記事紹介:「若手生態学者が見ている世界 -研究者支援写真展-」 開催報告

広報委員会 遠藤 幸子

みなさんは、自然のなかでこれまでにどんな景色に出会ってきましたか?

調査地で研究者がとらえた貴重な一瞬を展示した「若手生態学者が見ている世界 -研究者支援写真展- 」が、2021年11月29日から12月5日にかけて横浜で開催されました。今回、こちらの写真展を企画された清水拓海さんと出展された水村春香さんからご寄稿いただきましたので、2週にわたってご紹介いたします。

清水さんはこの写真展にどのような思いを込めていたのでしょうか。
水村さんが写真展に参加して、新たに気づいたこととは…?
ぜひご覧いただけると嬉しいです。

1週目 清水拓海さん
「若手生態学者が見ている世界 -研究者支援写真展- 」を企画して
    
2週目 水村春香さん
「若手生態学者が見ている世界 -研究者支援写真展- 」に研究者として参加して
    

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(仮称)苫東厚真風力発電事業計画への対応をめぐって(下)

武石全慈(鳥類保護委員会委員長)

4. 2021年度書面総会での要望書決議
 2021(令和3)年3月下旬には、本件事業の中止を求める要望書を鳥学会長名で事業者に対して提出して欲しい旨の打診が鳥学会員4名の連名で鳥類保護委員にあり、4月20日付けで決議採択依頼状と要望書案を鳥類保護委員会に提出していただきました。その際の要望理由は、本事業計画地とその周辺は、国内希少野生動植物種のタンチョウ、チュウヒ、オジロワシ、オオワシの繁殖地や生息地となっているとともに、天然記念物のマガン、ヒシクイの移動経路や餌場および塒が存在し、近年個体数減少が懸念されるオオジシギも多数繁殖し、その他の多くの野生動植物にとっても非常に重要な生息・生育地となっていること、また、これらの鳥類は風力発電施設等の人工物への衝突リスクが高いか、障壁影響の発生確率が高いと考えられ、風力発電施設の建設がこれらにもたらす影響は極めて大きいと予測され、事業計画の中止以外には影響を回避・低減することは困難と考えられるということでした。
 その後、要望書提案者と保護委員会との間での協議や保護委員会内部での検討を行ない、要望書の文面の修正を行なって行きました。
 その最中に、タンチョウについては、本事業計画地の風車設置区域の浜厚真地区の海岸湿地で、2017年の繁殖成功に引き続き、2021年にも1つがいの再度の繁殖が確認され、それに合わせて要望書の内容を適宜に変更しました。この2021年の繁殖活動については、4月7日に就巣個体を初確認、4月27日に2卵を確認、5月7日に1雛1卵を確認、5月12日に成鳥2羽と連れ立つ雛2羽を確認といった経緯をたどり、7月17日まで浜厚真海岸湿地に滞在した後、親子共々歩いて本事業計画地外へ移動したとのことでした(日本野鳥の会苫小牧支部報No.238)。また、7月12日には、このタンチョウの繁殖成功についての記事が朝日新聞からウェブニュースを含めて報道され、広く世間に知られることとなりました。
 また、現地との関係で触れれば、チュウヒについては、勇払原野は国内有数の繁殖地になっていますが、同地でのSenzaki et al. (2017) の研究によると、湿地パッチ内の繁殖つがい数やつがい当り巣立ち雛数は、湿地パッチ重心から周囲2km以内での人工的な土地利用(舗装道路、工業用地、住宅地、太陽光発電所等)の面積割合と負に関係することが示されていて、現地での風車建設による(バードストライクとは異なる)人工構造物のマイナス影響が懸念されるところです。
 最終的には、鳥類保護委員会として鳥類の保全上重要な案件であると判断して、「(仮称)苫東厚真風力発電事業に対する事業中止要望書」を総会決議として採択することを提案して、8月14日に学会事務局に提出しました。その後、評議員会での審議を経て、日本鳥学会2021年度書面総会に議案として提出され、有効表決者の方々の圧倒的多数の賛成を得て、2021年10月22日付で可決されました。鳥学会会員の皆様には御礼申し上げます。その後、要望書は日本鳥学会長名で11月25日付で事業者のDaigasガスアンドパワーソリューション(株)に郵送され、その写しは親会社の大阪ガス(株)、環境大臣、経済産業大臣、北海道知事、苫小牧市長、厚真町長にも郵送されました。

