鳥の学校2017:DNAバーコーディング

黒沢令子

 2017年の鳥の学校は、筑波大学開催の鳥学会大会とシンポジウムが終わった9月18日から2日間、国立科学博物館の実験室で実習が行なわれた。受講生16人と聴講生6人に対して、講師4人と企画委員会から1人がついてくれるという恵まれた環境だった。
 まず、講師の齋藤さんから原理の説明があり、種名のわからない生物の体部からDNAを抽出して、種の同定をすることで、バンディングを含めて鳥類学、バードストライク対策、種子散布、また多くの人間活動の幅広い分野で応用が利く手法であるという話があった。
 実習では受講生は2つのテーブルに分かれて2~4人のチームを組み、サンプルからPCR、DNAの抽出、シークエンシング、完成した配列をBOLD systemsを使って種同定をする工程を行なった。
 受講生は2日目の昼食時に自己紹介をした。その後親睦を図る時間をとる予定だったが、自己紹介が熱心だったので時間が満ちるほどだった。年齢層は思ったよりも幅が広く、若い人は大学2年生から、年配の人は退職後、野外研究を続けている人まで、老若男女がいた。目的も野外で拾った羽を種同定したい、糞や胃内容物から食物同定したい、個体識別をしたい等々、多岐にわたっていた。
 実験の各過程でうまくいかない場合もあったが、講師陣が事前にそうした事態を見越して必要な資料を準備しておいてくれたので、最後まで作業を続けることができた。通常なら、3日ほどかかる工程を、2日間の計16時間で駆け足で行なったことになるが、配布資料が充実していたので、ついていくことができた。
 個人的に役に立ったと思う点は、分子生物学の手法について全く経験がないと、翻訳など一般の人向けに説明するときにうまく伝えられないが、今回のように一通りの過程を実物に触れて体験したことで、自信が付いた。今後、新しい用語や技術に出会ったときにも、この経験を元にすれば、自力で勉強することができるのではないかと思う。
 一方、機材や試薬が高価なので、一般人が簡単に自力で実験を行なえるものではないこともわかった。少数のサンプルならば、外注するという方法があることも学んだ。
 年齢がいってから新しい技術に接したわけだが、実体験できたことで、たいそうな充実感を覚えている。企画・主催してくれた鳥学会企画委員会、共催と場所提供をしてくれた国立科学博物館、および講師の皆さまにくれぐれもお礼を申し上げたい。

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慣れないサンプル操作に真剣

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シーケンサーの設定を見守っています

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