第6回日本鳥学会ポスター賞「生態系管理・評価・保全・その他」部門を受賞して

徳長ゆり香 (日本獣医生命科学大学)

 この度は、日本鳥学会2022年度大会において、「生態系管理・評価・保全・その他」部門のポスター賞に選んでいただき、誠にありがとうございます。研究の指導をして下さった先生方や共著者の皆様に良い報告ができたことを嬉しく思います。

 初めて発表者として参加した鳥学会でしたが、沢山の参加者の皆様から様々な意見をいただいたりディスカッションをしたりすることができたため、自身の研究を多角的な視点で捉え直すきっかけとなりました。コロナ禍が続く中、対面開催の準備・運営をしてくださった大会関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。貴重な機会をいただきありがとうございました。今後も良い研究成果が得られるよう、研究に邁進してまいります。

ポスター発表の概要
 マイクロプラスチック(MPs)による汚染問題は地球規模に広がっています。大気中マイクロプラスチック(AMPs)は、MPsの中でも小さく、都市部だけでなく自由対流圏、さらに、ヒトの肺からも検出されており、MPsを吸入することによる健康被害が懸念されています。鳥類は哺乳類よりも呼吸効率が良いため大気汚染の影響を受けやすいことで知られていますが、これまで鳥類がMPsを吸入し、それが肺に到達・蓄積するかどうかは解明されていませんでした。
本研究では、野生鳥類の肺における MPs の存在を明らかにするため、日本国内で有害鳥獣として捕獲され安楽死させられたカワラバト、ツバメ、トビの肺サンプルを、顕微フーリエ変換赤外分光光度計のATRイメージング法で分析しました。

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感染症対策を講じて検体を解剖し肺を採材する

 その結果、3種22羽のうち、2羽のカワラバトと1羽のツバメから計6個の破片状MPsが検出されました。MPsのポリマー材質はレジ袋、ラップ、バケツなどの原料であるポリエチレン(PE)、ストロー、医療器具、自動車部品などの原料であるポリプロピレン(PP)、スニーカーやランニングシューズのソール、クロッグサンダル、建築資材にも使われるエチレン酢酸ビニル(EVA)の3種類であり、いずれも日本の大気から検出事例のあるポリマーでした。日本においてカワラバトは留鳥であり、ツバメは夏鳥ですがMPsが検出された個体は幼鳥であったことから、いずれのMPsも日本で吸入されたものであることが判明しました。

 本研究は、一部の野生鳥類が摂食だけでなく吸入によってもMPsに汚染されていること、吸入したMPsが肺に到達することを初めて証明しました。MPsは有害な化学物質を含んでいたり吸着したりしている場合があるだけでなく、小さなMPsは肺から血流に入り全身臓器に到達する可能性があるため、摂取量が少なくても重大な健康影響を及ぼす恐れがあります。今後は、気嚢を含む呼吸器系や循環系におけるMPs の汚染実態と健康影響を解明するために研究を続けていきたいと考えています。

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第6回日本鳥学会ポスター賞「行動・進化・形態・生理」部門を受賞して

姜雅珺(千葉大・院・機能生態研究室)

 この度、日本鳥学会2022年度大会において「行動・進化・形態・生理」部門のポスター賞を授与して頂き誠にありがとうございました。

 終始熱心なご指導を頂いた千葉大学機能生態研究室の村上正志教授に感謝の意を表します。また、実験の実施にあたり、千葉大学生物機械工学研究室劉浩教授、日本野鳥の会十勝支部室瀬秋宏様、行徳野鳥観察舎友人会佐藤達夫様、久米島ホタル館佐藤文保様、山階鳥類研究所山崎剛史様に大変お世話になりました。ありがとうございました。とくに、風洞実験を指導して頂いた千葉大学生物機械工学研究室・D3村山友太様に感謝の意を表します。

 そして、わたしのポスターをご覧にいただき、たくさんの有益なコメントを頂いた皆様に感謝しております。また、鳥学会の運営の皆様、記念品をご提供いただいたモンベル様に感謝の意を表します。今大会を通じて、多くの示唆と刺激を得ることができました。皆様から頂いた貴重なご意見を踏まえて、今後研究を進めていきたいと思っています。
 
 本研究はJST奨学金の支援を受けて実施しています。

研究の概略
 鳥類の翼は「飛翔」という鳥類にとって最も重要な機能を司っています。その形態は各種の生態学的ニッチと関係し、操縦性能や飛翔速度といった機能に影響を与えると考えられます。先行研究で、羽ばたき飛翔において翼先端部 =hand-wingで生じた揚力と推進力が重要であることが示されており、翼先端の形態が飛翔機能と密接に関連すると考えられます。このような翼先端の形態として、翼端スロットの有無が注目されます。これまで、鳥の翼機能形態と飛翔に関してはたくさんの研究が行われていますが、翼先端の形質に集中してその飛翔性能との関係を解析することで、鳥類種間での翼機能の違いをより詳しく評価できると考え、研究を進めています。
 
