活動探訪 「軽井沢のホントの自然 〜現在・過去・未来〜」に参加してきました!

広報委員 遠藤幸子

みなさん、こんにちは!鳥たちのさえずりが聞こえる今日この頃。今回は、寒いなかにも春の気配を感じる長野県軽井沢町よりお届けいたします。

軽井沢町は、観光地や探鳥地としてメディアで紹介されたりすることから、来たことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。ここで昨年11月に「軽井沢のホントの自然〜現在・過去・未来〜」というイベントが開催されました。こちらのイベントでは、鳥類をはじめとする生物関連の著書を出版されている石塚徹さんが軽井沢町の自然の歴史や現在の状況などについてお話しされました*。

国設軽井沢野鳥の森からみた浅間山(2023年12月3日に遠藤が撮影)

軽井沢町は、浅間山という活火山の麓にあります。浅間山の噴火の影響により、昔は町の南部に湿原や草原が広がっていたそうです。そうした草原環境が開発により失われていった一方で、農地として開拓され、その後使われなくなった場所が草原になっていったのだそう。このようにしてできた草原では、以前は繁殖期にオオジシギもみられていたとのことでした**。残念ながらオオジシギは近年確認されていないとのことですが、こうした場所では草原を生息環境とするさまざまな生物が今もみられるのだそうです。石塚さんは、軽井沢に残る草原環境は、火山や人のかかわりの歴史を反映した「自然史遺産」であるとお話されていました。

当日の会場の様子。左が講師の石塚徹さん。

こちらのイベントでは他にも、軽井沢で近年増えた・減った生き物のこと、多様な環境が存在することの重要性などの色々なお話がありました。長年この地域で観察と調査をなさってきた石塚さんだから知っている、貴重な内容が盛りだくさんでした。

地域の自然の成り立ちを知ることは、自然環境の保全や再生を考えるうえでも大切なことです。このイベントの約3週間後、当日参加した人や後日動画をみた人が集まり、軽井沢の自然について一緒にお話するという「おしゃべり場」というイベントが開催されました。そこには、この地域の自然の歴史、科学的な知見、さまざまな立場の人々の想いとともに町の自然のこれからについて考える、人々の姿がありました。

*石塚さんは、軽井沢町の自然に迫る『軽井沢のホントの自然』(ほおずき書籍, 2012)、少年とともに自然を探検している気分になれる物語『昆虫少年ヨヒ』(郷土出版社,2011)、『歌う鳥のキモチ 鳥の社会を浮き彫りに』(山と渓谷社, 2017)などの鳥類関連の書籍など、さまざまな著書を出版されています。

**オオジシギは、環境省レッドリスト2020にて準絶滅危惧種に指定されています。

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鳥学通信が新しくなりました

(広報委員長 上沖正欣)

鳥学通信の前身は1975年12月から2001年12月(No. 81)まで発行されていた鳥学ニュースです(当初は「鳥学会ニュース」、1983年のNo. 11から「鳥学ニュース」に改名)。和文誌のフォーラムが開始されてからはしばらく休刊となっていましたが、2005年に広報委員会が新設されたのを機に日本鳥学会ウェブサイト上で「鳥学通信」として再開されました。2015年10月からは「さくらのブログ」で配信してきた鳥学通信ですが、利便性の向上を目的に、今後は再び学会ウェブサイト内で新たにWordPressを導入して配信することとなりました。

「さくらのブログ」旧記事については既に移行済みです。旧ページへリンクされている方がいらっしゃいましたら、更新をお願い致します。

現在では個々人がウェブサイトやSNSを使って自由に情報発信をおこなうのが当たり前の時代となっています。しかし、そうしたプラットフォームは検索されにくかったり古い情報が埋もれてしまうことが多々あります。鳥学通信は事務連絡だけでなく、鳥学会会員の皆様の情報発信や交流の場として、研究に関すること以外にもイベント告知や参加報告、便利道具の紹介など、鳥学に関する情報を幅広く扱う、有益なプラットフォームにしていきたいと考えています。何かネタをお持ちでしたら、気軽に広報委員会 koho[at]ornithology.jp まで記事を書いて送って下さい。

来年2025年には50周年を迎えます。引き続き、宜しくお願い申し上げます。

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国際生物音響学会に参加して

五藤花(北海道大学環境科学院)
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秋の北海道大学札幌キャンパス。銀杏並木が有名で毎年多くの観光客が訪れる。ちょうど学会期間の中日に紅葉がピークを迎え、主催者である相馬雅代先生の完璧なスケジュールに脱帽。

 

2023年の10月27日から31日にかけて、北海道札幌市の北海道大学にてInternational Bioacoustics Congress (通称IBAC、アイバックまたはイバック、呼び方に個人差あり)が開催された。世界の20以上の国々から、200人を超える学生や教員、専門家が参加した。

