海鳥の体の大きさの種内地理変異

2016年7月11日
名古屋大学大学院環境学研究科
日本学術振興会特別研究員PD
山本誉士

はじめに、私は主にバイオロギングという手法を用いて動物の行動・生態を研究しています。バイオロギングでは、動物に小さな記録計(データロガー)を取り付けることにより、その個体の行動や周囲の環境などを測定・記録します(詳しくは、高橋 & 依田 2010 日本鳥学会誌 59, 3–19「総説・バイオロギングによる鳥類研究」をご覧ください)。大学院ではオオミズナギドリCalonectris leucomelas(写真1)という海鳥の渡り行動を調べるため、北は岩手から南は西表島まで、日本各地の繁殖地で野外調査をおこないました。その過程において、なんだか繁殖地によってオオミズナギドリの体の大きさが違うような気がする、、、ということを感覚的に思っていました。データロガーを装着するため鳥を捕まえるのですが、北に位置する繁殖地では両手でしっかりと鳥を持ちますが、南に位置する繁殖地では片手で楽々持つことができました。

一般的に、動物の体の大きさは寒い高緯度域では大きく、暖かい低緯度域では小さいことが知られており、このような地理変異をベルクマンの法則と呼びます(種内変異はネオ・ベルクマンの法則、Renschの法則、ジェームスの法則などと呼ばれます: Meiri 2011 Global Ecology and Biogeography 20, 203–207)。ベルクマンの法則やジェームスの法則は体温維持に関わる適応であり(体が大きいほど体重あたりの体表面積が小さくなるため熱を逃がしにくい)、多くは陸上動物で検証されてきました。一方、海洋動物、特に海鳥類や海棲哺乳類の繁殖地の多くはアクセスが困難な僻地や断崖に形成されるため、繁殖地間で体の大きさが異なることは経験的に知られていましたが、繁殖分布域を縦断して種内変異傾向を調べた研究はありませんでした。

そこで、2006〜2013年にかけてメイン調査の合間に成鳥の外部形態を測り(写真2)、8箇所の繁殖地(図1)から合計454羽の計測データを集めました(苦節8年!)。そして、主成分分析により体の大きさの総合的指標(PC1)を算出し、オオミズナギドリの体サイズと繁殖地が位置する緯度・経度・気温(1981〜2010年の7〜9月の平均気温:本種の抱卵・育雛期)との相関を調べました。

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写真1. オオミズナギドリは日本や朝鮮半島、台湾などの東アジア周辺の海域で繁殖する海鳥で、平均的な大きさはカラスより少し小さいくらいです。繁殖期には地中に掘った長さ数メートルの巣穴で営巣し、一夫一妻で1羽の雛を育てます。主な餌はカタクチイワシなどの魚で、洋上では多くの時間を滑空(羽ばたかずに飛ぶ)して移動します。非繁殖期にはパプアニューギニア北方海域、アラフラ海、南シナ海まで移動・滞在します(Yamamoto et al. 2010 Auk 127, 871–881; 2014 Behaviour 151, 683–701)。

写真2.jpg

写真2. 繁殖地での調査風景(『生物時計の生態学〜リズムを刻む生物の世界〜(文一総合出版)』に海鳥の野外調査の様子を書いておりますので、よろしければご覧ください)。露出嘴峰長、鼻孔前端嘴高、全頭長、翼長、ふしょ長を計測。成鳥の体重は雛への給餌前後および採餌トリップに費やした時間で大きく変動するため、体重は主成分分析から除きました。

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図1. 調査を実施した繁殖地の位置。オオミズナギドリの主要繁殖地の北限から南限にかけて網羅的に調査を実施しました(北緯24¬–39°、東経123–142°)。