5. 現地視察
 今回の総会決議要望書の提案者の4名の方々は、以前から本案件の現地で調査研究を行なって来られていますし、鳥類保護委員の中にも現地を訪れている方がおられますので、今回の要望書作成の際には現地の状況把握は基本的にはできていたわけです。ただ、私個人としては、本案件のスケール感が今ひとつわからなかったので、2021年6月14日〜19日にレンタカーで、12月14・15・17日に徒歩で、現地とその周囲を見て回りました。6月の浜厚真海岸では、延々と続く海浜植物群落のあちこちでノビタキがさえずり、砂浜にはオジロワシがたたずみ、湿地周囲でタンチョウがゆっくりと歩きながら餌を探し、オオジシギの誇示飛翔音が聞こえてきます。事業計画地内外の湿地や草地ではチュウヒが飛び交い、エゾシカがちょっと多すぎでしょうがどこにでも現れ、前日の昼にヒグマが通過していったことを示す看板を見かけ(私、前日の昼にはそのあたりにおりました)、なかなかすばらしい所だと実感しました。12月には事業計画地内外の河川沿いの林や鉄橋、防風林や上空などあちこちでオジロワシを見かけ、いくつかの河口域にオオハクチョウの姿や音声を認めました。勇払原野の一部ということですが、原野といっても湿地の占める面積は狭いようで、その大部分がハンノキ林と牧草地、農地からなっていて、さらに造成地跡の乾燥草地が加わっています。私の見て回った範囲では、浜厚真海岸・鵡川河口周辺・弁天沼・安平川河口周辺などの湿地は非常に貴重な存在になっていると思いました。

1. オジロワシ成鳥20211217むかわ町日高本線廃線部鵡川鉄橋.jpg

写真1. むかわ町日高本線廃線部鵡川鉄橋のオジロワシ成鳥 2021年12月17日 武石撮影

2. オオハクチョウ成5幼3羽20211215 厚真町厚真川河口域.jpg

写真2. 厚真町厚真川河口域のオオハクチョウ成鳥5羽幼鳥3羽 2021年12月15日 武石撮影

3. エゾシカ45頭20210616厚真町浜厚真海岸.jpg

写真3. 厚真町浜厚真海岸のエゾシカ45頭 2021年6月16日 武石撮影

4. ヒグマ注意看板20210618苫小牧市弁天.jpg

写真4. 苫小牧市弁天のヒグマ注意看板 2021年6月18日 武石撮影

6. 記者発表
 今回の要望書発出に際しては、2021年12月16日の午前11時から苫小牧市政記者クラブ(苫小牧市役所内)において(公財)日本野鳥の会、日本野鳥の会苫小牧支部、ネイチャー研究会inむかわの3団体と共同で記者発表を行ないました。この記者発表の設定と鳥学会側の参加につきましては、(公財)日本野鳥の会の浦達也さんに色々とご配慮いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。当日は、上記3団体共同による要望書と鳥学会による要望書の2件について発表が行なわれました。前者の発表は、「勇払原野の風力発電計画地内で特別天然記念物タンチョウの繁殖を確認」、「タンチョウの繁殖確認による(仮称)苫東厚真風力発電事業の撤回を求める要請書」(大阪ガス宛)、「国内希少野生動植物種タンチョウの繁殖に伴った(仮称)苫東厚真風力発電事業に対する要望書」(環境大臣宛)、「国の特別天然記念物タンチョウの繁殖に伴った(仮称)苫東厚真風力発電事業に対する要望書」(北海道知事・苫小牧市長・厚真町長宛)(https://www.wbsj.org/activity/press-releases/press-2021-12-16/)についてでした。出席者は鳥学会からは武石及びオンライン参加の先崎理之さんで、上記3団体では、(公財)日本野鳥の会から中村聡ウトナイ湖サンクチュアリチーフレンジャーとオンライン参加の浦達也主任研究員、日本野鳥の会苫小牧支部から鷲田善幸支部長と梅津譲一さん、そしてネイチャー研究会inむかわの小山内恵子会長でした。出席した報道会社は、NHK、毎日新聞、読売新聞、北海道新聞、苫小牧民報、ひらく(苫小牧の月刊ミニ新聞)の計6社で、1時間半ほど熱心に取材していただき、当日夜、翌日朝刊、翌月などに報道していただきました。特に「月刊ひらく」(2022年1月号No.47)では、5ページの特集記事として要望書の内容にも詳しくふれて報道していただきました(バックナンバーはhttp://www.shimbun-online.com/latest/hiraku.html)。

7. 留意点など
 今回の経緯全体を通してみて、関係する皆様方は何かと忙しいことと思われますが、やはり相互の報告・連絡・相談が大事なことであると思いました。それによって早めの判断が促されることになり、案件への対応に時間がかかりすぎるのを防いでくれることになるかと思われます。今回は風力発電に関しての対応に時間がかかったということもあり、また一般的に再生可能エネルギー施設の建設が急ピッチで進んでいる現状と鳥類保全との関係を考えて行くために、このたび鳥類保護委員会の中に、「風力発電等対応ワーキンググループ」を評議員会の了承のもとに設置しました。グループ長は風間健太郎さんです(グループメンバーについては各種委員会・役員ページを参照下さい)。
 なお、今回は記者発表の実施につきましては他団体のお世話になりました。鳥学会としての発表をアピールする上では、独自に記者発表の場を設定することが望ましく、こちらも早め早めの準備が必要となります。適切な発表者の参加がより可能になることも確かですので。
 また、記者発表時にはいつもそうなのでしょうが、こちらが記者発表要旨をお渡ししたとしても、記者はすぐに記事原稿をまとめ上げないといけないのでしょうから、口頭での説明の際に誤解なくわかりやすく一から説明することに努力する必要を痛感しました。記事になって初めて、思わぬ誤解があったことに気づいたりするものです。
 以上、ご報告まで。

文献
Senzaki, M., Yamaura, Y. & Nakamura, F. 2017. Predicting off-site impacts on breeding success of the marsh harrier. The Journal of Wildlife Management, 81(6), 973-981.