そもそもBioacousticsすなわち生物音響学とは何かというと、ざっくり言えば生き物の音をひろく扱う学問である。その懐の広さたるや、仏様もびっくりレベルである。分野で言えば、遺伝子から神経生理、解剖学、行動、生態系まであつかう生物学、音の物理的性質、機械学習、録音機材を扱うような工学寄りまで。音の周波数で言えば、ゾウのような低音から、コウモリやネズミ、イルカ等の超音波まで、ヒトの可聴域を優に超える範囲の音を扱う。ちなみにこれはIBACを運営しているInternational Bioacoustics Societyによる生物音響学の紹介文からかいつまんでご紹介している。ご興味のある方はこちらを読んでいただけると嬉しい。

私にとってこれが初めての国際学会だったのだが、いち参加者としても、そして北海道大学の運営側としても学会に携わらせてもらった。準備段階から皆が帰るまで、わくわくのとまらない非常にエキサイティングな学会だった。私がインコだったなら、終始瞳孔を収縮させながら頭を振っていたことだろう(※補足情報)。

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学会初日の朝。皆でポスターボードを用意中。

 

準備期間には、発表要旨を読んでプログラムを組んだり、ポスター賞の投票箱を段ボールから作ったりと、学会運営の苦労の一部を味わった(主催の先生方はもっと大変だったに違いないので”苦労の一部”としておく)。しかし何せコロナ禍で実地の学会経験も浅く、国際学会が初めての学生である。すべてが新しい挑戦だったが、先生方が適宜助言してくださったおかげで、なんとか仕事をこなしていたように思う。そしてその傍ら、自分のポスターも並行して行っていた。多忙を極めていたが、その分ポスターが刷り上がった時の達成感はひとしおであった。そんななか、夜にふらふらになって研究室のデスクに帰ったら、後輩からチョコの差し入れが。「ごとはなさん、おつかれさまです、チョコでーす」と書かれた付箋が添えられていた。実際こういうのが何より心温まる。素敵な研究室メンバーに恵まれているなとありがたく思った。

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左:前日の夜に撮った看板の写真。

 

そしてやってきた当日。北大のキャンパスは紅葉真っ盛りでゲストの皆様をお迎えするには絶好の季節だった。早朝からぞくぞくと集まってくる外国人の方々に若干の緊張を覚えたが、国際学会初心者にとってありがたかったのは、なんといってもそのフレンドリーな雰囲気だった。

口頭発表では、対象種の鳴き声を紹介するときに実演してみせる人が続出。初日から会場にサルやら鳥やらの鳴き真似が飛び交い会場は大盛り上がり。口頭発表のタイムキーパーを担っていた私は、盛り上がっている時ほど、楽しそうにお話されているところで発表を打ち切らなくてはならないのが非常に心苦しかった。私だってコーラスに加わりたい。

自分が参加したポスター発表では、論文で名前を拝見した研究者の方々と実際に議論することができ、とても刺激になった。論文には出てこないような日々のちょっとした気づきやアイデアまで含めて、国境や立場を超えて議論できるというのは大変貴重な機会だったと思う。ポスターセッションが終わってもまだまだ喋り足りないと思うくらい時間はあっという間に過ぎていった。

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ポスターは刷って貼っておしまいではない。刷ってからが勝負。 割り箸と画用紙で自作した小道具まで使ってプレゼンに挑んだ。その効果もあってか、ありがたいことに皆様からの投票でポスター賞をいただいた

 

毎朝の招待講演にも、鳥を扱っている研究者が数名登場した。ヨウムのアレックスで知られているペッパーバーグ博士の講演は、まるで彼女の本を読んでいるかのように興味深いエピソードでいっぱいだった。南アフリカでミツオシエの研究をされているスポティスウッド博士の講演は研究内容が面白過ぎて朝の眠気が全て吹っ飛んだ。どれもタイムキーパーの特権で最前列の席から聴けたことを非常にうれしく思う。

最終日の最後まで、参加者の皆さんが楽しそうに過ごしているのをみて運営側としては非常に嬉しかった。会場を閉じますよといっても、皆名残惜しそうに会話を続けていてなかなか出て行かない(こういうとき日本人だったら蛍の光でも流せば出ていってくれそうなのに、などと妄想した)。施錠を任されている運営側としては早く閉めてしまいたいが、それだけ参加者の皆さんにとって良い議論や交流の場になっていたと思えば頑張った甲斐があるというものだ。おかげで、初めての国際学会参加と運営をとても温かい気持ちで終えることができた。

次のIBACは2025年、開催場所はデンマーク。鳥を含めた生き物がつくりだす音に興味のある方は、ぜひ参加を検討してみてはいかがだろうか。

- 受賞されたポスター賞のインタビュー記事はこちら(英文。PeerJのサイトに移動します)
- 五藤さんの海外留学シリーズの記事はこちら
- 補足情報:ディスプレイの際に頭を振るインコ目の例(Youtube: キバタンワカケホンセイインコ
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一般社団法人日本鳥学会が設立されました

嶋田哲郎(法人化検討WG代表)

日本鳥学会は、明治45年(1912年)5月3日に第1回の会合がもたれ発足し、その3年後には学術雑誌「鳥」が創刊されました。日本鳥学会は創立以来、日本における鳥類分野でただひとつの学会として、さまざまな活動をくりひろげてきました。さらなる鳥学の発展及び学会基盤の確立と将来的発展を確保するために、2024年1月4日に登記を終え、一般社団法人日本鳥学会が設立されました。

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