データを解析した結果、オオミズナギドリの体サイズは緯度と正の相関を示し(図2)、北の繁殖個体群ほど体が大きいという「感覚」が支持されました。なお、気温は緯度および経度と負の相関を示しました。つまり、北に位置する繁殖地ほど気温が低いため体が大きいという、ベルクマン(ジェームス)の法則に従うということです。全体的にみると高緯度ほどオオミズナギドリの体サイズは大きくなる傾向がある一方、いくつかの個体群間では、低緯度に位置する繁殖地の方が大きいという逆の傾向も見られました(例えば、御蔵島MIと男女群島DA、宇和島UWと冠島KA:図2)。

図2.jpg

図2. 各繁殖地のオオミズナギドリの体サイズと緯度の関係。青はオス、赤はメス。実線は一般化線形モデルで推定した回帰直線、破線は個体群の中で特に小さい仲ノ神島個体群NAを除いた場合(極端に小さい値に回帰が影響されている可能性を考慮)。北から、FO岩手県船越大島、SA岩手県三貫島、AW新潟県粟島、KA京都府冠島、MI伊豆諸島御蔵島、UW瀬戸内海宇和島、DA長崎県男女群島、NA南西諸島仲ノ神島。

海鳥では、形態的特徴が採餌行動と関連していることが報告されています。例えば、翼面荷重(つまり、翼の面積に対する体重の割合)が小さいと、長距離もしくは広範囲を移動する場合にエネルギー消費が少なくてすむと考えられています。相似の場合、体の大きさがa倍に拡大されると、体積はa3倍になるのに対し、表面積はa2倍になります。つまり、体が大きくなるほど、表面積に対する体積の割合(翼面荷重)が大きくなるということになります。先行研究により、御蔵島(MI)のオオミズナギドリは繁殖地から採餌域まで数百〜千kmも移動し、宇和島(UW)のオオミズナギドリは主に瀬戸内海内の狭い範囲で採餌することが知られています。この仮説に従えば、あまり移動しない宇和島の個体はより大きく、長距離移動する御蔵島の個体はより小さくなることになります。このことから、各繁殖地が位置する海洋環境と関連した採餌行動の特徴が、彼らの体サイズに影響している可能性が示唆されます。

本研究の結果は、体の大きさの地理変異傾向は海洋動物にもあてはまることを示しました。一方、形態的特徴の地理変異において、生息環境に適応した(採餌)行動的特徴を考慮する必要性を新たに提唱しました。野外調査では作業とデータまとめに追われる日々ですが、その合間に対象種やその生息環境をよく観察することで、研究アイデア(科学の芽)はフィールドに沢山転がっていることを実感しました。

【論文】Yamamoto T, Kohno H, Mizutani A, Yoda K, Matsumoto S, Kawabe R, Watanabe S, Oka N, Sato K, Yamamoto M, Sugawa H, Karino K, Shiomi K, Yonehara Y, Takahashi A (2015) Geographical variation in body size of a pelagic seabird, the streaked shearwater Calonectris leucomelas. Journal of Biogeography 43, 801–808.

論文の中では外部形態の性差強度(Sexual Size Difference)についても議論しております。その他の研究についてはhttps://sites.google.com/site/takasocegle/1をご覧頂ければ幸いです。

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鳥の学校・第8回テーマ別講習会「鳥類研究のためのGIS講習」

2016年7月26日
企画委員会

9月16日~19日に開かれる日本鳥学会2016年度大会に連結し、鳥の学校・第8回テーマ別講習会「鳥類研究のためのGIS講習」を9月20日(火)に開きます。席数にはまだ十分な余裕がありますので、皆様ぜひご参加ください。大会HPにも同様の案内を掲載しています。
http://osj-2016.ornithology.jp/lecture.html

日程:9月20日(火)10:00~15:30
会場:酪農学園大学(〒069-0836 北海道江別市文京台緑町582)A1号館3階304(PC5)
アクセスマップ:http://www.rakuno.ac.jp/outline/guide/access.html
定員:50名
講師:鈴木透 准教授(酪農学園大学農食環境学群・環境共生学類)