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(仮称)苫東厚真風力発電事業計画への対応をめぐって(上)

武石全慈(鳥類保護委員会委員長)

1. はじめに
 日本鳥学会2021年度書面総会に議案として提出された「(仮称)苫東厚真風力発電事業に対する事業中止要望書」は、有効表決者の方々の圧倒的多数の賛成を得て、2021年10月22日付で可決されました。この案件につきまして、それまでの経緯や現地視察、その後の記者発表の様子などについて、広報委員会から鳥学通信への寄稿を依頼されました。この要望書は環境影響評価方法書(2021年2月発行)の提示後の段階で決議されたもので、今後もこの案件については関わっていくことになりますので、ご参考までに備忘録も兼ねて記してみます。
 日本鳥学会からの他の風力発電事業案件に対する要望書については、これまでに鳥類保護委員長名で3件が発出されています。それらは、北海道北部地域(2017年7月)、岩手県北上高地(2017年7月)、秋田県由利本荘市沖(2020年2・3月)での事業に対するもので、関係する官庁(経済産業省・環境省)と自治体(北海道・岩手県・秋田県)に向けて発出されました(鳥類保護委員会ウェブサイト参照)。内容は、バードストライク、障壁影響による飛行経路変更、生息地放棄に関して、複数事業による累積的影響の観点も含めて、適切かつ十分な調査と予防原則に基づく評価を行ない、立地選定や事業規模の見直しも含めた影響の回避・低減策を講ずることや定量的な事後調査を実施するよう、事業者への指導を要望するものでした。
 これに対して、今回決議された要望書は、日本鳥学会長名で事業者のDaigasガスアンドパワーソリューション(株)に事業の中止を要望したもので、2021年11月25日付で発出され(郵送)、その写しは親会社の大阪ガス(株)、環境大臣、経済産業大臣、北海道知事、苫小牧市長、厚真町長にも郵送しました。鳥類保護委員会ウェブサイトには、重要種の繁殖位置を示す図を削除した形の要望書を掲載しています。

浜厚真湿地:2021年6月17日、厚真町浜厚真地区、武石撮影.jpg

写真1 計画地内の厚真町浜厚真地区の海岸部に広がる湿地 2021年6月17日 武石撮影

2. 配慮書段階
 本事業については、その計画段階環境配慮書の縦覧が2020年5月26日から開始されましたが(縦覧期間1ヶ月、意見書提出締切6月26日)、6月上旬までに鳥学会員2名から別々に鳥類保護委員長あてに、意見書提出の要望が寄せられました。本事業計画地内の砂丘の湿地では2017年にタンチョウが繁殖し、道央地区では貴重なタンチョウ繁殖地が風車建設により失われる恐れがあること、計画地とその隣接地にある湿地や草地にはチュウヒや他の希少鳥類が数多く生息すること、また周辺の牧草地や遊休地はウトナイ湖等に集結するハクチョウ類・ガン類の餌場であり大きな影響の発生が懸念されるなどの理由からでした。
 本事業は、事業実施想定区域が北海道厚真町及び苫小牧市の海岸部に位置し、単機出力3,400〜4,300kW(最大高145〜191m、ローター直径120〜142m)の風車を10基程度設置する陸上風力発電施設の建設計画で、総発電出力が最大38,000kWとなっています。風車の全ては厚真川河口付近の両岸の厚真町内に設置され、苫小牧市域には送電・変電設備だけが設置されます。風車設置区域は約332.1ha、それ以外は約232.6haを占めるとのことでした。
 配慮書では、重要鳥類に対して、「生息環境の変化に伴う影響が生じる可能性」と「施設の稼働に伴うバードストライク等の重大な環境影響を受ける可能性があると予測した」が、「事業実施想定区域を可能な限り絞り込む時点で重要野鳥生息地(IBA)及び生物多様性の保全の鍵になる重要な地域(KBA)を除外したことにより、現段階では、重大な影響が、実行可能な範囲内でできる限り回避、又は低減されていると評価する」としていました。
 これに対して鳥類保護委員会で検討した結果、計画の中止や再考を求める上では、配慮書に対する意見としてではなく、計画そのものに対する意見書という形で事業者に提出する方が妥当であろうと判断し、委員を中心に意見書を作成しました。その後、提出までに時間を要し、2020年11月1日付の鳥類保護委員長名で、風車の建設計画を中止も含めて全面的に再考するよう要望する「(仮称)苫東厚真風力発電事業に対する意見書」を事業者へ郵送にて提出しました。