 本研究では、91種のさまざまな飛翔行動と生息環境をもつ鳥類について、飛翔性能に関わると考えられる翼先端形質を、Klaassen van Oorschotの提案した指数 E (Emarginate index) とTi (wingtip sharp index) で評価し、さらに、アスペクト比とセミランドマーク法で翼全体の形を評価しました。その上で、これらの翼先端形質、及び翼形質が鳥類の飛翔行動や生息環境と相関を示すことを確かめました。つまり、短距離飛翔の鳥の翼は短く、先端が丸く、スロットのある形である一方、滑空飛翔の鳥の翼は長く、先端が尖って、スロットのない形でした。また、セミランドマーク法によって、翼先端の輪郭において羽ばたき飛翔の翼と滑空飛翔の翼が大きく異なっていることが示されました。これらの結果から、飛翔を特徴づける翼の形態として、初列風切羽分散度合、つまり、翼に占める初列風切羽の範囲が新たな形質指標と提案できます。羽ばたき飛翔と滑空する種では、初列風切羽分散度合が大きく異なっていました。

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 さらに、初列風切羽分散度合が、なぜ飛翔行動と関係するのか、機能的に調べるために、PIV粒子画像流速法によって風洞実験を実施しました。その結果、高迎角の際に、羽ばたき飛翔する鳥の翼は初列風切羽分散度合が小さいにもかかわらず、この部分を含むhand-wingで渦を安定させることで空力性能を維持していることがわかります。一方、滑空飛翔の翼は初列風切羽分散度合が大きいのですが、空力性能は翼全体で保っていることがわかりつつあります。風洞実験については、まだ条件が安定しないなど、課題がたくさんありますが、たくさん実験をして良い結果を得られればと頑張っているところです。

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第6回日本鳥学会ポスター賞「繁殖・生活史・個体群・群集」部門を受賞して

大泉龍太郎(岩手大学農学部森林科学科)

 このたびは日本鳥学会2022年度大会において「繁殖・生活史・個体群・群集」部門のポスター賞をいただき誠にありがとうございます。

 学部4年生でポスター発表を行うということには不安や緊張もありましたが、周りの支えがあり無事発表を行うことができました。背中を押してくださった先輩方、調査に同行してくれた同期、そして研究全般においてたくさんご指導をくださった山内貴義先生に改めて感謝申し上げます。また、大会を運営してくださった皆さま、記念品をご提供いただいた株式会社モンベル様にも感謝申し上げます。

ポスター発表の概要
 コムクドリは本州中部以北で繁殖する夏鳥で、その生息環境は、北海道では市街地・農耕地、本州中部では農耕地の他に落葉広葉樹林や針広混交林の疎林であるという先行研究があります。一方、東北地方での研究は少なく、特に北東北での生息環境については詳細が分かっていません。そこで本研究では岩手県盛岡市においてコムクドリの渡りと渡去の時期を明らかにし、そして繁殖期の生息環境の選好要因を明らかにすることとしました。さらに近縁種であるムクドリとの相互関係についても考察しました。

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調査地(市街地)

 盛岡市にある高松公園で定期調査ルートを設け、両側50m幅でコムクドリとムクドリを記録しました。また、盛岡市を3次メッシュで844区画に分けて「市街地」「農耕地」「森林」「市街地と農耕地(市・農)」「農耕地と森林(農・森)」「市街地と森林(市・森)」という6つのカテゴリーに区分し、その中から177区画を無作為に抽出しました。区画ごとに1kmの調査ルートを設け、両側50m幅でコムクドリとムクドリ及びその他の鳥類を記録しました。

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調査地(農・森)

 調査の結果、5月上旬から個体が発見され、7月上旬には確認されなくなりました。解析の結果、5月、6月に比べ7月の個体数発見が極端に少ないことが分かりました。生息環境に関してはカテゴリーごとと環境面積ごとに分けて解析を行いました。環境面積ごとの解析は、GLMによるモデル選択と、出現区画と未出現区画の面積を比べる古典的な解析の2種類を行いました。カテゴリーごとと合わせた3種類の解析で、コムクドリ、ムクドリともに市街地、農耕地、市・農に出現するが、コムクドリは市街地寄りに、ムクドリは農耕地寄りに生息していることが分かりました。また、森林には全く生息しないことも分かりました。この結果から北東北におけるコムクドリの生息環境が本州中部よりも北海道に近いと考えられました。また、市街地、農耕地ではコムクドリとムクドリの棲み分けが示唆されました。

 本研究及びポスター発表を通じて、多くの学びや課題を見つけることができました。また、発表ではたくさんのご指摘・アドバイスをいただきました。来年は修士課程へと進学するので、今後も引き続きコムクドリの生態について、新たな発見ができるよう努力していきたいと思います。

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津戸基金によるシンポジウムの公募が始まりました

日本鳥学会基金運営委員会

 学会では、2023年8月から2024年3月の間に国内で開催される鳥学に関するシンポジウムを対象に助成を行ないます。審査の結果、採択されると、会員津戸英守氏の寄付に基づく津戸基金より最大10万円の助成を受けることができます。ふるってご応募下さい。
 詳しくは、公募情報をご覧下さい。

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