概要:
近年、鳥類の研究においてGIS(地理情報システム)がよく用いられます。個体のなわばり配置や営巣環境の把握といった小さな空間スケールから、ある種にとっての好適な生息環境の解明、渡りのルートの追跡といった大きな空間スケールまで、GISはさまざまな研究に適用することができます。最近は無料で使用できるソフトも機能が充実してきており、GISはもはや鳥類研究に欠くことのできないツールのひとつであるといっても過言ではないでしょう。本講習会では、特に無料のソフト「QGIS」を中心に、その基本的な使い方から応用例まで、専門家に詳しく解説していただきます。

講義内容:
・GISとは?
・QGISの基本操作「データの取得」「データの作成」
・QGISの応用操作「行動圏の作成」「環境選好性の分析」
など

受講対象:
GISを使ったことがなくこれから使いたいと考えている方、少し使ったことはあるけれど操作方法がよくわからない方など、GIS初心者を対象とします。ある程度使っているけれど基礎からもう一度勉強したいという方も受講していただいてかまいません。

準備するもの:
酪農学園大学のPCルームにあるQGISがインストールされたPCを使わせていただきますので、自分のPCを持ってくる必要はありません。ノート、筆記具等はご持参ください。

参加申込・問合せ先:
参加をご希望の方は、下記の申込先までメールでお申し込みください。
水田拓(鳥学会企画委員会) TAKU_MIZUTA(at)env.go.jp[(at)を@に換えてください]

参加申込締切:
7月31日(日)

・参加者は日本鳥学会会員に限ります。非会員の方は開催までにご入会ください。

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鳥の学校で学んだこと

2016年7月26日
中川寛子(鹿児島大学農学部5年)

私は昨年にバンダーの資格を頂き、初めて自分自身で標識調査を進めることになりました。その中で、調査方法や死体の保存など、これで衛生的に問題ないのだろうかとか、調査中に鳥に怪我を負わせてしまったらどうしよう、といった不安が出てきました。調査では研究目的で糞の採取も行っており、サンプルのコンタミを防ぐのはもちろん、研究方法が一般の人に誤解や疑念を与えるようなものではいけません。しかし現実的に何をどうすれば良いのか分からない、そんな折にちょうど鳥の学校でこの講義があることを知り、迷わず参加を決めました。

葉山先生の講義では正しい手洗いの仕方から、使用目的に合わせた消毒液の選択や、死体の処理や送付時の注意点、使用した衣類や器具の洗浄・消毒方法などまさに日ごろ疑問に思っていたことを細かく教えて頂けました。先生が実際に使用されている道具なども見せて頂け、具体的にイメージができ道具をそろえる際の参考になりました。

高木先生の鳥の救護方法は大変興味深く聞かせて頂きました。鳥にも人工呼吸できるなんて考えてもみませんでしたし、捕獲時筋障害という病態があることも初めて知りました。アロンアルファが骨折の治療に使えることは特に驚きでした。救護には丁寧な観察と様々な工夫がなされていることを感じると同時に、鳥の研究をさせてもらっている身として、もっと鳥のことを勉強しなくてはと思いました。

講義の後も調査方法についてアドバイスを頂き、他の参加者の方々のお話も勉強になることが多くたいへん内容の濃い講義で時間があっという間に感じられました。

鹿児島に戻ってから、さっそく感染・コンタミ防止のために調査の後には専用の服をすぐに洗い、鳥袋も個体ごとに替え使用後は洗浄・消毒するようにしました。鳥の怪我にも備えて、アロンアルファと綿棒、止血鉗子なども用意しています。技術など不十分な面もありますが、自分なりに対策や準備をしておくことで、今までの不安がかなり払拭されました。受講して本当に良かったと思います。お世話になった先生方と企画委員の皆様に、心から感謝申し上げます。

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鳥の学校「鳥類調査のための獣医学講座」に参加して

2016年7月26日
小林さやか(山階鳥類研究所)