タンチョウ20210615苫小牧市弁天.jpg

写真2 計画地周辺の苫小牧市弁天で観察されたタンチョウ 2021年6月15日 武石撮影

3. 事業者との意見交換会
 この意見書には回答を要請する一文も含めていたところ、事業者から意見書の趣旨を確認したく意見交換を行いたい旨の申し出があり、2021年3月12日に鳥類保護委員6名と事業者・親会社・調査委託会社の4名とで、Zoomによる意見交換会を行ないました。この時点では、本事業のアセスメント過程は方法書の段階に移っていて、その縦覧期間と意見書提出期間(2021年2月1日~3月26日)の時期にあたっていて、事業計画の内容はいくらか変更されていました。
 方法書では、風車設置区域については、厚真川西岸側での「植生自然度が高いヨシ群落及び湿地環境」が除かれていて、東岸側では住宅周辺と海浜汀線部が除かれ、その面積が約332.1haから約150.4haへと半減していました。しかし、上記の意見書で指摘していた2017年にタンチョウが繁殖した東岸側海浜砂丘内のヨシ等の湿地帯全域は風車設置区域内に含まれたままでした。後述するように、この湿地帯では2021年に再びタンチョウの1つがいが繁殖してひな2羽を育てる事に成功しました(日本野鳥の会苫小牧支部報No.238)。なお、変電所・送電線等の用地は、約232.6haから約301.8haに増加していましたが、風車の規模は変更ありませんでした。
 3月12日の事業者側との意見交換会では、保護委員会側からは、意見書内容の繰り返しになりますが、(1)本事業計画地は、ラムサール条約登録湿地、IBAs、KBAに隣接し、環境省センシティビティマップのA3メッシュに含まれ、一体として希少鳥類を中心とした野生動植物の重要な生息・生育地となっていること、(2)計画地及び隣接地は、重要種のタンチョウ、チュウヒ、オジロワシ・オオワシ、ガン類・ハクチョウ類やオオジシギなどの草原性の鳥類種群によって、繁殖、越冬、渡り時の通過の際に利用されていることから、風車の設置・稼働がこれらに対して、繁殖地放棄、繁殖成功率低下、生息地放棄、バードストライクなどの影響を与えることが懸念され、中止も含めて再考するよう主張しました。また調査方法についても、渡りのピーク時期、気象条件、レーダーの導入、大型鳥類の個体別飛翔追跡などを考慮するよう要望しました。事業者側からは、配慮書、方法書へとアセスメント過程を進めているが、予定通りに事業を実施することを現時点では必ずしも決めてはいないので、調査の結果を得てから、その時点での状況も踏まえて、事業の実施について判断したいとのことでした。
(注)計画地内の海岸砂丘部の浜厚真で確認された鳥類リストについては、「浜厚真の鳥類〜浜厚真Bioblitz2021報告〜」を参照下さい。

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写真3 計画地内の厚真町浜厚真で観察されたオオジシギ 2021年6月17日 武石撮影

(続く)

※訂正(2022年3月28日更新)※
1)「3. 事業者との意見交換会」の1段落目において意見交換会の行われた時期について「縦覧期間(2021年2月1日~3月4日)は既に終わり、意見書提出期間(2021年2月1日~3月19日)の時期にあたっていて」と説明しておりましたが,正しくは「縦覧期間と意見書提出期間(2021年2月1日~3月26日)の時期にあたっていて」でしたので訂正いたしました。新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言の影響で、当初の公示期間が訂正した期間に変更になっていました。
2)「写真2」の説明で、撮影地が「計画地内の」となっておりましたが「計画地周辺の」に訂正いたしました。

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ドイツの鳥類学研究所での研究生活(後編:ドイツでの暮らし)

太田菜央(マックスプランク鳥類学研究所)

(前編 マックスプランク鳥類学研究所の研究環境 はこちら)

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たまに見かけると嬉しい小鳥、アオガラとゴシキヒワ

ドイツでの暮らし

南ドイツは北海道より少し緯度が高いところに位置していて、気候も北海道ととてもよく似ています。ただし雪はかなり少なく、たまに地面がうっすら覆われる時期がある程度です。私は長らく札幌に住んでいたので寒さに関してはむしろ楽になったくらいなのですが、新鮮だったのは夜の短さでしょうか。朝は8時を過ぎても暗く、16時には日が沈みます。個人的には家でじっとしていることを地球がオフィシャルに認めてくれている感じがして嫌いではないのですが、日光不足で気分が沈みがちになるという弊害が出る人も多いようです。逆に夏は20時を過ぎても明るく、湖のそばのビアガーデンでビールを楽しむのが南ドイツの定番です。

