日本鳥学会誌72巻1号 注目論文 (エディターズチョイス) のお知らせ

藤田 剛 (日本鳥学会誌編集委員長)

和文誌では毎号、編集委員の投票によって注目論文 (エディターズチョイス) を選び、発行直後からオープンアクセスにしています。

さて、72巻1号は「ペンギン特集」。そして、注目論文も特集論文のひとつが選ばれました。

著者: 高橋晃周
タイトル: 気候変動がペンギンに与える影響
DOI: https://doi.org/10.3838/jjo.72.3

ペンギンなど極地方にくらす生きものたちは、「地球温暖化」とよばれる気候変動の影響を受ける生物の中でもとくに象徴的な存在ですよね。この総説は、そのペンギンたちが体験している気候変動の影響を、著者高橋さんならではの視点で、複雑な研究成果が分かりやすい形に按配された力作レビューです。ペンギンファンでないあなたにも、ご一読をオススメします。

以下は、著者である高橋さんの言葉です。心洗われるようなすばらしい写真と一緒にお楽しみください。

エディターズ・チョイス論文に選んでいただきありがとうございます。私は南極昭和基地近くで繁殖するアデリーペンギンを対象として、気候変動がペンギンに与える影響を研究しています。自分自身が関わる一つの調査地の結果だけで、気候変動の影響の全体像を捉えるのは難しいことを常々感じており、2019年の鳥学会大会シンポジウムで気候変動とペンギンについて講演させていただいたことをきっかけに、今回の総説論文に取り組みました。もっとも苦労した点は、「気候変動がペンギンに与える影響は、時と場合によって正でも、負でも、非線形でもある」というわかりにくい内容を、いかにわかりやすく整理して伝えるか、という点です。最初の投稿から改訂稿の受理まで1年以上もかかってしまいましたが、もしなんとかうまく整理できていたとしたら、厳しくも的確な査読者や編集委員の方々のコメントのおかげです。和文誌に総説論文を書かせていただいたのは今回で3回目となりますが、毎回執筆を通じて私自身が一番勉強になったと感じています。他の研究者の論文を読むのは大分「お腹いっぱい」になりましたので、また気持ちを新たにアデリーペンギンのデータ解析に取り組んでいます。

(高橋晃周)
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写真1.南極昭和基地近くのアデリーペンギンの繁殖地

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写真2.アデリーペンギンの親子

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写真3.氷の浮かぶ海へエサ取りに出発

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