山階鳥類研究所では研究用の標本を収集しており、その材料となる鳥の死体を受け入れるのが私の仕事で、日常的に鳥の死体を扱っています。死体に触れるだけではなく、解剖することも日常です。さらに自分で扱うだけではなく、窓に衝突したり、交通事故などで死亡した鳥を一般の方々からいただいたりすることもありますし、受け取ったこれらの死体をアルバイトさんに扱ってもらうこともありますので、今までの扱い方を確認するためにも今回参加することにしました。

前半は講師の葉山さんが野生動物の死体の安全な取り扱いについて、後半は高木さんが生きている鳥をケガさせた場合の処置の仕方をお話ししてくださいました。前半の葉山さんの話が私の業務にとっては関心事です。これまで自分たちがしてきた死体の扱い方、マスクや手袋、白衣を身につける、触った後は手洗い、うがい、特に手洗いは入念にする、ことで問題なさそうということが確認できて、安心しました。今まであまり気にしていなかったのが体調管理です。体調が悪いときには抵抗力が落ちているので、健康なときには感染しなくても、体調が悪いときには感染する可能性が高まるので要注意、と葉山さんのお話しにあり、その通りに思いました。皆さんもどうぞご注意ください。

後半の高木さんのお話についても、バンダーとして鳥を捕獲して標識し、山階鳥研の組織サンプル収集の目的で採血もしているので、興味深く拝聴しました。今まで私が見てきたケガした鳥の症状と高木さんのお話を頭の中で照らし合わせながら、「あの症状の時は、こんなことが起こっていたんだ」と納得することも多々ありました。今回、講演のなかで会場の関係で採血などの実習ができないと説明されていて、企画された方々のご苦労もしのばれるのですが、実習や見学がなかったのがちょっと残念に思いました。次の機会に期待したいと思います。

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鳥の学校報告(2015年):第7回テーマ別講習会「鳥類調査のための獣医学講習」

2016年7月26日
企画委員会(文責:吉田保志子)

鳥の学校-テーマ別講習会-では、鳥学会員および会員外の専門家を講師として迎え、会員のレベルアップに役立つ講演や実習を行っています。第7回は「鳥類調査のための獣医学講習」をテーマとして、2015年度大会の初日(9月18日)、兵庫県立大学神戸商科キャンパスで行われました。講師は、会員であり獣医師である高木(林)英子氏と葉山久世氏に担当いただきました。受講者は45名でした。

最初の講義は、葉山氏による「捕獲調査・サンプル採取・救護における衛生的な取り扱い ~自分と周囲の人の安全を守り,他に感染症などを広げないために~」で、捕獲、傷病鳥獣の世話、解剖、サンプリング等の、生体や死体を扱う、人獣共通感染症のリスクが伴う活動における衛生対策の知識と考え方について説明されました。実際の調査やボランティア活動等を想定した、危険度に応じた防護方法の例や、家庭用の塩素系漂白剤など身近で入手できる資材を使った実践的な対策方法も紹介され、受講者は自分が行っている活動と引き比べて理解を深めていました。

次の講義は、高木(林)氏による「現場でできる野鳥救護法 ~鳥の体の構造、現場で起こりうる事故や病気の概要とその応急処置法~」で、捕獲調査において起こりやすい事故について、鳥の体の構造に基づく発生理由と対処・治療の方法について、豊富な事例や写真を用いて詳しく説明されました。鳥の種類に応じた安全な保定方法、輸送時の収容方法、給餌方法などについても、獣医師が用いる手法が詳しく説明されました。事前アンケートで希望が多かった、鳥の採血の手技については、動画を用いた説明も行われました。受講者からは、専門的な内容を具体的な説明で知ることができ、自分の活動に役立ちそうという意見が多く寄せられました。