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異様に気合いが入っているボンの自然史博物館の剥製たち

 

ヨーロッパで暮らす醍醐味は何と言っても、陸続きの土地で色々な国の色々な景色・文化に触れられることかと思います。日本育ちの身からすると陸路で国境を超えるという行為がまず面白いですし、隣り合った土地で言葉も文化もガラリと変わってしまうのが不思議です。博物館や宗教施設は豪華で歴史のあるものが多く、土地柄が垣間見える瞬間も楽しいです。ドイツは剥製のクオリティが驚くほど高い自然史博物館が多く、周囲の環境も含めた生態描写までこだわって作られていてつい見入ってしまいます。定期的な無料開館日や若い人のための割引制度なども充実しており、文化的施設と市民の距離がとても近いなと感じます。

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鳥好きにおすすめ、マルセイユの大聖堂。メインのモザイク画はたくさんの鳥に囲まれた船がモチーフで、いかにも港町らしい祈りのメッセージが伝わってきます。なんと文鳥もいる!

 

私は研究上の成り行きでドイツに来ることになって、実はそれまで海外に行くなどと自発的には全く思う機会がなく生きてきたのですが、現在自分でもびっくりするほど楽しく過ごしています。社交好きの人にはがっかりされる意見かもしれませんが、ちょうど良くよそ者でいられることが非常に快適です。海外に出るとか好きな研究をするというストーリーは、個人のモチベーションや能力といったものをベースに語られがちですが、色々な人と会って話すうちにそれって大して信用ならないなと思うようになりました。海外にいる日本人の方の背景を聞いてみると、子どもの頃に海外に行った経験があるとか、親や周りの人の仕事が海外と関わりのあるものだったというパターンが本当に多いです。そういう背景があることはとても素敵だなと思う一方、「自分にはとてもそんな…」と思ってしまう人との差は小さなきっかけの有無に過ぎないようにも感じています。生まれや育ちで自然に作られる流れをかき乱して、私のように海外に行く発想などなかった人間が色々な仕組みや人からの助けを借りて気づけばヨーロッパで研究生活を送っている、という事態が起こるのは、現代社会のなかなか面白くて良いところだと思います。

興味のある研究室や施設が海外にあるけれど自分の能力に自信が持てないという方は、一旦自分の経験や感覚を信じすぎるのはやめてとりあえず何か行動してみる、既存の仕組みがあれば利用してみる、ということをおすすめしたいです。そういった予想外の展開の先にこそ、何か楽しい発見が待ち受けているかもしれません。

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ドイツの鳥類学研究所での研究生活(前編:マックスプランク鳥類学研究所の研究環境)

太田菜央(マックスプランク鳥類学研究所)
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冬のマックスプランク入り口

こんにちは。ドイツでポスドクをしている太田菜央と申します。私は今、Max Planck Institute for Ornithology(マックスプランク鳥類学研究所)という、その名の通り鳥類学研究のために作られた施設で小鳥の求愛ダンスの研究をしています。今回の記事では、マックスプランク鳥類学研究所がどういう研究施設なのか?ということと、ドイツでの暮らしについて紹介したいと思います。

私が勤務するマックスプランク鳥類学研究所(以下、省略してマックスプランクと表記します)は、ミュンヘン中心部から公共交通機関でおよそ1時間の郊外に位置しています。まわりは森や牧場に囲まれていて、北海道の風景とよく似ているなと感じます。都会派には少し退屈かもしれませんが、野鳥好き、自然好きには最高のロケーションです。様々な国から学生や研究者が集まっているため基本的に英語しか使わず、ドイツ語を使う機会がほとんどないのは便利でもあり少し残念でもあります。

私が初めてマックスプランクを訪れた際は、とにかくその規模の大きさ、研究環境の充実ぶりに驚かされました。例えば普段の鳥の世話は、専属の獣医さんとケアテイカーがおこなっており、広い禽舎は常に清潔に保たれています。実験の必要に応じて鳥の移動や禽舎の組み替えも臨機応変に対応してくれます。倫理規程も細かく、飼育面積に対して収容して良い鳥の数や、餌の種類、止まり木の量などが厳しく指定されており、とにかく環境エンリッチメントへの配慮に力を入れている印象です。

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研究所内の湖とハイイロガンの親子(初夏)。かのコンラートローレンツもここでハイイロガンの行動研究をおこないました。

マックスプランク鳥類学研究所の研究環境

人間側の福祉も充実しています。学生もポスドク以上の研究者もほとんどは17時を過ぎる頃には帰宅しますし、休暇もしっかり取ります。長時間働いている研究者ももちろんいて、プライベートの時間を尊重することを大前提とした上で、個人の裁量にかなり任されている印象です。子育て中の学生やポスドクが多いのも日本と大きく異なる点でしょうか。私が好きだなと思っているシステムは、毎年お子さんがいる職員を対象に、12月の土日に1日分の託児サービスが無料で受けられるというものです。12月は忙しいだろうから、その日はクリスマスの準備をするか一息つくために使ってね、という趣旨のもので、ヨーロッパらしいかつ優しい文化だなと思います。

