析や将来予測が可能になるなど、解析の幅が広がることを知り、ぜひ応用してみたいと思いました。また、本講座では、あらかじめ用意されたデータを用いて、より実践的な操作を学びました。データには、植生図や点の情報が用意されていました。それらを用いて、バッファの作成から、そこに重なる植生の抽出や植生面積の算出、2点間の距離の測定など、アドバイスをいただきながら自分で解析ができるようになりました。私と同じ研究室に所属する、海鳥の採餌海域について研究を行っている卒業研究生も講座に参加しました。GPSなどで得られた点の情報と植生図のような面の情報を組み合わせて解析を行うことができることをしり、現在はGPSから得られた海鳥の採餌海域の環境評価にQGISを利用できないかと、研究を進めています。

短時間の講座でしたが、QGISを学び、理解するきっかけになりました。日本鳥学会を通して視野を広げ、さらに本講座によって学生自身の問題解決に取り組むという良い機会となったのではないでしょうか。

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鳥の学校・第8回テーマ別講習会「鳥類研究のためのGIS講習」

2016年7月26日
企画委員会

9月16日~19日に開かれる日本鳥学会2016年度大会に連結し、鳥の学校・第8回テーマ別講習会「鳥類研究のためのGIS講習」を9月20日(火)に開きます。席数にはまだ十分な余裕がありますので、皆様ぜひご参加ください。大会HPにも同様の案内を掲載しています。
http://osj-2016.ornithology.jp/lecture.html

日程:9月20日(火)10:00~15:30
会場:酪農学園大学(〒069-0836 北海道江別市文京台緑町582)A1号館3階304(PC5)
アクセスマップ:http://www.rakuno.ac.jp/outline/guide/access.html
定員:50名
講師:鈴木透 准教授(酪農学園大学農食環境学群・環境共生学類)

概要:
近年、鳥類の研究においてGIS(地理情報システム)がよく用いられます。個体のなわばり配置や営巣環境の把握といった小さな空間スケールから、ある種にとっての好適な生息環境の解明、渡りのルートの追跡といった大きな空間スケールまで、GISはさまざまな研究に適用することができます。最近は無料で使用できるソフトも機能が充実してきており、GISはもはや鳥類研究に欠くことのできないツールのひとつであるといっても過言ではないでしょう。本講習会では、特に無料のソフト「QGIS」を中心に、その基本的な使い方から応用例まで、専門家に詳しく解説していただきます。

講義内容:
・GISとは?
・QGISの基本操作「データの取得」「データの作成」
・QGISの応用操作「行動圏の作成」「環境選好性の分析」
など

受講対象:
GISを使ったことがなくこれから使いたいと考えている方、少し使ったことはあるけれど操作方法がよくわからない方など、GIS初心者を対象とします。ある程度使っているけれど基礎からもう一度勉強したいという方も受講していただいてかまいません。

準備するもの:
酪農学園大学のPCルームにあるQGISがインストールされたPCを使わせていただきますので、自分のPCを持ってくる必要はありません。ノート、筆記具等はご持参ください。

参加申込・問合せ先:
参加をご希望の方は、下記の申込先までメールでお申し込みください。
水田拓(鳥学会企画委員会) TAKU_MIZUTA(at)env.go.jp[(at)を@に換えてください]

参加申込締切:
7月31日(日)

・参加者は日本鳥学会会員に限ります。非会員の方は開催までにご入会ください。

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