消毒薬や衛生資材等の実物も展示され、2つの講義の終了後には、受講者はそれらを手にとりつつ、講師を囲んで自由な質疑が行われました。

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講師のお二人からは、講義で使われたスライドを公開用に提供いただきました。当日の講義内容と、ほぼ同じものとなっています。野生動物の生体、死体、サンプルなどを扱うとき、自分や周囲の人の安全を確保するには具体的にどうしたらよいのか、鳥になるべく負担をかけない取り扱いや、鳥を傷つけてしまったときの対処方法など、当日参加されなかった方も、講義スライドからぜひ知識を得てください(上記文中の講義タイトルをクリック)。

受講者のなかからお二人が参加レポートを寄せてくださり(鳥の学校「鳥類調査のための獣医学講座」に参加して鳥の学校で学んだこと)、ご自分の仕事や研究との関わり、ためになった点などについて詳しく書いてくださいました。

なお、今年の鳥の学校-テーマ別講習会-は、2016年度大会の終了翌日の9月20日(火)に、「鳥類研究のためのGIS講習」を行います。鳥類の研究において、近年よく用いられるGIS(地理情報システム)について、無料のソフト「QGIS」を中心に、その基本的な使い方から応用例まで、専門家に詳しく解説していただきます。会場は、大会が行われる北海道大学札幌キャンパスから近い、酪農学園大学です。詳細は2016年度大会のサイトでお知らせしています。申し込み締め切りは2016年7月31日(日)です。

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日本鳥学会2016年度大会の講演申し込みの締め切りは本日(7月15日)です。

2016年7月15日
広報委員会

今年の鳥学会は9月16~19日に札幌で行われます。
講演の申し込み締め切りは本日(7月15日)です。
まだお申込みされていない方はお忘れなく。
http://osj-2016.ornithology.jp/

宿泊先は、普通のホテル検索サイトでは満室のところが多いようですが、大会サイトからいけばまだ空きがあるようです。

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ボランティアのススメ

2016年7月11日
日本鳥学会企画委員会 佐藤望

 企画委員では鳥学研究の促進を目的として、鳥類調査に関するボランティア募集の情報を収集し鳥学会のHPで公開しています。
http://ornithology.jp/volunteer.html
まだ始めたばかりの企画なのでご存じでない方もいらっしゃると思いますが、全国で調査を経験する事ができる場所を掲載しています。

この活動を始めた背景には、鳥の研究に興味があっても研究できる研究室や調査をする場所がなかなか見つからないといった状況があります。また、卒業研究で鳥類の研究をしたいと思っても、限られた期間のなかで一人で調査を0から覚えて実行するのはなかなか簡単ではありません。このような状況下にある鳥の研究を志す人にとって、ボランティアとして野外の鳥類調査に参加することは大きな意味があります。また、所属した研究室が鳥類の研究をしていない場合でも、調査地があってテーマがあれば、鳥類をテーマに卒業研究ができるかもしれません。

私はニューカレドニアなどで鳥類の野外調査をしてきましたが、その間、国内外の学生が参加してくれました。一部の国ではインターンとして海外の調査を経験することが博士課程に進学するために必要らしく、欧州や南米から問い合わせが来て、実際に何人かの学生を受け入れました。彼らは調査に参加することで調査能力や研究の方法を習得できたと思いますが、それだけではなく、毎日の生活の中で多くの議論をすることで受け入れた側にも新しい発見やモチベーションの向上などがありました。

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ドイツからニューカレドニアにインターンで手伝いに来てくれました(著者は向かって右)

海外の若手研究者に負けないよう、特に日本の若手の皆さんにも是非このような場所に飛び込んでもらえればと考えています。もちろん、もう若手じゃない…という人も、きっと受け入れてくれると思いますので、老若男女問わず、積極的にこのボランティア募集情報を活用してもらえればと思います。

また、全国で鳥の調査をしている皆さま、ボランティアを受け入れてはいかがでしょうか。受け入れが可能であれば、佐藤(nozomu ATMARK liferbird.com)まで連絡を頂ければ幸いです。