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研究所内でのクリスマス持ち寄りパーティの様子(コロナ前)
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コロナ禍に入る前は外部から研究者を招待してのセミナーが毎月開催されて、クリスマスパーティや映画の上映会なども定期的におこなわれていました。現在は一部をオンラインで実施している感じです。そういった場所で交流する研究者の皆さんはこちらが逆に恐縮してしまうレベルで優しくて話しやすい人が多いです。ちなみに研究所内には短期滞在者用のゲストハウスが設置されていて、共同研究やセミナーを実施しやすい環境が整っています。

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ゲストハウスの部屋の写真。部屋ごとに違う鳥の写真が飾られています。私が学生時代に滞在したのは「ノビタキの間」でした。

ここまで良いことばかり紹介してきましたが、研究する上で疑問を感じる側面も一応あります。例えば先ほどお話した通り、鳥のお世話やメンテナンスは基本的にケアテイカー任せなので、動物と接する時間は個人で工夫しない限りは基本的に実験をしている間だけになります。日本の大学で定期的に鳥の世話をしていた時には分からなかったのですが、飼育個体と少し距離が開いて(禽舎はオフィスと別の建物にあります)世話の必要がなくなると、こんなにも動物と接する機会が減ってしまうのだなとこちらに来て実感しています。この状況は研究に集中するのに理にかなっているはずなのですが、行動研究においては結構な機会損失でもあるようにも感じます(これから観察眼を養う必要がある学生は特に)。また新しく実験を始めたい、ちょっと試してみたいことがあるといった場合に、スタッフの人数や規模が大きい分、関係者への周知や実験許可の取得に手間取って行き詰まってしまうこともしばしばです。

とはいえ、やはり全体を見ると科学を推進しようという気概が随所で感じられ、研究者としてここにくることができたのは本当に幸運だったなと思います。私が感心しているのが、多くのジャーナルでオープンアクセス費を全額負担してくれることです。これは私が理解している限りではドイツによる政策のひとつで、マックスプランク以外でも第一著者もしくは責任著者の所属先がドイツの研究機関であれば適用されます。こちらが支払い手続きなどをおこなう必要は一切なく、論文受理後にメールアドレスや所属先の情報から自動的にオープンアクセスが認められます。お金のことを心配せず投稿先が決められるのはとても心強いです。マックスプランクはその規模の割に日本人がそれほどいない印象があり(他の研究所はまた事情が違うのかもしれませんが、例えば鳥類学研究所では現在正式に所属しているのは私1人です)、個人的にはその環境が結構気楽だったりするのですが、もしこの状況が日本での知名度が低さに由来しているのであればもったいないことだとも思います。

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サロベツのシマアオジの現状と保全活動

サロベツ・エコ・ネットワーク 長谷部真
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図1 シマアオジ

シマアオジが近年急激に減少し、環境省やIUCNのレッドリストでCRに指定され種の保存法に指定されたのは皆さんご存じかと思います(図1)。減少は日本だけでなく世界的な繁殖地全域に及んでいます。渡りの中継地である中国における密猟や越冬地における生息環境の悪化が減少の主な原因として上げられていますが、正確なところはわかっていません。シマアオジの減少を食い止めるために、2016年に中国の広州でワークショップが開催されました。ここでは各国の関係者が一同に集まり、シマアオジの保全のための調査・研究・普及啓発対策について話し合われました。シマアオジの保全に向けた国際的な活動はこの時から継続的に行われています。 

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図2 サロベツにおけるシマアオジつがい数(環境省、日本野鳥の会事業)

シマアオジは1980年代まで北海道の草原に広く分布していましたが、1990年以降急激に減少し、2015年以降はサロベツ湿原でしか繁殖が確認されなくなりました。サロベツでは2017年よりシマアオジの調査が実施され、2017年の31つがいから2021年には18つがいと減少傾向が続いています(図2)。繁殖地はほぼ一箇所に集約され繁殖個体群消滅の危機が続いています。

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図3

一方で海外ではシマアオジの標識・発信機調査により渡りの状況が明らかになってきています。中国では保護指定が上がるなど保全対応も実施され、数が回復している国や地域もあります。

私たちはこの状況を周知するためにシマアオジ展示・パンフレット作成・Tシャツ・トートバッグ・ステッカーの販売等により普及啓発活動を実施してきました(図3)。オンラインでは陸鳥モニタリング会議・日本鳥学会・東アジア鳥学会(The 1st Asian Ornithological Conference)の自由集会でシマアオジについて発表し、今後の保全活動について話し合ってきました(学会の様子が分かる中国鳥類学会による報告記事はこちら)。東アジア鳥学会では中国ワークショップ以来つながってきた各国の仲間からの発表があり、最新情報や研究成果を知ることができました。保全活動として近年までシマアオジが生息していた環境を保全するために国立公園外の湿原環境を購入し、シマアオジ保護区(14.7ha)を創設しました(図4)。

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図4

シマアオジはサロベツで調査・保全活動を行っているタンチョウやチュウヒと異なり、小鳥のためか一部の愛好家を除き知名度も低く、一般にその存在や重要性が十分に周知されていない状況ですが、今後もシマアオジ繁殖個体群の回復のために繁殖調査や普及啓発活動を継続していきます。

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広報委員長交代のご挨拶

広報委員会 上沖正欣
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 森さやかさんより広報委員長を引き継ぎました上沖です。

 広報委員会は2000年(当時の名称はホームページ委員会)に発足し、既に20年以上が経ちました。先の退任挨拶で森さんが言及されていたように、ニューノーマル時代を迎え、インターネットを介した情報発信は益々その重要性を増してきています。今後も、広報委員会としての役割を粛々と果たしていきたいと考えております。特に、2005年から発行されている鳥学通信については、学会内外を繋ぐプラットフォームとしてより一層の充実を図っていく所存でございます。

 本年も鳥学通信をどうぞ宜しくお願い申し上げます。

※過去の鳥学通信はこちら
http://ornithology.jp/newsletter1.html

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写真は記事には関係ありませんが、おめでたい感じがする松に止まるキジ(2019年11月5日 佐渡)。

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卒論、修論を書いている学生さんたちに役に立つかもしれない2つの情報

広報委員会 三上修

 鳥学通信、月二報を維持しようとしている三上です(今月はまだ一報なので、がんばっています)。

 さて大晦日です。大晦日といえば、卒論だったり修論だったりするのではないでしょうか。私も、修士2年のときは、大学で新年を迎えた気がします。今は、あんまりそういうことをすると問題になったりするので、みなさんはそこまではしていないかもしれません。

 そんな苦労をしているかもしれない学生のみなさまに情報を2つ。

英名と学名を調べる

 1つは英名や学名です。

 鳥の論文を書いているときに面倒なのが英名や学名です。研究対象1種ならいいのですが、何種も出てきたりするとその都度、調べるのが面倒です。鳥類相を調査したり、あるいは引用したりする際に、一覧にしなくてはならない場合も出てきます。そういうときは以下のようなところで調べると早いです。

バードリサーチの鳥名リスト
https://www.bird-research.jp/1_shiryo/index.html

IOCのLife List

IOC Lists

 学名は、最終的には、鳥類目録を確認するのも忘れずに。

 なお繁殖している鳥に限られてしまいますが、学名やその他の生態情報を調べる際に、JAVIANデータベースもとても有用です。
http://www.bird-research.jp/appendix/br07/07r03.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/birdresearch/7/0/7_0_R9/_article/-char/ja/

 ちなみに私は一覧とか作るときの手間を省くために、エクセルで適当に作ったファイルを持っています。何かの役に立つかもしれないので添付しておきます(注意!:マクロとか埋め込んだりませんし、ウイルスチェックもしましたが、使用に際して不利益があっても責任はもちませんので、ご注意ください)。
標準和名から学名と英名を調べる_20211231.xlsx

 1つめのシートのA列に標準和名を入れると、横に英名や学名のリストがでます。これを作成する際に、バードリサーチの鳥名リストとIOCのLife Listを使っています。分類の変更などによってIOCのほうの学名や英名が出てこない場合もありますが、その場合はIOCのリストを詳しく読むとだいたい解決します。

引用文献のページ数を表す横棒

 もう1つは「横棒」の問題です。

 引用文献を作る際にはEndNoteなどの便利なアプリがありますが、学部4年生は、そのアプリを使いこなすこともなく卒論を書くことになるでしょう。となると引用文献を手打ち入力(なんか美味しそう)しなくてはならなくなります。そんなときに迷うのが横棒です。

 論文を引用して、100ページから120ページと示したいときに、横棒はたくさんあって、どれを使うのが正しいのか迷います。たとえば、このように。
100-120
100‐120
100–120
100—120

 上から、マイナス、ハイフン、エヌダッシュ、エムダッシュと呼ばれる記号です(正確に表示されているかどうかはわかりません)。ほかにも横棒はいろいろあってとかく面倒です。このうち「間(つまりページの間)」を表す記号は3つ目のエヌダッシュです。

Hyphen, en-dash, em-dash

 エヌダッシュは、MS Wordで書いていて、テンキーがあって、Winであれば、Ctrlキーを押しながら、マイナス記号を押すと出てくるはずです(Macの場合は、Ctrlキーの代わりにOptキー)。ノートPCの場合はテンキーがないのでNumLkキーを使ってやればいいはずです。

 ここでも条件を書きながら説明したように、実際にエヌダッシュをどうやって書くかは、OS、アプリ、キーボードなどの複数の要因が関わってきます。詳しくは、自分の使用環境を把握して検索してみてください。一回だけ書いて、後は使いまわすといいですよ。

 では、体調を崩さないように論文作成をがんばってください。

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広報委員長退任のご挨拶

森さやか(酪農学園大学)

2021年も残りわずかとなってまいりました.私は12月末をもって2期4年間勤めた委員長任期の満了を迎えることになりました.広報委員会では,学会Webサイトの日々の更新やエラー修正,サーバーおよびメーリングリストの管理,この鳥学通信の運営とSNSでの情報発信などをおこなっています.委員のみなさんにはそれぞれ本業でお忙しい中,委員会活動を円滑に進めるべくご協力いただき,誠にありがとうございました.