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鳥学会前会長上田恵介先生の受賞

2016年7月11日

鳥学会の前会長の上田恵介先生が、今年度4月に、「みどりの日」自然環境功労者環境大臣表彰者(調査・学術研究部門)に選ばれました。
http://www.env.go.jp/press/102398.html

また、先月末に、第19回山階芳麿賞が贈呈されることが決定しました

第19回山階芳麿賞を、上田恵介・立教大学名誉教授に贈呈することを決定しました


http://www.rikkyo.ac.jp/news/2016/06/17913/

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自然史学会連合のご紹介

2016年7月4日
自然史学会連合鳥学会代表 濱尾章二

自然史学会連合をご存知でしょうか。「聞いたような気もするけど、よく知らない」「総会の決算報告で聞く、毎年分担金を払っている団体でしょ」というような方が多いのではないでしょうか。前任の西海さんに代わって、1月からこの連合の鳥学会代表を務めることになりました。この機会に、連合を紹介したいと思います。

自然史学会連合は、鳥学会など生物の分類群ベースの学会や、生態学会・行動学会のような学問分野ごとの学会、また地質関係の学会など、自然史科学関連の39学協会
http://ujsnh.org/societies/index.html
が加盟している連合体で、日本学術会議の協力学術研究団体の一つです。学会の間をつないで自然史科学の振興を図り、研究教育態勢の改善を目指すというのが、設立の理念です。
http://ujsnh.org/about/philosophy.html

設立理念の中には、「自然の正しい理解とその普及が人間教育とこれからの社会にとってきわめて重要」、また自然史研究の成果は「細分化された専門分野を横断した協力と総合によって得られる」と書いてあります。かつての役員の一人(小汐千春)は、「自然界の理解や自然観の形成に役立つということは、『文化』への貢献という点で非常に重要である。私たちの行っている科学とは、まさに『文化としての科学』なのである」と述べています。文化としての自然史科学が健全に育つよう社会に情報発信していくのが、連合の目指すところだと言えましょう。
http://ujsnh.org/activity/essay/useful.html

「なかなかいいことを言っているではないか」と思ってくださった方も多いことと思います。実際、運営に関わってみると、見識が高く、また仕事の速い人が多くて、舌を巻いています。

さて、その仕事の中身ですが、最近の仕事で特筆すべきなのは、「理科好きな子に育つ ふしぎのお話365」という一般書の刊行です。
https://www.seibundo-shinkosha.net/products/detail.php?product_id=4478
鳥学会員で協力した方もいますが、タイトルの通り、39学会の力が結集された力作です。この本は、第63回産経児童出版文化賞(JR賞)を受賞しました。

また、毎年、講演会を行っています。これは全国各地の博物館などを会場に行われているもので、鳥学会員で講演をしたり、協力したりした方もいると思います。
http://ujsnh.org/sympo/index.html
今年度は、詳細未定ですが、群馬県立自然史博物館で2017年1月21日(土)に行われます。

そのほか、自然史科学に関わる各種シンポ、イベントの後援、声明や要望書の提出などを行っているほか、近年は博物館学芸員資格の問題*についても情報交換がされています。

ぜひ一度、自然史学会連合ホームページをご覧下さい。
http://ujsnh.org/

* 学位を持っていても学芸員資格を持っていないと博物館に就職できない場合が多いことや、学芸員資格を得るための授業で自然科学が軽視されている問題などが指摘されています。

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日本鳥類標識協会誌のご紹介

2016年6月29日
日本鳥類標識協会編集委員会
森本 元・齋藤武馬

日本鳥学会誌をはじめ、日本国内には数多くの学術誌が存在しますが、「日本鳥類標識協会誌」もそんな雑誌の一つです。現在発行されている、鳥類学関係の他誌に比べると、最もマイナーな存在という印象を持たれる方もいるかもしれませんが、学協会発行のれっきとした学術誌です。掲載から2年を経過した論文はJ-Stage上にてどなたでも読むことが可能ですので、ぜひ一度、中身をご覧になっていただけると嬉しいです。また、会員内外のどなたでも投稿可能ですので、どんどんご投稿ください。