この4年の間に学会のWebサイトは,各種委員会ページの様式変更,会員マイページや役員選挙のサイドメニューの追加,リンクポリシーの掲載,SNSリンクボタンの設置などの仕様変更を進めてまいりました.任期の後半には広報委員会の活動にも少なからずコロナ禍の影響がありました.2020年度は大会が中止となり,総会も初めて書面総会となりました.それに伴い,Webサイトには例年とは異なった編集作業も生じました.鳥学通信には例年大会関連の報告記事が多かったのですが,それがなくなってしまったことから目標投稿数を大幅に下回ってしまいました.そのような状況下でも,鳥学通信には毎日100名を超えるユーザーのアクセスがあり,記事が連動投稿されるFacebookやTwitterのフォロワー数はこの2年間で大幅に増加し続けています.今年度は大会が初のオンライン開催となりましたが,報告をたくさん掲載することができ,読者のみなさんにもお楽しみいただいているようです.前例のないオンライン開催にご尽力いただいた大会事務局のみなさん,報告をご投稿いただいたみなさん,ありがとうございました.

鳥学通信では今年度は特に,大会報告だけでなく様々なトピックで積極的な記事集めに努めています.ニューノーマル時代に会員相互の情報交換や次世代の若者を含めた学会外への情報の発信を促進し,鳥学会の活動を盛り上げる一助となればと願っています.鳥学通信は委員からの依頼がなくても会員の方なら誰でもいつでもご自由に投稿していただけます(投稿先アドレスは本ブログのヘッダーに記載されています).調査・研究,教育活動の紹介や宣伝などにお気軽にご活用いただければ幸いです.

1月からは委員長は上沖正欣さんに交代しますが,私ももうしばらくは引き続き委員として活動してまいります.これをお読みのみなさんにも原稿執筆のご相談を差し上げることもあるかと思いますが,その際はご協力どうぞよろしくお願いいたします.

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画像がないとさみしいので,4年以内に見て最もうれしかった鳥の写真を上げておきます(ナキイスカ オス 2019年10月29日 利尻島).

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日本鳥学会誌70巻2号 注目論文のお知らせ

藤田 剛 (日本鳥学会誌編集委員長)

今号の注目論文が決まりました。

著者:山路公紀・宝田延彦・石井華香
タイトル:八ケ岳周辺と高山市におけるジョウビタキの繁殖環境の選好性

DOI: https://doi.org/10.3838/jjo.70.139

国内で冬鳥とされていたジョウビタキが、国内で繁殖しはじめたことをご存知の方も多いと思います。そのジョウビタキの国内での繁殖場所選択の研究です。ぜひご一読を。

この論文の謝辞を見ていただければ分るように、ほんとうにたくさんの方たちの協力によって、実現した研究です。

以下は、鳥学会編集委員のひとりとして、うれしくなるような著者のお一人からのメッセージ

この論文の掲載は、日本鳥学会に、アマチュアがプロの丁寧な指導を受けながら原著論文を発表できる場があることを証明してくれました。掲載に加えて、エディターズチョイスに選定されたことは光栄であり、感謝しております。ジョウビタキは人の生活に近い場所で繁殖します。地域の人々の生活の場から寄せられた一つ一つの情報とコミュニケーションを大切にすることで、広い調査地に感動の輪を広げることができました。この鳥は、環境順応性が高いこともあり、今後、林縁に近い住宅地や緑被の多い都市部への繁殖拡大が予想されます。しかし、まだ分かっていないことが多いです。解決のために、より多くの方々が研究されることを希望します。(山路公紀)

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市街地の住宅のベランダで営巣 2020年5月8日 長野県諏訪市(巣立ち後撮影)撮影: 山路公紀

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店舗前の郵便受けで営巣 2020年4月27日 山梨県北杜市 撮影: 山路公紀

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換羽が始まった雄が巣に餌を運ぶ 2017年8月20日 長野県茅野市(標高1,760m)撮影: 山路公紀

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巣立ち雛への給餌 2015年7月13日 長野県霧ヶ峰高原 撮影: 野中 治

(* 日本鳥学会誌では、毎号の掲載論文から編集委員全員の投票で注目論文を毎号選んでいます。選ばれた論文は、掲載直後から J-stage でダウンロード可能になります)

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