図・日本鳥類標識協会誌紹介用(jbba2015_vol27.jpg)枠.jpg
表紙は毎年変わります。上記は2015年のもの。

当誌の特徴といいますと、これまでの掲載論文の内容から、鳥種の形態や識別に関するものが多い雑誌であるといえます。日本鳥類標識協会誌は、誌名に「標識」とついていることからもわかるように、鳥類標識調査に関する団体である日本鳥類標識協会が発行しています。みなさん、鳥類標識調査はご存知でしょうか?鳥類標識調査(通称バンディング)は、鳥に足環や発信機等の標識を装着し、鳥の移動や寿命、個体数変動を調べる調査手法です。現在、世界中でこの標識調査は行われており、毎日のように、それら標識個体の情報が国内・国際的にやりとりされて、移動情報が蓄積されています。日本では環境省が事業を主導し、山階鳥類研究所が受託者となって実施されています。この活動を支えているのが、通称「バンダー」と呼ばれるボランティア調査者の方々です。日本鳥類標識協会の会員の大半はこのバンダーであり、それゆえ、鳥類の識別や移動に関する話題が多い雑誌となっているわけです。日本鳥学会の雑誌(和文誌・英文誌)や、バードリサーチ発行の「Bird Research」誌、日本野鳥の会発行の「Strix」誌、どれも鳥類の生態を扱った研究内容が掲載されることが多いと思いますが、日本鳥類標識協会誌は、それらとはちょっと毛色が違う、鳥学の中でも特定分野に特化した学術誌という印象を持っている方もいるかもしれません。

実は、日本鳥類標識協会誌はこうした分野のみに特化した雑誌というわけではありません。鳥学に関わることなら何でも投稿を受け付けており掲載しています。本誌は、バンディング関係の論文しか載せない雑誌という誤解を受けることがあるのですが、そんなことはないのです。例えば、生態研究でも構いませんし、寄生虫など鳥に関わる周辺的なテーマ、鳥類に関わる文系的テーマもOKです。和文論文が主ですが、英文論文も受け付けており、和英混合誌であるといえます。

本誌の編集委員の一部は鳥学会発行の雑誌の編集にも関わっている立場なので、申し上げにくいのですが、本誌への投稿も選択肢の1つとしてご検討していただければと思います。また、観察記録の公的な記録にも力を入れており、県初確認等の記録も積極的に掲載しています。さらに、論文の執筆相談も受け付けており、執筆経験が浅い方であっても、気負わずにご相談いただければと思います。学生やアマチュア研究者の方々が論文を執筆する手助けができれば幸いです。

さらに、持ち込みでの特集企画も歓迎です。若手研究者の方々の中には、何かやってみたいが、雑誌の敷居が高いと尻込みしてしまったり、足がかりが無くて困った思いを経験した方もあるかとおもいますが、本誌をうまく利用してください。日本鳥類標識協会誌の編集委員会は、30代を中心に若い編集委員で構成されており、カラー図表の多用や、カラー表紙、表紙付き別刷り、Editor’s choice、オンラインファースト(電子版の先行出版)等、他誌に無い様々な投稿者・読者サービスを試み、実践しています。新しい事柄に挑戦したい、論文執筆をチャレンジしてみたいとおもっている、学生、アマチュア、若手研究者の発表を行う場を拡げ、その手助けをしたいと私達は考えています。投稿してみたいとおもう方々は、ぜひ、お気軽にご相談くださればとおもいます。

日本鳥類標識協会誌ホームページ
http://birdbanding-assn.jp/J03_bulletin/index.html
日本鳥類標識協会誌J-Stageウェブページ
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jbba/-char/ja/

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